八重歯とはどんな歯? リスクを正しく知り、適切なケアや治療を受けよう【歯科医師監修】

八重歯とはどんな歯? リスクを正しく知り、適切なケアや治療を受けよう【歯科医師監修】

(2023年4月25日更新)
八重歯とは、歯列から外れた部分に生えた犬歯のことです。日本では可愛らしい印象を持たれることもある八重歯ですが、八重歯がむし歯や歯周病になるリスクが高いことはご存知でしょうか。この記事では、八重歯の定義やそのリスク、状態別の治療法とケア方法をご紹介します。自分の八重歯の状態を知り、適した治療法やケア方法を選ぶための参考にしてくださいね。

               

八重歯とは?

八重歯とは、上の歯の前から3番目に生える犬歯が、両隣の歯よりも外側の位置に飛び出して生えている状態の歯​のことを言います。また、乱杭歯(らんぐいば)や叢生(そうせい)と呼ばれることもあります。
八重歯になってしまう主な原因は、顎が小さいために永久歯が生えるスペースが足りなくなることです。犬歯は最後に生えるケースが多いため、歯列からはみ出してしまいます。また、歯自体が大きい場合も同じようにスペースがなくなり、八重歯になってしまいます。
幼い頃からやわらかいものばかり食べていたり、口呼吸をしていたりすると、顎の成長が遅れて小さくなりやすいです。また、乳歯が抜けるタイミングが遅いのも八重歯になりやすい原因のひとつと言われています。

八重歯を放置するとこんなリスクがある

八重歯は両隣の歯よりも外側の位置に飛び出して生えているため、唇が閉じにくかったり、他の歯に負担が生じたりすることがあります。歯磨きが行き届かず、むし歯や歯周病になることも少なくありません。ここでは、八重歯を放置した場合に考えられるリスクを見ていきましょう。

口が開きやすく、口内トラブルを引き起こしやすい

八重歯があると、唇が閉じにくく口が開きやすいため口呼吸になりやすいです。口呼吸は歯の着色や歯肉炎、免疫力の低下などを引き起こす恐れがあります。
また、八重歯が唇にあたって傷つき、口内炎になってしまうことも少なくありません。粘膜を刺激し続けていると、口腔がんになるリスクも高まります。

八重歯以外の歯に負担がかかる

犬歯には、歯にかかる負担を歯列全体に分散する役割があります。

しかし、八重歯の状態では上下が噛み合わないため、奥歯に大きな負担がかかり、歯にヒビが入ったり、すり減ったりしてしまいます。それにより、むし歯や知覚過敏になるリスクも高まります​。また、顎にも過度な負担がかかるため、顎関節症になる恐れもあります。

むし歯や歯周病になるリスクが高い

他の歯と重なり合っている八重歯は、歯磨きをしても汚れや歯垢(プラーク)をキレイに落としにくいです。そのため、むし歯や歯周病になるリスクも高まります​。

八重歯の治療は必要? 状態に適した4つの方法

八重歯は噛み合わせ上、重要な役割を持っています。そのため、状態を見ながら八重歯をできるだけ残す治療をすることがおすすめです。ここでは八重歯の状態別に行える治療方法についてご紹介します。

1.リスクが高い八重歯は抜歯して矯正する

歯列から完全にはみ出ているケースや、両隣の歯と重なり歯周病になるリスクが高い場合、または、むし歯や歯根が割れている八重歯などは抜歯を検討されます。抜歯後は矯正治療を行い、歯列や噛み合わせを調整します。

2.他の歯を抜歯して矯正する

八重歯の抜歯をせずに治療する方法もあります。例えば、八重歯の生えている位置が影響して他の歯が歯周病になってしまっているけれど、八重歯自体が歯周病になっていない場合、歯周病になった他の歯を抜歯して、矯正をした方が良いと考えられます。
また、八重歯がむし歯や歯周病などになっていないことが前提ですが、小臼歯を抜歯して八重歯が移動するスペースを作り、矯正することもひとつの方法です。八重歯や他の歯の矯正治療には、気になる歯だけを矯正する部分矯正と歯列矯正の2パターンがあります。

3.歯並びによっては抜歯せずに歯を削って矯正する

前歯のサイズのバランスを整えたり、歯を移動させる隙間が少し必要な場合には、ストリッピングという方法で歯を削った後に矯正する選択肢もあります。ストリッピングとは、歯の側面をヤスリのような器具で削り、隙間を作る方法のことです。
歯の隙間の片方ずつを0.25~0.5 mm以内、両方の合計を0.5~1.0 mm以内で削り、隙間を作っていきます。複数の歯に0.5 mmずつ削ると犬歯のスペースを確保できるようになります。ただし、ストリッピングを行えるかどうかは歯並びの状態次第です。

4.軽度の八重歯は矯正はせずに予防歯科をしっかり行う選択肢も

上記に該当しない程度の軽い八重歯の場合、むし歯や歯周病への予防をきちんと行えば、矯正をしない選択肢もあります。ただし、八重歯を放置することで起きるリスクもしっかり考慮し、将来的にデメリットが大きく感じるのであれば、歯科医院で矯正についての話を聞いたり、相談したりしてみてください。

八重歯のケア方法

矯正せずに八重歯を残す場合は、他の歯と重なり合っている部分や周囲の歯がむし歯や歯周病にならないように、日々のケアに力を入れましょう。最後に八重歯のケア方法をご紹介します。

歯ブラシの角度や持ち方を工夫して歯磨きをする

八重歯と他の歯が重なった部分は歯ブラシの毛先が届きにくいため、歯垢が溜まりやすい状態です。磨き残しがないかどうかを確認するために、歯垢染色剤を使うことをおすすめします。
磨き残しがある場合は、歯ブラシの使い方を見直してみましょう。歯ブラシを左右に動かすだけでなく、歯の形に合わせて角度や持ち方を変えるのがポイントです。歯ブラシで歯垢(プラーク)の除去が難しいときは、デンタルフロスも使ってケアすると良いでしょう。

定期検診を受ける

八重歯は歯磨きが難しく、磨き残しが多くなってしまうため、むし歯や歯周病になるリスクが高くなります。定期的に歯科医院を受診して、むし歯や歯周病になっていないかどうかを確認してもらいましょう。初期の段階でむし歯の治療を行うことで、その分治療期間が短く、費用も抑えられます。
定期検診の際に、クリーニングも行うと良いでしょう。歯磨きで除去できなかった歯垢は歯石になり、自分では落とせなくなります。歯石を除去することは、歯周病の予防や改善にも効果的です。

唾液検査をして自分の口内環境を把握する

定期検診の際に、あわせて唾液検査で自分の口内環境をチェックしましょう。唾液検査シルハは、水で10秒ほど口をすすぐだけで、口内環境に関わる6項目を測定でき、むし歯や歯周病予防に役立てられます。
シルハでチェックできるのは、むし歯菌の活性度、歯を溶かす酸の強さがわかる酸性度、酸に対する防御力の緩衝能、口内の炎症がわかる白血球、タンパク質の量、口内清潔度の指標となるアンモニアです。
磨き残しがあると、むし歯菌の活性度が上がったり、むし歯菌が酸を作ることで酸性度が上がってきます。
また、磨き残しが歯石になって歯ぐきの炎症が起きると、タンパク質や白血球の数値も上がってきます。
シルハの結果は、生活習慣や体質、その他の口内環境も影響して変わってきます。
お近くの歯科医院などで検査をして、ご自分に合わせたアドバイスを受けてみてください。
シルハの検査ができる医療機関の検索はこちらからできます。

八重歯とはどんな歯か、リスクを正しく知って適切な対処をしよう

八重歯は噛み合わせ上、重要な役割を担っているため、むし歯や歯周病になっていたり、歯列から大きく外れていたりする場合以外は、できるだけ残した方が良いでしょう。症状が軽い場合は、予防歯科を徹底して抜歯や矯正治療を行わない選択肢もあります。
自分の八重歯の生え方やそのリスクを知り、適切な治療法を選択しましょう。八重歯が気になる方は、ぜひ一度歯科で相談してくださいね。

監修歯科医師:三上智彦先生

医療法人社団 佑健会の柏KT矯正歯科 院長。
2008年に東京歯科大学歯学部 卒業。2012年に同大学院の矯正歯科専攻生課程修了し、矯正歯科医院にて矯正治療に従事。
日本矯正歯科学会の認定医やインビザライン認定ドクターなどの資格を持ち、有資格者としての専門知識や数千ある治療経験から患者様にとって最適な治療を提案し、理想のゴールへ近づけるお手伝いをしている。

三上智彦先生のプロフィール
https://yukenkai.com/tomohiko-mikami

医療法人社団 佑健会
https://yukenkai.com/

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