葉酸は、体の成長や貧血予防などに欠かせない栄養素です。特に妊娠中の方や成長期の子どもは、不足しないように摂取しましょう。
この記事では葉酸の特徴と期待される機能について解説します。また、葉酸の豊富な食べ物や、葉酸をたっぷり摂れるレシピもあわせて紹介します。
葉酸の特徴
葉酸は水溶性ビタミンの一種で、ビタミンB群の仲間です。葉酸には、食べ物に含まれるものと、サプリメントなどに使われるものの、大きく2種類があります。
まず、食べ物に含まれる葉酸は「ポリグルタミン酸型」という形で存在しています。体内で「モノグルタミン酸型」になったあとに吸収されますが、代謝の過程でさまざまな影響を受けるため、摂取した葉酸の体内での利用率は50%程度と想定されています。
次に、サプリメントや栄養補助食品に含まれる葉酸は「合成型のプテロイルモノグルタミン酸」です。はじめから「モノグルタミン酸型」であるため、食品中の葉酸に比べて、安定して吸収されやすいとされています。
葉酸の働きは、DNAの合成やタンパク質の合成に関わることです。細胞の増殖(細胞分裂)に関わり、赤血球の分裂にも関与するため、不足すると赤血球が少なくなる貧血の原因にもなり得ます。
ほかにも、細胞が盛んに増える時期に必要とされるため、妊娠中や成長期の子どもに欠かせない栄養素となっています。
葉酸に期待される効果・効能
葉酸に期待される効果・効能について、詳しく見てみましょう。
体の発育をサポート
葉酸は体の発育をサポートし、健やかな成長を支えてくれる栄養素です。葉酸はDNAの合成に必要で、細胞が増えたり、成熟したりする際に欠かせません。
特に新しい細胞が盛んに作られる、妊娠中や成長期の子どもは、十分な摂取が必要です。
貧血を防ぐ
葉酸はいわゆる「造血作用」のあるビタミンです。ビタミンB12とあわせて赤血球の分裂に関わり、正常な赤血球を作り出します。
そのため、葉酸不足は正常な赤血球の合成を妨げることとなり、その数が減るタイプの貧血を引き起こす原因となります。
赤血球が不足した状態の貧血になると、動悸・息切れ・めまい・疲れやすさ・頭痛・集中力低下といった影響が起きるおそれがあります。
動脈硬化の予防を期待
葉酸は動脈硬化や脳卒中、心筋梗塞の予防に役立つのではないかと注目されています。これは葉酸不足により、血液中にホモシステインという成分が増えることが理由です。
ホモシステインは血管壁を構成するコラーゲンを変質させてしまいます。これにより血管にダメージを与えて動脈硬化を促し、血栓を作る作用を促すとされています。葉酸はホモシステインをメチオニンに変換して、ホモシステインの濃度を下げるため、葉酸の摂取が大切である、というわけです。
食品に含まれる葉酸の摂取でも効果が期待できるとされているため、のちほど紹介する野菜などをたっぷり取り入れるようにしましょう。
口の健康を守る
葉酸不足により、歯周病のリスクとなる可能性が知られてきています。歯周病とは、歯肉に炎症が起きていたり、歯を支える骨がぐらぐらしたりしている状態を指します。
葉酸不足による歯周病への影響に関わっていると考えられるのが、先ほども挙げたホモシステインとコラーゲンです。コラーゲンは歯肉や骨の形成にも欠かせない成分です。そのため、葉酸が不足して血液中のホモシステインの量が増えると、歯を支える骨やその周りの歯肉がもろくなってしまう可能性があるのです。
また、葉酸は貧血を防ぎ、全身に酸素や栄養素を運ぶためにも欠かせない栄養素です。口の中にしっかり酸素や栄養素を届けて健やかな状態を保つためにも、不足しないよう摂取しましょう。
葉酸の1日の摂取量の目安
葉酸の1日の推奨量は、葉酸不足による貧血を防ぐ観点から定められています。1日あたりの推奨量は下記のとおりです。
▼葉酸の食事摂取基準(1日あたりの推奨量)
出典:厚生労働省「
日本人の食事摂取基準(2020年版)」
妊娠を計画している女性や、妊娠の可能性がある女性、妊娠初期の妊婦は、通常の食品以外にも、サプリメントなどに含まれる葉酸を400 µg摂取することが望ましいとされています。
葉酸の平均的な摂取量をみると、どの年代も概ね充足しています。
どのような場合に不足するのかや、過不足の影響についても知っておきましょう。
葉酸が不足するとどうなる?
葉酸は、野菜をまったく食べないなどの偏った食生活を続けている場合や、吸収不良が起きた場合、アルコールを過剰摂取した場合などに不足するおそれがあります。
葉酸が不足した場合の影響は下記が知られています。
- 貧血(動悸・息切れ・めまい・疲れやすさ・頭痛・集中力低下など)
- 神経障害
- 舌や口内の潰瘍
- 動脈硬化、脳卒中、心筋梗塞などのリスクとなる
また、妊娠中の場合は、胎児の神経管閉鎖障害のリスクとなることが知られています。妊娠中の影響については、のちほど詳しく解説します。
葉酸を過剰摂取するとどうなる?
葉酸は、食べ物による健康障害の報告は存在しません。しかし、サプリメントなどでは過剰摂取による健康障害のリスクがあります。
そのため、食べ物の葉酸の耐容上限量は定められていませんが、サプリメントなどに含まれる葉酸は、成人で900〜1,000 µgの耐容上限量が定められています。
葉酸のサプリメントや医薬品により高用量の葉酸を摂取した場合は、がんのリスクを高める可能性が知られています。
また、高用量の葉酸を摂取することによって、ビタミンB12欠乏症が見落とされるおそれがある点にも注意が必要です。
ビタミンB12の欠乏は葉酸と同様に貧血の原因となります。葉酸は貧血の改善には役立ちますが、ビタミンB12不足が引き起こす神経損傷は改善しません。そのため、ビタミンB12不足があるにも関わらず、貧血を改善しようと葉酸だけ補っていると脳や脊髄、神経に重篤な障害を残してしまうおそれがあります。
妊娠中に摂取が勧められるのはなぜ?
妊娠初期は赤ちゃんの細胞分裂が盛んであり、神経管が作られる時期でもあります。この際に葉酸が必要とされ、不足すると神経管閉鎖障害のリスクとなります。
神経管閉鎖障害とは、赤ちゃんの脳や脊髄などの神経管が作られる、妊娠4~5週目の際に起こるものです。二分脊椎(脊髄が背骨でおおわれていない状態)や無脳症(脳が十分に形成されない状態)などのリスクとなることが知られています。
妊娠に気付く時期(妊娠5〜6週頃)には神経管が作られている時期のため、妊娠がわかる前から葉酸の摂取が大切です。
先ほども説明したとおり、妊娠を計画している女性や、妊娠の可能性がある女性、妊娠初期の妊婦は、通常の食品以外にもサプリメントなどに含まれる葉酸を400 µg摂取することが望ましいとされています。また、妊娠中期・後期は食事から240 µgの付加が推奨されています。
▼葉酸の食事摂取基準(1日あたりの推奨量)
- 通常:食事から240 ug
- 妊娠初期:食事から240 ug+サプリメントなどから400 ug
- 妊娠中期・後期:食事から240 ug+240 ug
葉酸が豊富な食べ物
葉酸は名前からイメージされるとおり、野菜や果物などの植物性食品に豊富に含まれています。動物性食品にも含んでいるものがあるため、どのような食べ物に含まれているか、詳しく紹介します。
色の濃い野菜・きのこ・芋類
野菜、きのこ、芋類は、葉酸のよい補給源となります。なかでも、色の濃い野菜は含有量が優れているため、積極的に取り入れましょう。
▼100 gあたりの葉酸含有量
食品名 |
含有量 |
枝豆(冷凍) |
310 µg |
ブロッコリー |
220 µg |
ほうれん草 |
210 µg |
アスパラガス |
190 µg |
水菜 |
140 µg |
サニーレタス |
120 µg |
えのきたけ |
75 µg |
エリンギ |
65 µg |
さつまいも(皮なし) |
49 µg |
里芋 |
30 µg |
出典:文部科学省「
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
葉酸は水溶性であるため、茹でたり水にさらしたりすると、流れ出てしまいます。茹でたり水にさらしたりする場合は短時間にするようにしましょう。
または、電子レンジ調理もおすすめです。ブロッコリーは、茹でることで葉酸が220 µgから120 µgに減ってしまいますが、電子レンジ調理では160 µgほど残ります。
ほかの水溶性ビタミンやミネラルの流出も防げるため、栄養素をムダなく摂りたい場合は電子レンジ調理を活用してみましょう。
いちごやキウイフルーツなどの果物類
葉酸は果物にも含まれていますが、野菜に比べると含有量は少なめです。
▼100 gあたりの葉酸含有量
食品名 |
含有量 |
いちご |
90 µg |
アボカド |
83 µg |
キウイフルーツ(緑) |
37 µg |
オレンジ |
34 µg |
キウイフルーツ (ゴールド)
|
32 µg |
バナナ |
26 µg |
出典:文部科学省「
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
果物は葉酸の量は少なめであるものの、生のまま食べられるため、葉酸をムダなく摂取したいときにぴったりです。
また、果物はビタミンCや食物繊維などのよい補給源となるため、ぜひ取り入れてみましょう。
きなこやごまなどの大豆製品・ナッツ類
葉酸は、大豆製品やナッツ(種実)類にも含まれています。
▼100 gあたりの葉酸含有量
食品名 |
含有量 |
きなこ |
220 µg |
納豆 |
130 µg |
ごま |
150 µg |
くるみ |
91 µg |
ピーナッツ |
58 µg |
アーモンド |
48 µg |
出典:文部科学省「
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
なかでも納豆は、1食あたり(約45 g)の葉酸含有量が59 μgであるため、葉酸を効率的に摂取できます。
きなこ、ごまは1食あたりの量が少なくなりますが、料理や飲み物などに「ちょい足し」して使いやすいため、手軽に栄養強化できるでしょう。
レバーや貝などの肉・魚介・卵・乳類
葉酸は動物性食品にも含まれますが、レバー以外は植物性食品に比べると多くはありません。
▼100 gあたりの葉酸含有量
食品名 |
含有量 |
鶏レバー |
1,300 µg |
牛レバー |
1,000 µg |
豚レバー |
810 µg |
ホタテ |
87 µg |
牡蠣 |
39 µg |
卵 |
49 µg |
プロセスチーズ |
27 µg |
出典:文部科学省「
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
葉酸不足を防ぐためにも、動物性食品はまんべんなく補給するようにして、野菜や果物をあわせてたっぷり取り入れるとよいでしょう。
※レバーは栄養豊富ではありますが、ビタミンA含有量が多くなっています。妊娠中はビタミンAの過剰摂取を避けるため、レバーを毎日のようにたくさん食べるのは控えましょう。
ビタミンAについてはこちらの記事でも詳しく解説しています。
サプリメントはとるべき?
先ほども伝えたとおり、妊娠前から妊娠初期にかけては、赤ちゃんの健やかな成長のためにサプリメントの摂取が推奨されています。
しかし、健康な方にサプリメントの摂取が推奨されているわけではありません。貧血予防には食べ物からの葉酸摂取で十分であると考えられています。また心筋梗塞や脳卒中などの予防について、サプリメントが役に立つかどうかは、はっきりとわかっていない状況です。
バランスのよい食事をしていれば不足の心配の少ない栄養素ですので、食事を中心に補給するようにしましょう。
葉酸たっぷりの「ブロッコリーのきなこくるみ和え」のレシピ
葉酸をたっぷり摂りたいときにおすすめの「ブロッコリーのきなこくるみ和え」のレシピを紹介します。
葉酸の豊富なブロッコリー、きなこ、くるみを使った、やさしい味わいのレシピです。
ブロッコリーはレンジ加熱することで、葉酸をムダなく摂れるよう工夫しています。ブロッコリーは葉酸以外にも、ビタミンB12や鉄が豊富なため、貧血予防にぴったりの野菜です。
また、くるみはオメガ3系脂肪酸が豊富で、胎児の成長や生活習慣病対策に役立ちます。歯ざわりもよく、よく噛んで食べられるため、歯と口にうれしい効果も期待できます。
今回のレシピは作り置きもでき、冷蔵庫で3日ほど保存できます。お弁当にもぴったりですよ。
<材料>(2人分)調理時間:10分
- ブロッコリー:120 g(正味)
- 塩:少々
- くるみ:10g
- きなこ:小さじ2
- しょうゆ:小さじ1
- 砂糖:小さじ1/2
<作り方>
- ブロッコリーは小房に分けます。
- 1を耐熱皿に並べて水大さじ1(分量外)を回しかけて塩をふります。
- 2にラップをして電子レンジ(600W)で約2分30秒加熱します。そのまま2分ほど蒸らします。
- くるみはフライパンに入れて中火で乾煎りし、粗く刻みます。
- ボウルに3と4、しょうゆ、砂糖を入れて混ぜ合わせます。
<ポイント>
ブロッコリーは、やや硬めくらいの状態で加熱を止めて蒸らすようにすると、ほどよい硬さに仕上がります。
くるみなどのナッツ類は、5歳以下の子どもには与えないように注意喚起がなされています。小さく砕いても、かけらが気管に入り、肺炎や気管支炎を起こすリスクがあるためです。5歳以下のお子さんが食べる場合は、くるみの代わりにすりごまを使うとよいでしょう。
葉酸は幅広い年代の健康づくりに大切!
葉酸は妊娠中、成長期の子どもから大人まで、幅広い年代の健康づくりを支えてくれる栄養素です。たっぷりの野菜やバランスのよい食事を心がけて栄養不足を防ぎ、毎日を元気に過ごしましょう!