舌の口内炎 原因と対処法 舌がんとの見分け方も紹介【歯科医師監修】

舌の口内炎 原因と対処法 舌がんとの見分け方も紹介【歯科医師監修】

(2022年9月30日公開)
舌にできる口内炎の原因や対処法は、基本的には他の部位にできる口内炎と同じです。しかし、口内炎は何もしなくても痛みを伴うことがあり、特に舌は食事をするときや話すときに必ず使う部分のため、早めに症状を緩和させたいですよね。この記事では舌ならではの注意点などを踏まえつつ、舌の口内炎の症状や原因、対処法を解説します。また、舌がんとの違いや見分け方についてもご紹介します。

               

舌の口内炎の症状と原因 対処法

舌の口内炎は、その症状から大きく4つに分類されます。それぞれの症状の違いや原因、対処法をご紹介します。

白や黄色の米粒大の潰瘍がある アフタ性口内炎の症状

アフタ性口内炎は、口内炎の種類の中でも最も多いケースです。赤い縁取りがあり、白や黄色の米粒大の潰瘍が特徴。2~3個群がって発生することもあります。赤く腫れて熱を持つ場合もあります。

<アフタ性口内炎の原因>
アフタ性口内炎は、ストレスや免疫力の低下などが原因と考えられています。

<アフタ性口内炎の対処法>
まずは、ストレスや疲労をためないようにすることが大切です。栄養バランスのとれた食事と十分な睡眠をとるなど、生活のリズムを整えるようにしましょう。

水泡や斑点がある カタル性口内炎の症状

カタル性口内炎の症状は水泡、斑点、ひび割れなどが見られます。口内炎の境界が不明瞭なことが特徴で、潰瘍はできません。赤く腫れて熱を持つこともあります。

<カタル性口内炎の原因>
舌を噛んでしまったり、入れ歯や矯正器具が舌に触れたりするなど、外的な刺激が原因で起こるほか、入れ歯に付着した、細菌が原因で口内炎になる場合もあります。

<カタル性口内炎の対処法>
舌を噛んでできた口内炎の場合は、2週間ほどで自然に治ります。寝ている間に舌を噛んでしまっているのであれば、就寝時にマウスピースを着けることが有効です。矯正器具や詰め物が取れてしまった歯が舌に当たっていることが原因の場合は、歯科医院で調整してもらいましょう。
入れ歯をしている方は、入れ歯の材質であるレジンに菌が付着しやすいため、洗浄剤やブラシで入れ歯をしっかり洗うことがおすすめです。

たくさんの小さな水泡がある ヘルペス性口内炎の症状

ヘルペス性口内炎では、小さな水泡が5、6カ所に見られます。痛みや炎症が比較的強く、赤く腫れて熱が出ます。また、小さな水泡は顔面にもできることがあります。

<ヘルペス性口内炎の原因>
ヘルペス性口内炎は、下記のようなウイルスが代表的な原因であると考えられます。
―単純ヘルペスウイルス
―水痘・帯状疱疹(すいとう・たいじょうほうしん)ウイルス
―A群コクサッキーウイルス

<ヘルペス性口内炎の対処法>
ヘルペス性口内炎ができてしまった場合は、抗菌剤やウイルスの増殖を抑える軟膏を塗布するか、内服薬を服用します。ヘルペスウイルスは、物や人を介して感染するため、発症した人が使ったタオルや食器などを共有しないようにしましょう。

口唇ヘルペスに関する詳しい内容は、こちらの記事で紹介しています。

白い苔のような膜がある カンジダ性口内炎の症状

白くて柔らかい苔のような膜が見られて、赤く腫れて熱を持つこともありますが、潰瘍にはならないのが特徴です。

<カンジダ性口内炎の原因>
カンジダ菌はカビの一種で、口内にもともとある菌(常在菌)です。カンジダ菌が繁殖することで発症します。糖尿病やがんなどの全身疾患や、乳幼児・妊婦・高齢者など抵抗力の弱い人がなりやすい傾向にあります。

<カンジダ性口内炎の対処法>
カンジダ性口内炎は、放っておいても自然には治癒しない口内炎のため、薬を服用する必要があります。抗真菌剤の入ったうがい薬や、塗り薬(軟膏)を使えば、数日間で治ります。うがいや塗り薬で治らない場合は、抗真菌剤の内服が必要になるので、歯科医院を受診しましょう。
カンジダ性口内炎の予防には、常在菌であるカンジダ菌を繁殖させないことが大切です。口内を清潔に保てるように、オーラルケアを意識しましょう。唾液には自浄作用があるため、よく噛んで食べる、唾液腺マッサージをするなどして唾液をしっかりと出すことも有効です。

唾液腺マッサージについて、詳しくはこちらで紹介しています。

舌の口内炎と間違えやすい 舌がんの特徴

口内炎と間違えやすい病気として、舌がんがあります。口の中にできるがんを総称する「口腔がん」の年間に発症する割合は、全てのがんに対して2%程度で、10万人に17人ほどと必ずしも多くはありません。
全がん 口腔・咽頭がん
罹患率(人口10万人対) 775.7例 17.8例
参考:国立研究開発法人国立がん研究センター「がん情報サービス」より2018年度統計情報
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/1_all.html
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/3_oral.html
  
舌がんかどうかは、自分で判断できるものではありません。歯科医院など医療機関を受診することが重要ですが、ここでは、「舌がんではないか」と不安に感じている方のために、舌がんと舌の口内炎の違いを紹介します。

舌の口内炎と舌がんの主な見分け方

基本的に、口内炎は何もしなくても痛かったり、患部が触れると痛みを感じる一方で、舌がんは症状が進行したり、大きくならない限り、通常は痛みがでないため、初期段階では気付きにくいです。
舌の口内炎 舌がん
見た目 ・白や黄色っぽい米粒大の潰瘍
・縁取りが赤い
・赤や白など混在
・縁取りは不明瞭
痛み 何もしなくても痛いか、触れると痛い。 初期は痛みをほとんど感じないため、気付かないことが多い。
しこり・厚みの有無 ・多少ある。
・医師が指で触ると分かる。
・口内炎の種類によっては潰瘍ができる。
ある程度大きながんの場合は、しこりや厚みがある。
症状の期間 目安 ・2週間ほどで治る。
・小さくなったり、形が変わる。
・2週間以上続く。
・しこりなどの大きさや形などの見た目は変化しないが、がん自体は増殖する。
進行した場合の症状 ・がんが神経を侵した場合は、しびれや麻痺。
・味蕾ががんに侵蝕された場合は、味覚障害。
・舌を動かしにくくなり、飲み込みづらさ、食べづらさ、話しづらさを感じる。
・がんで舌が膨張し、食事ができなくなる。
口内炎の症状が長引く場合や、気になる時は、口内炎のように見えても自分で判断せず、必ず歯科医院を受診しましょう。

舌の口内炎 原因と対処法まとめ

舌はデリケートなので、口内炎ができてしまったら原因に合わせて適切に対処しましょう。毎食後の歯磨きなど、日常的なオーラルケアに加えて、マウスピースや入れ歯をしている方は極力細菌の繁殖を抑えられるように、こまめに洗浄することが大切です。
一方で、ストレスや免疫力の低下などが原因のアフタ性口内炎の場合は、疲れをためないように、ストレス解消や、栄養不足や睡眠不足の解消に努めましょう。ヘルペス性口内炎の場合は、薬を服用しつつ、人にうつさないようにタオルなどを共用しないように注意が必要です。
口内炎の症状が長引く場合や、気になるときは、安易に自分で判断せずに歯科医院を受診しましょう。

口内炎が気になるときは唾液検査「シルハ」で口内環境をチェックしよう

測定項目 わかること
むし歯菌 むし歯の元となるむし歯原因菌の活性度
酸性度 歯を溶かしてしまう酸の強さ
緩衝能 酸性になった口の中を中性に戻す力の強さ
白血球 菌の繁殖などにより生じた炎症の度合い
タンパク質 出血などの口のトラブルや細菌の繁殖
アンモニア 口内の清潔度
唾液検査シルハは、水で口を10秒すすぐだけで口内環境を数値化できるチェックツールです。むし歯菌・酸性度・緩衝能・白血球・タンパク質・アンモニアの6項目を調べることが可能です。口内炎を悪化させる恐れのある、むし歯や歯周病に関わる項目も確認でき、口内環境のどの点を改善していけばよいかの参考情報として役立ちます。
シルハは、全国の歯科医院で検査できます。お近くの導入機関は、こちらからご確認ください。

ひぐち歯科クリニック 樋口 均也先生

ひぐち歯科クリニック院長。大阪大学歯学部を卒業。インターネット医科大学口腔内科教授。歯科治療に対する患者様の不安や恐怖心を緩和するため「痛みのコントロール」を徹底し、安全性を最重視した無痛治療を行っている。
ひぐち歯科クリニックさんのホームページはこちら
https://higuchidc.com/

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