乳歯が抜けないのはなぜ? そのままにする場合の注意点も解説

乳歯が抜けないのはなぜ? そのままにする場合の注意点も解説

この記事では、乳歯が抜けない主な理由をご紹介していくとともに、そのままにしておく場合の注意点などを解説します。

               
一般的に歯は、6歳頃から13歳頃にかけて乳歯から永久歯へと生え変わります。しかし、中には適齢なのに「乳歯が抜けない」という方がいます。

そもそも乳歯はなぜ抜ける? 仕組みを解説

「乳歯(にゅうし)」とは、子どものときにはじめて生えてくる歯のことです。個人差はありますが、生後6か月頃から3歳頃にかけて生えてきます。そして6歳頃になると徐々に大人の歯である「永久歯(えいきゅうし)」に生え替わっていき、13歳頃には親知らずを除く28本の永久歯がそろいます。

「なぜ、最初から永久歯ではないの?」と思う方もいるかもしれませんが、硬くて丈夫な永久歯は生えるまでに3~6年ほどかかります。その間、必要となるのが乳歯です。
生まれてすぐは母乳や人工乳だけで栄養が足ります。ですが、1歳頃になると多くの栄養を食べ物から摂取するために歯が必要になります。また、乳歯には発音や顎の成長をサポートする役割などもあり、健康的に成長するために欠かせない存在です。

さらに乳歯には、永久歯を適切な位置に生えるように誘導する役割もあります。実は永久歯の歯胚(しはい:歯のもととなる細胞)は、妊娠3か月頃からつくられはじめ、乳歯の下でゆっくりと成長します。そして、永久歯の根の部分がつくられると、乳歯の根は徐々に溶かされ、最終的に抜け落ちて永久歯へと生え替わります。これが、乳歯が抜けて永久歯に生え替わる仕組みです。

成長しているのに乳歯が抜けない原因は?

永久歯に生え替わるタイミングには個人差があり、早い方では5歳頃から乳歯が抜けはじめます。しかし、中にはなかなか乳歯が抜けない方もいます。適齢にもかかわらず、乳歯が抜けない主な原因として、以下の4つが考えられます。

永久歯の成長が遅れている

先述したように永久歯の成長は胎児のときからはじまっています。しかし、永久歯の成長には個人差があります。体の成長同様に歯の形成が早い方もいれば、遅い方もいます。つまり、乳歯が脱落するためには、永久歯が形成されるというトリガーが必要であり、その時期が遅くなればなるほど、必然的に乳歯が脱落する時期も遅くなるというわけです。

子どもの乳歯がなかなか抜けないと気になる保護者の方もいると思います。ですが、中には中学生になってから生え替わる方もいるため、まずは焦らずに様子を見ましょう。

埋伏している

永久歯が顎の骨や粘膜に埋まったままの状態のことを「埋伏歯(まいふくし)」もしくは「未萌出歯(みほうしゅつし)」と言います。埋伏歯と言われてもピンとこない方も多いかもしれませんが、最も奥に生えてくる「親知らず」は、この埋伏歯の一種です。永久歯が埋伏歯の場合、乳歯の根の部分が溶けていかないため、乳歯は抜け落ちません。

埋伏歯がほかの歯や歯並びに影響を与えなければ、通常、治療はせずにそのままの状態で経過観察をして様子を見ます。しかし、ほかの歯や歯並びに悪影響を及ぼす場合には、治療が必要です。乳歯を少し削って歯が生えるスペースを確保したり、外科手術で埋伏歯を引き出して正常に生えられるようにしたりする治療法があり、埋伏歯の状態で変わります。

永久歯がずれて生えている

永久歯がずれて生えてくることで乳歯が抜けないこともあります。

特に多いのが、乳歯が抜ける前に乳歯の内側または外側に永久歯が並ぶように生えてくる「二重歯列(二枚歯)」です。通常、乳歯は永久歯の生える場所の目印となり、乳歯がポロリと抜け落ちたところから永久歯が生えてきます。しかし、顎が小さく、歯の生えるスペースがなかったり、指しゃぶりなどで乳歯の歯並びが崩れていたりすると、乳歯が脱落せずに永久歯が正しい位置でないところから生えてくることがあります。

二重歯列は見た目が不自然で不安になる方も多いですが、乳歯がグラグラしていて抜けそうな場合は、ほぼ問題ありません。このような場合、歯科医院で乳歯を抜歯せずとも、乳歯が自然に抜けてスペースがあくと永久歯が正しい位置に戻ろうと動いていきます。しかし、数か月たっても乳歯がまったくグラつかない場合、永久歯の歯並びにも影響してくるため、歯科医院を受診し、適切な処置を受けることが重要です。

先天的に永久歯が欠如している

問題なければ、人間には乳歯が20本、永久歯は親知らずを含めると32本生えてきます。しかし、中には生まれつき歯の数が足りない方もいます。このようなケースを「先天性欠如(せんていせいけつじょ)」と呼び、永久歯が生えてこないため、乳歯が抜け落ちることもありません。
先天性欠如の原因はわかっていません。遺伝や妊娠中の栄養障害、薬の副菜用、全身疾患などが影響しているのではないかと考えられています。

乳歯が抜けず、永久歯がない人の割合はどれくらい?

公益社団法人 日本小児歯科学会が発表した「永久歯先天欠如の発生頻度に関する調査研究」によると、エックス線写真撮影時の年齢が7歳以上の小児15,544人(男子7,502人、女子8,042人)のうち、親知らず(第三大臼歯)を除く永久歯に先天性欠如があった小児は1,568人(10.09%)と、約10人に1人が先天的に永久歯が欠如していることがわかりました。
男女別に見ると、親知らず(第三大臼歯)を除く永久歯に先天性欠如があった男子は685人(9.13%)、女子は883人(10.98%)で、男子よりも女子の方がわずかに多い結果でした。

先天性欠如の起きやすい歯はどれ?

前述した調査報告書には、先天性欠如が起きやすい歯についても述べられています。まず上顎と下顎を比べると、上顎に先天性欠如がある割合は4.37%,下顎に先天性欠如がある割合は7.58%と、下顎の方が上顎に比べて先天性欠如が起きやすいということがわかりました。

また、歯種別に見ると先天性欠如が最も認められた歯種は、下顎左側第二小臼歯が3.26%、下顎右側第二小臼歯が2.84%と、両側の下顎第二小臼歯が最も先天性欠如が起きやすく、次に両側の下顎側切歯が続きます。
さらに先天性欠如の本数についても書かれており、先天性欠如歯の本数は、1本が5.22%、2本が2.93%,3本が0.57%、4本が0.50%、5本以上が0.87%と、先天性欠如歯は1~2本のケースが多いことがわかりました。

グラグラしている歯、放置して大丈夫?

歯の生え替わりがはじまると、乳歯がグラグラしてきます。このような状態の際、自然に生え替わるのを待つべきか、無理してでも早く抜くべきなのか、迷う保護者の方も多いのではないでしょうか。歯がグラグラしてきたら、そのまま放置して自然に生え替わるのを待つのが良いでしょう。

ただし、埋伏歯や永久歯がずれて生えてきた場合、ほかの歯や歯並びに影響を与えるようであれば、治療が必要です。このような状態は、自己判断は難しいため歯科医院を受診しましょう。

乳歯を自分で抜いていいタイミングは?

歯がグラグラするからと無理に引っ張って抜こうとすると、歯ぐきの中で乳歯が折れ残ったり、折れた乳歯で歯ぐきを傷つけてしまったりするおそれがあり、大変危険です。しかし、抜けそうな歯を長期間そのままにしておくのも、永久歯に悪影響を及ぼすおそれがあります。

乳歯を自分で抜いて良いのは、個人差はありますが一般的に歯が生え替わりはじめる6歳以降です。歯が生え替わる適齢で、乳歯が歯ぐきから取れるぐらいグラついている状態であれば、自分で抜いても問題ありません。

ただし、抜く際は、無理やり引っ張るのはやめましょう。子ども本人が歯や清潔な指で少しずつ揺らしながら、時間をかけて抜くようにしてあげると良いでしょう。
歯ぐきからほぼ取れかかる状態まできたら、清潔な手で抜いても問題ありません。抜いた際に出血したら、焦らず清潔なガーゼを歯が抜けた箇所に当て、噛んで止血します。

なお、食事や歯磨きをするときに痛みが生じる、乳歯がむし歯になってボロボロで揺らせない、などの症状の場合には、無理に自分で抜こうとせずに、早めに歯科医院を受診しましょう。

永久歯が生えず乳歯が残ってしまった場合の注意点

先天性欠如が原因で、大人になっても乳歯が残っている方もいます。このような場合には、以下の点に注意が必要です。

1. 乳歯の寿命は短くもろいため、大切にケアすること

乳歯は永久歯ができるまでの間だけ使われる歯のであり、永久歯よりも柔らかく強度もありません。また、生え替わることが前提の歯であるため、歯の根が短くて抜けやすく、歯の表面を覆っているエナメル質も薄いので、むし歯になりやすいです。そのため、乳歯を残存させるには、こまめなブラッシングや口内ケアなどのメインテナンスが重要になります。

しかし、いくら大切にケアをしても、乳歯の寿命は永久歯に比べて短く、運が良くても30~40歳ぐらいまでには脱落してしまうケースがほとんどです。

2. 万が一抜けてしまった場合は、早めに治療すること

永久歯が無いのに乳歯が抜けてしまった場合、治療法は年齢によって異なります。11歳以下の場合、顎や噛み合わせに問題がなければ、顎の成長を見ながら経過観察様子を続けます。それ以降、20代までの間に乳歯が抜けた場合には、ほかにも乳歯があれば抜歯し、矯正治療で歯並びを改善するのが一般的です。

30歳を超えると乳歯が自然に抜けてくるケースが増えてきます。先天的に永久歯が欠如している場合、永久歯がないため、抜けても歯は生えてきません。そのまま放置すると、そこだけ歯がないばかりか、食べ物が噛みにくい、発音をしにくいなど、生活に支障をきたすおそれがあります。また、歯が抜け落ちてすき間ができることで永久歯が倒れやすくなり、歯並びがさらに悪くなる可能性もあるため、適切な治療が必要です。

30代以降の治療法は、歯列矯正以外にインプラント治療、ブリッジ治療、部分入れ歯から選べます。ただし、インプラント治療の場合、自費診療で治療費が高くなるので注意しましょう。

乳歯が抜けないときは歯科医院で相談しましょう

乳歯が抜ける時期になっても抜けない場合、心配になることもありますが、成長のスピードは人それぞれです。まずは、焦らずに様子を見てあげましょう。気になる方は、永久歯の成長の遅れや埋伏歯なども考えられるので、歯科医院を受診してみましょう。

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