正しい舌の位置はどこ?舌が疲れる原因や舌の位置による影響、トレーニング方法を解説

正しい舌の位置はどこ?舌が疲れる原因や舌の位置による影響、トレーニング方法を解説

(2023年8月2日公開)
正しい舌の位置を気にしたことがありますか?普段、舌が今どの位置にあるのかを意識して過ごしている方は少ないかもしれません。舌には正しい位置があり、正しく収まっていないことで滑舌や歯並び、フェイスラインにも影響を及ぼします。また、正しい位置にすると疲れるという場合は、舌小帯短縮症など様々な可能性があります。本記事では、正しい舌の位置について解説します。また、舌が疲れる原因や舌の位置が与える影響、舌を正しい位置に改善するトレーニング法を紹介します。

               

正しい舌の位置は上顎の「スポット」

上顎の前歯の付け根部分から喉の奥にかけて舌先を滑らせると、少し凹んだ部分があることがわかります。そこを「スポット」と呼びます。舌全体を上顎に密着させ、スポットに舌先が収まっている状態が正しい位置です。唾液や食べ物を飲み込むときも、舌先がスポットに収まったまま、舌全体を上顎に押し上げて飲み込みます。
舌が正しい位置に収まっているかを確かめるには、以下のポイントをチェックしましょう。この2つのポイントを抑えていることで、舌が正常な位置にあることがわかります。
<正しい位置>
  • 舌が上の顎にくっついている
  • 舌先がスポットに収まっている
<間違った位置>
  • 舌が上の顎から離れている
  • 舌先が前歯に触れている
間違った位置に舌がある場合、意識して正しい位置に収めることが大切です。

正しい舌の位置にすると疲れる3つの原因

さまざまな原因によって正しい位置にすると疲れてしまうことがあります。ここからは正しい位置にすると疲れてしまう3つの原因について解説します。舌を正しい位置に収めると疲れてしまう方は、「口呼吸をしている」「舌小帯が短い」「指しゃぶり期間が長かった」などの原因が考えられます。

1.口呼吸をしている

口呼吸をしていると、舌が低い位置に落ちてしまっている状態になります。低位舌の多くの原因は口呼吸であり、反対に低位舌が口呼吸を悪化させる原因のひとつにもなります。アレルギー性鼻炎や慢性鼻炎、蓄膿症などの鼻咽腔疾患があると、鼻呼吸が難しいため口呼吸になっている場合や、口呼吸することが習慣になっている場合があります。口呼吸により舌が低い位置にあることで、何かを飲み込む時に舌先で前歯を強く押し出してしまう「舌癖(ぜつへき)」も現れます。
口を開けている時間が多いことで、口唇や頬など口周りの筋肉が弱っているため、舌を正しい位置にすると疲れて維持することができません。また、舌が前歯を押し出す力に対して、外側の筋肉に力がないため、歯並びやかみ合わせ、発音にも影響を与えることがあります。

2.舌小帯が短い

舌小帯とは、舌の裏側の中央にある筋のことです。この舌小帯が短く、舌の動きが制限されることを「舌小帯短縮症」といいます。舌小帯の先端が舌先の近くまでついているため、舌を前に出したときに先端がくびれることや、重度の場合は舌を上げることも困難になることがあります。この場合、舌を正しい位置にすると疲れるというよりは、正しい位置に舌を収めることができないというのが特徴です。
舌小帯短縮症は、発声や摂食、嚥下機能などに問題がないような軽度の場合、治療対象とならないこともあります。また、舌をうまく動かせるように機能訓練を行うことで、症状を軽減できます。一方、発声や摂食、嚥下機能に悪影響を与えており、機能訓練では改善が見込めない場合は手術を行います。手術は比較的簡単に行うことができますが、術後は手術でできた傷のひきつれ防止や舌を上手に動かすための機能訓練が必要となる場合があります。

3.指しゃぶり期間が長かった

赤ちゃんのときの指しゃぶりはごく自然なことであり心配ありませんが、3歳を過ぎてもなお指しゃぶりをしていると、上下の前歯に隙間ができ、そこに舌を突き出すという舌癖が出てしまうことがあります。また、食べ物を飲み込む際に前歯の裏側を押し出す癖も現れます。このような舌癖があると、正しい位置に舌を収めても維持することが困難です。

正しい舌の位置ではないことが与える影響

舌が正しい位置にないとどのような影響を及ぼすのでしょうか。ここでは、考えられる4つの影響について解説します。

滑舌が悪くなる

舌が正しい位置に収まらず、低位舌になってしまうと滑舌が悪くなるおそれがあります。低位舌の状態は、舌の筋力が弱くなっているため、上顎に舌をつけることが困難です。そのため、タ行やナ行など、上顎に舌をつける発音が悪くなりやすいという特徴があります。また、言葉をはっきり発音するためには、舌の筋力が必要不可欠です。舌が下がり、なおかつ舌の筋力が維持できなくなることで、滑舌が悪く、舌足らずな話し方になってしまうおそれがあります。

歯並びが悪くなる

舌が正しい位置でなく低い位置にある場合、舌先は前歯の裏側にあります。この位置にある状態で飲み込む動作をすると、舌が下顎の前歯を押し出してしまいます。そのため、下顎の前歯には常に力がかかってしまい、長く続けると歯並びが悪くなる原因となります。また、この場合、下顎にほとんどの力がかかるため、下顎ばかりが成長して反対咬合(受け口)になるリスクもあります。
他に、舌が低い位置にあると上下の前歯の間に舌があることが多く、正常に噛み合わず上下の前歯の間に隙間ができる開咬(かいこう)になるおそれも高まります。その場合、奥歯ばかりに負担が行ってしまうため、奥歯が痛くなったり、割れてしまったりするおそれもあります。

歯列矯正の後戻りの原因になる

歯列矯正の後戻りとは、歯列矯正後に歯並びが安定せず、また矯正前の状態に戻ってしまうことです。舌が正しい位置に収まらずに低位舌や舌癖がある場合、歯列矯正を行ってもまた同じ原因で後戻りが起こるおそれがあります。
歯列矯正は、歯並びを改善するだけでなく、治療後も安定して歯並びを維持させることが目的です。長い時間をかけて治療しても、舌の位置の影響で後戻りすると、歯列矯正の意味がなくなってしまいます。

顔つきが変わる

舌の位置が低くなる低位舌は、舌周りの筋力が弱っている証拠でもあります。舌は、眼輪筋や大頬骨筋、笑筋、口角挙筋など、顔周辺の筋肉とつながっているため、舌の位置が下がることで顔の歪みやたるみが引き起こります。
舌を正しい位置に収め、舌の筋力を鍛えることで顔周りの筋肉に刺激を与えることができます。舌を正しい位置に収めることで、顔周りの筋肉が引き締められ小顔効果などのメリットもあります。

正しい位置でも疲れなくなる舌トレーニング

舌を正しい位置に収めることで、発音や滑舌、フェイスラインのたるみなどを改善効果や歯並びへの影響を抑える効果が期待できます。ここでは、高い効果が期待できる舌トレーニングを3つ紹介します。

1.あいうべ体操

「あいうべ体操」は、舌の筋力を高め、正しい位置に戻すために効果的なトレーニング方法です。この方法は、幼い頃から正しい舌の位置を覚えられるようにするため、全国の幼稚園や保育園でも実践されています。やり方はとてもシンプルで簡単です。
  1. 「あー」と大きく口を開く
  2. 「いー」と大きく口を開く
  3. 「うー」と大きく口を開く
  4. 「べー」と大きく口を開く
この動作を朝・昼・晩と10回ずつ繰り返します。声は出しても出さなくても大丈夫です。

このあいうべ体操は、舌の筋力を高めるだけでなく、口呼吸を改善していくトレーニングでもあります。口呼吸は舌の位置と密接な関係があるだけでなく、口呼吸を改善することで、むし歯や歯周病など病気の予防にもつながります。いつでもどこでも簡単にできるトレーニングなので、ぜひ毎日実践してみましょう。

2.舌回し

舌回しは、舌を鍛え、筋力を高められるトレーニング方法です。舌が鍛えられることで舌の位置が正しく戻る効果やフェイスラインのたるみを改善する効果が期待できます。あいうべ体操と同じく、舌回しもシンプルで簡単です。
  1. 姿勢を正し、口をしっかりと閉じて歯茎の外側を時計回りに舌でなぞります。ペースは2秒間で1周が目安です。まずは20回ほど行います。
  2. 同じペースで20回逆回りします。
少ししか回していないのに疲れてしまう場合、舌の筋肉が弱っているおそれがあります。20回行うのが大変な場合、まずは10回からはじめてみましょう。朝・昼・晩の毎食後に行うのがおすすめです。

舌回しは、舌の筋肉に加え、顔周辺のあらゆる筋肉を同時に鍛えられます。とくに、噛む力や飲み込む力に必要な筋肉も鍛えられることから、よく噛めてスムーズに飲み込むことができます。噛む力の向上は、頭痛や肩こりの軽減にも効果的です。さらに、唾液の分泌を促すという効果もあります。舌回しでは、耳下腺・舌下腺・顎下腺という唾液腺を刺激し、唾液の分泌を促進します。唾液が分泌されることで細菌を洗い流し、ドライマウスや口臭の改善・予防、むし歯や歯周病のの予防にもつながります。

舌の位置改善には口腔筋機能療法(MFT)がおすすめ

舌の位置を改善するには、口腔筋機能療法(MFT:Oral Myofunctional Therapy)がおすすめです。この療法により、口輪筋や頬筋、顎舌骨筋など、口の周辺にある筋肉を鍛えて正しい動きに整え、舌癖や歯並びの改善を図ります。子どもが行う場合は特に筋肉が成長しやすく、高い効果が期待できます。
MFTにはさまざまなトレーニング法があります。正しい舌の位置を覚えるための「スポットポジション」、噛む力や舌圧を強くする「バイトホップ」や「ドラッグバック」、正しい飲み込み方を覚えるための「スラープスワロー」などです。また、舌の形を変える「ファットタング」や「スキニータング」、口唇を舌先でなぞる「リップトレーサー」、ガラガラうがいをする「ガーグルストップ」なども自宅で簡単に行えるMFTの一種になります。
これらのトレーニング方法は地道に続けることで改善が期待できます。MFTは、個々の症状にあわせて必要なトレーニングを組みあわせて行うため、歯科医院で指導を受けて実践します。特に子どもの場合は幼少期に行うことで、舌の位置を改善し、今後の歯並びや噛み合わせにも良い影響を与えることができます。
<舌のトレーニングについてはこちらの記事も参考にしてみてください>
舌の筋肉を鍛えれば、美容にも健康にも効果抜群!? 舌トレーニングも紹介

舌を正しい位置に改善しましょう

舌が正しい位置に収まっていないことで、発音や滑舌、口呼吸、歯並び、歯列矯正の後戻りなどの影響を及ぼします。また、顔周りの筋肉にも影響することから、フェイスラインのたるみなど、顔つきにも影響します。舌を正しい位置にするには、あいうべ体操や舌回しなどのトレーニング、歯科医院でのMFTの指導が有効です。舌の筋力や顔周りの筋力、口呼吸などが気になったら、トレーニングを実践し、舌を正しい位置に改善しましょう。

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