適切な方法での舌磨きは効果があります。では、なぜ舌磨きをしない方がいいと言われるのか。この記事では、舌磨きによる効果としない方がいいと言われる理由について解説しています。
舌に蓄積した汚れは歯磨きやうがいだけでは落とせないため、舌磨きをする必要があります。舌磨きには、口臭や感染症を予防する効果がありますが、やり過ぎてしまうと、かえって口臭が悪化したり味覚障害になったりすることもあります。この記事では、舌磨きの効果と、メリット・デメリットについて紹介します。
舌磨きの効果とは
舌磨きをすることで、口内環境を改善したり、歯磨きの効果を高めたりすることにもつながります。効果について紹介します。
歯磨きではできない舌のケアで口内環境を改善できる
口内には、食事の食べかすや剥がれた粘膜などの汚れが付着しています。歯や歯ぐきに付いた汚れは歯磨きでケアができますが、歯磨きでは舌の汚れまでは落とせません。舌に付着している汚れは舌磨きでケアをする必要があります。特に舌の表面には、食べかすや細菌、剥がれた粘膜の集合体によって、舌苔(ぜったい)という苔のようなものができることがあります。舌苔は舌にこびりついた垢のようなものであり、舌磨きを適切にすることで除去できます。
歯磨きの効果を高める
舌苔など、舌に汚れが蓄積した状態だと、歯磨きをして歯の汚れを落としても、舌の汚れが歯に付着してしまう可能性があります。舌の汚れも落としておくことで、歯に再び汚れが付いてしまうことを防げます。
舌磨きのメリット
舌磨きをすると、口臭ケアの他、感染症予防や体調管理などのメリットがあります。それぞれの理由について解説します。
①口臭ケア
舌苔に含まれる食べかすや古くなった粘膜は、細菌によって分解されてニオイの原因となるガスを発生します。舌磨きで舌苔をケアすることで口臭予防につながります。
②感染症予防
経口感染が多い風邪やインフルエンザなどは、舌苔のケアにより感染リスクが減少すると言われています。舌苔などで繁殖した細菌が作り出すプロテアーゼという酵素は、ウイルスの表面を変化させて人に感染しやすくしてしまいます。つまり、舌苔を取り除くとウイルスの感染リスクも減らせるのです。
(舌磨きによる新型コロナウイルスの感染予防の効果は確認されていません。)
③味覚を正常に保つ
舌の表面には味蕾(みらい)という味を感じる器官があります。舌苔が蓄積すると味蕾の機能が低下し、味覚が鈍くなる恐れがあります。味覚が鈍くなると、濃い味のものや脂っぽい食べ物を好むようになったり、満腹感を得にくくなったりします。
味蕾が機能していれば、さっぱりとした味付けでも旨味を感じられ、少量でも満腹感を得られます。
④誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)を防ぐ
食べ物が食道ではなく、誤って気道(気管)に入ってしまう「誤嚥」(ごえん)により、肺に食べ物と一緒に細菌が入ってしまい、肺炎を引き起こしてしまうことを誤嚥性肺炎と言います。
飲み込む力が弱い高齢者に特に多い病気です。呼気や唾液を経由して細菌が肺に入ることがあるため、舌磨きで舌の汚れを除去しておくと、誤嚥してしまった場合に肺炎を発症したり重症化したりするリスクを軽減できます。
舌磨きのデメリット
舌磨きには、口臭や感染症予防などのメリットがある一方で、ケアの仕方を誤るとデメリットになるケースもあります。磨き過ぎてしまうと、口臭の悪化や味覚障害につながることもあります。
舌の表面はもともとうっすらと白いのですが、舌の細胞が傷つくとさらに白っぽくなるため、「舌苔だ」と誤認しがちです。舌苔ではないにも関わらずゴシゴシ舌を磨いてしてしまうと、効果が裏目に出てしまいます。舌は柔らかくてデリケートな組織です。舌磨きは1日1回で十分です。舌磨き専用のブラシを使って、磨き過ぎないように行いましょう。
①口臭の悪化
舌を磨き過ぎると、口臭がかえって悪化する可能性があります。乳頭と呼ばれる舌表面の小さな突起が傷つくと、突起の中に細菌が入りやすくなり、唾液の分泌が正常に行われなくなってしまいます。自浄作用のある唾液の分泌量が低下してしまうことで、口臭が悪化してしまうのです。
②味覚障害
磨き過ぎにより、舌の表面が傷ついてしまい、味覚障害になる可能性があります。味蕾には味覚を感じる細胞があり、これが傷付いてしまうことで味を感じにくくなってしまいます。
下記の記事では、味覚障害とは?について詳しく説明しています。ぜひ参考にしてみてください。
【イラストで解説】舌磨きの効果 チェック項目
舌の様子から、健康状態のサインを見つけることができます。健康な舌は①のようにピンク色で、表面はうっすらと白くなっている中に、小さな赤い点々がある状態です。舌磨きを始める前や、継続的に舌磨きをした後などに、自分の舌の見た目をチェックしておき、磨き過ぎてしまうことがないようにしましょう。上記の舌のイラストを用いながら、舌からわかる健康状態を解説します。
舌苔の蓄積や色
健康な人の舌にもうっすらとした舌苔はありますが、②のように舌苔が厚く蓄積して白くなっている場合は、風邪などの感染症の初期症状の可能性があるかもしれません。
黒ずんだ舌苔は、極端に体力が低下して免疫力が低下し、細菌のバランスが乱れている状態です。薬の影響もしくは重篤な病気の進行なども考えられます。
特に、抗生剤を長期間服用している場合は、舌の機能が後退し、細菌が黒い色素を出すこともあります。その他、喫煙している場合も黒くなりやすいです。
一方、③のように舌苔が全くない場合も注意が必要です。鉄分やミネラル不足、貧血などの可能性があります。舌苔が全くない場合は、粘膜がむき出しになっている状態で、ヒリヒリとした感覚や灼熱感があるでしょう。唾液の分泌量も低下している可能性があるので、こうした患者さんには舌に膜を作るような塗り薬や細胞を再生させるためにビタミン剤を処方したりします。
こうしたサインが現れているときは、舌磨きでは解消できません。歯科医院を受診して対処方法を相談するほか、バランスの取れた食生活や規則正しい生活で免疫力を高めていくなどで対応しましょう。
舌の色
健康な舌はピンク色をしています。一方、紫色に近い濃い色の舌は、血液がドロドロしている状態で体内循環が悪化する恐れもあります。喫煙量の多い喫煙者に顕著な傾向でもあります。
これらの場合も、舌磨きで解消できるものではないため、しっかりと水分を取り、適度な運動をしましょう。
舌の形や舌の線
健康な舌は、縁が滑らかです。④のようにふちがデコボコした舌は、食いしばりや噛みしめなどによって歯型が舌に付くことによって起こります。
舌の表面の真ん中には正中線という線があります。⑤や⑥のように、正中線の他に細かい線やひび割れ、亀裂などがあるときは、脱水や極度の疲労によって舌が乾燥していると考えられます。放置しておくと味覚障害や運動障害(舌の筋力が弱まり、動きが鈍くなる障害)が起こる可能性もあります。重症化させないためにも、歯磨きをすることが大切です。歯磨きをする時間も取れないという方は、うがいでもいいので、口内を清潔に保つようにしましょう。
適切に舌磨きをしてオーラルケアの効果を高めよう
舌磨きは、口臭予防や味覚を正常に保つほか、誤嚥性肺炎の重症化予防にも役立ちます。一方で、やりすぎは禁物です。口臭を悪化させ、味覚障害になる可能性もあるため、1日1回を限度にするべきです。舌の健康状態も確認しながら適切に舌磨きをして、オーラルケアの効果を高めましょう。
唾液検査シルハで口内環境をチェックしよう
舌磨きをはじめとしたオーラルケアが適切にできているかどうかは、
唾液検査「シルハ」でカンタンにチェックすることができます。シルハは水で口をすすぐだけで、唾液に含まれる成分や菌の活性度などを調べられる検査です。
口内環境が分かり、むし歯や歯周病になるリスクを予想できます。
シルハは、全国の歯科医院で利用可能。今回インタビューした
助村歯科医院さんでも検査できます。ご自宅近くのシルハが利用できる歯科医院はこちらからチェックしてみてくださいね。
【取材医師 プロフィール】
助村歯科医院 村川明子先生
長崎県諫早市にある「助村歯科医院」副院長。神奈川歯科大学 歯学部を卒業したのち、長崎大学歯学部の小児歯科学講座医局、同歯周病学講座医局、大阪の西田歯科医院で10年間勤務したのち現職。
助村歯科医院のご紹介はこちら https://sukemura-shika.com/
助村歯科医院 村川明子先生