【歯科医師監修】
歯並びが悪くなる要因は、先天性のものから加齢によるものまでさまざまです。歯並びは、見た目だけではなく体にも影響を与えます。今回は、悪い歯並びの種類とその原因、体への影響について解説します。加齢とともに歯並びが悪くなる原因と対策についても解説しますので、ぜひ参考にしてください。
歯並びの種類と原因
悪い歯並びにはさまざまな種類があり、原因や症状によって細かく分類されています。まずは、自分の歯並びが次のどれに当てはまるのかをチェックしてみましょう。
でこぼこ:叢生(そうせい)
隣り合う歯がでこぼこに生えた歯並びで、「乱ぐい歯」とも呼ばれており、日本人に最も多い症状です。顎が小さく、歯が生えるスペースが十分でないため、重なり合って生えてしまいます。「八重歯」もこの叢生の1つです。
<原因>
・顎の成長が不十分である
・歯の大きさが平均より大きい、または歯の数は過剰である
・指しゃぶりなどの癖がある
・口周りの筋力がアンバランスである
出っ歯:上顎前突(じょうがくぜんとつ)
下の前歯に比べて上の前歯が著しく出張っている状態で、日本人に多い不正咬合(歯が正しく噛み合っていない状態)の1つです。上の歯が大きく前方に向かって生えているタイプや、上顎の骨が前に出ているタイプなどがあります。
<原因>
・指しゃぶり
・舌で歯の裏側を押す癖がある
・上顎の骨が前に出ている(上顎の骨が下顎より大きい)
・上顎の骨に対して下顎が小さい
受け口:下顎前突(かがくぜんとつ)
下の前歯が上の前歯よりも出ている状態で「反対咬合」とも言います。滑舌が悪くなり、特に「さ行」の発音がしづらくなります。
<原因>
・下顎が大きい、または上顎が小さいなど骨格に問題がある
・遺伝的な要因
開咬(かいこう)
奥歯をかみ合わせた時に、前歯だけが嚙み合わず常に開いている状態です。「オープンバイト」とも呼ばれます。
<原因>
・長期の指しゃぶり
・口呼吸をしている
・舌で歯を押す癖がある
・先天的要因によるもの
交叉咬合(こうさこうごう)
上下の歯が部分的に噛み合っていない歯並びです。例えば上の前歯は前に出ていて、奥歯は下の方が出ているといった具合に部分的に交叉しています。「クロスバイト」とも呼ばれます。
<原因>
・顎の成長がアンバランスである
・頬杖をつく癖がある
・片顎のみで噛む癖がある
すきっ歯:空隙歯列(くうげきしれつ)
歯の隙間が目立つ歯並び、いわゆる「すきっ歯」のことです。顎に比べて歯が小さかったり、顎が大きかったりすると、歯と歯の間にスペースができます。
<原因>
・もともと顎が大きく歯が小さい
・歯の本数が少ない
・片顎に力が入る姿勢を続けている
歯並びが体に与える影響
歯並びが悪いと見た目の印象だけでなく、体のさまざまな部分に悪影響が出てしまいます。
次に、悪い歯並びが体にどのような影響を与えるかについて見ていきましょう。
むし歯・歯周病になりやすい
歯並びが悪いと、歯と歯の隙間に食べかすや汚れが詰まりやすく、歯ブラシなどが届きにくいため、磨き残しが起きてむし歯や歯周病になりやすいです。
また口が閉じ切られずに口呼吸になるケースもあります。唾液には口内の細菌を洗い流したり、増殖を抑えたりする働きがありますが、口が閉じられないことにより口内が乾燥して唾液の量が少なくなり、むし歯や歯周病が進行しやすくなります。
口臭が強くなる
歯並びが悪いと、隅々まで歯ブラシが行き届かずに磨き残しが出てきます。歯に付着した汚れや食べかすには細菌が繁殖するため、口臭が強くなるのです。
また口がうまく閉じられない場合は、口内が乾燥しやすくなります。殺菌作用のある唾液で口内が十分に潤わないために、細菌が繁殖して口臭の原因になってしまうのです。
咀しゃく機能が低下し、胃腸に負担がかかる
上下の噛み合わせが合っていないと、食べ物を咀しゃくすることが難しくなります。通常、食べ物を良く噛むことで唾液の分泌が促されると、食べ物が消化されやすい状態になって胃腸へと送られます。しかし噛み合わせが悪いために咀しゃくが不十分になると、唾液の分泌が促されず、食べ物が消化されにくい状態のままで送られるため、胃腸の負担が大きくなります。
顔の形がゆがみやすい
噛み合わせの悪さが左右の噛む力の差や、片側だけで噛む癖をつける元になってしまい、片側の顔の筋肉だけが発達することで顔がゆがむ場合があります。顔がゆがむと、さらに左右の噛む力と噛み癖に影響を与えて顔がゆがむ、という悪循環が起こります。出っ歯(上顎前突)の場合は、口が閉じにくいため、口周りが突き出た感じに見えてしまうこともあるようです。
肩こり・頭痛・顎関節症が起こりやすい
噛み合わせの悪さは、顔周りの筋肉の緊張を招きます。その影響が骨格にまでおよび、ずれが生じて肩こりや頭痛、顎関節症につながることもあります。
発音・嚥下がしにくくなる
噛み合わせが悪いことにより、特定の音が発音しにくくなったり、舌が上下の歯の間に出て食べ物の飲み込みがうまくできなくなることもあります。
加齢とともに歯並びが悪くなる原因
年齢を重ねるとともに、食べ物が詰まりやすくなったり、噛み合わせが悪くなったりして、歯並びにも少しずつ変化が起きます。次に、加齢ととも歯並びが悪くなる原因について見ていきましょう。
歯並びが悪くなる原因①もとの噛み合わせが悪い
もともとの噛み合わせが悪いと、特定の歯に噛む力が集中して負担がかかってしまい、噛み合わせが安定しません。時間の経過とともに他の歯並びにも影響が出てきます。
歯並びが悪くなる原因②歯周病
歯周病が進行すると、歯を支えている骨が溶けて、歯が動いたりぐらつくようになります。そのため歯並びが悪化することがあります。
歯並びが悪くなる原因③抜歯後の放置
むし歯や歯周病が原因で抜歯した後や、治療途中に抜歯した箇所をそのまま放置すると、空いたスペースに隣の歯が傾き、歯並びに影響を与えてしまうことがあります。
歯並びが悪くなる原因④親知らず
親知らずは、まっすぐ生えてこなかったり、横向きのまま歯ぐきに埋まっていたりすることもありますが、親知らずが生えるスペースがないと、奥歯が前へ押しやられてしまい、前歯の歯並びに影響を与える可能性があります。
歯並びが悪くなる原因⑤歯ぎしり・食いしばり・頬杖
歯ぎしりや食いしばりなどをしている人は、歯が少しずつすり減り、歯並びに変化が起きやすくなります。また、頬杖などの癖も、歯並びに影響を与えると言われています。
歯並び悪化の予防と対策
歯並びが悪くならないよう予防するために、生活習慣の見直しや、歯科医院での受診など、日常生活でできることから始めてみましょう。次に歯並び悪化の予防と歯並びが悪くなったときの対策について見ていきます。
生活習慣を改善する
歯並びは日頃の何気ない生活習慣でも悪くなるため、その改善が予防へとつながります。歯並びが悪くなる要因になりやすい頬杖や片側だけの咀しゃく、舌で歯を押す癖などがないか、生活習慣を見直してみてください。
ただし、片側だけで咀しゃくする癖の根本的な原因が、もとの噛み合わせであることも多いため、生活習慣の見直しだけでは予防や対策が十分にできないケースもあります。歯科医院で検査を受け、必要な場合は歯列矯正を考えましょう。
むし歯・歯周病を予防する
先述の通り、むし歯や歯周病が進行すると、歯並びへの影響を与えるため、予防や治療が大切です。歯ブラシだけではなく、歯間ブラシやデンタルフロスを用いて歯と歯ぐきの間までしっかりと磨きましょう。睡眠不足やストレスで疲れがたまると免疫力が下がり、細菌感染のリスクが高まるため、体を休めて規則正しい生活を送ることも大切です。
歯科医院で定期検診を受ける
むし歯や歯周病を予防するためにも、歯科医院で定期検診を受けましょう。特に歯周病は重症化するまで自覚症状がないことが多いので、定期検診が早期発見につながります。
歯列矯正をする
歯並びの悪さを解決するために、歯列矯正をすることも1つの方法です。まずは歯科医師と相談して、矯正の必要性や費用・時間などをしっかりと吟味し、矯正するかどうかを判断しましょう。また歯列矯正をするにあたり、むし歯や歯周病の治療を先にする必要もあります。
シルハで口内環境を検査する
シルハは、歯の健康・歯ぐきの健康・口内の清潔度がチェックできる唾液検査です。水で10秒口をゆすぐだけで、自分の口内環境が分かり、セルフケアで改善するべき点が確認できます。歯並びにも影響を与えるむし歯や歯周病の予防にもおすすめです。
生活習慣を見直して、歯並びが悪くなるリスクを防ごう
歯並びが悪くなる原因には、先天性のものもありますが、生活習慣や加齢とともに起きるものもあります。歯並びが気になった時は、まずは歯科医院で相談することをおすすめします。定期的に検診を受けることでむし歯や歯周病を予防しながら、歯並びが悪くなるリスクも防ぎましょう。
監修歯科医師:古川 智基 先生
2013年に公立大学法人 九州歯科大学を卒業し、愛知学院大学附属病院総合診療部で研修医を修了。その後、愛知県・静岡県の開業医でインプラント・矯正の技術を含む全般的な歯科分野を学び、医療法人大志へ入社。2018年にみずほ台駅ナカ歯科・矯正歯科の指導医・副院長に就任し、2020年に和光市デンタルオフィス インプラント・矯正ステーションを開院、医療法人大志 専務理事 兼 院長に就任。
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