舌のできものを症状別の解説 特に注意が必要なケースとは?【歯科医師監修】

舌のできものを症状別の解説 特に注意が必要なケースとは?【歯科医師監修】

この記事では、それらの原因や、症状を和らげるための対処法をわかりやすくご紹介します。

               
舌にできものができる原因としては、どのようなものがあるのでしょうか。舌のできものの種類と具体的に見られる症状や特に注意が必要なケースを解説します。ぜひ参考にしてみてください。

舌にできものができる原因

舌は、歯と近い距離にあるため、誤って噛んだり固い食べ物と擦れたりして傷がつき、炎症を起こしやすい部分です。また、疲労やアレルギー、免疫力低下などによって、プツプツとした赤いできものや口内炎ができることも少なくありません。
舌にできものができると、食事の際に気になったり痛みを感じたりして、生活の質(Quality of Life)が落ちてしまいます。
ここでは、舌のできものができる主な原因をご紹介します。

疲労やストレスの蓄積

仕事や育児、介護などに追われていると、ゆっくりと休息できる時間がなく疲労がたまります。また、不安なことや何かうまくいかないことがあると、自分でも気付かないうちにストレスを抱えているものです。
疲労やストレスが蓄積されると、舌のふちなどに口内炎(舌炎)ができやすくなります。睡眠不足も同様に、口内炎を生じさせる原因です。できものができると、強い痛みが生じます。ほかにも悪化すると潰瘍化し、口臭などの症状となって現れるおそれもあります。

けがや摩擦

誤って自分の舌をかんでしまったり、固い食べ物が舌に擦れたりすることも、できものの原因になります。また、入れ歯や歯列矯正器具の接触、熱いものの飲食なども舌に傷をつけ、口内炎の原因となる場合があります。
体調の悪いときなど免疫力が低い状態だと、舌の傷口から入った菌が繁殖して、できものの状態が悪化することもあります。日頃から口内を清潔に保つようにしましょう。

口内ケアが不十分

口内を長時間不衛生な状態に置くことは、歯や歯ぐきの健康だけでなく、舌の健康にも良くありません。食事をした後は、食べ物のカスが口の中に残っています。適切なケアができていないと、歯のすきまや歯周ポケットなどに残った食べカスを養分として雑菌が繁殖し、口内環境の悪化を招きます。その結果、舌のちょっとした傷から菌が入ることで、できものができやすくなるので注意が必要です。

細菌・ウイルス感染

カンジダ菌や単純性ヘルペスウイルスといった細菌・ウイルスが感染することで、舌に口内炎などのできものが生じることもあります。細菌やウイルス感染による症状は、接吻など、粘膜の接触で人から人へとうつることがあります。
また、人から人へと直接感染するだけでなく、使用済みのタオルや食器などを媒介して感染することもあります。疑わしい症状が出た場合は、たとえ家族であってもタオルや食器などは共有せず、清潔なものを使い分けましょう。

アレルギー反応

詰め物や被せ物、義歯などの金属を口に入れることで生じるアレルギー反応も、舌にできものができる原因となります。むし歯の治療後、何らかの原因が重なることで、口内炎ができたりアレルギー反応が出たりすることもあります。
ただ、発症までに長い期間がかかり、ほかの原因と見分けがつきにくいケースもあります。身体の複数箇所で急な症状が出てきた場合は、早めに医療機関で検査を受けるようにしましょう。

栄養不良

舌のできものは、栄養状態とも大きな関係性があります。とくに皮膚や粘膜、髪、爪などの健康を維持するビタミンBや、コラーゲン生成を促して皮膚状態を正常に保つビタミンCの不足は、口内炎の原因になりがちです。
ビタミンBは肉や魚類、ビタミンCは野菜や果物類に多くふくまれています。ある食品群に偏った食事や暴飲暴食を避け、バランスよく適量を食べることが大切です。

免疫力の低下

人体は免疫力によって細菌やウイルスが体内に入っても、防御するため病気にならない機能があります。口の中にも多くの細菌がいますが、免疫力のおかげで健康を保たれています。ところが、体調を崩し免疫力が低下すると口内細菌の影響を抑えられなくなり、舌などの口内炎が生じやすくなります。また、年齢とともに起きやすいホルモンバランスの乱れも、免疫力低下につながるとされています。さらに、睡眠や栄養状態の不足、喫煙習慣、冷えなども免疫力に悪影響をおよぼすため、注意しましょう。

舌のできものの種類を症状別に紹介

ここからは、舌にできやすいできものの種類を症状別に解説します。

白くて痛い場合:アフタ性口内炎

アフタ性口内炎とは、白くて丸いできものの周りが赤く縁取りされているのが特徴です。辛いものや熱いものなど、刺激物を口に入れると痛みを感じやすいです。
睡眠不足など生活習慣の乱れやストレス、疲労などで免疫力が低下しているとき、栄養不足のときになりやすいとされているものの、詳細は明らかになっていません。通常10日~2週間ほどで自然に消滅します。 治りが遅いときや範囲が広いとき、再発を繰り返すときは、ベーチェット病などほかの病気の症状や使用している薬が原因の場合があるため、気になる症状がある場合は、早めに医療機関へ受診しましょう。

赤くて痛い場合:カタル性口内炎

舌に赤みがあり、痛みもある場合は、カタル性口内炎かもしれません。舌を誤ってかんだり、熱い食べ物を食べたりすることで粘膜に傷がつき、菌が侵入して繁殖することが原因です。1週間程度で自然に治ることが多いです。

水疱が多発している場合:ヘルペス性口内炎

先に述べたように、ヘルペスウイルスは人から人へとうつるのが特徴です。もし口内、とくに舌先や舌の下に痛みをともなって複数のできものが見られる場合は、ヘルペス性口内炎の疑いがあります。
ヘルペスウイルスが原因であれば、39℃近くの高熱が出ることもあります。1~3歳までの乳幼児によく見られます。もし舌にできた水疱などがヘルペス性口内炎と診断された場合は、タオルや食器などを使いまわしせず、別々に使うようにしましょう。

痛みのない水泡が何度もできる場合:粘液嚢胞(ねんえきのうほう)

舌の口内炎は痛みを伴う場合が多いです。痛みのない水泡が何度も繰り返しできる場合、それは「粘液嚢胞」かも知れません。粘液嚢胞とは、唾液を分泌する管がふさがってしまい、唾液が外に漏れだし溜まって袋状になっている状態です。舌をかんでしまったり、歯ブラシで強くこすってしまったりなど、多くの場合外傷が原因で唾液を分泌する細い管を傷つけてしまいます。自然に治ったとしても再発しやすいのが特徴です。

ただれや潰瘍など:細菌性・ウイルス性口内炎

赤いただれや潰瘍が見られる口内炎は、カンジダ菌による炎症や、梅毒、淋病、クラミジアに代表される性感染症が原因かもしれません。
口内環境が悪化し、多くの細菌やウイルスに侵されている状態になると、強い痛みを感じやすくなります。発熱することもあるため、放置せずに早めに医療機関を受診しましょう。

舌の付け根にブツブツがある場合:舌扁桃(ぜつへんとう)

「舌扁桃」とは、左右の舌の付け根に出てくるブツブツとしたものです。病気などではなく、誰にでもある正常な組織なので、舌扁桃であれば心配はいりません。ブツブツ以外に違和感や痛みが生じている場合もあります。気になる場合は、まずは歯科医院で相談してみましょう。

痛くない舌のできものに注意!

舌に口内炎ができても、痛みがないケースもあります。痛まないからといって油断はできません。ここではとくに注意したい2つの症状をご紹介します。

硬いしこりがある場合:舌がん

さわると硬いしこりがある白い色の斑点が舌にできた場合は、「舌がん」のおそれもあるため注意が必要です。できはじめは痛みがなくても、徐々に進行すると、激しい痛みを伴います。なかには「繊維種(せんいしゅ)」という良性の腫瘍もあるため、舌にできた斑点が一概に悪い病気とは限りません。しかし、素人では判断がつかないことから、症状に気付いた時点で早めに医療機関に行くようにしましょう。

白くて痛くない場合:白板症(はくばんしょう)

舌のできものが白く痛みもない場合は「白板症」になっている可能性もあります。
とくにできやすい場所としては、舌のふちが挙げられます。白板症から舌がんに移行することもあるため、早めに医療機関で検査を受け、適切な処置をうけましょう。

舌にできものがある場合の対処法

舌にできものができた場合は一刻も早く治したいものです。ここでは、どのように対処すればよいのか、例を挙げて解説します。

ビタミンB・ビタミンCを摂取する

白くて丸い潰瘍ができるアフタ性口内炎は、栄養不足が原因になっていることがあります。ビタミンBやビタミンCを積極的に摂取するようにしましょう。
とくにビタミンB2には、皮膚や粘膜を保護する役割があるほか、ビタミンB6には新しく皮膚や粘膜を生成する効果もあります。これらの栄養を効率よく摂るには、レバーやサバ、チーズなどがおすすめです。

生活習慣を整える

舌にできものができる原因として、「けがや摩擦」について先述しています。舌を噛むなどの原因で、赤く腫れるカタル性口内炎の場合は、傷が治るのを待ちましょう。しかし、アフタ性口内炎では、栄養を摂取し、生活習慣を整えることで症状を改善できることもあります。
とくに睡眠は口内環境を整えるのに効果的です。夜更かしや不規則な生活は改めましょう。規則正しい生活を心がけることで免疫力が向上しストレス軽減にも役立ちます。

丁寧に口内ケアを行う

複数の小さな水ぶくれができて赤くただれたり、発熱や激しい痛みが生じたりするような細菌・ウイルス性の口内炎では、口内を清潔にすることが何よりも大切です。清潔な歯ブラシで毎食後歯を磨き、舌ブラシなどを使った舌のケアもプラスしてみましょう。症状が出てから適切なケアを実践するのではなく、日ごろから適切なケアを行い、定期的に歯科医院でケアをしてもらうことで口内を清潔な状態に保つことができます。口内を清潔に保つことは、口内炎などのリスクを抑えることにつながります。

2週間以上治らないなら歯科を受診する

舌にできものができた場合、原因が予想できても、自分で対処するのが難しい場合もあります。気になる症状がある場合は、歯科医院などで相談してみると良いでしょう。
目安として、2週間以上できものが治らない場合は、別の病気に関わる症状かもしれません。また、耐えられない痛みがある場合や持病があるなどの場合は、2週間を待たずにできるだけ早めに受診するようにしましょう。

舌のケアは早めの受診がカギ

舌にできものができた場合は、その症状などによっていくつかの原因が考えられます。また、その症状を軽減するための対処法も変わってきます。放置せずもし気になることがあれば、早めに歯科医院で受診するようにしましょう。

監修歯科医師:重永 基樹 先生

東京都新宿区西落合の哲学堂デンタルクリニック院長。
1999年に愛知大学院大学卒業。2002年に現在のクリニックを開業。
「なるべく削らない・抜かない・神経をとらない」方針で治療を行っている。

哲学堂デンタルクリニックのホームページはこちら
http://tetsugakudo.com/

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