歯ぐきの皮がむけるのはなぜ? 原因・対処法を解説

歯ぐきの皮がむけるのはなぜ? 原因・対処法を解説

歯ぐきの皮がむけたりめくれたりする気になる症状について解説します。

               
ふとした拍子に、歯ぐきの皮がむけたり、めくれたりしていることに気がつくことがあります。皮がむけること自体は些細な出来事に思えるかもしれませんが、この症状はときに、歯肉炎や親知らず、ホルモンバランスの乱れなどを示していることもあるので注意が必要です。そこで本記事では、歯ぐきの皮がむける原因やその対処法を解説します。

歯ぐきの皮がむけたりめくれたりするのはなぜ?

歯ぐきの皮がむけたり、めくれたりする原因としては、主に以下のような理由が挙げられます。
  • 剥離(はくり)性歯肉炎
  • ホルモンバランス
  • 火傷(やけど)・外傷などの粘膜の損傷
  • 口腔扁平苔癬(こうくうへんぺいたいせん
  • 親知らず
自然に治癒する場合もあれば、歯科医院での治療が必要な場合もあるので、それぞれの原因に適した対処をしましょう。

剥離性歯肉炎

歯周病の原因菌によって、歯ぐきに炎症を起こすことを歯肉炎といいます。その中で、剥離性歯肉炎は、歯ぐきの腫れやただれ、出血などの症状が特徴の歯肉炎です。剥離性歯肉炎にかかると、歯ぐきを軽くこするだけでも皮がむけやすくなってしまいます。歯ぐき全体に広がる帯状の赤い腫れや水疱などが外見的な特徴です。

初期の段階では痛みがほとんどなく、症状が軽いこともありますが、病気が進行すると痛みが強くなり、頰(ほお)の粘膜など口内全体にも炎症が広がります。また、良くなったり悪くなったりと症状に波があり、完治せず慢性化しやすいのも特徴です。

剥離性歯肉炎の原因については現状、明らかになっていません。閉経後の女性に多く見受けられるため、ホルモンバランスが影響しているという説もありますが、細菌やアレルギー、精神的なストレスが関係しているとも言われています。
原因がはっきりしないため、治療法は確立されておらず、歯科医院では主に痛みへの対症療法が行われます。基本的には歯垢を除去して口内を清潔に保つことに努めます。症状が重篤化し、痛みが強くなれば、抗生物質やステロイドなどの服用や、外科的な処置として病変部を切り取ったり、上あごの歯肉を移植したりすることもあります。

日常生活では、歯ぐきへの刺激が少ない柔らかな歯ブラシやマウスウォッシュなどを使い、口内を清潔に保つことが大切です。いずれにしても、まずは歯科医院で診察してもらうようにしましょう。

ホルモンバランス

剥離性歯肉炎との関係が指摘されているように、ホルモンバランスの変化も歯ぐきの皮がむける原因のひとつです。妊娠中や更年期、または生理周期に伴うホルモンの変動は、口内の免疫力を低下させるため、歯周病を引き起こしやすくなります。
女性ホルモンが増加すると血流が増える影響で歯ぐきが腫れやすくなり、炎症が進むと歯ぐきの皮がむけてしまいます。また、特にエストロゲンという女性ホルモンは、特定の歯周病原細菌の増殖を促すため、歯周病の進行しやすいです。

特に妊娠中は、つわりなどで口内が荒れやすくなり、唾液の分泌も減少することで、歯周病が発生しやすくなります。また、更年期以降の女性は、唾液の分泌量が減少することでドライマウスになりやすく、口内の自浄作用が低下するため、歯周病リスクが高まるとされています。

ホルモンバランスの変化自体は避けるのが難しいことです。そのため、これに対処するには、定期的に歯科検診を受けるなど、日々の口内ケアをしっかり行うことが大切です。

火傷・外傷などの粘膜の損傷

火傷や怪我などで口内が傷つくことで歯ぐきの皮がむけることもあります。たとえば冬に熱い鍋などを食べた際に口の中を火傷し、歯ぐきの皮がむけた経験のある方も多いのではないでしょうか。また、喫煙が原因で火傷してしまうこともあります。

火傷以外で歯ぐきを傷つける原因として第一に挙げられるのは、不適切な歯磨きです。必要以上に強い力でブラッシングをすると、歯ぐきを傷つけ、皮がむけやすくなってしまいます。力加減は同じでも、硬い歯ブラシに替えると歯ぐきが傷ついてしまうこともあるので注意が必要です。また、急いで食べる際に箸やフォークで歯ぐきを傷つけてしまうこともあります。

こうした損傷は、一時的なものが多く、軽度であれば特に処置しなくても自然治癒します。火傷の場合は冷やすことで炎症が治りやすくなります。ステロイド軟膏を塗布することも有効です。歯磨きの仕方や歯ブラシの種類などに問題がある場合は、それらの見直しをして予防に努めましょう。

口腔扁平苔癬

口腔扁平苔癬という病気も、歯ぐきの皮がむける原因として考えられます。この病気は、口内の粘膜に慢性的な炎症を引き起こし、白い網目状の模様(角化異常)が現れることが特徴です。角化異常によって、口内の粘膜が過度に角質化して分厚くなり、異常な固さになります。

口腔扁平苔癬の症状は歯ぐきだけでなく、頰の内側や舌など口内全体に及びます。軽度の場合は自覚症状がないこともありますが、進行すると潰瘍(かいよう)やびらんが発生し、強い痛みや味覚障害を伴うこともあります。

剥離性歯肉炎と同じく、口腔扁平苔癬の発生原因は明確になっておらず、治療法も確立されていません。症状の現れ方に波があるのも共通しており、完治の難しい難治性の病気です。現状の治療法としては、患部へのステロイド軟膏の塗布や光線治療などが行われています。金属アレルギーが原因と考えられる場合は、歯科用金属を除去することもあります。

口腔扁平苔癬は良性疾患であることが多いものの、一部のケースでは口腔がんにつながるリスクもあるため、定期的に歯科医院で診察を受け、悪性化の兆候がないか確認することが大切です。また、症状を悪化させないためには、口内の清潔さを保つことが大切なので、日頃からオーラルケアを心がけることも欠かせません。

親知らず

親知らずが生える際に、歯ぐきの皮がめくれることも多いです。親知らずは最後の永久歯とも呼ばれ、大人になってから生えてきます。とはいえ、親知らずの有無や生え方には個人差があります。

特に奥歯のほうで親知らずが歯ぐきの下から生えてくるときは、歯ぐきが破れ、痛みを伴う場合があります。親知らずがななめに生えてくるケースでも、周囲の歯ぐきに負担がかかり、炎症や腫れを引き起こすことが多いです。

親知らずが原因で歯ぐきの皮がめくれた場合、まずは口内を清潔に保ち、様子を見ましょう。炎症や痛みが治まらない場合は、歯科医院で診察を受け、必要に応じて抜歯などの処置を受けることが必要です。また、親知らずの抜歯直後は、一時的に歯ぐきがめくれやすくなっています。この状態は1か月ほどで落ち着くことが多いですが、改善しない場合は抜歯した歯科医院に相談しましょう。

歯ぐきの皮がむけているときの対処法

歯ぐきの皮がむけているときには、一般的に以下のような対処をするのがおすすめです。

マウスウォッシュで洗浄・殺菌消毒する

歯ぐきの皮のむけやめくれによって、歯磨きがしにくかったり、痛みを感じたりする場合には、患部を無理にブラッシングする必要はありません。こうした場合、マウスウォッシュを利用して洗浄しましょう。

マウスウォッシュは液体なので、まんべんなくケアできます。しかも殺菌成分が含まれているので、歯ぐきに炎症や皮むけがある場合、感染予防や細菌の繁殖を抑えるのにも有効です。磨き残しがある部分や歯ブラシが届きにくい箇所を清潔に保つために普段から使用するのもおすすめします。

ただし、マウスウォッシュの中には、アルコールが含まれている製品もあり、口内に傷があったり、荒れていたりすると刺激を強く感じることがあります。歯ぐきが敏感になっている場合はアルコールフリーのものや、低刺激のタイプを選ぶと良いです。
注意することとして、マウスウォッシュはあくまで歯磨きの補助的な役割として使用するものです。マウスウォッシュだけで完全に口内の汚れを除去するのは難しいので、痛くない箇所へは歯磨きもしっかり行いましょう。

痛みがある場合は患部を冷やす

火傷の場合はもちろん、歯ぐきに炎症があって痛みを感じる場合も、患部を冷やすことで症状を軽減できることがあります。冷やす際には、保冷剤などをタオルで包み、頰の上から患部に当てるようにします。間接的に冷やすことで神経の過敏さを抑え、痛みを和らげることができます。

なお、氷を口に入れて直接冷やすのは、冷やしすぎになり、かえって症状が悪化するおそれもあるので控えましょう。また、過度に熱い飲食物や刺激の強い飲食物を摂取するのも炎症を悪化させるおそれがあります。アルコールの摂取や長時間の入浴など、体全体を温める行為も極力避けた方が良いでしょう。

ステロイド軟膏を使う

歯ぐきの皮がむけたり、火傷や外傷によって傷ができたりした場合には、ステロイド軟膏が有効です。ステロイドには強力な抗炎症作用があり、炎症による痛みや腫れを抑える効果があります。剥離性歯肉炎のような慢性的な歯ぐきの炎症に対しても、歯科医院でステロイド軟膏が処方されることが多いです。

ただし、炎症は体が異物や有害物質を排除するための自然な免疫反応でもあるため、原因がウイルスや細菌によるものの場合、ステロイドで炎症を抑えると、かえって治癒が遅くなるおそれがあります。基本的には、薬が必要になるほど症状が悪化している場合は歯科医院を受診し、適切な処置を受けましょう

歯ぐきを切除する

剥離性歯肉炎が慢性化し、炎症が治まりにくい場合や、他の治療法では効果が見られない場合、最終的には歯ぐきを切除する処置が必要となることがあります。また、親知らずが原因で歯ぐきに炎症や痛みが生じる場合も、必要に応じて歯ぐきを切り取ることがあります。。これは親知らずを抜歯するための措置の一環として行われたり、炎症によって歯ぐきに溜まった膿を出す応急処置として行ったりします。

歯ぐきの皮むけがあるときは歯科医院を受診しよう

歯ぐきの皮がむける原因には、剥離性歯肉炎や口腔扁平苔癬、親知らず、火傷やホルモンバランスの影響などが考えられます。歯ぐきの皮むけは自然に治ることもありますが、強い炎症や痛みを伴う場合は、歯科医院で適切に対処してもらうことが大切です。特に症状が繰り返し現れる場合は、疾患が隠れていることがあるため、早めに受診しましょう。

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