「知覚過敏で歯がずっと痛い」それ、実は知覚過敏じゃないかも?

「知覚過敏で歯がずっと痛い」それ、実は知覚過敏じゃないかも?

冷たいものや熱いものを口にしたとき、歯がしみたり痛みを感じたりするとき考えられる原因のひとつが知覚過敏です。しかし、痛みが続く場合、他の原因が潜んでいるおそれがあるため注意が必要です。この記事では、知覚過敏の概要と痛みの特徴、知覚過敏ではない場合の原因について、詳しくご紹介します。

               
冷たいものや熱いものを口にしたとき、歯がしみたり痛みを感じたりするとき考えられる原因のひとつが知覚過敏です。しかし、痛みが続く場合、他の原因が潜んでいるおそれがあるため注意が必要です。

そもそも知覚過敏とは?

一般的に知覚過敏と呼ばれる症状の正式な名称は「象牙質知覚過敏症(ぞうげしつちかくかびんしょう)」といいます。歯ぐきから出ている「歯冠部(しかんぶ)」の構造は3層に分かれており、一番外側が「エナメル質」、その内側に歯の本体となる「象牙質」、中心には神経や血管などがある「歯髄(しずい)」となっています。「象牙質」部分の露出によって生じるのが知覚過敏です。

エナメル質には痛みなどの感覚はありません。しかし、歯の本体である象牙質には、歯髄へ痛みなどの感覚を伝える機能があります。通常、象牙質はエナメル質に覆われていますが、何らかの原因で象牙質が露出すると、さまざまな刺激に対して過敏な状態になります。こうして、歯ブラシが触れる程度の刺激でも痛みを感じることが多くなります。知覚過敏そのものは、病気などではありませんが、痛みによって食事やオーラルケアに支障が出ているのであれば、歯科医院を受診して相談してみましょう。

知覚過敏の特徴的な痛みとは?

知覚過敏の痛みやしみるといった感覚は持続せず一時的なものです。刺激を受けた直後に「キーン」としみる感じがしたり、「ズキン」とした強い痛みを感じたりするなど、症状は人によってさまざまです。

知覚過敏は長く続かない

知覚過敏で感じる痛みはすぐに消えることが多いです。個人差はあるものの、通常2秒から3秒程度、長くても1分程度で痛みはおさまります。それよりも長く痛みが続く場合は、何らかの口内トラブルによって知覚過敏が継続してしまっていたり、痛み自体が知覚過敏以外の原因だったりするおそれがあるため、注意が必要です。

知覚過敏の原因

知覚過敏は、人体の中で最も硬い組織であるエナメル質が失われることで起こります。エナメル質が失われる原因として、まず考えられるのが食いしばりや歯ぎしりです。歯に強い力がかかり、歯の表面がすり減ったり亀裂が生じたりすると、知覚過敏が起こります。

また、加齢や歯周病による歯ぐき退縮も象牙質の露出を引き起こす原因のひとつです。さらに、毎日の歯磨きが原因になることもあります。強い圧力でブラッシングを続けたことにより、歯のエナメル質が削れてしまったり、歯ぐきが傷ついて下がってしまったりするケースも珍しくありません。

他にも、ホワイトニングで使用する薬剤は、歯の神経に強い刺激を与えてしまうため、神経が敏感になって一時的な知覚過敏になるケースがあります。

なお、強い酸に触れることでエナメル質が分解して溶ける「酸蝕症(さんしょくしょう)」は、知覚過敏と似た症状を持つ疾患です。酸蝕症は、酸性度の高い飲食をしたあとに口をよくゆすいだり、就寝前には酸性度の高い飲み物や食べ物を避けたりすることで予防できます。

知覚過敏の痛みが長く続く原因

基本的に、知覚過敏で感じる痛みは一過性のものです。むし歯の治療で歯を削ったあとは、一時的に神経が過敏になるため知覚過敏の症状が起こりやすくなります。この場合、痛みが出やすい状態がおさまるまでの目安は1週間程度とされています。

むし歯の原因は細菌です。細菌が神経に達すると炎症を引き起こすため、治療後に痛みが持続することも少なくありません。また、詰め物が神経に触れている場合や、金属の詰め物が熱を伝えやすいなどの理由でも知覚過敏が生じます。

適切な処置を受ければ、症状は軽減されることが多いため、痛みが続く場合には歯科医院に相談しましょう。

「歯がずっと痛い」なら知覚過敏以外かも

痛みがすぐに消えないのであれば、むし歯、歯髄炎(しずいえん)、歯周病、または歯のひび割れなどが原因になっているかもしれません。特に、痛みが強くなっている場合には、深刻な症状が隠れているおそれもあります。痛みがすぐ消えない場合に考えられる原因についても解説します。

むし歯

歯が痛いとき、まず考えられる原因がむし歯です。口の中には多くの細菌が生息しており、むし歯の原因になる細菌を「むし歯菌」と総称することもあります。その中でもよく知られているのが「ミュータンス菌」です。ミュータンス菌は、飲食物の糖分を栄養にして酸を生成し、歯の表面を溶かすことでむし歯を引き起こします。

なお、むし歯菌が歯に付着した塊が「プラーク」という汚れです。酸性の物質を放出するプラークは、歯のエナメル質を溶かす「脱灰(だっかい)」という現象を引き起こします。このように、エナメル質が削れて象牙質に刺激が伝わることで感じる痛みは、知覚過敏とよく似ています。

むし歯の場合、症状の進行とともに痛みが強くなりやすいため、痛みが継続している場合や痛みが強くなっている場合は歯科医院を受診してください。

歯髄炎

歯髄炎(しずいえん)は、歯の構造の一番内側にある歯髄が炎症を起こした状態を指します。原因は、むし歯や歯の破折などです。歯の中心部にある歯髄は、「歯の神経」があり痛みや圧力などの感覚を伝える役割がある組織です。

歯髄炎には、神経を抜かずに回復する「可逆性歯髄炎」と、歯髄を除去する必要がある「不可逆性歯髄炎」に分けられます。可逆性歯髄炎は、冷たいものがしみるなど、刺激によって痛みが生じやすいため、知覚過敏とよく似ています。

ただし、可逆性歯髄炎であっても治療をせずに放置すると、不可逆性に移行するおそれがあるため注意が必要です。不可逆性歯髄炎になると歯髄は再生しないため「抜髄(ばつずい)」という神経を除去する治療を行います。抜髄した歯は寿命が短くなるリスクがあるため、痛みを感じたら速やかに歯科医院を受診しましょう。

根尖性歯周炎

歯髄炎を放置して歯髄が壊死すると「歯髄壊疽(しずいえそ)」という状態になります。歯の根元にある「根尖孔(こんせんこう)」という神経や血管が伸びている部分から、歯周組織や顎骨にまで細菌に感染した状態が「根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)」です。

症状の程度は、痛みが強く出る場合もあれば、鈍い痛みが長く続くこともありさまざまです。なお、神経を取っているため、初期は痛みを感じないケースもあります。根尖性歯周炎を放置してしまった場合、歯を失うリスクがあるほか、炎症が広がると他の健康な歯に影響が及ぶおそれがあります。

根尖性歯周炎の治療法には、炎症を抑えるための抗生物質投与、歯の根幹をきれいに掃除して感染を除去する根管治療、感染を防止するために根管封じる根管充填などがありますが、症状が重かったり、どの治療法でも効果が得られなかったりした場合は抜歯しなければなりません。

歯周病

歯周病は日本人が歯を失う原因の第1位として知られる疾患です。むし歯は、歯そのものを破壊されますが、歯周病は歯ぐきや歯槽骨(しそうこつ)という歯を支える顎骨部分が破壊されます。歯周病になると歯ぐきが下がり知覚過敏の症状が現れるため、知覚過敏以外の痛みと考えるよりも、歯周病によって知覚過敏が起きているという考え方が適切です。

歯周病を引き起こす原因は、むし歯と同じ「プラーク」です。プラークの中の歯周病菌は歯ぐきで繁殖し、毒素を生成すると歯ぐきに炎症が生じます。やがて腫れや出血を引き起こすようになるので、進行する前に歯科医院を受診しましょう。

知覚過敏の症状が出たタイミングで歯周病のチェックを受けることも大切です。

歯のひび割れ

歯に入ったひびが大きくなると、噛んだときに強い痛みが生じやすくなります。これは、噛む力が歯の神経に直接伝わりやすくなることが原因です。そのまま放置しておくと、ひび割れた場所からむし歯菌が侵入し、むし歯になるケースも多いため、早めの治療が必要です。

歯がひび割れる原因は、歯ぎしりや食いしばり、噛み合わせや噛む力の偏りによる負担、事故による外傷のほか、硬いものを噛み砕いたり加齢によって消耗したりすること等が挙げられます。なお、歯科治療で神経を抜いた歯でも、歯の根本部分が割れると痛みが生じるケースがあります。

ひびが浅い場合には、それ以上深く割れないための治療を行うことも可能です。治療法として、歯を被せもので覆ってひびが広がらないようにしたり、差し歯が原因で負担がかかっている場合には歯根に差し込む心棒(ポスト)の材質を変えたりするなどの対処を行います。ただし、歯が2つに割れてしまった際は抜歯しなければなりません。

早期発見につなげるためにも、違和感があれば、早めに歯科医院に相談して適切な治療を受けることが大切です。特に、力仕事やスポーツをしている方は、歯を食いしばることがクセになっているケースも多いため十分注意しましょう。

非歯原性歯痛(歯や歯の周りの組織が原因ではない痛み)

非歯原性歯痛とは、歯や歯の周りの組織(歯周組織)が原因ではない痛みのことです。例えば、顎の筋肉が緊張したり疲れたりすることで生じる痛みがこれに該当します。非歯原性歯痛の場合、筋肉にトリガーポイントというしこりのようなものがあり、その部分を指で押すと痛みが生じるのが特徴です。

歯や歯の周りの組織が原因ではない痛み(非歯原性歯)についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。

「知覚過敏で歯がずっと痛い」そんなときは迷わず歯科医院へ

知覚過敏の痛みは一過性です。すぐに消える痛みでも、痛みがあるなら他に原因のおそれもあるため一度歯科医院で検査を受けてみましょう。特に「知覚過敏で歯がずっと痛い」という方は、むし歯などが進行するおそれがあるので、早めに歯科医院を受診して治療してもらいましょう。

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