災害の時の備えとしてオーラルケアグッズは見落とされがちです。しかし、被災時は免疫力が低下して口内の衛生環境が乱れがちです。その結果、むし歯や歯周病だけでなく、身体の健康にも影響をする場合があります。
今回は、制限がある災害時にどのような歯磨きの方法があるのか、災害時に備えて準備しておくべきアイテムをご紹介します。
今回は、制限がある災害時にどのような歯磨きの方法があるのか、災害時に備えて準備しておくべきアイテムをご紹介します。
防災にオーラルケアが大事な理由とは?
災害時は断水などで歯磨きが十分に行えないことがあります。歯磨きができないことで口内の健康だけでなく、身体への影響もあることが明らかになってきました。
災害関連死という言葉がありますが、これは災害が直接的な死因ではなく、災害が間接的な死因と認められるケースのことを指します。災害時の口腔ケアの重要性が注目され始めたのは、1995年の阪神・淡路大震災がきっかけです。この震災で生じた災害関連死における「誤嚥性肺炎」の比率は4分の1であったといわれています。2011年の東日本大震災では、肺炎患者の人数が震災前では1日あたり0.87人でしたが、震災後は2.0人となり、約2.3倍の増加が見られ、災害関連死の死因は肺炎が最も多かったとのことです。
災害関連死という言葉がありますが、これは災害が直接的な死因ではなく、災害が間接的な死因と認められるケースのことを指します。災害時の口腔ケアの重要性が注目され始めたのは、1995年の阪神・淡路大震災がきっかけです。この震災で生じた災害関連死における「誤嚥性肺炎」の比率は4分の1であったといわれています。2011年の東日本大震災では、肺炎患者の人数が震災前では1日あたり0.87人でしたが、震災後は2.0人となり、約2.3倍の増加が見られ、災害関連死の死因は肺炎が最も多かったとのことです。
2024年1月に起きた能登半島地震では、あまり知られていませんが、口内衛生に関連する患者数が一気に3倍になり、歯ブラシの不足が大きな問題になりました。
誤嚥性肺炎になるリスク
災害関連の死因のトップが誤嚥性肺炎です。肺炎の中でも口内環境と関係が深いのが誤嚥性肺炎といわれています。誤嚥性肺炎とは、飲食物や胃液などが誤って気管に入ること(誤嚥)により、口の中で繁殖した細菌まで一緒に肺へと運ばれてしまって起こる肺炎のことです。誤嚥性肺炎は、生理的機能が衰えて飲み込む力が弱くなった高齢者に多い病気です。水不足の災害時には、いつも以上に口内の細菌が繁殖したり、避難生活の疲労で免疫力が低下したりと悪条件が重なることで発症率が高くなり、命を奪うことにもなりえます。
風邪・インフルエンザのリスク
歯磨きをせずにいると口内の細菌が増殖し一部の細菌が作るプロテアーゼというタンパク質を分解する酵素が、のどの粘膜を破壊します。その結果、普段はせきや痰を出すことでウイルスや細菌の侵入を防ぐといった防御機能が正常に機能しなくなり、風邪やインフルエンザにかかりやすくなります。また、歯周病が進行すると、歯周病菌によってインフルエンザウイルスを活性化させることで風邪やインフルエンザのリスクが高まります。
糖尿病・高血圧のリスク
歯周病は糖尿病と高血圧を悪化させるおそれがあることが指摘されています。歯周病菌が歯ぐきの血管の中に入り、血液を通して全身に回ることになります。血液に侵入した歯周病菌が血糖をコントロールしているインスリンの働きを妨げ、糖尿病の症状が悪化する原因となるのです。
災害時にできるオーラルケアの方法
災害時はいつもの歯磨きができない状態です。さまざまな制限がある状況で、できるだけ口内を清潔に保つ方法をご紹介します。
歯ブラシがない時
歯ブラシがない時は、
・食後に水やお茶でうがいをする
・濡れたガーゼやティッシュを指に巻きつけ、歯の表面をこすって汚れをできるだけ落とす(ティッシュを使用する時は、歯の間を通すと破れて切れ端が残ってしまうため表面のみにとどめる。)
といった方法があります。
・食後に水やお茶でうがいをする
・濡れたガーゼやティッシュを指に巻きつけ、歯の表面をこすって汚れをできるだけ落とす(ティッシュを使用する時は、歯の間を通すと破れて切れ端が残ってしまうため表面のみにとどめる。)
といった方法があります。
水がない時
災害時は水不足であることが多いため、水がない状況に対応する方法を知っておく必要があります。
水がない時のオーラルケアは、
・キシリトールのガムを噛む。ガムを噛むことで唾液を出す効果があり、出た唾液で口をすすぐことができる。また、キシリトールには、歯垢(プラーク)がつきにくくなる、歯の再石灰化を促して歯を硬くする、むし歯の原因となる酸を作らないなどの効果があるため、口内環境の悪化を抑えられる。
・マウスウォッシュで口をすすぐ
などが有効です。
水がない時のオーラルケアは、
・キシリトールのガムを噛む。ガムを噛むことで唾液を出す効果があり、出た唾液で口をすすぐことができる。また、キシリトールには、歯垢(プラーク)がつきにくくなる、歯の再石灰化を促して歯を硬くする、むし歯の原因となる酸を作らないなどの効果があるため、口内環境の悪化を抑えられる。
・マウスウォッシュで口をすすぐ
などが有効です。
少ない水で歯磨きする方法
水が不足している時にできる歯磨きの手順をご紹介します。
- コップに約30 mlの水を用意する
- その水で歯ブラシを濡らして歯磨きする
- ティッシュペーパーやノンアルコールのウェットティッシュで歯ブラシの汚れを拭き取る。このときノンアルコールが望ましいです。アルコールが含まれていると口の中が乾燥してしまうため、細菌が繁殖し、口内炎などの原因にもなるので逆効果となってしまいます。
- コップの水を少しずつ口に含み、2~3回に分けてすすぐ
唾液を出す
唾液には口内の汚れを落とす自浄作用や、再石灰化を促進してむし歯から歯を守る働きがあります。頬と耳の下を指で円を描くように揉んでマッサージしたり温めたりすることで唾液腺が刺激され、唾液が出やすくなります。キシリトールのガムを噛むことも効果があります。また、口内が乾燥しないように口呼吸ではなく、鼻で呼吸するように意識することも大切です。
防災グッズに準備しておきたいオーラルケアアイテム
災害時におろそかになりがちな歯磨きの重要性がわかったところで、備えておきたいオーラルケアアイテムの役割とメリットをご紹介します。
歯ブラシ
水が不足していても歯ブラシで磨くことで効果的に歯垢を除去できます。いざという時に使いにくいということがないように、普段使用している歯ブラシを準備しておくとよいでしょう。
液体歯磨き
液体歯磨きは、適量(約10ml)を口に含み、20秒ほどすすいでからブラッシングする(歯ブラシがない場合には汚れを拭き取る)だけで手軽にオーラルケアができます。口内のすみずみまで広がるので効率的にケアできるうえ、水で口をすすぐ必要がない点で、水不足になりがちな災害時に役立ちます。ノンアルコールタイプは子どもからお年寄りまで幅広く使えるためおすすめです。
歯磨きシート
使用後、水ですすぐ必要がないのが歯磨きシートの最大のメリットです。指に巻きつけて口の中の汚れを取っていきます。ただしブラッシングとは異なり、汚れが落ちにくいところもあるので、普段使いで歯磨きシートを取り入れる場合は日常のオーラルケアグッズと併用するのがよいでしょう。
デンタルフロスや歯間ブラシ
歯間にたまった歯垢を取り除くには、デンタルフロスや歯間ブラシが役に立ちます。小さくかさばらない物なので、普段から使用している方は用意しておくとよいでしょう。
シリコン携帯コップ
シリコン製のため、災害時にぶつけたり落としたりしても割れる心配がなく、折りたたみ式ならかさばらないため、避難リュックの中に入れても場所を取りません。うがいや歯磨きをしたり、薬を服用したりする時などに役立ちます。シリコンの水切れがよく乾きやすい特性も防災グッズとして最適です。
ウェットティッシュ
手指の消毒として使うことはもちろん、水も歯ブラシもない場合に歯磨きの代用として使えるノンアルコールのウェットティッシュを用意しておくことがおすすめです。
「ローリングストック」で災害に備えよう!
ローリングストックとは「ローリング(回転する)」と「ストック(備える)」をあわせた言葉です。日用品を多めに常備して災害に備え、古い物から順に普段使いをして、ストックが半分くらいになったら買い足すというやりくり術です。日頃から自宅で利用している物を少し多めに買い備えつつ、当面の被災生活を送る手立てにすることができます。
ローリングストックのメリット
ローリングストックのメリットはいくつかあります。
- 常に一定量の防災グッズがストックできる
- 賞味期限切れや使用期限切れを起こしにくい
- 普段から食べ慣れ使い慣れている物なので、非常時に慌てずに済む
非常食だけでなく、この中にオーラルケアグッズも入れておくことをおすすめします。歯ブラシの交換は月に1回が目安のため、ストックから使用したら補充しておきましょう。
まとめ:万が一に備えてオーラルケアグッズも準備しましょう
災害時の備えとして見落とされがちなオーラルケアグッズですが、災害が起きた時に歯磨きができないことは口内の健康だけでなく身体への影響も大きいです。日頃からオーラルケアを行うとともに、万が一に備えて災害時に役に立つオーラルケアグッズをぜひ準備しておきましょう。