この記事では、セレンの主な働きや過不足による影響、豊富な食べ物について紹介します。また、セレンが豊富なまぐろを使った「まぐろの油淋鶏(ユーリンチー)風」のレシピもご紹介します。
セレン(元素記号:Se、英語表記:Selenium)は、健康を保つために欠かせないミネラルのひとつです。必要な量はごくわずかですが、抗酸化システムや甲状腺ホルモンの代謝など、体内のさまざまな働きに関わっています。この記事では、セレンの1日の摂取量の目安や過不足の影響、豊富な食品や簡単レシピを紹介します。
セレンが豊富な食材を使った「まぐろの油淋鶏(ユーリンチー)風」のレシピ
セレンが豊富なまぐろを使った「まぐろの油淋鶏風」のレシピを紹介します。
香ばしく焼いたまぐろに、油淋鶏風のねぎだれをたっぷりかけて仕上げます。刺身用のさくが手ごろに手に入ったときにも活用しやすく、生の魚が苦手な方にも取り入れやすい一品です。
まぐろにはセレンのほか、鉄やビタミンD、ビタミンE、DHA・EPAなども含まれています。なかでもビタミンDはカルシウムの吸収を助け、歯や骨の健康を保つためにも大切な栄養素です。
<材料>(2人分)調理時間:20分
- まぐろ(刺身用・さく):200 g
- 長ねぎ(みじん切り):1/2本
- (A)しょうゆ:小さじ1
- (A)酒:小さじ1
- (A)おろししょうが:小さじ1/2
- (A)塩、こしょう:少々
- 片栗粉:適量
- サラダ油:大さじ2~3
- (B)しょうゆ:大さじ1
- (B)酢:小さじ2
- (B)砂糖:小さじ1
- (B)ごま油:小さじ1
- (B)おろししょうが:小さじ1/4
- レタス・ミニトマト(お好みで):適量
<作り方>
- まぐろは2〜3 cmの角切りにし、(A)をもみ込んで10分ほどおきます。
- 耐熱容器に(B)を入れ、電子レンジ(600 W)で約20〜30秒加熱し、砂糖が溶けるまでよく混ぜます。長ねぎを加えて混ぜ、粗熱が取れるまでおきます。
- まぐろの汁気をキッチンペーパーでふき、片栗粉をまぶします。
- フライパンにサラダ油を入れて中火で熱し、まぐろを入れます。転がしながら焼き、全体に焼き色がついて火が通ったら取り出します。
- 器に4を盛って2のたれをかけ、お好みでレタスやミニトマトを添えます。
<ポイント>
まぐろは加熱しすぎると硬くなりやすいため、表面がこんがりとして中まで火が通ったら取り出しましょう。
セレンの特徴
セレンはミネラルのひとつで、体に欠かせない必須栄養素です。必要量はわずかですが、過剰に摂取すると毒性を示すことが知られています。
過剰摂取によって健康への影響が現れる量と、必要量との差が比較的小さいため、不足だけでなく摂りすぎにも注意が必要です。
セレンは土壌や水など自然界に広く存在し、魚介類や肉類、卵などさまざまな食品にも含まれています。食品中のセレン含有量は、土壌中のセレン濃度や飼料などの影響を受けるため、地域や食品によって差があるのが特徴です。
食事から摂取したセレンは、体内で「セレノプロテイン」と呼ばれるタンパク質の一部となって働きます。セレノプロテインにはさまざまな種類があり、甲状腺ホルモンを活性化する酵素系や、活性酸素による酸化ストレスから体を守る抗酸化システムなどに関わっています。
このように、セレンは必要量こそわずかですが、体のさまざまな機能を正常に保つために大切な栄養素です。
セレンに期待される効果・効能
セレンは体内でセレノプロテインとして、さまざまな働きを担っています。ここでは、セレンが関わる代表的な働きを紹介します。
甲状腺ホルモンの代謝・活性化
セレンは甲状腺に多く存在し、甲状腺ホルモンの活性化に関わる酵素の構成成分となり、甲状腺ホルモンの代謝に関わっています。
甲状腺ホルモンは新陳代謝を調整するほか、子どもの発育や発達にも深く関わるホルモンです。そのため、セレンを不足なく摂ることは、甲状腺機能を正常に保つためにも大切といえます。
抗酸化システムへの関与
セレンの代表的な働きのひとつが、抗酸化システムへの関わりです。
セレンは、抗酸化酵素である「グルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)」の構成成分となります。この酵素は、体内で増えすぎた活性酸素を処理し、酸化ストレスから細胞を守る働きに関わっています。
活性酸素は体内でも常に作られており、細胞間の情報伝達や病原体の排除などに役立っています。しかし、増えすぎると酸化ストレスが生じ、細胞や組織にダメージを与えることがあります。セレンは抗酸化酵素の構成成分として、こうした酸化ストレスから体を守る仕組みに関わっています。
免疫機能を維持
セレンは免疫細胞を活性化させ、免疫機能を正常に保つ働きにも関わっています。
セレンが欠乏すると、免疫細胞の働きに影響し、ウイルスや細菌などから体を守る力が低下する可能性があります。
セレンをたくさん摂れば免疫力が高まるわけではありませんが、免疫機能を正常に保つためにも、不足しないように摂ることが大切です。
心臓や血管の健康との関係
セレンは抗酸化システムを通じて、心臓や血管の健康を支えています。
例えば、セレンを含む抗酸化酵素には、動脈硬化や心筋梗塞などとの関わりが知られている「脂質過酸化物」を分解する働きがあります。また、セレンが炎症反応を抑える働きに関わることも、心血管系の健康との関連が考えられる理由のひとつです。
さらに、セレンが著しく欠乏すると、心筋障害などがみられることも知られています。このことからも、セレンは心臓や血管の健康を保つために大切な栄養素といえるでしょう。
歯・歯ぐきとの関係
セレンは先述の通り、抗酸化システムや炎症反応の調整に関わる栄養素です。こうした働きは、歯や歯ぐきの健康を考える上でも注目されています。
例えば歯周病は、歯周病菌などによって歯ぐきに炎症が起こる病気です。その進行には炎症だけでなく、活性酸素による酸化ストレスも関与することが知られています。
とはいえ、セレンを積極的に摂ることで歯周病を予防したり改善したりできることが確認されているわけではありません。
歯の健康づくりには、毎日のケアや定期的な歯科受診を基本とし、セレンをはじめとするさまざまな栄養素をバランスよく摂ることが大切です。
セレンの1日の摂取量の目安
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、18歳以上のセレンの推奨量は1日25〜35 μgとされています。
年齢・性別に応じた1日あたりの推奨量は、下記の通りです。
▼セレンの食事摂取基準(1日あたりの推奨量)
| 年齢 |
男性 |
女性 |
| 1~2歳 |
10 μg |
10 μg |
| 3~5歳 |
15 μg |
10 μg |
| 6~7歳 |
15 μg |
15 μg |
| 8~9歳 |
20 μg |
20 μg |
| 10~11歳 |
25 μg |
25 μg |
| 12~14歳 |
30 μg |
30 μg |
| 15~17歳 |
35 μg |
25 μg |
| 18~29歳 |
30 μg |
25 μg |
| 30~49歳 |
35 μg |
25 μg |
| 50~64歳 |
30 μg |
25 μg |
| 65~74歳 |
30 μg |
25 μg |
| 75歳以上 |
30 μg |
25 μg |
| 妊婦(付加量) |
ー |
+5 μg |
| 授乳婦(付加量) |
ー |
+20 μg |
セレンが不足するとどうなる?
セレンはさまざまな食べ物に含まれているため、一般的な食生活を送っていれば、セレンが不足する可能性は低いと考えられています。
1988年の調査で、日本人の平均的なセレン摂取量は、約100 μg/日と推定した報告(※1)があります。現在の食習慣と異なる可能性がありますが、この摂取量は18歳以上の推奨量である25〜35 μg/日を上回る量です。魚介類をよく食べる食習慣も、日本人がセレンを摂りやすい理由のひとつと考えられています。
一方、セレンの欠乏症は、腎不全・透析の場合や、完全静脈栄養(必要な栄養素をすべて静脈から点滴で補う栄養法)の場合などに報告されています。
セレン欠乏による症状として、心筋症、下肢筋肉痛、筋力低下、皮膚の乾燥、爪の異常、脱毛などが知られています。特に、セレン欠乏による心筋障害で死亡した症例も報告されていることから、著しい欠乏には注意が必要です。
セレンを過剰摂取するとどうなる?
セレンは、通常の食生活を送っている場合は、過剰摂取となる可能性は低いとされています。ただし、サプリメントなどから追加で摂る場合は注意が必要です。
また、セレンを非常に多く含む食品を毎日のようにたくさん食べる場合も、過剰摂取につながる可能性があります。とくにブラジルナッツは、1粒あたり68〜91 μgのセレンを含むとされており、食べ過ぎには注意が必要です(※2)。
セレンの耐容上限量は、18歳以上の場合、男性で1日400〜450 μg、女性で1日350 μgとなっています。
過剰摂取が続くと、脱毛や爪の脱落、下痢、おう吐、神経症状、呼気にんにく臭などがみられることがあります。さらに、セレンの過剰摂取により、糖尿病の発症リスクが高まる可能性も指摘されています。
セレンはサプリメントなどから必要以上に補うのではなく、普段の食事から摂ることを基本とし、特定の食品に偏らず、さまざまな食品をバランスよく取り入れましょう。
セレンが豊富な食べ物
セレンはさまざまな食品に含まれていますが、特に魚介類や肉類に豊富です。また、卵や大豆製品、ナッツ類からも摂取できます。
具体的な食品例や含有量を見てみましょう。
まぐろやかれいなどの魚介類
魚介類のなかでは、まぐろやかれい、ぶりなどに多く含まれています。魚介類からは良質なタンパク質に加え、DHA・EPAやビタミンDなども摂取できます。
▼100 gあたりのセレン含有量
| 食品名 |
含有量 |
| 本まぐろ |
110 μg |
| かれい |
110 μg |
| めばち |
75 μg |
| まさば |
70 μg |
| ぶり |
57 μg |
| うなぎ |
50 μg |
| 牡蠣 |
46 μg |
| あじ |
46 μg |
レバーや鶏ささみなどの肉類
肉類では、特にレバーにセレンが豊富です。ほかにも、豚肉や鶏肉など普段使いしやすい肉類にも含まれています。
さまざまなタンパク源を組み合わせながら、肉類を上手に取り入れましょう。
▼100 gあたりのセレン含有量
| 食品名 |
含有量 |
| 豚レバー |
67 μg |
| 鶏レバー |
60 μg |
| 牛レバー |
50 μg |
| 鶏ささみ |
22 μg |
| 豚ロース |
21 μg |
| 豚ひれ |
21 μg |
鶏卵や納豆などの卵・乳・豆類
卵やチーズ、大豆製品にもセレンが含まれています。毎日の食卓に取り入れやすく、セレン以外のタンパク質やカルシウムといった栄養素も補給できるため、積極的に取り入れると良いでしょう。
▼100 gあたりのセレン含有量
| 食品名 |
含有量 |
| 全卵(鶏卵) |
24 μg |
| プロセスチーズ |
13 μg |
| 納豆 |
16 μg |
| 油揚げ |
8 μg |
ごまやカシューナッツなどのナッツ類
ごまやカシューナッツなどにもセレンが含まれています。
植物性食品のセレン含有量は、栽培された土壌に含まれるセレン量などによって大きく変わることが知られています。
下記は日本で一般的に利用されている食品の標準的な含有量です。産地などによって差がありますが、ひとつの目安として参考にしてください。
▼100 gあたりのセレン含有量
| 食品名 |
含有量 |
| いりごま |
27 μg |
| カシューナッツ |
27 μg |
| マカダミアナッツ |
13 μg |
| チアシード |
11 μg |
セレンは不足にも摂りすぎにも気を付けよう
セレンは、抗酸化システムや甲状腺ホルモンの代謝、免疫機能など、体内のさまざまな働きを支える大切なミネラルです。
魚介類や肉類、卵、大豆製品など身近な食品に含まれており、日本人は通常の食生活で不足しにくいとされています。そのため、セレンだけを意識して特定の食品やサプリメントをたくさん摂る必要はありません。
さまざまな食品を組み合わせたバランスの良い食事を心掛け、セレンを含むミネラルやビタミンを幅広く取り入れましょう。
【参考】
※1:鈴木継美, 今井秀樹, 小林香苗, 本郷哲郎, 柏崎浩, 大塚柳太郎, 鈴木久乃, 石田裕美,“日本人のセレン摂取量 -食材料・料理の実測値および文献値による推定-”栄食誌 1988,vol41,,91-102.
※2:厚生労働省『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』eJIM(イージム)「
セレニウム(セレン)Selenium」
厚生労働省「
日本人の食事摂取基準(2025年版)」
文部科学省「
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」