口内が粘つく原因には、ドライマウスや細菌、歯周病、飲酒や喫煙などが挙げられますが、これらのほとんどに共通しているのは「唾液の量の低下」です。歯周病などは治療が必要ですが、それ以外のものは、歯磨きや唾液腺のマッサージなど、普段のオーラルケアで改善・予防することが可能です。粘つきの主な原因と、自分でできる対処法、予防法、放置した場合のリスクについて、パラシオン歯科医院の小山安徳先生に取材しました。
口の中がネバネバする10の主な原因
口内の粘つきを感じるのは、唾液の量が不足していることが根本的に関係しています。唾液の量が減少する原因として挙げられるのが、ドライマウスや口内に存在する細菌のほか、歯周病や糖尿病といった疾患などです。主要な10の原因を紹介します。
ドライマウス
ドライマウスとは、口の中の唾液の量が少なく、乾いた状態をいいます。唾液には口の中を洗い流す自浄作用があるため、唾液の量が減って口が乾いてしまうと、細菌が口内にとどまりやすくなり繁殖しやすい環境になってしまいます。また、口呼吸などで口が開きがちな場合も、口内の唾液が蒸発して乾きがちになります。口の中が乾くと粘膜同士がくっついてしまうため、粘つきを感じやすくなるのです。
適宜水分補給をしたり、唾液が出やすい物を食べたり、ガムを噛んだりするといいでしょう。
細菌・雑菌
口内には約700~800種類もの細菌が棲むと言われています。数にすると1,000億個で、歯磨きをしていない人の場合はその10倍の1兆個にもなります。細菌の活動が活発化すると細菌が分泌する粘性成分がたくさん分泌されてしまい、口内が粘つく原因になります。
ただ、「細菌」と言っても全ての細菌が悪いわけではなく、90%は無害です。そのバランスが崩れ、悪玉菌が増えることで粘つきやすくなります。悪玉菌に取って替わられないように、毎食後に歯を磨くなど日常的にケアする必要があるでしょう。
加齢による唾液量の減少
年齢を重ねると、口の周りの筋肉が落ち、口を動かす力が弱まります。すると唾液を分泌する唾液腺が刺激されにくくなるため、唾液の量が少なくなり、口内が粘つきやすくなります。
飲酒
アルコールには利尿作用があり、体内の水分が尿で排出されることで、口内の潤いが低減します。そのため口内が粘つきやすくなるのです。
特に、夜寝ている間は口を動かさないため、唾液の分泌量が少なくなります。粘つきが気になりがちな方は、寝る前の飲酒を控えましょう。
喫煙
たばこの煙によって口内の粘膜が乾きやすくなり、粘つく原因になります。加えて、たばこの煙には有害な物質が含まれているため、口内の細胞にも悪影響を及ぼし、殺菌効果などが不足しがちになります。喫煙は口臭の悪化にもつながるなど、口内の環境にとって悪循環に陥りやすくなる一因なので、粘つきが気になる方は控えましょう。
薬の副作用
薬には唾液の分泌を低下させる成分が含まれていることがあります。ドライマウスが気になっている場合は、薬を購入する際に医師や薬剤師の方に相談してから購入を検討するといいでしょう。
閉経
女性は閉経すると、女性ホルモンが減少することで唾液の分泌量も減少します。そのため、口内が粘つきやすくなります。
歯周病
歯周病は、口内の細菌が増殖することで歯ぐきなどの歯周組織が炎症を起こす病気です。「歯周ポケット」と言われる歯と歯ぐきのすき間は、酸素が少ない上に唾液によって洗い流されることも少ないため、歯周病菌の住みかになりやすいです。歯周病菌が増えることで、口内が粘つく原因になります。
歯周病は、この後ご紹介する糖尿病との関連性も研究で証明されています。
糖尿病
血糖値が高い状態が続くと、尿の量が多くなり、体内の水分が減ってしまう傾向があります。そのため、糖尿病になると水分不足になり、唾液の量が不足しがちになるため、のどや口内が乾きやすくなる、とされています。そのため口内が粘つきやすくなります。
慢性的に唾液の量が少ない糖尿病の患者さんは、歯周病にもなりやすくなってしまうのです。
シェーグレン症候群
自己免疫疾患の一つで、免疫細胞が唾液腺を攻撃することで唾液が出なくなり、口内が乾燥状態になるといった症状が現れます。医師による適切な診断と、人工唾液を使用するなどの対処が必要となります。
口の中のネバネバ 自分でできる対処法
ここでは、自分でも取り組める粘つきの対処法を2つご紹介します。ただ、歯周病や糖尿病などが原因の場合や、粘つき以外に気になる症状があったり、粘つきが長く続いていたりする場合は、歯科医院を受診し、適切に対処してもらいましょう。
歯磨きをする
口内に残った食べかすをエサに、細菌は繁殖します。まずは毎食後に歯磨きをすることが、粘つきへの対処法の基本です。歯ブラシや歯磨き粉を使って丁寧にブラッシングをするほか、歯間ブラシやフロスを使って、歯と歯の間の食べかすもこまめに取り除くようにしましょう。
洗口液で口をすすぐ
洗口液(マウスウォッシュ)は細菌を洗い流すほか、細菌の繁殖を抑える効果も期待できます。ブクブクとして口全体に行き渡らせてすすぎ、吐き出しましょう。洗口液に含まれる薬用成分を口内にとどめるため、洗口液の後に水ですすぐ必要はありません。
口の中のネバネバ 予防するためのポイント
口内に粘つきが発生しないようにするポイントは、唾液が出るようにすることです。ここでは、自宅でできる予防方法を紹介します。日頃から意識して実践し、粘つきが発生しにくい口内環境にしていきましょう。
よく噛んで食べる
唾液を十分に出すには、よく噛んで食べることが有効です。特に酸味のある食べ物や、昆布などの噛み応えのあるものは効果的です。食事以外では、こまめにガムを噛むのもいいでしょう。
唾液腺マッサージ
唾液の90%以上は、大唾液腺(だいだえきせん)という器官から分泌され、耳下腺、顎下腺、舌下腺という3つから構成されます。これらの唾液腺を刺激することで唾液が出やすくなるため、唾液腺マッサージをすると効果的です。特に、耳下腺から分泌される唾液は比較的サラサラしているので、この唾液がしっかりと出ることで粘つきも軽減します。リラックスした状態で出るものなので、耳下腺のマッサージをする際はできるだけくつろいだ状態で行いましょう。
耳下腺のマッサージの方法は、こちらの記事で詳しく紹介していますので、ぜひ実践してみてください。
舌の運動
舌を動かすことでも、唾液腺が刺激されて唾液が出やすくなります。
やり方は、上の前歯と上唇の間に舌の先を入れ、その間に舌を入れたまま、歯をなぞるようにして右の奥歯、左の奥歯と舌を動かします。上が終わったら下の前歯と下唇の間に舌を入れて、同じ要領で舌を動かします。5往復するだけでも、唾液が出てくるのを実感できるはずです。
生活リズムを整える
自律神経が乱れると、唾液の分泌量を調整する機能など身体の様々なはたらきが正常に機能せず、唾液の減少につながります。健康的な食事や十分な睡眠など、生活リズムを整えることで、自律神経を正常に戻して唾液が出るようにしましょう。
口の中のネバネバを放置した場合のリスク
口内の粘つきを放置しておくと、口内や全身のさらなるトラブルに発展する可能性があります。ここでは、トラブルの具体例として、口臭の悪化、味覚障害、誤嚥性肺炎の3つを紹介します。
口臭の悪化
口内の粘つきを改善しないと、口内に悪い細菌が増殖しやすくなって粘性が高まります。特に、たばこは臭いがあるものなので、喫煙者が粘つきを放置すると、より口臭が悪化しやすいでしょう。
味覚障害
味覚は、食品の成分が水分に溶解し、それが舌の上の味蕾という部分に届くことによって成り立っているものです。そのため口内の水分である唾液の分泌量が減少すると、それにと伴って味が分かりにくくなってしまいます。唾液がしっかりと出るように、よく噛んで食べるなどを心掛けましょう。
誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)
食べ物が食道ではなく、誤って気道(気管)に入ってしまう「誤嚥」(ごえん)により、肺に食べ物と一緒に細菌が入ってしまい、肺炎を引き起こしてしまう場合を誤嚥性肺炎と言います。
唾液には、サラサラのものと粘性が強いものとがあり、後者には食べ物や細菌をまとめて胃に運び、誤嚥を防ぐ役割があるのです。口の粘つき、つまり唾液が少ない状態を放置してしまうと、誤嚥性肺炎になりやすくなってしまいます。
高齢者がとろみのある食事をするのは、この誤嚥を防ぐためなのです。
口の中のネバネバ 原因と対処法まとめ
口内に粘つきを発生させないためには、毎食後の歯磨きなどで
日ごろから口内を清潔に保つことが重要です。また、唾液は年齢や生活習慣などによって出にくくなるため、唾液が出やすいようによく噛んで食べたり、マッサージや舌の運動で唾液腺に刺激を与えたりすることで粘つきの予防になります。口内の粘つきが気になったら、まずは
口内を潤すための対策を行い、
それでも続くようであれば歯科医院を受診しましょう。
口内環境を手軽にチェックできる方法に、唾液検査があります。唾液の成分や菌の活性度など調べることで、歯と歯ぐきの健康、口内の清潔度など、自分の今の口内環境が分かります。
唾液検査 シルハは、
水で口を10秒すすぐだけで、
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全国1,500件以上の医療機関で導入されており、今回インタビューをさせていただいた
パラシオン歯科医院でもシルハを利用できます。自分の口内環境や適切なオーラルケアを知るためにも、一度検査をしてみてはいかがでしょうか。
パラシオン歯科医院 小山 安徳 先生