【歯科衛生士執筆・監修】どんな歯ブラシを選ぶといい?口の状態にあった歯ブラシ選び方

【歯科衛生士執筆・監修】どんな歯ブラシを選ぶといい?口の状態にあった歯ブラシ選び方

この記事では、一般の男女897名にアンケートを実施し、お口の状態や歯磨き習慣、普段どのようなタイプの歯ブラシを選択しているのかを調査した結果とは歯ブラシの選び方を紹介します。

               
永久歯を抜歯する原因のひとつに、むし歯と歯周病があげられます。この2つの疾患の主な原因は、お口の中の磨き残しのプラーク(歯垢)です。
むし歯と歯周病を予防する方法として最も有効的なのは、歯科医院で行うプロフェッショナルケアとお家でできる歯磨きです。

よく使われるのは”ふつう”の歯ブラシ

歯ブラシについて、ヘッドの大きさ、毛の形状、毛先の形状、歯ブラシ全体の形状、毛の硬さについてどんな歯ブラシを使っているかアンケートを行いました。結果として、ベーシックなタイプを選ぶ方が最も多かったです。その中で、毛の硬さは少し特徴があり、男女ともに「ふつう」タイプを使っている人が最も多く、男性58.4%、女性67.9%という結果となりました。しかし、2位は男女で大きな差が見られ、男性では硬めを使っている方が17.5%に対して、女性は6.9%、逆に女性はやわらかめを選ぶ人が多く18.2%に対して、男性は13.6%という結果でした。性別によって好みが分かれる傾向にあるようです。

10代からは歯周病予防を!歯ブラシ選びのポイント

毛の硬さ以外にも、歯ブラシを選ぶ基準にはさまざまな要素があります。

乳幼児から小学生くらいのお子さんは、一人でお口のすみずみまで歯磨きをするのはまだ難しい年代です。むし歯のリスクが高いため、噛み合わせ部分や歯の表側・裏側を安定して磨ける歯ブラシを使いましょう。
  • ヘッドの幅:広め
  • ネック:長め
  • 毛先の形状や加工:ひら切り型、ラウンド加工か水平加工 (見た目は毛先を横から見た時にスパッと切られているもの、パッケージにフラットカットやフラットタイプ等と記載のものです。)
  • 毛の硬さ:ふつう
10歳以上は、むし歯予防に加えて歯周病のリスクに備えたいものです。10歳~24歳の若い世代でも約4割が歯肉出血のがあるという報告もあり、何もしなければ年代が上がるごとに歯周病罹患率も増加します。そのため、歯周病予防も考えてお口全体をすみずみまで磨けるタイプの物を選びましょう。
  • ヘッドの幅:ふつう~広め
  • ネック:長め
  • 毛先の形状や加工:2段植毛型、テーパード加工か先端極細加工 (パッケージに極細毛や腸極細毛、歯周ポケットに入れやすい等の記載があるものです。)
  • 毛の硬さ:ふつう~やわらかめ(痛みがない場合、ふつうの硬さがよりおすすめ)
ただし、歯ブラシの各部位のサイズはメーカーによって異なります。年齢とともに口内環境や歯周病の状態は悪くなることが多いため、かかりつけの歯科医院に相談することをおすすめします。歯科衛生士から自分に合う歯ブラシを処方してもらうのも良いでしょう。

歯ぐき下がりが気になる人の歯ブラシ

歯ぐきが下がる原因には歯周病の悪化、強い力でブラッシングする習慣、噛み合わせの問題などがあげられます。また、歯が長くなったと感じる人もいるようです。歯ぐきが下がったと感じる人は、対策としてどんな歯ブラシを選択しているのでしょうか。
アンケートでは、以下の歯ブラシの人気が高い結果となりました。
  • ヘッドの大きさ:1位ふつう、2位小さめ(コンパクト、超コンパクトなど)
  • 毛の形状:1位フラット、2位山型
  • 毛先の形状:1位極細、2位ふつう
  • 全体の形状:1位まっすぐ、2位湾曲
  • 毛の硬さ:1位ふつう、2位やわらかめ
歯ぐきの下がりが気になる人の内42.4%が、毛先の形状が極細タイプの歯ブラシを選んでいました。歯ぐきが下がる原因の1つである歯周病が進行すると、歯ぐきの腫れや出血など、自覚できる症状が出てきます。詰め物が多い人や歯が欠けている人も同様に、お口の清潔さを保つために、細かく歯ブラシを当てて磨きたい人が多い傾向にあります。

また、テレビやWebページ、SNSなどの広告で、極細タイプの歯ブラシの先端が、歯周ポケットに入り込んだ汚れをかき落とす様子を見たことがある人も多いのではないでしょうか。さらに、歯科衛生士のおすすめだから極細の歯ブラシを使うという人もいるでしょう。

いずれの場合も、すみずみまでしっかりとプラークを落としながら歯ぐきのマッサージを行うために、極細タイプの歯ブラシを使う人が多いようです。

歯科衛生士おすすめ!歯周病の症状が気になる人の歯ブラシの選び方

歯周病の患者さんは、歯ぐきが下がったり、ブヨブヨと腫れて出血したりといった自覚症状が出てきます。歯周病の改善には、歯科医院でのケアとともに、自宅でのセルフケアが欠かせません。以下の歯ブラシのタイプを参考に、毎日のケアを始めましょう。

ヘッドの大きさ

大きすぎず、小さすぎない4列毛タイプがおすすめです。大きすぎると細かい動きが難しく、小さすぎると磨く時間が長くなり、歯磨きが面倒になってしまいます。

毛先の形

テーパード加工や先端極細加工で、歯周ポケットの中にも入り込み、プラークをかき出す形状の物が良いでしょう。

毛先の硬さ

歯ぐきに炎症があると、毛先を歯周ポケットに入れて磨く時に痛みを感じる人もいます。毛先が硬いと痛みが強くなるため、やわらかめの物を選びましょう。
また、極細タイプは、他の形状の歯ブラシよりも毛先がかなり細く繊細なので、ふつうの毛の硬さを選んでもやわらかい物が多くあります。磨き方やブラッシング時の力の入れ方にも個人差があるため、まずはかかりつけの歯科医院に、自分の口に合った磨き方を尋ねてみると良いでしょう。

矯正をしている人の歯ブラシとは?

  • ヘッドの大きさ:1位ふつう、2位小さめ
  • 毛の形状:1位フラット、2位ドーム型
  • 毛先の形状:1位ふつう、2位極細
  • 全体の形状:1位まっすぐ、2位湾曲
  • 毛の硬さ:1位ふつう、2位やわらかめ
他の症状と比較すると、特徴的なのが毛の形状でドーム型を選ぶ人が2番目に多いという結果でした。中央の毛が長く外側の毛が短い構造になっているので、矯正器具があっても歯に毛先があたりやすいため選ばれやすいかもしれません。

歯科衛生士おすすめ! 矯正中の人の歯ブラシの選び方

ワイヤー矯正は、ブラケットやワイヤーが複雑に歯についているので、歯の清掃がかなり難しいです。2位のドーム型の歯ブラシは、ブラケットやワイヤー周りの凹凸があるところによく当たり、汚れを取ってくれるためおすすめです。山型や谷型の形態の歯ブラシも凹凸があるところに当たりやすいので、試しに使用してみてください。
現在、歯科矯正は以前からあるワイヤー矯正のほかに、アライナー矯正というマウスピースをはめて歯を動かす矯正治療方法があります。
アライナー矯正はマウスピースを装着するため、唾液の自浄作用が停滞してしまうことにより、むし歯リスクが高くなる傾向があります。ただし、アライナー矯正ではマウスピースを外して歯を磨くことができるので、毛先の形状で人気1位のフラット型でも十分に磨けます。
また、アライナー矯正中のアタッチメントやワイヤー矯正中のブラケット、ワイヤーなどは非常に繊細な構造です。歯ブラシの毛先の硬さはやわらかめを選択し、優しい力で細かく動かしながら磨いてください。

矯正中は清掃が難しくむし歯になりやすいといわれます。隙間が大きくなっている箇所や、歯ブラシで磨ききれないところは、ワンタフトブラシや歯間ブラシも使って矯正中のトラブルを避けましょう。

歯磨きはいつしたらいい?かける時間は?

健康なお口を保つためには、1日のどのタイミングで歯を磨けば良いのでしょうか。また、1回の歯磨きにかける時間も気になるところです。アンケート結果によると、歯磨きにかけている時間は30.1%の人が「2分以上3分以内」で最も多く、次いで18.5%の人が「1分以上2分以内」でした。
また、歯磨きのタイミングは1位が「就寝前」の56.8%、2位が「朝食後」で55.0%、3位は「夕食後」の39.1%という結果になりました。間食後は6.5%と、ほとんどの人が歯磨きを行っていないことも分かります。

朝夕は外出、就寝のタイミングということもあり、この時に歯磨きを行う人が多いようです。歯磨きにかける時間も、目安時間を約3分と伝えている歯科医院が多いものの、朝の忙しい時間や疲れが溜まる夜では、3分よりも少し早めに終わらせてしまう人が多いことがうかがえます。

歯科衛生士が回答!患者さんからよく質問されること3選

朝食後に歯を磨けば、起床時は磨かなくても良いの?

歯科衛生士の回答

起床時、朝食後、どちらも歯を磨くことをおすすめします。
起床時に磨いて朝食後に磨かないと、朝食の食べかすが長時間お口の中に停滞してしまいます。また、起床時に磨かず朝食後に磨くだけでは、寝ている間に繁殖した口内の細菌を、朝食時に体内に入れてしまうからです。
朝2回磨くことがどうしても難しいようなら、まずは起床時にぶくぶくうがいを行い、粘膜や舌、歯冠に付着した細菌を洗い流しましょう。この時に、洗口剤を使用するのも効果的です。そして、食後に歯磨きをしましょう。ただし、患者さんのお口の状態や生活習慣、性格などによってもより良い方法は変わりますので、気になる人は歯科医院に相談するのがおすすめです。

間食後も歯を磨いた方が良いと分かっているけど、できない時はどうしたら良いですか?

歯科衛生士の回答

そのような時は水やマウスウォッシュでぶくぶくうがいを行ってください。最低限ですが、食べかすや細菌を吐き出すことができます。また、シュガーレスのガムを噛むことで唾液が出て、酸性に傾いた口腔内を中性に戻してくれます。

夕食後に歯磨きをしたら、就寝前にも歯磨きをする必要はあるの?

歯科衛生士の回答

夕食後、就寝前、どちらの歯磨きも必要です。特に寝る前の歯磨きが一番重要です。
唾液には口内を清潔に保つ効果がありますが、寝ている間は唾液の分泌が少なく十分な働きができないため、口の中の細菌が著しく繁殖します。むし歯や歯周病のリスクが高まるため、就寝前の歯磨きを必ず行い、口内を清潔にしてから寝るようにしましょう。
また、夕食に限らず食事後はお口の中が酸性に傾きます。夕食から就寝までの時間が長い人も、積極的に歯を磨きましょう。
逆に夕食と就寝の間が短い人でも、その間に食べ物を食べたり糖類が入ってる飲み物を口にしているのであれば歯を磨く必要があると思います。ただし、酸蝕症の診断を受けた人は、食後すぐの歯磨きはお控えください。

歯科衛生士おすすめ!歯ブラシと一緒に使ってほしいグッズ

ここでは、歯ブラシと一緒に使ってほしいグッズを紹介します。アンケート調査の結果では、歯磨きの際に歯磨き粉や液体歯磨剤を使っている人は、全体の4割程度でした。まずは、歯磨き粉について解説します。

歯磨き粉

まず、歯磨き粉や液体歯磨剤を使用しなくて良い人の前提として、お口の中がとても健康で、すみずみまで磨けていることがあげられます。
歯磨きの目的は正しく綺麗に磨き、むし歯や歯周病などを予防することです。綺麗な歯になって初めて、歯磨き粉などに含まれる薬用成分の恩恵があります。

歯磨き粉に関して、ブラッシング後のプラーク付着率を、歯磨剤を使用した人と使用しなかった人で比較した際、歯磨剤を使用した人の方がプラークの付着と細菌数を抑制できたという研究結果もあります。

このような結果からも、歯磨き粉は使用した方が良いでしょう。

さらに、歯磨き粉には多くの種類があります。むし歯予防成分が含まれる歯磨き粉が多いですが、歯周病や知覚過敏の予防、ホワイトニング効果のある歯磨き粉もあります。
自分自身の目的にあった歯磨き粉を選び、用量、用法を守って正しく使用しましょう。

一方、避けた方が良い薬用成分が含まれる歯磨き粉もあります。
抗菌性・抗真菌性物質の”トリクロサン”が配合された歯磨き粉の使用は避けましょう。このトリクロサンは腸の炎症を引き起こすとの研究結果があり、大腸がんのリスクを高めるといったデータがあります。


引用:口腔衛生学会雑誌_歯磨剤および歯磨剤中の発泡剤が歯口清掃効果に及ぼす影響
   

歯ブラシ以外の清掃器具

フロス

フロスは、歯ブラシの毛先が届かない歯と歯の間の汚れを糸で絡めとります。
また、ざらつきや引っかかりがある箇所は、むし歯になっているかもしれません。日頃のケアがむし歯の早期発見につながるため、気になる箇所があれば歯科医院で診てもらいましょう。

タフトブラシ

毛先が小さいブラシです。大きい歯ブラシでは磨ききれない歯列が凸凹しているところや、歯と歯ぐきの境目、一番後ろの歯の裏側など、細かいところを磨くことで汚れを落とします。

歯間ブラシ

先端が細く、やわらかい素材でできている棒状のブラシです。
歯と歯の間の汚れを効率的に落とすため、むし歯や歯周病予防、また治療中の人はぜひ使用をおすすめします。
ただし、サイズ選びは慎重に行いましょう。歯間に対して大きな物を使うと歯ぐきを傷つけてしまい、歯間ブラシが原因で歯ぐきが下がるおそれがあります。まずは歯科衛生士に処方してもらった物を使用するのが良いでしょう。

マウスウォッシュ

マウスウォッシュは炎症の抑制、口腔疾患の予防、お口の中の細菌の減少が期待できる液体です。
刺激の少ないノンアルコールタイプがおすすめですが、過度の使用には注意が必要です。使用する製品に記載された1日の使用回数を必ず守りましょう。使いすぎると、本来のお口の環境を壊して、唾液の分泌が少なくなってしまうおそれがあります。また、口腔内に傷がある人も使用を避けてください。

舌ブラシ

舌には大量の細菌が存在しており、正しい清掃方法で除去することで、感染症予防や口臭の予防、誤嚥性肺炎の予防につながります。
舌磨きをしない方が良いといわれる理由は、舌を傷つけると傷の中に細菌などが溜まり、炎症を起こすためです。舌ブラシの正しい使用法を守って、舌を綺麗に保ちましょう。
舌ブラシに水または口腔湿潤材を使用して、奥から手前にかけて優しく数回撫でるように磨いてください。

口腔洗浄機(ウォーターピックなど)

水流の力で食べかすを除去する物です。
爽快感があり、好んで使用している患者さんも多いですが、必ず歯科医院で使用方法の説明を受けましょう。水流の力や挿入角度を間違えると、汚れは取れてないのに歯ぐきを傷つけてしまいます。口腔洗浄機単体では除去力に限度があるため、歯間ブラシとの併用がおすすめです。歯間ブラシ後にウォーターピックを行うことにより、徹底的な汚れの除去と爽快感が得られます。

歯は私たちの大切な資産

ここまで、歯ブラシや口内のケアグッズについて解説してきました。

自分の歯は一度失うと戻ってこない大切な資産です。

この大事な資産は自宅でできるセルフケアと、歯科医院で行うプロフェッショナルケアで守り続けることができます。アンケート結果では、6割以上の人がお口の中に気になる症状があると答えています。
お口の中も十人十色、一人ひとり口腔環境は異なるものです。「普段のセルフケアで使う歯ブラシには、特にこだわりはない」という人も、一度歯科医院を受診して自分のお口と向き合ってみてください。歯科医師や歯科衛生士が、自分の口の中に合う歯ブラシをきっと選んでくれるはずです。

執筆:只野 史織 歯科衛生士 

北海道旭川歯科学院専門学校卒業後、旭川市内の歯科医院に数年勤務したのち、現在は北海道上川郡美瑛町のyouすまいる歯科にて勤務。

·臨床歯科麻酔認定歯科衛生士
·ホワイトニングコーディネーター

監修歯科衛生士:丸橋 理沙 

現在は、フリーランスにてインプラントメンテナンス、インプラントオペ介助、スタッフ教育、などで活動中。
スタディークラブ(全国7箇所にオープン)Team GLWB主幹、Lisa visible association株式会社設立、代表取締役としてセミナー企画、スタディークラブ運営、コンサル業務を行っている。株式会社モリタ、ライオン歯科材、白水貿易株式会社で多数講演

著書 食べる美容液

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