首が腫れたのはリンパが原因?症状によって関係する器官が違う【医師監修】

首が腫れたのはリンパが原因?症状によって関係する器官が違う【医師監修】

この記事では、首の腫れが見られる主な病気と、歯が原因で首が腫れる病気の症状や原因について解説します。

               
首の腫れや炎症、しこりの形成などはさまざまな病気に見られる症状です。なかには歯が原因で起こる病気や、まれに重大な病気が隠れていることもあります。それらの症状が見られる際に、何が原因になっているか、何科を受診するべきかも見ていきましょう。

首の腫れに関係する主な器官

首の腫れや炎症、しこりなどの症状は、首周辺の器官が関係して起きることが多いです。まずは首の腫れに関係する主な器官について見てみましょう。    

唾液腺(耳下腺:じかせん・顎下腺:がくかせん)

耳下腺と顎下腺は、それぞれ唾液を作る大唾液腺3線の1つです。耳下腺は左右の耳下の前辺りに、顎下腺は左右の顎の下部に分布しています。これらの唾液腺に細菌・ウイルスが入った時や、唾液分泌が正常にできない時などに首の腫れを生じることがあります。

甲状腺

甲状腺は、体の代謝に不可欠なホルモンを分泌する器官です。首の中央にある喉仏の下に位置しています。ウイルス感染や甲状腺内部にできた腫瘍などの影響で腫れることがあります。

リンパ節

首の周りには、数十個以上のリンパ節が集まっています。リンパ節は免疫器官の1つで、体内に入り込んだ細菌やウイルス、がん細胞などを体から排除するために、炎症を起こすことが多いです。

首の腫れが見られる主な病気

唾液腺や甲状腺、リンパ節などのさまざまな病気で、首の腫れやしこり、炎症などの症状が見られます。ここでは、首の腫れが見られる主な病気の症状と原因について見ていきましょう。

おたふく風邪

おたふく風邪の正式名称は、流行性耳下腺炎と言います。幼児から小学校低学年くらいの子どもがかかりやすい病気です。
<症状>
耳下腺や顎下腺が腫れ、押したり、食べ物を飲み込んだりする際に痛みを生じることがあります。唾液腺のある顔周りに腫れを生じるのが特徴です。また発熱や風邪を引いた時のような頭痛、倦怠感、食欲不振などの症状も見られます。
<原因>
ムンプスウイルスが耳下腺組織に感染して炎症を起こします。一度おたふく風邪にかかると抗体ができるため、再び感染する可能性は低いです。

唾液腺腫瘍

唾液腺の耳下腺や顎下腺、舌下腺などにできる腫瘍で、とりわけ耳下腺によく見られます。良性腫瘍が多いですが、舌下腺にできる腫瘍の中には、まれに悪性腫瘍のケースもあります。
<症状>
良性腫瘍である場合は痛みがないことが多く、腫れやしこりができてから初めて気づくケースもあるようです。悪性腫瘍では、顔面神経の麻痺や舌の痛みを生じることがあります。
<原因>
多くの唾液腺腫瘍の原因については、まだ解明されていません。一部の唾液腺腫瘍では、ウイルス感染や放射線被ばくなどによる誘因も報告されています。

甲状腺腫瘍

甲状腺にできる腫瘍で、良性と悪性があります。良性腫瘍には、腺腫様甲状腺腫(せんしゅようこうじょうせんしゅ)や腺腫様結節(せんしゅようけっせつ)、悪性腫瘍には、甲状腺乳頭がんや甲状腺濾胞(こうじょうせんろほう)がんなどが見られます。
<症状>
良性、悪性にかかわらず、初期にはほとんど自覚症状がありません。痛みはあまり伴わず、腫瘍が大きくなると腫れやしこりを形成します。声のかすれや食べ物が飲みにくいなどの症状もあるようです。
<原因>
ヨードの過剰摂取や不足により、腫瘍であるしこりを形成されることがあります。甲状腺が全体的に大きく腫れる場合は、バセドウ病や橋本病の可能性も考えられます。そのほか、放射線や先天性の遺伝子異常が原因で起きる場合もあるようです。

頸部リンパ節腫脹(けいぶりんぱせつしゅちょう)

首にあるリンパ節に、炎症や腫瘍ができて腫れる病気です。細菌・ウイルスによる感染、リンパ節のがん、がんの転移などによるものがあります。
<症状>
感染症の場合は、急激にリンパ節が腫れ、発熱と痛みを伴います。特に耳下にある大きなリンパ節の腫れが多く見られます。がんの転移やリンパ節のがんの場合は、痛みを生じず徐々に腫れていくケースが多いようです。
<原因>
細菌やウイルスが体内に入り込み、リンパ節が腫れます。上気道炎やむし歯でも腫れることがあります。リンパ節自体ががん化する悪性リンパ腫のメカニズムは、まだ解明されていません。  

正中頚嚢胞(せいちゅうけいのうほう)

首上部の中央に袋状の腫瘤ができる病気で、甲状舌管嚢胞(こうじょうぜつかんのうほう)とも言います。
<症状>
感染により炎症を起こすと、患部が腫れて痛みを伴います。皮膚にも炎症がおよび発赤するケースもあるようです。まれに、皮膚につながる孔から膿汁が出ることもあります。
<原因>
甲状腺は最初、胎児期に舌の一番奥にできます。それが喉の真ん中を通って気管の前に下りてきます。この通り道に甲状舌管という管が一時的にできます。通常は甲状腺ができあがるとこの管は消失するのですが、何らかの理由でその管が残ってしまうと嚢胞を形成します。

首の腫れは耳鼻咽喉科を受診する

首の腫れには、しこりの形成や炎症による痛み、発熱などの症状を伴う場合があります。腫瘍は良性腫瘍であることが多いですが、なかには悪性腫瘍など重大な病気が隠れているケースもあるので、速やかな医療機関の受診をおすすめします。これらの首周りの腫れや炎症は、耳鼻咽喉科を受診すると、病気の早期発見と早期治療につながるでしょう。

歯や口内環境が原因で首が腫れる病気

首が腫れる病気には、むし歯や歯周病、かぶせ物、入れ歯など、歯が関係して起こるものもあります。ここでは、歯が原因で首が腫れる病気の症状と原因について見ていきましょう。

唾液腺炎(耳下腺炎・顎下腺炎)

唾液腺である耳下腺や顎下腺に炎症が生じる病気です。
<症状>
唾液腺がある耳の下や顎の下が腫れます。食事中など唾液が分泌される際に痛みを感じることもあるようです。
<原因>
細菌やウイルス感染、唾液腺管が詰まる唾石症(だせきしょう)、免疫異常などが原因で腫れを生じます。細菌やウイルス感染が原因の場合は、痛みや発熱を伴うことが多いようです。口内の乾燥や炎症、むし歯や歯周病の原因である細菌が増殖した際には、顎下腺にまで炎症がおよぶことがあります。その際は、腫れの他に強い痛みや皮膚の発赤の症状も見られます。

口腔底膿瘍(こうくうていのうよう)

口腔底(下顎の歯肉と舌の間)に、膿が溜まった状態です。
<症状>
口腔底や顎下腺が腫れ、痛みや発熱を伴います。顎が腫れて二重顎のように見えることもあります。
<原因>
口腔底膿瘍の原因はさまざまですが、むし歯や抜歯による炎症が口腔底までおよぶケースが多いです。扁桃炎、頸部リンパ節、唾液腺の炎症により起こることもあります。  

舌がん

舌にできる悪性腫瘍で、口腔がんの中で6割を占めています。60歳代の男性に多く見られるのが特徴です。
<症状>
多くの場合、舌の縁にただれや発赤、口内炎のような初期症状が現れます。進行すると潰瘍を形成したり、盛り上がったりするようになります。首のリンパ節に転移しやすいのも特徴の1つですが、初期から首に症状が現れるケースは少ないようです。
<原因>
喫煙や飲酒、一部ウイルス感染によるものがあげられます。なかでも喫煙による舌がんの発生率は高いです。尖ったむし歯や差し歯などによる舌への慢性的な刺激、歯周病などの口内の不衛生も関係していると言われています。

口内の症状を伴う首の腫れは歯科を受診する

首の腫れとともに、歯や舌など口内にも症状がある場合は、歯科医院での受診をおすすめします。例えば、唾液腺炎は、むし歯や歯周病が原因のケースもあり、舌がんは、歯科医院で発見されることが多いです。
定期的に歯科医院を受診すれば、これらの病気の早期発見につながります。また日頃から自分の口内環境をチェックしておくことも大切です。唾液検査シルハは、むし歯菌の活性度や歯と歯ぐきの健康に関する項目をチェックできます。定期的に検査すれば、むし歯や歯周病予防に役立ちます。
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首の腫れは早めに医療機関を受診しよう

首の腫れや炎症はさまざまな病気で見られます。自覚症状がなく、しこりが大きくなってから気づくこともあります。なかには重大な病気が隠れている場合もあるので、早めに医療機関を受診し、早期発見と早期治療につなげましょう。

監修医師:秋山 志穂 先生

東京慈恵会医科大学附属病院勤務。専門は脳神経内科・歯科。日本大学歯学部卒業後、都内大学病院歯科口腔外科学教室に10年勤務。
歯科医師として働きながら北里大学医学部編入、卒業後はけいゆう病院で研修後、東京慈恵会医科大学脳神経内科学教室に入局、勤務中。
内科認定医、認定産業医、脳神経内科学会正会員、脳卒中学会正会員、日本口腔内科学会正会員。

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