【歯科医師監修】歯が痛む症状には、むし歯以外にも知覚過敏や歯周病などの歯が原因のもの(歯原性歯痛)や、歯が原因ではなく他の病気が関係するもの(非歯原性歯痛)があります。本記事では、むし歯以外の歯原性歯痛と非歯原性歯痛の原因について解説します。自分でできる対処法や受診の目安もご紹介しますので、参考にしてみてくださいね。
むし歯ではないのに歯が痛い! 考えられる原因は?
歯が原因で生じる歯の痛みを「歯原性歯痛(しげんせいしつう)」と言います。「歯原性歯痛」は、歯の神経(歯髄)や歯を支える組織に痛みが起きるのが特徴です。むし歯の他にも、歯周病・歯の破折・噛み合わせなどが原因で痛みを生じることがあります。一方、「非歯原性歯痛(ひしげんせいしつう)」とは、歯以外の原因で歯に痛みが生じることです。顎の筋肉の痛みや心因性のものなどの要因があげられます。
歯が痛い!むし歯以外の原因①【歯原性歯痛】
むし歯以外にも、歯が痛む原因にはさまざまなものがあります。ここでは、むし歯以外の歯原性歯痛にはどんなものがあるかを見ていきましょう。
知覚過敏
知覚過敏とは、冷たいものや熱いものを食べた際に歯に触れた時の刺激によって、歯がしみたり、痛みを感じたりする症状です。歯の表面はエナメル質で覆われていますが、化学的や機械的刺激などの様々な理由で表面が削られ、内側の象牙質がむき出しになることがあります。この象牙質が露出すると、刺激が神経に伝わりやすくなるため、知覚過敏が起きます。歯肉の退縮や歯の破損、歯がすり減ったり溶けたりすると、象牙質が露出して知覚過敏になりやすいです。
歯周病
歯周病は大きな痛みを伴わないため、自覚症状がないまま進行する病気です。しかし、進行すると歯ぐきや歯の周りの骨が壊されていき、食べ物を噛んだ時に歯が痛むことがあります。歯ぐきが下がるので象牙質が露出し、知覚過敏になるケースもあります。歯ぐきの腫れや赤み、歯磨き時に出血する、歯が揺れる、または口臭がするなどの症状がある時は、歯周病が原因で歯が痛い可能性があるので注意しましょう。
歯の破折
転倒や衝突などで歯を強く打ち歯が折れてしまうと、歯の神経がある歯髄が傷つき痛みを生じます。また、歯ぎしりや食いしばり、神経の治療後などに起こることもあります。歯の破折による痛みはズキズキと激しく、ひどい場合は頬や耳にまで痛みが広がるのが特徴です。
歯髄炎(しずいえん)・歯根膜炎(しこんまくえん)
歯そのものではなく、歯の周りの組織が炎症を起こすと痛みを生じます。歯髄に細菌が感染し、炎症を起こす状態が歯髄炎です。むし歯の進行が原因であるケースが多いですが、歯髄が見えるほど破折したり、打撲を受けたりしても起こります。
歯根と骨の間にある膜(歯根膜)に炎症が起きる症状を歯根膜炎と言います。むし歯や歯周病以外に、歯の破折、噛み合わせの悪さ、歯ぎしり、食いしばりなどでも歯根膜炎になり、歯に痛みを生じることもあります。
歯が痛い!むし歯以外の原因②【非歯原性歯痛】
歯の治療をしても症状が改善されない場合は、非歯原性歯痛の可能性があります。次に非歯原性歯痛にはどのような症状があるのかを見ていきましょう。
筋・筋膜性歯痛(きん・きんまくせいしつう)
顎を動かす筋肉が疲労して痛みを生じることがあります。筋肉の痛みを歯から来る痛みと錯覚してしまうために起こるとされています。上下の奥歯に痛みを生じやすく、鈍い痛みを感じるケースが多いです。痛みが長く続く場合もあれば、すぐに引く場合もあります。痛みを感じる場所を触るとしこりのようなもの(トリガーポイント)があり、ここを指で押すと強い痛みが生じるのが特徴です。 筋・筋膜性歯痛は、歯科医院で検査や治療が受けられます。
歯を食いしばる癖や顎を動かす時に痛みがある方は、顎関節症の可能性もあるので、こちらの記事も参考にしてみてください。
神経障害性歯痛
神経痛が原因で起こる歯痛には、発作性神経痛と持続性神経痛があります。発作性神経痛は、顔の感覚を脳に伝える三叉神経と、知覚や味覚などを支配する舌咽神経に起こります。電気が走るような痛みやツーンとした痛みが、上顎の犬歯や下の奥歯付近に起こるのが特徴です。痛みは突発的に起き、すぐに痛みが引くことが多いです。
持続性神経痛は、帯状疱疹ウイルスの感染症による症状の1つです。急性期には夜も眠れないほどの痛みが1日中続くことがあり、慢性期にも持続的に焼けるような痛み(帯状疱疹後神経痛)があります。発作性・持続性のいずれも神経内科などの専門医の受診が必要です。
神経血管性歯痛
片頭痛(片方または両方のこめかみから目の辺りに起こる頭痛)や、群発性頭痛(片側の目の奥が激しく痛む頭痛)の症状の1つとして生じる歯痛もあります。これらの頭痛から来る歯の痛みを神経血管性歯痛と言います。一般的には、片頭痛でよく見られるようです。歯髄炎の痛みと症状が似ているので、判別が難しいこともあります。これらの症状は、口腔外科または頭痛専門医の治療が必要です。
上顎洞性歯痛(じょうがくどうせいしつう)
副鼻腔の1つである上顎洞(じょうがくどう)の病気でも、歯痛を生じることがあります。上顎洞は上顎の奥歯の辺りにあり、風邪をひいた時など副鼻腔に炎症を起こし、その時に生じる痛みを歯の痛みと勘違いをすることがあるようです。体を動かすと歯に響いたり、痛みが数日続いたりします。上顎洞性歯痛は、耳鼻咽喉科での治療が必要です。
心臓性歯痛
狭心症や心筋梗塞などの心疾患によっても、歯痛を生じるケースがあります。歩行など運動との関係性があると言われています。心臓性歯痛は、心臓の専門医院で治療が必要です。
精神疾患が関係する歯痛
精神疾患の1つである身体表現性障害でも歯痛を生じる場合があります。身体表現性障害は、社会的な要因によって起こり、心身の過労や環境の変化、ストレスなどが原因とされています。また、うつ病・統合失調症でも歯痛が起こることがあるようです。痛みが起きたり、鎮まったりと1日の中でも症状に変動が見られます。これらの精神疾患が関係する歯痛は、口腔外科(漢方療法)または、精神科の受診が必要です。
特発性歯痛(原因不明の歯痛)
歯原性歯痛と非歯原性歯痛の両方にも当てはまらない、原因不明の歯痛もあります。ジンジンするような痛みが慢性的に続きますが、症状が変化して原因が明確になることもあります。
むし歯ではないのに歯が痛い【自分でできる対処法】
歯の痛みは我慢できないものが多く、できるだけ早く鎮めたいですよね。次に、歯原性・非歯原性の両方で歯が痛い時に自分でできる対処法をご紹介します。
市販薬の鎮痛剤を服用する
鎮痛剤を使用することで、一時的に痛みが緩和されます。歯痛の緩和に有効な市販薬には、ロキソニンやバファリン、アセトアミノフェン配合の薬などがあります。しかし、鎮痛剤の服用は痛みの原因が解決するわけではないので、なるべく早く病院を受診しましょう。
患部を冷やす
炎症から起きる歯痛の場合は、患部を冷やすことで痛みが和らぐことがあります。口の中に氷を含んだり、頬の上からタオルでくるんだ保冷剤などを使用したりして冷やしてみてください。患部の血行が抑制されるので、炎症による痛みの緩和が期待できます。
むし歯ではないのに歯が痛い時の病院へ行く目安
歯の強い痛みや継続した鈍い痛み、歯の痛み以外にも発熱などの全身症状が見られる場合は、早めに病院へ行くことをおすすめします。むし歯以外でも歯が原因で起こる痛みもあるので、まずは歯科を受診してみてください。歯科治療で解決しない場合は、非歯原性歯痛である可能性が高いため、耳鼻咽喉科、神経内科、精神科など各症状に合わせて適切な専門病院で診てもらいましょう。
定期検診で唾液検査シルハを受けよう
むし歯が原因でなくても、歯に痛みがある場合は症状が進行していると考えられます。病気の予防のためにはもちろん、早期発見するには、定期的に検診を受けておくことが大切です。唾液検査シルハでは、口内環境を把握できる項目がチェックできます。例えば、白血球やたんぱく質の数値が高いと、口内に炎症が起きている可能性があり、歯周病も疑われます。定期的に検査をして病気の早期発見に役立ててください。
唾液検査シルハを受けられる全国の医療機関は、こちらから確認してください。
むし歯ではないのに歯が痛いなら、適切な病院で受診を
むし歯ではない歯の痛みでも、知覚過敏や歯周病など歯が原因のものもあるため、まずは歯科を受診しましょう。歯の治療で改善が見られない場合は、状況に応じて専門病院を受診するようにしてくださいね。
監修歯科医師:田ノ岡 亜矢子 先生
たなか歯科口腔外科クリニック副院長。 歯学博士、MDE協会デンタルエステティシャン。
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