歯ぐきにできる白いニキビのようなものの正体は? 放置しても大丈夫?

歯ぐきにできる白いニキビのようなものの正体は? 放置しても大丈夫?

この記事では、フィステルの概要やフィステルができる主な原因、治療法などについて解説します。

               
歯ぐきにプクッとできる白いニキビのようなもの正体は、「フィステル」と呼ばれるできものです。フィステルには痛みがないことから放置されがちですが、自然には治りません。まずは歯ぐきにできる白いニキビについて解説します。

歯ぐきにできる白いニキビのようなものの正体は「フィステル」

歯ぐきにできる白いニキビのようなできものは、「フィステル」と呼ばれる膿の排出路のことです。日本語では「瘻孔(ろうこう)」や「内歯瘻(ないしろう)」と表現されます。「サイナストラクト」とも呼ばれています。

さまざまな原因から歯の付け根に炎症が起こると膿がたまり、膿は排出先を求めて歯ぐきに穴を空けます。この排出路がフィステルであり、歯ぐきに突然現れる白いニキビのようなものの正体です。

フィステルには痛みがないため、できていることに気づかない方もいれば、放置する方も少なくありません。しかし、フィステルの原因が重度のむし歯や、からだの抵抗力や免疫力が落ちているときは、痛みを伴うこともあるので注意しましょう。

また、フィステルはふくらんで膿を出し、出し終わるとしぼんで、また膿がたまるとふくらむのを繰り返します。このとき、膿はくさいニオイを放つため、口臭の原因になります。治ったと思っても再び現れるのは、歯の根元に何らかの炎症があり、悪化しているからです。そのため、フィステルに気づいたら、できるだけ早めに歯科医院を受診し、適切な治療を受けましょう。

フィステルは自然に治る?

フィステルは自然には治りません。前述したようにフィステルは、歯ぐきでふくらんだ後、自然にしぼみます。しかし、それはからだの抵抗力や免疫力によって、一時的に症状が抑えられているだけで、治ったわけではありません。むしろ、痛みなどの症状がないからと放置していると、どんどん悪化してしまいます。

具体的には、治療せずに放置すると根の先で起きている細菌感染がさらに広まり、歯を支える骨が破壊されて歯を喪失するおそれがあります。また、上の奥歯の場合、蓄膿(ちくのう)症になることもあり、鼻の手術が必要になるかもしれません。一方下の奥歯であれば、顎の骨の中にある神経まで細菌感染が広がり、神経麻痺を起こしてしまうこともあります。

フィステルが繰り返しできるということは、その歯ぐきの中で細菌感染が起きている証拠です。そのまま放置しておくと、治療にも時間がかかり、治療の成功率も下がります。健康で快適な生活を送るためにも早めに歯科医院を受診し、適切な治療を受けることが重要です。

フィステルは潰してもいい?

フィステルは決して潰さないでください。見た目がニキビのようで潰してしまいたいと感じる方もいれば、すでに潰してしまった方もいるかもしれません。しかし、フィステルを潰して膿を出したとしても、内部のトラブルが解決していないため、再びフィステルが現れます。

さらにフィステルを無理に潰すとそこから細菌感染を引き起こし、周囲の歯ぐきや骨に悪影響を与えるおそれがあるため、注意が必要です。万が一、フィステルが潰れてしまった場合には、うがい薬で口をすすぎ、早急に歯科医院を受診してください。

フィステルができる主な原因

フィステルを治療するには、フィステルの原因を突き止めなければなりません。フィステルが形成される主な原因は以下のとおりです。

根管治療後に歯の根元で細菌が繁殖している

通常、むし歯が神経まで達した場合、歯の根を治療する「根管治療」を行います。根管治療は非常に精密さが求められる治療で、細菌を完全に除去するために歯の内部を徹底的に消毒し、再感染を防ぐ処置を施します。しかし、治療の精度が低かったり、治療を途中で放棄したりすると、歯の根元に残った細菌が繁殖し、その結果、膿がたまって歯ぐきにフィステルが形成されます。

むし歯を放置している

むし歯を治療せずに放置すると、むし歯が歯の内部深くまで侵入し、神経に達することがあります。むし歯が神経まで達すると、何もしなくてもズキズキと強い痛みがある、熱いものがしみるといった症状が現れます。

しかし、むし歯がさらに進行して神経が死ぬと痛みはなくなり、「歯が治った」と誤解するかもしれませんが、治ったわけではありません。むしろ、実際には細菌感染が広がり、危険な状態です。そして歯の根の方まで進行するとやがて膿がたまり、フィステルが発生します。

さらにむし歯を放置すると歯の喪失のリスクが高まります。フィステルの有無関係なしに、むし歯と思われる症状があった場合には、早めに歯科医院を受診しましょう。

歯が割れたり折れたりしている

歯が割れたり折れたりすることも、フィステルができる原因となります。歯ぎしりや食いしばり、転倒などの外傷で歯に強い力がかかると、歯が割れる、歯の根が折れる(歯根破折)ことがあります。特に神経を取った歯や金属の土台が入っている歯は、時間がたつともろくなり、歯根破折が起こりやすいため注意しましょう。そして、歯の破折部分から細菌が侵入すると、膿がたまって排出されるようになり、フィステルが形成されます。

フィステルの治療法

フィステルの治療は、上記で紹介した原因に合わせて適切に行われます。代表的な治療法としては、根管治療、外科治療、抜歯の3つがあり、それぞれの治療法は以下のとおりです。

根管治療

むし歯が歯の神経まで達している場合や、過去に神経の治療を受けた歯の付近にフィステルができた場合、根管治療が最も一般的な治療法となります。根管治療とは、歯の内部にある細菌や感染した組織を取り除き、消毒して炎症を治めるものです。その後、穴を埋めるなどの処置を行います。根管治療の際、神経が死んでいれば痛みを感じることはありません。仮に生きた神経があり、痛みがある場合には、麻酔をしてから治療をするため痛みを和らげることができます。

根管治療をしっかり行えば、歯の根元にたまった膿が解消され、フィステルの改善や予防効果が期待できます。ただし、治療には相応の時間が必要で、複数回の通院が欠かせません。そのため、フィステルの再発を防ぐためにも、途中で治療をやめずに完了させることが重要です。

外科治療

膿だまりが大きい場合や、根管治療では感染を完全に取り除くことが難しい場合、根管治療終了後、一定期間を経ても改善が見られない場合には、外科的な治療を適応することがあります。外科的処置では、歯の根元や周囲の組織にたまった膿を直接取り除き、感染源を物理的に除去します。代表的な外科治療の方法として、歯根端切除術、ヘミセクション、歯牙再植術の3つがあります。

歯根端切除術では、歯ぐきを切開して歯の根の先端部分を露出させ、そこにたまった膿や感染組織を直接除去します。根管治療が難しい歯の形状や、基本的な根管治療でも治癒の傾向が見られない場合に行われることがほとんどです。

ヘミセクションとは、歯根が2本の歯に対して行う外的治療法で、問題のある歯根のみを切除し、取り除きます。ダメージの大きい歯根のみを取り除くため、歯を丸ごと抜く必要がなく、歯の機能を維持することが可能です。また、歯根が減ることで噛む力は弱まるものの、歯全体を抜歯するよりも歯を長く保つメリットがあります。なお、歯根が3本の歯に対して行う場合、トライセクションと呼びます。

歯牙再植術とは、一度抜歯し、膿の袋や感染部分を取り除いてから、歯を元の位置に戻す外的治療法です。根管治療や歯根端切除術で改善が見られない場合に実施され、歯の保存が難しい状況でもできる限り歯を残すための手段として用いられます。

これらの治療法は、通常の治療よりも複雑でリスクを伴うこともありますが、根本的な原因を取り除き、フィステルの発生を防ぐための重要な手段です。

抜歯

根管治療や外科的な治療でも改善が難しい場合、最終的な手段として抜歯が選択されることがあります。特に、歯の根が折れている場合や、歯を残すと症状が悪化するおそれがある場合には、抜歯が必要です。

歯を抜くという決断は簡単ではありませんが、周りの歯や健康を守るために必要になることもあります。歯を抜いた後は、義歯やインプラントなどの治療も検討されることが多いため、歯科医院でしっかり相談して、適切な治療を受けましょう。

フィステルに似たできもの

フィステルに似た症状があるできものとして、口内炎と口腔がんが挙げられます。放置すると命にかかわるおそれもあります。それぞれの症状とフィステルとの違いについて詳しく解説します。

口内炎

フィステルに似た症状のひとつに、口内炎があります。口内炎は口の中の粘膜に発生する炎症です。多くの場合、食事や話す際に痛みを伴います。加えて、一度に複数の口内炎ができたり、できた箇所に水疱が生じたり、出血したりするケースもありますが、ほとんどの場合、自然に治ります。口内炎の主に、ストレスや栄養不足、歯ブラシや噛むなどの刺激などが原因です。

フィステルと口内炎を見分けるポイントは、痛みの有無です。フィステルは痛みを伴わないケースが多いのに対し、口内炎は強い痛みがあります。また、フィステルは根本的な原因を取り除かない限り、同じところに繰り返しできるのに対し、口内炎も繰り返しできますが、1カ所ではなく口内の粘膜であればどこでもできます。

口内炎は通常1〜2週間で自然治癒しますが、治らない場合はほかの疾患のおそれもあるので、早めに歯科医院を受診しましょう。

口内炎について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

口腔がん

フィステルや口内炎に似た症状を持つもうひとつの疾患が、口腔がんです。口腔がんは、口内の粘膜や組織に発生する悪性腫瘍です。白く変色したできものができるため、一見すると、フィステルや口内炎と誤認されることがあります。しかし、口腔がんの場合、しこりがあり、フィステルや口内炎のように、自然とできものがなくなりません。長期間治らないできものがある場合には、口腔がんのおそれを考慮する必要があります。

特に、痛みを伴わないできものが2週間以上治らない場合は、早めに歯科や医療機関を受診することが重要です。口腔がんは早期発見が治療の成功率に大きくかかわるため、痛みがないからといって放置せず、専門医の診断を受けましょう。

歯ぐきに白いニキビのようなものができたら要注意!

フィステルは、歯ぐきにできる白いニキビのようなできもので、痛みがないため放置されがちです。しかし、根本的な原因を解消しない限り自然に治ることはありません。フィステルに気づいたら、早めに歯科医院を受診し、適切な治療を受けましょう。

近隣のクリニックを検索

関連記事

ピックアップ

医療機関の方へ

シルハは口腔環境6項目を簡単操作で5分でスクリーニングできる口内環境測定システムです。
製品情報・お問い合わせはコチラ

SillHa.comでは全国の歯科医院の情報を掲載しています。
より詳細なご施設情報の掲載をご希望される場合はこちら