【ヘルシーレシピ】カルシウムの働きは?摂取不足による骨以外への影響とおすすめレシピ【管理栄養士監修】

【ヘルシーレシピ】カルシウムの働きは?摂取不足による骨以外への影響とおすすめレシピ【管理栄養士監修】

(2024年4月2日公開)
ミネラルのひとつであるカルシウムは、骨や歯を作る材料になるだけでなく、神経の伝達や筋肉の収縮にも関わる大切な栄養素です。
この記事では、カルシウムの特徴や、豊富な食べ物、おすすめレシピを紹介します。カルシウムは多くの方が不足の傾向にあるため、ぜひ参考にしてみてください。

               

カルシウムの特徴

カルシウム(元素記号:Ca、英語表記:Calcium)はミネラルの一種で、水溶性の栄養素です。人の体にもっとも多く含まれるミネラルでもあります。

カルシウムといえば骨や歯をイメージするかもしれませんが、実はほかにも重要な役割があるのをご存じですか?

カルシウムは、血液や筋肉、神経内にも多く含まれており、血液の凝固を促して出血を防いだり、神経の伝達、血管の収縮や拡張、筋肉の収縮に関わったりするなど、さまざまな役割を担っているのです。

血液中のカルシウムが不足すると全身にさまざまな影響を与えてしまうため、濃度が一定になるように私たちの体の中で常に調整が行われています。

カルシウムに期待される効能・効果

続いて、カルシウムに期待される効能・効果について詳しく解説します。

丈夫な骨を作る・骨密度を維持する

カルシウムは骨の健康づくりをサポートする栄養素です。

まず成長期は、骨が作られるために必要です。カルシウムは骨を構成する主成分の一つであり、骨を硬く丈夫にする役割があります。

一方で大人になってからは骨の維持に欠かせません。
骨の強さ(骨密度)は20歳頃ピークになり、その後は横ばい~減少していきます。そのため、大人になってからは骨密度を維持するために必要です。食べ物から摂取するカルシウムが不足すると、骨からカルシウムを取り出して、血液中のカルシウム濃度が下がらないように調節されます。

カルシウム摂取量が不足した状態が続くと、骨がどんどんスカスカになり、骨がもろくなる「骨粗しょう症」につながってしまいます。
成長期に引き続き、大人もカルシウムの摂取が大切です。

強い歯を作る

カルシウムは強い歯を作るためにも欠かせません。

成長期は歯が作られる時期であるため、歯を強く硬くするために必要です。一生使うことになる永久歯が作られる幼児期は不足しないように摂りたい栄養素です。

また、カルシウムは歯の再石灰化に関わります。再石灰化とは、溶けた歯の表面(エナメル質)を修復して、再び強い歯に戻してくれる働きのことです。このときに、唾液中に含まれるカルシウムが関わっています。再石灰化がうまく行われないと、むし歯の原因となります。
そのためカルシウムは、年齢に関わらず、歯の健康維持に欠かせない栄養素と言えます。

筋肉の収縮・神経伝達

カルシウムは筋肉を収縮させるために必要なミネラルです。体を動かす骨格筋はもちろん、心臓が動くための筋肉の動きにも関わっています。

また、人の体は神経を通して脳から指令を受けて動きますが、カルシウムはこのシグナルを送る働きを調整しています。神経は興奮することで情報が伝達されますが、カルシウムは神経の興奮を抑えて、安定させる作用があります。

血圧を調整する

カルシウムは血管の筋肉を収縮させる働きがあるため、血圧の調整にも関わっています。

最近では、カルシウム不足が高血圧の原因になることも注目されています。
食事から摂取するカルシウムが不足すると、骨からカルシウムが取り出されて血液中のカルシウム濃度が高まります。そうすると、細胞内にもカルシウムが多い状況が作られ、血管の筋肉を収縮させてしまうため、血圧を高めてしまうのです。

カルシウム摂取により血圧の低下が期待されているため、血圧が気になる方はもちろん、将来の高血圧を防ぐためにも、しっかり摂りたい栄養素です。

骨や歯は一生そのまま?

骨や歯はカルシウムから作られますが、一度作られたものはそのままなのでしょうか?骨と歯に分けて解説します。

骨は日々作り替えられている

骨は吸収(壊されること)と形成(作られること)が繰り返し起きており、日々新しいものに作り替えられています。これを骨代謝といい、1~4年の周期で作り替わっているといわれています。

骨の吸収と形成はバランスを保って行われていますが、バランスが崩れたときは注意が必要です。カルシウム不足などの原因で骨が壊される量が増えてしまうと、骨密度がどんどん下がり、骨がもろくなって骨粗しょう症になってしまいます。

特に閉経後の女性は、骨粗しょう症のリスクが高まります。これは、骨が作られるのを助ける働きをする女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量が低下するためです。そのため40~50代以上の女性は、これまで以上に意識してカルシウムを摂取する必要があります。

また、カルシウムだけでなく、カルシウムの吸収を助けるビタミンDの摂取も大切です。詳しくはこちらの記事をご参照ください。

歯は作り替わるものではない

歯の材料もカルシウムですが、骨のように作り替わるものではありません。歯の表面では、エナメル質が溶ける「脱灰」と、再び元の歯に戻る「再石灰化」は繰り返されていますが、歯の土台は生えてきたときのままです。
つまり、歯は一度失われてしまうと元に戻りません。

カルシウムは歯の健康づくりに欠かせないものです。
しかし、長く自分の歯を守るためには、カルシウムの摂取に加えて、歯磨きなどの日常のオーラルケアや、歯や口の状態をチェックする定期検診などの取り組みが大切です。

カルシウムの1日の摂取量の目安

カルシウムの1日の摂取量の目安は下記のとおりです。

▼カルシウムの食事摂取基準(1日あたりの推奨量)
出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」

日本人の平均的なカルシウム摂取量は、多くの年代で不足しています。成人では、推奨量の5~6割ほどしか摂れていない年代もあるほどです。

カルシウム不足の原因の多くは、カルシウム源となる食べ物を摂れていないことです。特に、カルシウム源として大切な牛乳やヨーグルトなどの乳製品をほとんど食べない食生活を送っている場合は、大きく不足する心配もあります。

続いて、過不足の影響を見てみましょう。

カルシウムが不足するとどうなる?

カルシウムが不足した場合、下記の影響が考えられます。
【子どもの場合】
  • 歯や骨がもろくなる
  • くる病のリスクとなる(骨が硬くならず、やわらかい状態)
【大人の場合】
  • 骨粗しょう症、高血圧、動脈硬化のリスクとなる
さらに、極端に不足した場合は筋肉のけいれんや手足のしびれなどの、低カルシウム血症の症状を起こす可能性もあります。

カルシウムが不足すると「いらいらする」って本当?

カルシウム不足で「いらいらしやすくなる」と聞いたことがありませんか?結論から伝えると、あまり関係はないと考えられています。

確かに、カルシウムは脳神経の興奮を抑える働きがありますが、これは極端に不足した状態でないと起きづらいものです。
そのため、通常の食生活を送っている場合に、カルシウム不足がいらいらに直結するとは考えにくいとされています。

カルシウムを過剰摂取するとどうなる?

カルシウムを食事から過剰摂取しても、健康への影響を心配する必要性は低いとされています。ただし、サプリメント、カルシウム強化食品などの過剰摂取により、健康に影響を与えるおそれがあるため注意が必要です。

過剰摂取により、子どもから大人まで、さまざまな影響を及ぼす可能性が知られています。
  • ミルクアルカリ症候群(体がアルカリ性に傾いて腎臓の働きにダメージを与える)
  • 血管や筋肉などの軟組織の石灰化
  • 腎臓結石などの泌尿器系結石
  • 鉄や亜鉛の吸収を妨げる
  • 便秘
カルシウム摂取量は耐容上限量が定められており、18歳以上の男女で2,500 mgとなっています。サプリメントやカルシウム強化食品は1日の目安量を守るようにし、複数を組み合わせて使用する際は、含有量を必ず確認するようにしましょう。

カルシウムが豊富な食べ物

カルシウムは乳製品が代表的な食べ物ですが、ほかにはどのようなものがあるのでしょうか?ジャンルごとに詳しく紹介します。

牛乳やヨーグルトなどの乳類

牛乳やヨーグルトなどの乳類に含まれるカルシウムは、ほかの食べ物と比べると吸収率が高くなっています。カルシウム含有量も優れているため、毎日取り入れたい食べ物です。

▼100 gあたりのカルシウム含有量
食品名 含有量
粉チーズ 1,300 mg
プロセスチーズ 630 mg
ヨーグルト 120 mg
牛乳 110 mg
クリームチーズ 70 mg
出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」

カルシウム不足は「あとコップ1杯の牛乳で充足できる」ともいわれています。乳類をまったく摂っていない方は、まずは毎日取り入れることからはじめてみましょう。

桜えびやしらす干しなどの魚介類

桜えびやしらす干しなどの魚介類に含まれるカルシウムは、乳類に続いて吸収率が高いといわれています。魚介類には、カルシウムの吸収を助けるビタミンDが含まれるため、効率的にカルシウムを摂取できます。

▼100 gあたりのカルシウム含有量
食品名 含有量
煮干し 2,200 mg
桜えび(乾) 2,000 mg
しらす干し 520 mg
ししゃも 350 mg
いわし缶詰(水煮) 320 mg
さば缶詰(水煮) 260 mg
出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」

魚介類の中でも、骨や殻ごと食べられるものに多く含まれています。煮干しや桜えび、しらす干しは少量でもカルシウムをしっかり補給できるため、毎日の食事にぜひ取り入れてみましょう。

厚揚げや豆腐などの大豆製品

カルシウムが豊富な大豆から作られる厚揚げや豆腐は、カルシウムの補給にぴったりな食べ物です。

▼100 gあたりのカルシウム含有量
食品名 含有量
がんもどき 270 mg
厚揚げ 240 mg
木綿豆腐 93 mg
納豆 91 mg
大豆(茹で) 79 mg
絹ごし豆腐 75 mg
出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」

大豆製品は調理の手間をかけずに手軽に取り入れられるため、毎日でも取り入れやすいのではないでしょうか。豆腐や納豆などを食事にプラスして取り入れてみましょう。

水菜や小松菜などの野菜

水菜や小松菜など、色の濃い野菜にはカルシウムが豊富に含まれています。

▼100 gあたりのカルシウム含有量
食品名 含有量
大根の葉 260 mg
モロヘイヤ 260 mg
かぶの葉 250 mg
水菜 210 mg
小松菜 170 mg
春菊 120 mg
チンゲン菜 100 mg
おくら 92 mg
出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」

中でも通年手に入りやすい、水菜、小松菜、チンゲン菜、おくらは、よいカルシウム源となってくれます。味噌汁や炒め物、和え物などのさまざまなメニューに活用して取り入れてみましょう。

きくらげやひじきなどのきのこ・海藻類

きのこや海藻にもカルシウムが含まれています。特にきのこはビタミンDを含むため、効率的にカルシウム補給をしたいときにぴったりです。

▼100 gあたりのカルシウム含有量
食品名 含有量
ひじき(乾) 1,000 mg
わかめ(乾) 870 mg
焼き海苔 280 mg
きくらげ(乾) 310 mg
出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」

きのこや海藻類はよく噛んで食べられるため、食べすぎ防止に役立つほか、唾液分泌を促して口の健康を守るのも助けてくれます。

カルシウムたっぷりの「さば缶と小松菜の甘辛そぼろ丼」のレシピ

カルシウムの豊富なさば缶と小松菜を使った、甘辛そぼろ丼のレシピを紹介します。

骨ごと食べられるさば缶は、カルシウムの補給にぴったりです。また、ビタミンDも含むため、効率よく栄養補給できます。

さば缶をほぐして炒めてそぼろ状にし、甘辛い味付けにするので、お子さんから大人まで食べやすい味付けです。温泉卵を載せるとビタミンDが追加され、さらに栄養価が高まります。また、とろっとした卵が甘辛いそぼろによく絡むので、相性もばっちりです。

小松菜はシャキシャキとした食感が残るように調理するため、よく噛むことをうながして歯と口の健康づくりにもぴったりです。

<材料>(2人分)調理時間:15分

  • さば缶詰(水煮):1缶
  • 小松菜:1/2袋
  • ごま油:小さじ1
  • (A)しょうゆ:小さじ2
  • (A)みりん:小さじ2
  • (A)酒:小さじ2
  • (A)砂糖:小さじ1
  • いりごま(白):小さじ1
  • ご飯:2人分
  • 温泉卵:2個

<作り方>

  1. 小松菜は3~4 cm幅のざく切りにします。
  2. フライパンにごま油を入れ中火で熱し、さば缶を汁ごと加えてほぐしながら炒めます。
  3. 2のさば缶がほぐれたら(A)を加え、汁気を飛ばしながら炒めます。
  4. 3の汁気が7~8割ほど飛んだら、小松菜を加えて、汁気がなくなるまで炒め、いりごまを加えます。
  5. 器にご飯を盛り、4と温泉卵を載せます。
【温泉卵の作り方】
鍋や電気ケトルなどで1リットルの湯を沸かし、別の鍋や耐熱ボウルに湯を入れます。冷蔵庫から取り出してすぐの卵を2個入れ、ふたをして10分放置し、冷水にとります。
※別の鍋や耐熱ボウルに移すことで、温泉卵を作るのに適した温度になります。

<ポイント>

温泉卵以外は、作り置きやお弁当のメニューなどに活用できます。保存する場合は、保存容器に移して冷蔵庫に入れ、3日ほどを目安に食べ切るようにしましょう。
温泉卵は傷みやすく、作り置きやお弁当には向かないため、すぐに食べるようにしてください。

カルシウムはコツコツ毎日補給しよう

カルシウムは子どもから大人まで、不足することなく摂りたい栄養素です。コツコツ毎日補給すると、強い歯や骨を作る土台となり、健康を守ってくれます。
意識して摂取しないと不足しやすい栄養素であるため、今回紹介した食べ物を参考に、ぜひ毎日取り入れるようにしましょう。

執筆者:広田千尋さん(管理栄養士)

病院、保育園、保健センターで13年にわたり幅広い年代の栄養サポートに携わる。
現在はフリーランスの管理栄養士として、コラム執筆のほか、身近にある材料で栄養満点なレシピの提案などを行っている。
ホームページ>
https://hirotachihiro.com/
Instagram>
https://www.instagram.com/chihiro_eiyo/

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