歯周病が全身に及ぼす影響とは?歯周病が関係する疾患について徹底解説

歯周病が全身に及ぼす影響とは?歯周病が関係する疾患について徹底解説

歯周病は口内だけでなく全身の健康にも関係しています。歯周病との関連が指摘される様々な疾患についてまとめました。

               
(2024年7月16日更新)
歯周病は進行すると歯を失うことにもなるため、栄養状態の不良などを引き起こし、全身へ悪影響を及ぼすことが指摘されていました。
しかし近年の研究から、歯の喪失だけでなく、歯周病そのものが全身の健康に関係していることが解明されてきました。その代表的なものの一つが糖尿病であり、他にも、がん、認知症、低体重出産などのリスクにもつながることが報告されています。
今回は、歯周病との関連が指摘されている疾患について詳しく解説します。

歯周病が全身の疾患に関わる主な3つのメカニズム

歯周病は、歯周病菌によって、歯ぐきや歯を支える骨などに炎症を起こす細菌感染症です。この歯周病菌が体内に入ることで、全身にも悪影響を与えてしまうことがわかっています。
ここでは歯周病が全身の疾患に関わる3つのメカニズムについて解説します。

①歯周病菌が血液を介して全身に広がる

歯周病が進行すると歯ぐきや歯を支える骨などの歯周組織が破壊されます。それに続いて歯周病菌が血管へと侵入してしまい、脳や心臓など全身に広がってしまうことがあります。
歯周病菌が体内に侵入すると、過剰な生体防御反応が慢性的に起こり、血管そのものや体の機能に悪影響を及ぼすことになります。

②炎症性サイトカインが血液を介して全身に広がる

歯周病菌の影響で歯ぐきや歯を支える骨などの歯周組織が破壊されるとき、口内では炎症を促進する物質(炎症性サイトカイン)が発生しています。この炎症性サイトカインが血液を介して全身に運ばれてしまい、慢性炎症の元となってしまいます。
実際に、脂肪組織や肝臓など体の組織や臓器に炎症を起こし、さまざまな病気を引き起こしたり、悪化させたりする原因になると考えられています。

③口から飲み込まれた歯周病菌が、腸内細菌環境を壊す

口内で増殖した歯周病菌を、毎日の唾液や食事によって飲み込み続けると、腸内細菌のバランスまで乱れてしまいます。実際に歯周病菌を口から投与することで、腸内細菌叢が乱れることが報告されています。
腸内細菌叢とは、主に大腸内に生息する細菌のかたまりのことを指し、「腸内フローラ」とも呼ばれます。
さらに歯周病菌は、腸管で病原体侵入を防ぐバリア機能をも低させることがわかっています。

近年の研究から、腸内環境は全身の免疫機能や脳機能にも関わっているともされており、腸内環境の乱れが全身の健康に悪影響を及ぼすと考えられています。

歯周病が関係する疾患

歯周病は、歯周病菌やその菌が産生する毒素、炎症性サイトカインなどが、歯ぐきの毛細血管を通して全身のあらゆる組織に行き渡り、さまざまな悪影響を及ぼします。例えば、心筋梗塞・心内膜炎、糖尿病、がん、低体重児出産・早産、脳梗塞、アルツハイマー病・認知症、誤嚥性肺炎などを引き起こすリスクが高まるといわれています。

また、歯周病菌により腸内細菌叢のバランスが乱れたり、腸管のバリア機構が乱れたりすることでも、全身の健康と関係することがわかってきました。

今回は5つの疾患(糖尿病、がん、アルツハイマー病・認知症、低体重出産・早産、誤嚥性肺炎)について詳しく解説します。

糖尿病

糖尿病は、慢性的に血糖値が高くなっている病気です。
血糖値のコントロールが十分に行われず高血糖の状態が続くと、血管が傷ついたり、詰まったりするなどの血管障害をおこします。その結果、糖尿病の三大合併症といわれる、網膜症、腎症、神経障害等の病気につながります。
実は、歯周病も糖尿病の第6の合併症とされています。
高血糖が続くことにより、唾液の分泌量が減少したり歯周病菌が増加したりしてしまい、歯周病にかかりやすくなったり悪化しやすくなったりするからです。
実際に糖尿病患者において、歯周病の発症や進行のリスクが高くなるという研究結果も出ています。
また、歯周病菌が増殖すると大量の毒素を作り出します。この毒素がマクロファージと呼ばれる細胞を過剰に活性かしてしまい炎症性サイトカインの産生を促進します。炎症性サイトカインは本来、細菌や異物から体を守るために免疫系を活性化する役割がありますが、過剰になると慢性的に強い炎症を引き起こします。
この慢性炎症の状態では、血糖値を下げる働きがあるインスリンが効きにくくなります。すると血糖のコントロールができずに高血糖の状態が続いてしまいます。それにより結果として、糖尿病の悪化につながることになります。

これらのことから、歯周病と糖尿病は双方に関連性があることがわかります。進行した歯周病と糖尿病は互いに悪影響を与え、それぞれの病気にかかりやすく悪化しやすい状態になるとされています。 米国国民栄養調査(NHANES)によると、歯周病患者の糖尿病有病率は非歯周病者の2倍高いことが示されています。

がん

米国ジョンズホプキンス大学からの研究報告によると、歯周病に罹患していたり、過去に歯周病治療の経験があったりする患者では、がんの発症リスクは28%もの上昇していました。

口腔がん

口腔がんは舌や歯肉などの粘膜に発生するがんであり、再発やリンパ節転移を起こしやすいのが特徴です。粘膜の赤色や白色への変色やただれ、しこりの他、刺すような強い痛みを伴うこともあり、進行すると口が開けにくい、食事が飲み込みにくい、話しにくいなどのさまざまな症状があらわれます。

徳島大学の研究により、歯周病菌が口腔がんの進行に関与していることが発表されています。

参考: 歯周病とがん:オミックス時代のペリオドンタルメディシン, 日本歯周病学会会

大腸がん

大腸がんは、大腸(結腸・直腸)に発生するがんで、腺腫という良性のポリープががん化して発生するものと、正常な粘膜から直接発生するものがあります。早期の段階では自覚症状はほとんどなく、進行した場合の代表的な症状として、便に血が混じる(血便や下血)、便の表面に血液が付着するなどがあります。
歯周病にかかった口内では、歯周病菌と同類の細菌が増えることで細菌の組織が乱れ、不良な環境になります。これらの菌が引き金となって炎症性サイトカインが放出されると、DNAの損傷や異常な細胞増殖が起こり大腸がんの引き金になると考えられています。
歯周病のある人は、そうでない人と比べ大腸がんのリスクが高くなると報告されています。

アルツハイマー病・認知症

アルツハイマー病は認知症のうちの1つで、「アルツハイマー型認知症」といわれます。記憶や思考能力がゆっくりと失われ、進行すると着替えや食事など日常生活に障害が出はじめ、最終的には立つ・歩くといった単純な運動機能も失われてしまう病気です。
アルツハイマー型認知症は、脳にアミロイドβというたんぱく質が蓄積されることによって発症するとされており、歯周病菌がアミロイドβの生成・蓄積を促進させることがわかってきました。
九州大学と北京理工大学生命学院(中国)が行った研究では、3週間にわたって歯周病菌を直接投与したマウスと、正常なマウスの脳細胞に蓄積されたアミロイドβの量を比較しました。その結果、歯周病菌に感染したマウスの脳細胞のアミロイドβ蓄積量は10倍であったという結果が出ています。
アルツハイマー病の原因とされるアミロイドβの蓄積は、40代後半からすでに始まっており、早くから歯周病予防をしっかり行うことが大事です。

低体重児出産・早産

低体重児出産とは「妊娠37週未満での出産で体重が2,500 g以下のこと」を指しています。
妊娠中はホルモンバランスの影響で歯肉が腫れやすく、歯肉炎を引き起こしやすい状態です。このまま歯周病へと進行してしまうと、歯周病菌により炎症を引き起こし、子宮収縮を引き起こしてしまいます。その結果、正常な出産期を待たずに早産となってしまうおそれがあります。
そして早産で生まれた赤ちゃんは、必然的に肺など体の機能が未熟なまま生まれてしまう低出生体重児の割合が高くなります。

妊娠している女性が歯周病の場合、低出生体重児および早産のリスクは7倍にもなるといわれており、早産全体の50%以上が歯周病感染によるものという研究結果も出ています。

誤嚥性肺炎

誤嚥性肺炎は、寝たきりの方や高齢者の方がかかりやすいとされています。口の機能が衰えると物を飲み込む嚥下機能が衰え、誤って気管へ唾液や食べ物が入って肺炎を発症することがあります。このとき、食べ物や唾液と一緒に歯周病菌などの口内細菌が気管から肺の中へ入ることで、誤嚥性肺炎を発症することもあります。
要介護施設において専門的な口内ケアを週1回行う人と、行わない人を比較した結果、2年後の肺炎発生率で約40%もの差があるという研究も発表されています。

最近では、災害時に十分オーラルケアができない状況で高齢者がかかりやすい疾患としても知られてきました。誤嚥性肺炎にかからないためにもオーラルケア、歯周病予防が大切です。

まとめ:歯周病予防で口と全身の健康を保ちましょう!

歯周病と全身の疾患がどのように関係しているのかを解説してきました。歯周病予防がいかに大事か、ということを感じられたのではないでしょうか。歯や歯ぐきの健康を守るだけでなく、全身の健康にも関わることを意識して日々のオーラルケアを行いましょう。

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