知覚過敏の症状・原因は? むし歯との違い、自宅と歯科医院でできる治し方を解説【歯科医師監修】

知覚過敏の症状・原因は? むし歯との違い、自宅と歯科医院でできる治し方を解説【歯科医師監修】

この記事では、知覚過敏の原因やその対策について解説します。

               
むし歯でもないのに「冷たいものや熱いものを口にすると歯がしみる」「歯ブラシがあたると痛い時がある」といった経験をしたことはありませんか? 

食事中などに前触れもなく起こる「ズキン」としみるような痛み。その原因は知覚過敏かもしれません。日本人では4人に1人が知覚過敏といわれ、誰でも発症することがある身近な歯のトラブルです。この記事では、知覚過敏の症状と原因、具体的な対処法・治療法について解説をしていますので、参考にしてみてください。

知覚過敏とは

知覚過敏の正確な名称は「象牙質知覚過敏症(ぞうげしつちかくかびんしょう)」です。歯の内側にある象牙質が露出し、さまざまな刺激に過剰に敏感になっている状態をいいます。知覚過敏になると、むし歯や神経の炎症などがないにもかかわらず、歯ブラシの毛先が触れたり、冷たい飲食物や甘いもの、風にあたったりした時などに歯に一過性の痛みを感じます。

知覚過敏の症状

知覚過敏による痛みは、刺激を受けた直後に「一時的に」感じることが特徴です。痛みには個人差  があり、少ししみる程度から「キーンと」しみる感じ、「ズキン」とした痛みまでさまざまですが、いずれにしても一過性で落ち着き、持続しないことが多いでしょう。たとえ瞬間的なものであっても、人によっては耐えがたい激痛に感じる場合もあります。

むし歯との違い

冷たいものや熱いもの、そして甘いものを食べた時に歯がしみる症状があるという点ではどちらも共通しています。しかし、むし歯の場合は刺激がなくても、慢性的かつ持続的に痛みを感じるのが特徴です。ズキズキとした痛みが数分間続くこともあります。一方、知覚過敏の痛みはごく短時間で、長くても1分以内に消失します。痛む・しみるといった症状が1分以上続くのであれば、むし歯のおそれがあります。

知覚過敏になるメカニズム

知覚過敏の症状は、歯のエナメル質がすり減って象牙質が露出することで起こります。エナメル質は歯の1番外側にある層です。人体の中で最も硬く、神経も通っていないため、基本的には冷たいものや甘いものがしみるようなことはありません。しかし、その内側にある象牙質は歯髄(歯の神経)と接しており、外部から刺激を受けると神経に伝わり、痛みを感じます。つまり、何らかの原因でエナメル質が欠けたり削れたりすると、象牙質がむき出しの状態となるため、外からの刺激が歯の神経へと伝わりやすくなり、痛い、しみるなどの症状が現れるのです。
ちなみにむし歯の場合は、歯の表面に付着した歯垢(プラーク)に潜むむし歯菌が作り出す酸によって、エナメル質が溶かされることから始まります。硬いエナメル質ですが、酸には非常に弱いのです。そのまま放っておくと、エナメル質からその内側にある象牙質、神経(歯髄)へとむし歯がどんどん進行し、侵食された部分が広がるにつれ痛みも激しくなります。

子どもでも知覚過敏になる?

知覚過敏というと、大人に見られる症状というイメージがあるかもしれませんが、子どもにも起こることがあります。とくに乳歯はエナメル質が薄く、外部からの刺激が神経に伝達しやすいため、永久歯よりもエナメル質が薄く知覚過敏を起こしやすい歯といえます。子どもが知覚過敏になる原因も大人と大きく変わりません。

知覚過敏になる原因

知覚過敏になる原因として、以下のようなものが考えられます。

歯ぐきの退縮

歯の周りの組織がすり減って、歯ぐきが下がる状態のことをいいます。歯周病や加齢、過度なブラッシングなどにより歯ぐきが下がってくると、歯根部が露出してきます。歯根はエナメル質で覆われていないので、象牙質がむき出しの状態です。そのため外部からの刺激を感じやすくなります。

歯の亀裂・破損

運動をしていて転んだり、何かに歯が強くぶつかったりすると、衝撃で歯にひびが入ったり欠けたりすることがあります。そうなると歯の神経に刺激が伝わりやすくなります。

歯のすり減り

歯ぎしりや食いしばりを続けていると、歯同士が強くこすり合わされます。すると表面のエナメル質が削れて、少しずつすり減り、そこから知覚過敏が起こることがあります。

歯が溶ける「酸蝕症」

酸性の飲食物によって歯のエナメル質が溶ける状態です。溶けたエナメル質は唾液の働きにより修復されて元に戻ります(再石灰化)が、お酢や柑橘類といった酸っぱいものを頻繁に口にしていると、再石灰化が追いつかずエナメル質が溶け出す一方となります。これによりエナメル質が薄くなる、もしくは、消失することで、知覚過敏となります。

むし歯治療による刺激

むし歯の治療で歯を削ったあとは神経が過敏になり、しみる症状が出る場合があります。時間が経つと敏感になっていた神経が落ち着くため、治療してから1週間以内に治まることがほとんどです。

ホワイトニング

ホワイトニングの薬剤が刺激となり、施術中や施術後に歯がしみたり、痛みが出たりすることがあります。一過性のものなので、1〜2日程度で落ち着くでしょう。

自宅でできる対処法

ここでは、自宅でできる知覚過敏の対処法をご紹介します。

知覚過敏用の歯磨き粉を使う

知覚過敏用の歯磨き粉には、乳酸アルミニウムや硝酸カリウムが含まれており、露出した象牙質をカバーして、神経に刺激が伝わりにくくする働きがあります。毎日継続して使うことにより、改善効果が期待できます。知覚過敏用の歯磨き粉を使用するだけで症状が治まることもあります。ただし、使用をやめれば再び歯がしみるようになるおそれはあります。1~2週間ほど知覚過敏用歯磨き粉を使用しても効果が感じられない場合、別の原因も考えられるため歯科医院を受診しましょう。

唾液の分泌を促す

唾液には、傷ついたエナメル質の表面にくっついてエナメル質を修復(再石灰化)するカルシウムやリンが含まれています。軽度の知覚過敏であれば、唾液をたくさん出すことでエナメル質が再生され、自然に症状が治まることもあります。ガムを噛んだり、咀嚼回数を増やしたりすることで、唾液を増やすことができます。

適切なブラッシング圧で歯を磨く

歯磨きのブラッシング圧が強いと、エナメル質が摩耗して象牙質が露出し、知覚過敏の症状が強まります。症状を軽減するために、やさしい力で歯磨きするように心がけましょう。適切なブラッシング圧は100〜200 gで、歯面に歯ブラシをあてた時に毛先が広がらない程度の力です。ペンを持つように軽く歯ブラシを持つと、力の入れすぎを防げます。

酸性の飲食物を控える

レモンや酢などの酸性の飲食物を取ったあとは、歯の表面が少し溶けた状態になります。しばらくすると、唾液の働きで歯の表面は再石灰化しますが、頻繁に口にすると追いつかなくなるため、取り過ぎには注意が必要です。知覚過敏の症状がある時は、炭酸飲料やお酢、柑橘系の果物など酸性度が高い飲食物を控え、もし摂取したら水やお茶で口をすすぎましょう。

歯科医院に行ったほうがいいケースとは

軽度の知覚過敏で、原因がむし歯や歯周病などの疾患と関連していない場合、セルフケアだけでも症状を改善・解消できます。知覚過敏用の歯磨き粉や唾液中に含まれる成分の働きによって、歯の表面が修復されて、自然に痛みが治まることもあります。しかし、症状が中程度の場合、自宅ケアだけではなかなか改善しません。思わぬ原因が隠れていることもあるため、痛みが長引く、強い痛みがあるといった場合には、早めに歯科医院を受診しましょう。

知覚過敏は治療できる?

知覚過敏の治療法には以下のようなものがあります。

フッ素を塗布する

フッ素には再石灰化を促進し、歯を強化する作用があります。再石灰化によって露出した象牙質の小さな隙間を埋めることにより、知覚過敏の症状を緩和できます。

薬剤・コーティング剤で保護する

歯がしみる部分に薬剤やコーティング剤を塗り込む方法です。露出した象牙質を薬剤やコーティング剤で保護することにより、歯の神経に刺激が伝わりにくくなります。時間の経過とともに効力が薄れてくるため、定期的な処置が必要です。

詰め物でカバーする

歯の根元が削れて知覚過敏を起こしている場合、削れた部分をコンポジットレジンと呼ばれる白いプラスチック素材の詰め物で覆うことで、症状を軽減できます。

神経を抜く

知覚過敏の症状がひどく、日常生活に支障を及ぼす場合には、まれに歯の神経を取る治療を行う場合があります。

症状が長引く時は早めに歯科医院で相談しましょう

知覚過敏は一時的に「ズキンッ」と痛むのが特徴です。知覚過敏を放置したからといって、重大な疾患につながるわけではありません。ですが、ずっとしみたり、痛みが徐々に強くなったりする場合は、むし歯や歯周病、歯のひび割れなどが原因かもしれません。また、痛みが原因で噛み方が変わると顎の筋肉のつき方や輪郭が変わってしまうことにもつながるでしょう。たかが「歯がしみるだけ」と侮らず、早めに歯科医院を受診するようにしましょう。

監修歯科医師:重永 基樹 先生

東京都新宿区西落合の哲学堂デンタルクリニック院長。
1999年に愛知大学院大学卒業。2002年に現在のクリニックを開業。
「なるべく削らない・抜かない・神経をとらない」方針で治療を行っている。

哲学堂デンタルクリニックのホームページはこちら
http://tetsugakudo.com/

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