歯ブラシの毛先の状態が重要なわけ
普段皆さんが使っている歯ブラシの毛先は、何度も使うことでどのようになりますか?
- 毛先にコシがなくなって弾力が弱くなる
- 毛先が外に跳ねて形が変わってくる
- 毛先や根元に色が付いて汚れてくる
など、新品のようにキレイなままの状態の方は少ないのではないのでしょうか。歯ブラシは、毎日使い続けることで毛先の状態が変わっていきます。そして、毛先の状態が変わると、歯についた食べ残しや歯垢が落ちにくくなってくるのです。それを見分けるのに分かりやすいのが、歯ブラシの毛先が真っ直ぐのままか、それとも開いているのかです。
歯ブラシの毛先は、使い続けると徐々に跳ねて開いていきます。毛先が開いているかは、歯ブラシを背中側から見るとわかりやすいです。
毛先が開くと、写真の左の歯ブラシのように、背中から見た時に毛が飛び出て見えるようになります。この状態では、歯磨きの時の歯垢除去力がかなり落ちてしまうのです。そのため、背中から見たときに毛先が飛び出していたら、歯ブラシを交換する目安です。
歯ブラシの歯垢除去率を実験で比較
実験では、赤い染色剤を塗布した歯の模型と、新品の歯ブラシ、毛先の開いた歯ブラシを用意。
歯磨きのプロである歯科衛生士の皆さんが歯の模型を磨いたとき、毛先が真っ直ぐな新品の歯ブラシと、毛先の開いた歯ブラシで、歯垢に見立てた染色剤の落ち具合に違いが出るかを検証しました。
歯磨きのプロである歯科衛生士の皆さんが歯の模型を磨いたとき、毛先が真っ直ぐな新品の歯ブラシと、毛先の開いた歯ブラシで、歯垢に見立てた染色剤の落ち具合に違いが出るかを検証しました。
新品の歯ブラシの歯垢除去力
まずは、毛先の真っ直ぐな新品の歯ブラシで磨いてみます。
歯ブラシの当たった所はかなり広範囲に歯垢が落とせているのが分かります。
毛先が開いた歯ブラシの歯垢除去力
では、毛先の開いた歯ブラシで磨くとどうでしょうか。
歯ブラシの真ん中の部分が当たっている所は歯垢が落とせているようです。一方で、歯の根元や歯の間など、磨いたはずの部分に歯垢(赤い部分)がまだ残っています。
二つを並べてみると違いが一目瞭然です。やはり毛先の開いた歯ブラシでは汚れを落とす力は弱くなっているようです。
実験の結果、新品で毛先の真っ直ぐな歯ブラシと毛先の開いた歯ブラシとでは、毛先の開いた歯ブラシの方が圧倒的に磨き残しが多いことが分かりました。でも、実際に私たちは毛先の開いた歯ブラシを使い続けているものなのでしょうか。
上田さん
患者さんで、歯ブラシの毛先が開いていてもそのまま使っている方は結構いますよね。
高松さん
なので、歯ブラシの毛先が開いてきたらすぐ新しいものに交換するように、普段から患者さんにもお伝えしています。
歯ブラシの毛先は、コシがあって真っ直ぐであることで、歯の汚れをしっかりと落とすことができます。むし歯や歯周病を予防するためには、なるべく広範囲をキレイに磨けることが大切です。歯ブラシの毛先が跳ねたり明らかに開いている状態のときは、歯ブラシの寿命です。新しいものと取り替えるようにしましょう。
歯ブラシの毛先を長持ちさせるには?
歯ブラシの毛先は使用しているうちに自然と開いてしまうものですが、開いてしまう早さは歯ブラシによって変わるのでしょうか。実はあることをすると、毛先が開いてしまう時期も早まってしまうようです。
清水さん
歯ブラシの毛を歯に押し付けて磨いている方ほど、毛先が開いてきてしまいます。特に、1か月経たないうちに毛先が開いてきてしまう方は要注意です。
上田さん
歯磨き圧が強くて、毛を押し付けるようにして磨いていると、歯や歯ぐきにも負担がかかります。すると、歯ぐきが傷ついたり、退縮したりする原因にもなります。
高松さん
歯を磨いている時に、鏡で歯ブラシを持っている親指をチェックしてみてください。親指の爪が白くなっていたら歯磨き圧が強くなっている証拠です。もしそうであれば、優しく歯ブラシを持って、優しめの力で磨くようにしてみてくださいね。
歯磨き圧をチェックするには親指を見るのがいいのですね。毛先が早く開いてしまうのは、ブラッシングの力が強すぎるのかもしれません。一度、鏡で確認してみるとよいでしょう。歯磨き圧については前回の歯科衛生士座談会で詳しく解説しています。ぜひ前回の記事もご覧ください。
歯ブラシの適切な交換時期
毛先の開いた歯ブラシの目安は冒頭でもお伝えしましたが、他に歯ブラシの適切な交換時期の目安はないのでしょうか。改めて歯科衛生士の皆さんにお聞きしました。
高松さん
歯ブラシは1か月で交換していただきたいですね。実は、毛先が開いていなかったとしても、毎日使っていれば歯ブラシの毛は劣化していきます。すると徐々に毛のコシがなくなり、歯垢除去力が落ちていきます。
清水さん
「まだ使えるし、もったいない…」と思われる方もいると思います。ですが、そこはグッと我慢して交換してしまいましょう! 使用している期間が長くなると、歯ブラシの上で細菌が繁殖してしまいます。
<ご存知ですか? 歯ブラシ交換デー>
毎月8日は、歯(は)にちなんで歯ブラシ交換デーに制定されています。1か月ごとの歯ブラシ交換の目安として、毎月8日を歯ブラシ交換の日にしてみませんか?
毎月8日は、歯(は)にちなんで歯ブラシ交換デーに制定されています。1か月ごとの歯ブラシ交換の目安として、毎月8日を歯ブラシ交換の日にしてみませんか?
歯ブラシでも磨けない所がある
毛先の開いた歯ブラシでは歯垢除去力が落ちるということは分かりました。では、毛先が真っ直ぐな新品の歯ブラシを使っていれば、歯垢は落としきれるのでしょうか。
実は、新品の歯ブラシでどんなに丁寧に磨いても、磨ききれない所があるようです。
実は、新品の歯ブラシでどんなに丁寧に磨いても、磨ききれない所があるようです。
上田さん
歯ブラシで磨けない所はまずは奥歯ですね。通常の歯ブラシだと一番奥の歯まで届きにくく、キレイに磨くことは難しいです。
高松さん
あと、すみずみまで歯ブラシでしっかり磨いたつもりでも、必ず汚れを取り残してしまうのが歯の間。歯の間に歯垢がたまると、そこが細菌の増えやすい環境になってしまうので、むし歯や歯周病のリスクが高まってしまいます。
上田さん
それと、ガタつきのある歯並びの所も磨き残しをしやすいですよね。
清水さん
奥歯や歯の間など、磨きづらいところの歯垢までしっかり落とすには、歯ブラシとは別に補助用具が必須ですね。
歯ブラシで届かない所の歯垢を落とす方法
左から:ワンタフトブラシ・フロス・歯間ブラシ
今回の実験で、毛先の開いた歯ブラシでは歯垢除去力が落ちるというのは分かりました。しかし、歯科衛生士の皆さんのお話から、新品の歯ブラシでも、奥歯や歯の間まではうまく磨けないということも分かりました。そこで役に立つのが、ワンタフトブラシ、歯間ブラシ、フロスといった歯磨きの補助用具です。
ワンタフトブラシ
通常の歯ブラシでは磨きにくい奥歯や、歯並びでガタつきのある所まで磨ける部分専用歯ブラシです。
高松さん
親知らずの歯、ガタつきのある歯並びの所、歯科矯正器具のついている歯など、磨きにくい所に使ってください。
清水さん
奥歯を磨くポイントとしては、口を小さくして歯ブラシを入れるとより届きやすいですよ。
<タフトブラシについてはこちらの記事でも詳しく解説しています>
磨き残しは「タフトブラシ」で集中ケア! 使うメリットや正しい使い方をご紹介
磨き残しは「タフトブラシ」で集中ケア! 使うメリットや正しい使い方をご紹介
歯間ブラシ
歯の間をキレイにする専用の道具です。歯の隙間が大きい部分の歯垢を取るのに適しています。
高松さん
歯の間に大きな隙間が空いていたり、食べた物が挟まりやすかったりする方に使っていただきたいです。被せ物のブリッジが入っている方もぜひ使ってください。
清水さん
歯間ブラシを歯の間に入れるのがきついと感じる場合は、小さいサイズの歯間ブラシかデンタルフロスに代えてくださいね。きついまま無理をして使っていると、歯や歯ぐきを傷つける可能性があるので注意してください。
上田さん
自分の歯の隙間に合ったサイズを選ぶ必要があるので、歯科医院に行って自分に合ったサイズはどれか聞いてみてくださいね。
<歯間ブラシの使い方について詳しくはこちらもご参照ください>
歯間ブラシで血が出る原因と対処法 正しい使い方で口内環境を改善しよう【歯科医師監修】
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デンタルフロス
歯の間の狭い隙間をキレイにする糸状の道具です。
高松さん
歯の隙間が狭い方やお子さんに使っていただきたいです。糸を中指に巻き、しっかりと張らせて歯の間に入れて歯垢を擦り取るのがポイントです。
上田さん
糸だけのデンタルフロスの使い方が難しい場合は、ホルダーに糸のついた通しやすいタイプの「糸ようじ」もあるので、そちらを使ってみてください。
<デンタルフロスの詳細や気になる噂をこちらの記事で解説しています>
デンタルフロスで歯の隙間が広がるのは本当?逆効果の場合はある?臭いの原因も解説【歯科医師監修】
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自分の歯や口の状態に合った補助用具を見極めるのは難しいです。実際に歯科医院で自分に合った適切な補助道具の種類や使い方を教えてもらいましょう。歯科医院であれば、自分に合った歯ブラシやブラッシングの仕方も教えてもらえます。
まとめ 歯ブラシは毛先が開く前に交換
今回の実験で、毛先の開いた歯ブラシはやはり歯垢除去力が落ちるということが分かりました。歯ブラシは毛先が開く前に、長くても1か月を目安に交換するようにしましょう。適切な歯磨き圧で歯を磨くと、毛先の持ちがよくなるだけでなく、歯や歯ぐきにも負担がかからないようになります。
通常の歯ブラシを使ったブラッシングでは、奥歯や歯の間など、どうしても磨き切れないところが出てきます。ワンタフトブラシ、歯間ブラシ、デンタルフロスなどの補助用具も併用して、歯垢の取り残しがないようにしましょう。
通常の歯ブラシを使ったブラッシングでは、奥歯や歯の間など、どうしても磨き切れないところが出てきます。ワンタフトブラシ、歯間ブラシ、デンタルフロスなどの補助用具も併用して、歯垢の取り残しがないようにしましょう。
歯ブラシマニア。様々な知識から患者さんの口腔内に合わせた歯ブラシを選ぶのが得意。