歯が透ける原因は? 酸蝕歯やエナメル質形成不全などの原因と対処法、放置するリスクを解説

歯が透ける原因は? 酸蝕歯やエナメル質形成不全などの原因と対処法、放置するリスクを解説

この記事では歯が透ける原因である酸蝕歯とエナメル質形成不全について解説しています。

               
「歯が透けている」「以前と比べて歯がしみる」「歯の色が黄色い」などの悩みはないでしょうか。その悩みが幼少期からのものなのか、徐々に発生したものなのかによって原因が異なります。幼少期から歯が透明・黄色っぽいなら「エナメル質形成不全」、徐々に状態が変化したなら「酸蝕歯」です。本記事では、歯が透けたり、変色したりする酸蝕歯とエナメル質形成不全について、原因と放置した場合の影響、治療法を詳しく解説します。

徐々に歯が透けてきているなら「酸蝕歯(さんしょくし)」が原因

徐々に歯が透けてくる原因の1つに、「酸蝕歯(さんしょくし)」という症状があります。酸蝕歯は年齢を問わず多くの人に起こる症状で、悪化すると歯を失う要因にもなるものです。

まずは、この酸蝕歯の概要と原因、むし歯との違いや諸症状を解説します。日頃の食生活や生活習慣、病気などが原因となっている可能性があるため、意識して生活することで改善につながります。

酸蝕歯とは

「酸蝕歯」は文字通り、“歯が酸によって蝕まれる”、つまり歯が溶けてしまい、徐々に薄くなる疾患を指します。エナメル質は歯の一番外側にある層のことで、熱いものや冷たいもの、酸性のものなどの刺激が歯の内部に触れないよう保護する役割を担っています。エナメル質は再生することができず、食生活に含まれる酸によってエナメル質が溶けると、知覚過敏症状を引き起こしたり、むし歯が進行したりしてしまいます。

酸蝕歯は、むし歯や歯周病に次ぐ、3番目の代表的な歯の疾患「Tooth Wear」の1つです。Tooth Wearとは歯の擦り減りのことであり、歯ぎしりや力強い歯磨きなどによって起こる「歯の摩耗」や、過剰な噛む力によって起こる「歯の崩壊」も含まれます。

2015年に1,108人(15~80歳)を対象に行われた疫学調査では、酸蝕歯の罹患状況は26.1%という報告があり、このことから4人に1人の割合であることがわかります。

酸蝕歯の原因

酸蝕歯のメカニズムと原因を知ることで、日頃からできる対策をイメージしてみましょう。

酸蝕歯になるメカニズム

酸蝕歯は、歯が酸性の物質に触れた際に、エナメル質が溶け始めることで起こります。歯の主成分はカルシウム(Ca)とリン(P)よってできるリン酸カルシウムです。カルシウムは、酸によって溶け出る性質があります。酸性の飲食物を摂り口内がpH5.5以下の酸性状態が続くと、エナメル質が溶けだします。

そして、エナメル質が溶けて薄くなった状態で、食後すぐに力強く歯磨きしたり、硬いものを食べたりすると、エナメル質の摩耗を加速させるため、歯の先端がギザギザになったり冷たいものがしみたりと酸蝕歯の症状が現れてきます。

一方で、口内にはエナメル質を復活させる機能が備わっています。それが唾液による「再石灰化」です。唾液は酸を中和します。そして唾液に含まれるカルシウムやリン酸が歯に再び取り込まれ、エナメル質を復活させます。しかし、唾液による治癒速度を上回るペースで、エナメル質が溶けて薄くなるため酸蝕歯が進行します。

原因1. 酸性度の高い飲食物

酸性度の高い飲食物はエナメル質を溶かすため、長時間の歯に触れる状態を避けることが、酸蝕歯の防止に効果的です。

酸性度は「pH」という単位で表されます。その数値が小さいほど、酸性度が高いことを示します。エナメル質が溶けやすくなるのは、pH5.5以下の飲食物です。

代表例は次の通りです。

<pH5.5以下の飲食物>
  • 炭酸飲料:pH2.2~2.8
  • レモン:pH2.1
  • 黒酢:pH2.4
  • 栄養ドリンク:pH2.5
  • グレープフルーツ:pH3.2
  • ポン酢:pH3.8
  • ヨーグルト:pH4.1
  • ビール:pH3.9~4.1
  • シーザードレッシング:pH4.1
炭酸飲料や酢、柑橘類は、酸性度が高くエナメル質が溶けやすい傾向にあります。そのため、
  • 酸性度の高い飲食物を長時間口にためない
  • 酸性度の高いものを口にしたらすぐに水でうがいをする
  • 酸性度の高いものを口にする回数を減らす
などを意識することで酸蝕歯を予防しましょう。

原因2. 胃や食道の病気

「胃食道逆流症」をはじめとする胃や食道の疾患、暴飲暴食、嘔吐などによる胃酸の逆流によって、エナメル質が溶けることもあります。なぜなら、胃酸はpH1.0~2.0と酸性度が高いからです。

口の中が酸っぱい・苦い、胸やけがあるなどの自覚症状がなくても、胃酸による酸性のゲップが発生して、歯に影響することも考えられます。

原因3.生活習慣

原因1 、2のような理由から口内が酸性になることでエナメル質が溶けだします。それだけでなく、歯を修復する働きを持つ唾液の分泌が少ない「ドライマウス」の場合も、酸蝕歯が進行しやすくなります。ドライマウスは、口呼吸、喫煙、アルコールの摂取、水分不足、ストレスなどが主な原因となります。口に乾きを感じる方は、生活習慣を見直してみましょう。

酸蝕歯とむし歯との違い

「むし歯」は、口内の細菌が生み出す酸によって歯が溶ける症状です。酸によって歯が溶ける点においては酸蝕歯と共通しています。ですが、酸蝕歯の原因は口内が酸性になることなのに対して、むし歯は口内の細菌が作る酸が原因である点で大きく違います。

むし歯菌が作る酸は強力な上に、口内で酸を生み出し続けるため、エナメル質を溶かしたあとも、その下にある象牙質まで溶かし続けます。これが、むし歯によって歯に穴が開く状態です。

もう1つの大きな違いは、歯が溶ける範囲です。酸蝕歯は、酸性の飲食物が触れやすい前歯の唇側や液体がたまりやすい下顎などがなりやすく、むし歯に比べ広い範囲が影響を受けやすいです。それに対して、むし歯は原因となる細菌が定着して酸を作っている部分のみに影響します。特に磨き残しが起こりやすい奥歯がむし歯になりやすいです。

酸蝕歯を放置することで起きる影響・症状

酸蝕歯では、むし歯のような痛みや穴が開くなどの大きな変化が生じることはないものの、まったく痛くない、見た目が変わらないというわけではありません。

以下より、酸蝕歯を放置することで、起きる影響や諸症状を解説します。

知覚過敏になる

むし歯がないのに、熱いものや冷たいもの、甘いものを食べた際に、ズキッとする痛みやキーンとした痛みを感じたら、酸蝕歯を疑いましょう。

酸蝕歯では歯のエナメル質が溶けますが、放置すると象牙質が露出し、知覚過敏を生じます。熱いものや冷たいもの、歯ブラシによる刺激に敏感になり、一過性の痛みを感じます。刺激がなくなれば、痛みもなくなることが特徴です。

歯が黄色くなる

歯が白く見えるのは、表面に半透明のエナメル質があるからです。エナメル質の内側にある象牙質の色は元々黄色っぽい色をしています。そのため、酸によって、エナメル質が溶けて象牙質が露出したり、エナメル質が透けて見えるようになったりすると歯が黄色くなります。場合によっては、茶色っぽくなったり、歯の先端や表面に小さな窪みが生じたりすることもあります。

歯が欠ける

エナメル質が溶けた歯は脆くなっています。硬いものを食べたり、歯ぎしりや食いしばりなどの強い力が加わったりすると、歯が欠けるおそれがあります。

詰め物が取れやすくなる

詰め物が取れやすくなる主な原因は、一般的に接着用セメントの劣化やむし歯によるものです。しかし、酸蝕歯が原因となることもあります。これは、歯が溶けることによって、詰め物を接着している歯の形が変わり取れやすくなることもあります。

また、酸蝕歯によって噛み合わせに変化が生じ、歯の一部に過剰な負荷がかかることで、詰め物が取れるケースも考えられます。

酸蝕歯は歯科医院で治療をしましょう。

酸蝕歯が疑われる場合は、歯科医院に相談しましょう。初期症状の場合は、歯質の強化や歯の再石灰化を促すフッ素を塗布する治療が施されます。

象牙質が露出していたり、歯が欠けていたりするなど、中期以降の症状がある場合は、詰め物や被せ物で欠けた部分の修復ができます。「コンポジットレジン」や「セラミック」「ジルコニア」などの選択肢がありますが、歯の状態や理想の見た目などによって、最適な選択は異なります。

生まれつき歯が透けているのは「エナメル質形成不全」のおそれも

生まれつき歯が透けている場合、酸蝕歯ではなく「エナメル質形成不全」が考えられます。
以下より、エナメル質形成不全の概要と原因、影響、対処法を解説します。

エナメル質形成不全とは

歯の表面にあるエナメル質が正常に形成されず、通常より薄い状態にあることをエナメル質形成不全といい、生まれつきのものがほとんどです。歯が透けている、黄色っぽい・茶色っぽい、あるいは一部だけ白い「ホワイトスポット」が、子どもの頃からある方はエナメル質形成不全が疑われるでしょう。

ただし、乳歯が強い衝撃を受けた影響で、その下にある永久歯がエナメル質形成不全になることもあります。

エナメル質形成不全の原因

胎児期の歯が形成される過程で、母体の栄養不足や代謝異常、ホルモン異常によって、エナメル質形成不全になると考えられており、この場合は複数の歯に症状が現れる傾向にあります。

遺伝によるエナメル質形成不全の場合は、遺伝子異常による症状であり、すべての歯にエナメル質形成不全が認められます。

また、乳歯が外傷を受けた場合や乳歯時のむし歯が悪化した場合に、後続する永久歯にエナメル質形成不全が表れるケースがありますが、これは1~2本と部分的です。

エナメル質形成不全の影響

エナメル質形成不全にも、酸蝕歯と似た影響があります。小児期や歯の生え変わり時期から症状が現れるので、周囲の大人が影響について知っておくことが大切です。

むし歯のリスクが高まる

エナメル質が薄く表面がでこぼこしている部分や、象牙質が露出している部分は、抵抗力が弱くむし歯になりやすい上、進行も早くなるリスクがあります。エナメル質形成不全が疑われる歯は、早めに歯科医院で適切な治療を受けましょう。

特に、初めての永久歯となる「6歳臼歯(第一大臼歯・真ん中から数えて6番目の上下の奥歯)」は、噛む際に最も大きな力がかかるため、エナメル質形成不全で脆くなっていると、崩れやすい点にも注意しましょう。自分で十分に歯を磨くことが難しい年齢なので、身近な大人がケアとチェックを行いましょう。

知覚過敏のリスクが高まる

酸蝕歯と同様にエナメル質が薄くなっており、温度や糖による刺激を受けやすい状態です。冷たいものや熱いもの、甘いものを食べた際に歯がしみる場合は、エナメル質形成不全である可能性が考えられます。

ただし、乳歯は元々、永久歯よりエナメル質が薄いので、歯磨きの力が強すぎたり、果物やジュースを口にすることが多かったりすると、知覚過敏になることもあります。

歯が破折しやすい

エナメル質は本来、体の部位の中で最も硬い組織です。これによって歯の健康が守られていますが、エナメル質形成不全の場合は、本来の硬さや耐久力が低下しています。

先述した6歳臼歯(第一大臼歯)のように、強い力がかかりやすい歯がエナメル質形成不全である場合は、咀嚼や外傷により破折するおそれがあります。また、睡眠中の歯ぎしりや食いしばりも負荷が大きくなるため、注意が必要です。

エナメル質形成不全の対処法

最後に、エナメル質形成不全の対処法を解説します。基本的には、酸蝕歯の対処法と同様ですが、子どものエナメル質形成不全の場合には、大人によるケアが重要な部分もあります。

フッ素を塗布する

歯が白く濁るといった初期症状における歯科医院での治療は、フッ素の塗布です。歯質の強化と歯の修復を促す目的で施されます。

初期症状から進行させないために自宅できることとして、毎日の歯磨きでフッ素入りの歯磨き粉やフッ素ジェルを使うと効果的です。また、子どもの場合は、1日1回は大人が仕上げ磨きを行うよう心がけましょう。これらは、むし歯の予防としても効果を発揮します。

被せ物を使用する

象牙質が露出するなど、中期以降の症状の場合は、被せ物や詰め物で治療します。欠損範囲が広くない場合には、歯科用レジンで補強・修復を施します。

被せ物について大人(永久歯)の場合は、歯型を取って製作する銀歯やセラミックなどが主流ですが、乳歯の場合は既成品の銀歯である「乳歯冠」を被せる方法が多いです。乳歯の大きなむし歯の治療としてよく使われます。歯型を取る必要がないので、1日で治療が完了します。

大人の場合、特に前歯などの目立つ部分は審美性を重視して、セラミックを被せる方法もあります。エナメル質形成不全の歯の全周を削らなければならないですが、歯全体をセラミックで覆えます。ただし、自費診療で全額自己負担になるため、治療費は保険治療より高額です。

まとめ:歯が透けていると感じたら、まずは受診し原因を突き止めよう

歯が透けている、または黄色っぽいと感じる場合、酸蝕歯やエナメル質形成不全のおそれがあります。エナメル質が薄くなっているなど歯を守る機能が正常に働かないため、いずれも放置すると、知覚過敏やむし歯、歯の破折などの症状につながるおそれがあります。できるだけ早めに歯科医院で診察を受けることが求められます。適切な治療を施して、大切な歯を守りましょう。

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