この記事では、β-クリプトキサンチンの働きや取り入れ方について解説します。また、β-クリプトキサンチンの豊富なみかんを使った、簡単レシピも紹介しています。
β-クリプトキサンチンはカロテノイドのひとつであり、体内でビタミンAとして働く性質があります。また、ほかのカロテノイドとは違った健康効果があることが注目されている成分です。β-クリプトキサンチンに期待されるさまざまな機能や取り入れ方、簡単レシピを紹介します。
β-クリプトキサンチンの特徴
β-クリプトキサンチンとは「カロテノイド」と呼ばれる成分の一種で、黄色の色素成分です。柑橘類に含まれる成分で、特に温州みかんに多く含まれています。
カロテノイドにはほかにも「α-カロテン」「β-カロテン」などの種類があり、体内でビタミンAに変換されて働くため「プロビタミンA」とも呼ばれています。
β-クリプトキサンチンは体内でビタミンAとして、目の働きの維持、免疫機能の維持、粘膜の健康維持などさまざまな働きを担っている成分です。
また、ほかのカロテノイドにはみられない健康効果があることがわかってきており、がんや骨粗しょう症の予防などについて、注目されています。
β-クリプトキサンチンに期待される効果・効能
β-クリプトキサンチンに健康効果が期待されているのは、ほかのカロテノイドに比べて吸収されやすく、長く体内にとどまる性質があるからと考えられています。
β-クリプトキサンチンの豊富なみかんを旬のシーズンだけ摂取しても、長い期間、体への良い影響が続くことがわかってきました。特に日本はみかんの摂取量が多いため、β-クリプトキサンチンの血中濃度が高い傾向があり、さまざまな健康効果をもたらしているのではないかと考えられています。
β-クリプトキサンチンに期待される機能について、さらに詳しく見てみましょう。
がんの予防
β-クリプトキサンチンは抗酸化作用があり、体内の酸化ストレスを緩和させる働きがあります。酸化ストレスはさまざまながんを引き起こす原因になることが知られているため、β-クリプトキサンチンの働きががん予防に役立ってくれるのです。
なかでも、特に喫煙者の肺がんのリスクを低減させることがわかってきました。喫煙により体内では酸化ストレスが高まりますが、β-クリプトキサンチンの強い抗酸化作用により、酸化ストレスを抑えてくれるのではないかと考えられています。
また、ほかの乳がん、⼝腔咽頭がん、喉頭がんなどの予防についても効果があるのではないかとして、研究が進められています。
骨粗しょう症予防
β-クリプトキサンチンは骨が溶け出る作用を抑えて、骨の形成を促す作用があることが知られており、骨粗しょう症の予防が期待されています。
特に女性は閉経によるホルモンバランスの変化で骨粗しょう症のリスクが高まりますが、β-クリプトキサンチンの血中濃度が高い人ほど、骨密度が高いことがわかりました。
骨粗しょう症の予防の基本はカルシウムなどの栄養素の摂取ではありますが、β-クリプトキサンチンの働きにも今後注目したいものです。
2型糖尿病のリスクを低下
β-クリプトキサンチンの血中濃度が高い場合、インスリン抵抗性のリスクが低いことがわかっています。その結果、2型糖尿病のリスクの低下につながる可能性があります。
インスリン抵抗性とは、血糖値を下げるホルモンであるインスリンが十分に働けなくなる状態のことです。インスリン抵抗性は肥満や食べすぎなどによって起こり、2型糖尿病のリスクとなります。
β-クリプトキサンチンがなぜインスリン抵抗性を改善するかははっきりとわかっていませんが、抗酸化作用により酸化ストレスが軽減することが理由のひとつとして考えられています。
脂質代謝の改善・動脈硬化の予防
β-クリプトキサンチンの血中濃度が高いと、善玉コレステロール値が高いという報告があります。善玉コレステロールは悪玉コレステロールを減らす作用があるため、結果的に悪玉コレステロール値の上昇を抑えてくれます。
悪玉コレステロール値の低下に加えて、抗酸化作用による動脈硬化の予防も期待でき、健康づくりに役立つ成分といえるでしょう。
歯周病予防を期待
β-クリプトキサンチンは、歯周病予防や進行の抑制につながる可能性があります。
歯周病になると骨を溶かす作用が亢進して、歯を支える骨(歯槽骨)が脆くなってしまい、最終的には歯を失う原因となります。
β-クリプトキサンチンは骨粗しょう症予防に効果が期待されているように、骨を溶かす作用を抑えてくれるため、歯槽骨が脆くなるのを防いでくれるのです。
まだ研究が進められている段階ではありますが、今後の研究に期待しましょう。
β-クリプトキサンチンの1日の摂取量の目安はある?
β-クリプトキサンチンのみの1日の摂取量の目安は示されていません。
β-クリプトキサンチンをはじめとするプロビタミンAは、「レチノール」に換算された量が食事摂取基準として示されています。β-クリプトキサンチンのビタミンA活性は、レチノールの24分の1です。つまり、1 µgのレチノールを摂るには、24 µgのβ-クリプトキサンチンが必要というわけです。
ビタミンAを摂る目的だとβ-クリプトキサンチンはたくさんの量が必要になるため、非効率のように思えるかもしれません。しかし、β-クリプトキサンチンは体内に長くとどまることで、ほかのプロビタミンAにはない効果が期待できると考えられています。
ビタミンAの1日の摂取量の目安や詳しい働きは下記の記事で解説しています。
また、1日の摂取量の目安ではありませんが、β-クリプトキサンチンに骨への健康効果を期待する場合は、1日3 mgの摂取が良いといわれています。
みかん1個100 gにβ-クリプトキサンチン約1 mgが含まれるため、みかん3個ほどが目安といえます。
果物の1日の摂取量の目安は200 g程度とされているため、みかんを健康的に取り入れたい場合は、1日あたり2〜3個程度を目安にすると良いでしょう。
β-クリプトキサンチンが不足するとどうなる?
β-クリプトキサンチンを含めたビタミンAが不足した状態になると、皮膚の乾燥や免疫機能の低下、目の働きの低下などの影響が知られています。
ただし、ビタミンAはβ-クリプトキサンチン以外からも摂取できます。β-クリプトキサンチンなどのプロビタミンAが不足していても、ほかの食べ物からビタミンAを摂れていれば、欠乏症はみられないとされています。
β-クリプトキサンチンを過剰摂取するとどうなる?
β-クリプトキサンチンなどのプロビタミンAは、体内で過剰になるとビタミンAの変換が少なくなります。そのため、一般的に過剰症は知られていません。
ひとつ、健康に影響のない過剰摂取の症状として「柑皮症(かんぴしょう)」があります。柑皮症は皮膚が黄色くなる症状で、みかんなどの柑橘類をたくさん食べた際に起こることがあります。
柑皮症の原因はみかんなどの柑橘類に含まれる、β-カロテンやβ-クリプトキサンチンなどの色素成分が皮膚に沈着することです。健康に影響はなく、摂取を中止すると改善されます。
ほかにも、β-クリプトキサンチンを含むみかんなどの食べすぎにより、糖質やカロリーの過剰摂取になり、肥満や血糖値の上昇などにつながるおそれがあります。健康に良いからといって食べすぎてしまうと、逆効果になりかねません。
みかんなどの柑橘類は適量を心がけるようにしましょう。
β-クリプトキサンチンが豊富な食べ物
β-クリプトキサンチンは温州みかんにもっとも多く含まれ、ほかの柑橘類や柿、赤ピーマンなどにも含まれています。
β-クリプトキサンチンは脂溶性であるため、脂質と一緒に摂ると吸収されやすくなります。しかし、β-クリプトキサンチンは体内に吸収されやすい特徴があるため、そのまま柑橘類を食べる方法でも問題ないでしょう。
▼100 gあたりのβ-クリプトキサンチン含有量
食品名 |
含有量 |
温州みかん |
1,700 μg |
みかんジュース (濃縮還元)
|
1,100 μg |
ぽんかん |
1,000 μg |
みかん缶 |
640 μg |
不知火 (しらぬい)
|
630 μg |
びわ |
600 μg |
柿 |
500 μg |
ゆず(皮) |
440 μg |
いよかん |
270 μg |
赤ピーマン |
230 μg |
オレンジ (ネーブル)
|
210 μg |
はっさく |
170 μg |
β-クリプトキサンチンたっぷりの「みかんのさっぱりフレンチトースト」のレシピ
β-クリプトキサンチンたっぷりの「みかんのさっぱりフレンチトースト」のレシピを紹介します。
みかんの絞り汁を加えて作るフレンチトーストは、さっぱりとしたさわやかな味わいです。旬の時期はフレッシュなみかんの絞り汁がおすすめですが、手に入らない時期はみかんジュースで代用できます。
バターでβ-クリプトキサンチンの吸収を高め、さらに牛乳でカルシウムをプラスし、歯の健康づくりにも良い効果が期待できます。
<材料>(2人分)調理時間:15分(漬け込む時間は除く)
- フランスパン:4切れ(1.5~2 cm厚)
- 卵:1個
- (A)みかんの絞り汁:50 ml
- (A)牛乳:50 ml
- (A)砂糖:大さじ1
- バター:10 g
- みかん(お好みで・飾り用):1個
- セルフィーユやミントなど(お好みで):適量
<作り方>
- バットに卵と(A)を入れてよく混ぜ合わせ、フランスパンを浸します。ときどき上下を返しながら、約20分ほど浸します。
- フライパンにバターを入れ弱火で熱し、1を並べ、片面2〜3分ずつ焼きます。器に盛り、お好みで食べやすい大きさに切ったみかんを添え、セルフィーユやミントを飾ります。
<ポイント>
そのままでも食べられますが、お好みではちみつやメープルシロップをかけるのも良いでしょう。
前日の夜に仕込んでおけば、朝は焼くだけで手軽な朝食になります。
みかんシーズンにβ-クリプトキサンチンを取り入れよう
β-クリプトキサンチンを豊富に含むみかんは、古くから日本人の健康を支えてくれていると考えられています。食べすぎに注意しながら上手に取り入れ、健康づくりに役立てましょう。