やけどをした覚えもないのに、気が付くと口の中に水ぶくれのようなものができたことはありませんか? それは粘膜の中に唾液がたまる「粘液嚢胞(ねんえきのうほう)」かもしれません。口の中に痛みが無い水ぶくれができて気になる方は読んでみてください。
口の中にできた水ぶくれは粘液嚢胞かも
口の中に水ぶくれのようなものができて、痛みがなく何度も繰り返す場合は「粘液嚢胞」かもしれません。粘液嚢胞とは、口の粘膜の内側に唾液がたまったもので、炎症や物理的な刺激によってできることがあります。粘液嚢胞はできる場所によって名称が異なります。主なものは以下の3種類です。
下唇粘液嚢胞
下唇の内側にできるもの。粘液嚢胞の中でも最も多いタイプ
頬粘液嚢胞
頬の裏側にできる粘液嚢胞
舌下粘液嚢胞(ガマ腫)
舌下腺から分泌された唾液が口底部(舌の裏)にたまったもの
粘液嚢胞の主な症状
粘液嚢胞が頻発する箇所は下唇、頬の内側や舌の裏側で、大きさは2 ㎜~5 ㎜程度です。中身の大半は唾液で、頬や下唇、口内の粘膜に外傷ができることで唾液腺が詰まったり、唾液腺が破れて漏れ出した唾液が薄い組織に囲まれることで生じる袋状の症状です。
見た目は透明で、ぷくっと膨らんでおり、触ると柔らかく、硬さやしこりがないのが特徴です。感染症ではないので基本的に人には感染はせず、悪性腫瘍(がん化)になることもありません。粘液嚢胞を手術で切除することで根治ができます。
通常、粘液嚢胞ができてもほぼ痛みはありませんが、何度も粘膜が傷ついたり、細菌が入ったりすると炎症を起こし痛みが生じる場合があります。もし痛みが出た場合は、炎症を起こしていることがあるため、自分では触らず、歯科医院を受診しましょう。
見た目は透明で、ぷくっと膨らんでおり、触ると柔らかく、硬さやしこりがないのが特徴です。感染症ではないので基本的に人には感染はせず、悪性腫瘍(がん化)になることもありません。粘液嚢胞を手術で切除することで根治ができます。
通常、粘液嚢胞ができてもほぼ痛みはありませんが、何度も粘膜が傷ついたり、細菌が入ったりすると炎症を起こし痛みが生じる場合があります。もし痛みが出た場合は、炎症を起こしていることがあるため、自分では触らず、歯科医院を受診しましょう。
発症時期・年齢
粘液嚢胞を発症しやすい年代は、10歳未満の子どもから30代までです。その間で特定の年代が突出していることはなく、どの年代も同じぐらいの比率です。一方で加齢とともに症例数は減少傾向であり、50代より上の発症例は少ないため、若い年代に多い症状だということが分かります。医学的には発症のしやすさに男女差はありません。しかし、粘液嚢胞で歯科医院を受診するのは女性が多いと言われています。
粘液嚢胞ができる3つの原因
粘液嚢胞ができる原因は主に3つに大別できます。それぞれの原因について以下に詳しく解説します。
1. 唇や頬などの粘膜を噛むことで発症する
粘液嚢胞は食事の際に誤って唇や頬の粘膜を噛んだり、歯を磨く際に歯ブラシで粘膜を傷つけたりすることで発症することがよくあります。また、歯並びが悪いことで舌を噛んでしまったり唇を傷つけてしまったりすることも起こり得ます。
唾液が分泌されるのは大唾液腺という頬の内側、顎下、舌下にある腺(管)と、小唾液腺という口内やのどの粘膜にある腺の2種類です。中でも小唾液腺は数が多く、導管が細く排出口も狭いため、咀嚼や歯ブラシによって粘膜を傷つけてしまうと、治癒するまでの間に詰まることがあります。唾液腺の詰まりによってうまく排出されなくなった唾液が粘膜の内側にたまったものや、唾液腺が破れて粘膜の下に漏れ出たりしたものが、粘液嚢胞の正体です。
唾液が分泌されるのは大唾液腺という頬の内側、顎下、舌下にある腺(管)と、小唾液腺という口内やのどの粘膜にある腺の2種類です。中でも小唾液腺は数が多く、導管が細く排出口も狭いため、咀嚼や歯ブラシによって粘膜を傷つけてしまうと、治癒するまでの間に詰まることがあります。唾液腺の詰まりによってうまく排出されなくなった唾液が粘膜の内側にたまったものや、唾液腺が破れて粘膜の下に漏れ出たりしたものが、粘液嚢胞の正体です。
2. 口内炎などの炎症によって発症する
口内炎は口の中や舌、唇などの粘膜が炎症を起こすことにより発症しますが、そうした炎症が粘液嚢胞の引き金となる場合もあります。口内が炎症を起こしていると唾液がうまく分泌されず、粘膜の下にたまってしまうのです。
口内炎は誤って唇や頬の内側を噛んでしまった時、その傷がウイルスや細菌に感染して起こります。ほかにも栄養バランスの偏りや不規則な生活、ストレスなどが原因の場合もあります。そうしたケースでは嚢胞そのものの治療だけでなく、バランスの取れた食事や規則正しい生活、ストレスの軽減など生活習慣から見直す必要があるでしょう。
口内炎は誤って唇や頬の内側を噛んでしまった時、その傷がウイルスや細菌に感染して起こります。ほかにも栄養バランスの偏りや不規則な生活、ストレスなどが原因の場合もあります。そうしたケースでは嚢胞そのものの治療だけでなく、バランスの取れた食事や規則正しい生活、ストレスの軽減など生活習慣から見直す必要があるでしょう。
3. 矯正器具などの干渉で発症する
歯並びを矯正するための器具や入れ歯の干渉により、粘膜がダメージを受けて粘液嚢胞が引き起こされる場合もあります。
ほかにも歯の尖った部分や、怪我・むし歯等で欠けた歯などが口内の同じ部分に当たることにより、粘膜に傷がつくことも粘液嚢胞の原因になります。
ほかにも歯の尖った部分や、怪我・むし歯等で欠けた歯などが口内の同じ部分に当たることにより、粘膜に傷がつくことも粘液嚢胞の原因になります。
粘液嚢胞は放置しても大丈夫?
粘液嚢胞は痛みや炎症をともなわないことが多く、自然に治癒する場合もあります。放置していても悪性化することはほとんどありませんが、いったんしぼんでも再発するケースがよくあります。
繰り返しできる粘液嚢胞を完治させるためには、専門的な治療を受けた方がよいでしょう。また、粘液嚢胞だと思っていたら深刻な病気ということも考えられます。口内にできものができたら一度歯科医院を受診することをおすすめします。
繰り返しできる粘液嚢胞を完治させるためには、専門的な治療を受けた方がよいでしょう。また、粘液嚢胞だと思っていたら深刻な病気ということも考えられます。口内にできものができたら一度歯科医院を受診することをおすすめします。
粘液嚢胞は潰してはダメ
粘液嚢胞を自分で潰すと、中の液が外に出るためいったんはしぼみます。しかし、根本的な治療がなされていないため、またしばらくすると唾液がたまって嚢胞ができてしまいます。
再発を繰り返すと嚢胞は徐々に大きくなるだけでなく、中身が繊維化して白っぽくなってきたり、硬くなってきたりします。また潰した傷から細菌などに感染すると、化膿して痛みが生じるおそれもあります。粘液嚢胞ができたら、自分で潰さず早めに歯科医院で対処してもらうようにしましょう。
再発を繰り返すと嚢胞は徐々に大きくなるだけでなく、中身が繊維化して白っぽくなってきたり、硬くなってきたりします。また潰した傷から細菌などに感染すると、化膿して痛みが生じるおそれもあります。粘液嚢胞ができたら、自分で潰さず早めに歯科医院で対処してもらうようにしましょう。
粘液嚢胞はどうやって治療する?
粘液嚢胞の治療は、メスによる切開・除去かレーザー照射か2つの選択肢があります。以下にそれぞれの方法について詳しく解説します。
切開・除去手術
粘液嚢胞の治療法として一般的なのは、ブレードメスによる切開・除去手術です。歯科医院で注射による口内の局所麻酔を行った後、メスで粘膜を切開して中にある嚢胞を摘出します。その際、原因となっている小唾液腺も一緒に除去する場合もあります。
嚢胞除去後は傷口を縫合します。抜糸の時期は個人差がありますが、目安となるのは約1週間後です。術後3日程度は、感染症防止のための抗生剤や、痛み止めを服用する必要があります。
メスによる手術は確実に嚢胞を除去でき、場合によっては原因となる小唾液腺ごと除去できるため、再発のおそれが少ないのがメリットです。抜糸後は傷跡も残らず、綺麗に治すことが可能です。
嚢胞除去後は傷口を縫合します。抜糸の時期は個人差がありますが、目安となるのは約1週間後です。術後3日程度は、感染症防止のための抗生剤や、痛み止めを服用する必要があります。
メスによる手術は確実に嚢胞を除去でき、場合によっては原因となる小唾液腺ごと除去できるため、再発のおそれが少ないのがメリットです。抜糸後は傷跡も残らず、綺麗に治すことが可能です。
レーザー照射による除去手術
メスで切らずレーザー照射で除去する場合は、レーザーによる光と熱を使って、嚢胞を摘出または蒸散することで治療します。近くに原因となる小唾液腺があれば、一緒に除去する場合もあります。メスによる施術と同じく先に注射で局所麻酔を行うため、痛みはほとんど感じません。
レーザー照射による施術では、除去する嚢胞が小さければ縫合を行わなくてもよいケースがあります。切除直後に血管をレーザーで焼いてしまうため、出血も少なくて済みます。縫合や抜糸の必要がなければ、施術にかかる時間や治療期間を短縮できます。術後の痛みも比較的少なく傷跡も残りにくいため、年齢が低い患者でも施術を受けやすいのがメリットです。
ただし、稀に術後にしびれが残る場合があります。また切除の範囲を特定しにくいため、感染症が起こるリスクもメスによる手術より高くなります。
レーザー照射による施術では、除去する嚢胞が小さければ縫合を行わなくてもよいケースがあります。切除直後に血管をレーザーで焼いてしまうため、出血も少なくて済みます。縫合や抜糸の必要がなければ、施術にかかる時間や治療期間を短縮できます。術後の痛みも比較的少なく傷跡も残りにくいため、年齢が低い患者でも施術を受けやすいのがメリットです。
ただし、稀に術後にしびれが残る場合があります。また切除の範囲を特定しにくいため、感染症が起こるリスクもメスによる手術より高くなります。
凍結外科療法
凍結外科療法とは、極低温の液体窒素やアルゴンガスを使って嚢胞組織を凍結融解させ、破壊して治療する方法です。壊れた組織は体内に吸収されます。嚢胞を切除しないため出血が少なく施術後の痛みも軽いのがメリットです。比較的小さい嚢胞の治療には適しています。ただし、専用の機械や設備が必要なため、施術ができる病院は限られます。
開窓術(ガマ腫切開術)
嚢胞が大きい場合や、舌の裏側にできたガマ腫の場合は、粘膜ではなく腫瘍そのものを局所的に切開して唾液を出す「開窓術(ガマ腫切開術)」が行われることがあります。
施術時間は20~30分と短時間で終わりますが、根治ではないため他の方法より再発するおそれが高いのがデメリットです。もし再発を繰り返すなら、原因となる舌下腺を摘出することもあります。そうなると全身麻酔が必要になります。
施術時間は20~30分と短時間で終わりますが、根治ではないため他の方法より再発するおそれが高いのがデメリットです。もし再発を繰り返すなら、原因となる舌下腺を摘出することもあります。そうなると全身麻酔が必要になります。
OK-432嚢胞内注入硬化療法
OK-432嚢胞内注入硬化療法とは、OK-432(ピシバニール)という薬を、直接嚢胞内に注射器で注入する方法です。注射の前に局所麻酔を行うため、痛みはほとんどありません。
OK-432は免疫力を高める効果がある薬で、癌の免疫療法剤としてよく知られています。この薬を注射した部分は炎症反応が起こり、膨らみを癒着・縮小させることから、粘液嚢胞の治療にも使用されるようになりました。嚢胞が小さければ1回の注射で済むので、手術を受けることに抵抗がある方や、治療を早く済ませたい方にはメリットが大きい方法です。
ただし、薬の効果で一時的にしぼませているだけなので根治はできず、手術を行うより再発のおそれが高いことがデメリットです。また、嚢胞の大きさや程度によっては複数回の注入が必要なため、かえって手術より治療期間が長くなる場合もあります。また、薬剤の副作用で発熱したり、注射したところが腫れたり赤くなったりすることがあります。
OK-432は免疫力を高める効果がある薬で、癌の免疫療法剤としてよく知られています。この薬を注射した部分は炎症反応が起こり、膨らみを癒着・縮小させることから、粘液嚢胞の治療にも使用されるようになりました。嚢胞が小さければ1回の注射で済むので、手術を受けることに抵抗がある方や、治療を早く済ませたい方にはメリットが大きい方法です。
ただし、薬の効果で一時的にしぼませているだけなので根治はできず、手術を行うより再発のおそれが高いことがデメリットです。また、嚢胞の大きさや程度によっては複数回の注入が必要なため、かえって手術より治療期間が長くなる場合もあります。また、薬剤の副作用で発熱したり、注射したところが腫れたり赤くなったりすることがあります。
粘液嚢胞切除の費用
粘液嚢胞の一般的な切除手術や開窓術には医療保険を適用できます。1回の治療の費用は術式によって幅はありますが、だいたい4,000円~10,000円の範囲内でおさまり、さほど高額ではありません。縫合や抜糸を行わない場合は、1回の受診で済む場合もあります。
ただし全身麻酔や静脈内鎮静法を行ったり、大学病院で手術を行ったりする場合は追加で費用が発生します。嚢胞の状態により術式や麻酔方法は変わるので、詳しい費用については歯科医院を受診した際に確認しましょう。
ただし全身麻酔や静脈内鎮静法を行ったり、大学病院で手術を行ったりする場合は追加で費用が発生します。嚢胞の状態により術式や麻酔方法は変わるので、詳しい費用については歯科医院を受診した際に確認しましょう。
粘液嚢胞に似た症状:繊維腫(せんいしゅ)
粘液嚢胞と間違われやすい症状としては、「繊維腫 」が挙げられます。見た目は粘液嚢胞と同様水ぶくれのような半球状の隆起ですが、粘液嚢胞の中身がほぼ唾液なのに対し、繊維腫は肉の塊(腫瘍)です。大きさは5mm~10mm程度のものが一般的で、通常痛みはほぼありません。
粘液嚢胞と繊維腫の判別は触診で行います。中身が液体である粘液嚢胞は触ると柔らかいですが、繊維腫は肉の塊であるため硬くなっています。ただ粘液嚢胞でも何度も噛んで再発を繰り返している場合などは、粘膜の中身自体が硬くなっていることもあるため、100%触診で診断できるわけではありません。
繊維腫は良性腫瘍のため必ずしも切除しなければいけないわけではありません。しかし食べにくさや話しにくさがあるなど、気になる場合は切除手術をした方がよいでしょう。繊維腫も粘液嚢胞と同様に歯科医院で切除手術が可能で、医療保険が適用されます。一度切除すると再発のリスクもほぼありません。
粘液嚢胞と繊維腫の判別は触診で行います。中身が液体である粘液嚢胞は触ると柔らかいですが、繊維腫は肉の塊であるため硬くなっています。ただ粘液嚢胞でも何度も噛んで再発を繰り返している場合などは、粘膜の中身自体が硬くなっていることもあるため、100%触診で診断できるわけではありません。
繊維腫は良性腫瘍のため必ずしも切除しなければいけないわけではありません。しかし食べにくさや話しにくさがあるなど、気になる場合は切除手術をした方がよいでしょう。繊維腫も粘液嚢胞と同様に歯科医院で切除手術が可能で、医療保険が適用されます。一度切除すると再発のリスクもほぼありません。
粘液嚢胞かな? と思ったら、歯科医院・口腔外科を受診しましょう
粘液嚢胞の中身は唾液なので放置しても悪性化はしませんが、再発することも多いため、気になるなら一度歯科医院を受診しましょう。
歯科医院の検索にはSillHa.comの「クリニック検索」が便利です。全国約7万件の歯科医院からお近くの歯科医院を検索することができます。
歯科医院の検索にはSillHa.comの「クリニック検索」が便利です。全国約7万件の歯科医院からお近くの歯科医院を検索することができます。