アルコールが口内環境にもたらす影響は?予防方法を解説

アルコールが口内環境にもたらす影響は?予防方法を解説

(2024年4 月1日更新)
アルコールの過剰摂取は体の健康に悪い影響を与えることは良く知られています。実は、口内環境も例外ではありません。本記事では、アルコールが口内環境にもたらす影響とその理由、そしてアルコールによる口内環境の悪化を予防するための方法を解説します。

               

【最新情報】健康に配慮した飲酒に関するガイドライン

2024年2月に厚生労働省から「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」が公表されました。このガイドラインは、国民一人ひとりがアルコールに関連する問題への関心と理解を深め、自らの健康や行動を予防するために必要な注意を払って、不適切な飲酒を減らすことを目的に作成されました。前述した内容と同様に純アルコール量を基準とした飲酒量の目安やこまめに水分補給をするなど口内環境にも良いことが記載されています。

健康リスクを考慮した飲酒量の目安

自分の飲酒量を把握するために、「純アルコール量」という指標を用います。
純アルコールは、
純アルコール量 = 摂取量(ml) × アルコール度数(%) × 0.8
という式で計算することができます。

健康リスクを考慮した1日あたりの純アルコール量の目安は、男性: 20 g以下、女性: 10 g以下と記載されています。また、生活習慣病のリスクを高める、1日あたりの純アルコール量の目安は、この前述した通り、男性: 40 g以上、女性: 20 g以上です。
よく飲まれているお酒の種類を表にしました。純アルコールだけでなく、口内環境や生活習慣病にも関わる糖質についてもまとめているので、飲酒の際に参考にしてみてください。

飲酒のポイント

健康に配慮した飲酒習慣のポイントを意識して飲酒をすることが大切です。飲酒ガイドラインでも下記のような飲酒のポイントが記載されています。
  • 自分の体調や体質に合わせて飲む量を調整する。
  • ゆっくり時間をかけて飲む。
  • あらかじめ飲む量を決めておく。
  • 飲酒の合間に水やソフトドリンクを飲む。
  • 空腹時に飲まない。
  • 週に飲酒をしない日を設ける。
  • 妊娠中や授乳中の飲酒は控える。

アルコールと口内環境は関係がある?

適度な飲酒は、ストレスの緩和や人間関係を円滑にするなど、私たちの生活に潤いを与えます。ですが、過剰な飲酒は、健康にとって悪い場合があります。アルコールの過剰摂取は、口内環境にも影響を与えることが分かっており、むし歯や歯周病を進行させる原因になります。

その他にも、口腔がんや舌がんの発症リスクを高めると考えられています。発がんリスクを高める原因は、肝臓でアルコールが分解され、「アセトアルデヒド」という発がん性物質になるからです。アセトアルデヒドに関する研究では、口内細菌の中にアルコールとグルコースから、高濃度のアセトアルデヒドを産生する能力を持つ細菌があることが判明しています。

アルコールが口内環境にもたらす5つの影響

先述の通り、過剰な飲酒は口内環境にさまざまな面で影響があります。ここでは、アルコールが口内環境にもたらす5つの主な影響を詳しく解説します。

1.むし歯・歯周病

アルコールが口内環境に与える影響の1つとして、むし歯や歯周病のリスクを高めたり進行させたりすることが挙げられます。
その理由の1つが、お酒に含まれる糖質にあります。お酒の多くは、むし歯の原因となる糖質を含んでいます。そのため、お酒と合わせて食べるおつまみと重なって、口内は糖質だらけになります。
また、お酒は集中力や判断力を低下させてしまうため、飲酒後の歯磨きは普段よりもおろそかになりがちです。さらに眠気も誘うため、糖質が歯に付着したまま歯磨きをせずに寝てしまい、菌が大繁殖してむし歯のリスクを引き上げる原因となります。
また、飲酒後の頭痛や吐き気などの原因となるアセトアルデヒドですが、この物質は歯ぐきなどの歯周組織を傷つける毒性も持っているため、歯周病の原因になります。

アセトアルデヒドは、最終的に無害な炭酸ガスと水に分解されます。このアセトアルデヒドを分解する速度が、お酒に対する強さを意味しています。アセトアルデヒドの分解が追い付かない速さでアルコールを摂取すると、体内に長く高濃度のアセトアルデヒドが滞留します。その結果、歯周病や発がんのリスクが高まります。飲酒は、お酒に強い弱いに関わらず適度な量やペースで楽しむことが大切です。

2.ドライマウス

アルコールには利尿作用があるため、体内の水分量が減少し口が乾く「ドライマウス」という状態を引き起こします。

利尿作用により体内の水分量が減少すると、唾液も分泌されにくくなります。特にアルコール度数が高いお酒ほど、その影響は大きくなります。唾液は、口内を潤すだけでなく、むし歯菌や歯周病菌の増殖を抑える役割も果たしています。そのため、唾液の分泌量が低下することで、口内菌が増殖しやすくなり、むし歯や歯周病のリスクを高めます。アルコール度数が低いお酒を飲んだり、お酒と一緒に水を飲んだりして対策をしましょう。

3.口臭

アルコールを摂取することで口臭の原因になります。これは、アセトアルデヒドや利尿作用が関係します。アルコールが分解されて生成されるアセトアルデヒドは、それ自体が独特の強い臭いを持っています。
また、アルコール摂取によって体の水分が奪われると、体内の水分量が低下するため、唾液の分泌量も低下します。唾液は口内を洗浄し、口臭を引き起こす細菌の増殖を抑制する役割があるため、ドライマウスも口臭を強くする原因となります。

4.酸蝕症(さんしょくしょう)

アルコールが歯に与える影響は、むし歯や歯周病だけではありません。酸性の強いお酒を頻繁に飲むと「酸蝕症」になるおそれがあります。酸蝕症とは、酸性の飲食物や体内からの酸によって歯の表面にあるエナメル質を溶かしてしまう疾患のことです。
口内の酸性度は、pHという指標で示されます。pHは7を基準(中性)として、高いとアルカリ性であり、低いと酸性であることを表します。歯が酸によって溶け始めるのは、pH 5.5以下とされています。多くのお酒は、pH 5.5以下であることが多いです。例えば、ワインは赤白どちらもpH 3前後、ビールはpH 4程度とされています。酎ハイや梅酒もpH 3前後です。これらはすべて歯が溶け始めるpH 5.5以下のため、酸蝕症になりやすい状態です。
また、アルコールを過剰摂取することで引き起こされる嘔吐も、酸蝕症の原因となります。嘔吐により口のなかに出てくる胃酸はpH 1~2と非常に強い酸性です。そのため、嘔吐を繰り返すことでも酸蝕症になりやすいです。嘔吐をした際は口をすすいで口内を中性に近づけることで対策をしましょう。
酸蝕症になると歯のエナメル質が薄くなるため、知覚過敏になることもあります。
知覚過敏についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

5.歯の変色

アルコールの摂取は歯の変色につながるおそれもあります。歯の黄ばみは、アルコールが引き起こす代表的な影響です。アルコールによって歯の変色が生じる原因は主に2つあります。
1つ目の原因は、お酒に含まれる酸が歯の表面に微細な傷をつけ、その傷に着色の要因となるステイン(歯の外側についた着色汚れ)が付着しやすくなることです。特に赤ワインなど、色素成分が強いお酒は着色を引き起こしやすいとされています。
2つ目の原因は、先述したアルコール摂取による口内の乾燥です。口内が乾燥すると、唾液による口内の自浄作用が減少するため、歯にステインが残りやすくなります。

これらがアルコールの摂取によって、歯が変色しやすくなる原因です。
歯の黄ばみレベルをチェックしたい方はこちらの記事も参考にしてください。
イラストで歯の黄ばみレベルを見ることができます。

アルコールによる口内環境の悪化を予防する6つの方法

アルコールによる口内環境の悪化のリスクは、適切な飲酒方法と口内ケアを心掛けることによって、大幅に減少できます。ここでは、アルコール摂取による口内環境の悪化を予防する6つの方法を具体的に紹介します。

1.飲酒後すぐに歯磨きをする

飲酒後は、口内が酸性に傾きやすいです。また、アルコール分解が遅い方は、長くアセトアルデヒドを滞留させてしまいます。そのため、飲酒後にはできるだけ早く歯磨きをすることが大切です。

特に、就寝中は唾液の分泌が抑制され、口内が乾燥しやすくなります。寝る前には必ず歯磨きをしましょう。歯磨きがどうしても難しい場合は、水で口をすすぎ、翌朝歯磨きを忘れずにしましょう。これにより、何もしない状態よりも口内環境を清潔に保つことができます。

2.酸性度の強いお酒を避ける

酸性度の強いお酒はなるべく避けるように心掛けましょう。お酒の多くは、酸性を示します。特に、ワインや酎ハイ、梅酒、レモン系のお酒などは酸性度が強く、歯に対する影響が大きいため、頻繁な摂取は避けるべきです。
一方で、比較的酸性度が弱いお酒としては、第一に麦焼酎が挙げられます。麦焼酎はpH 6.3なので、歯が溶けるpH 5.5よりも高いため、酸蝕症になりにくいです。
また、pH 5.5を下回りますが、ウィスキーはpH 5なので、ビールやワイン、酎ハイなどと比べると歯に対するダメージが少ないです。とはいえ、アルコールは酸蝕症以外にも口内環境に影響を及ぼすため、pHにかかわらず適量の摂取を心掛けましょう。

3.糖の多い醸造酒を避ける

糖度の多いお酒を避けることも重要です。醸造酒は、果実や穀物を発酵させて造られるため、糖質を多く含みます。そのため、ビールやワイン、日本酒などの醸造酒はむし歯のリスクを高めます。また、カクテルや酎ハイ系の飲料も、糖質を多く含んでいるものが多いため注意しましょう。
代わりに、ウィスキーやブランデー、焼酎などの「蒸留酒」は、糖質が少ないため、醸造酒よりもむし歯のリスクが低いです。ただし、これらを飲む際に糖質を含む割材などを使用するとむし歯のリスクとなりますので注意しましょう。また、醸造酒でなくても、カクテルや酎ハイは糖質を多く含んでいるものがあるので注意が必要です。

4.こまめに水を飲む

アルコールと一緒に水を飲むことも大切です。お酒には利尿作用があるため、飲むと体が脱水状態になりやすいです。アルコール類の中でもビールは利尿作用が強いため注意しましょう。
体が脱水状態になると唾液の分泌量が減るため、口内が乾燥しやすくなります。そのため、水を摂取することは、唾液の分泌を促進するための対策として非常に重要です。また、水は中性なので酸性状態になった口内を緩和する効果も期待できます。
水分補給の目安として、飲んだお酒と同量以上の水を摂取しましょう。水分補給の手段としては、水以外でも、白湯や無糖のお茶、ノンカフェインの飲み物などでも代用可能です。

5.ダラダラ飲まない

飲酒時間の長さも口内環境に影響します。お酒を長時間にわたって飲むと、長く口内が酸性状態になるため、歯が溶けるリスクが高くなります。また、口内にアルコールや糖質が長時間存在することも、口内環境を悪化させるリスクです。むし歯菌などの増殖につながるだけでなく、アセトアルデヒドが長く滞留することで歯ぐきにダメージを与え歯周病の進行にもつながります。
飲酒をする際は、適正な量を守り、時間を区切って楽しみましょう。厚生労働省では「生活習慣病のリスクを高める飲酒量」を、1日の平均純アルコール摂取量で男性は40 g以上、女性は20 g以上としています。この基準以下にすると良いでしょう。
<純アルコール20 gに相当する酒量>
  • ビール ロング缶1本 500 ml
  • ワイン グラス2杯弱 200 ml
  • 日本酒 1合180 ml
お酒を飲むとすぐに顔が赤くなるなど、お酒に弱い方(アルコールの分解能力が低い方)は、より量を抑えることが必要です。また、飲酒時間は2~3時間程度を目安にし、その間に適量を摂取することがおすすめです。短時間で飲みすぎるのも急性アルコール中毒の危険があるので注意しましょう。
適正飲酒を実行するためのポイントとしては、「こまめに水を飲む」「アルコールと一緒に食事を摂る」「水割りにして飲む」などが挙げられます。酔いが回りすぎると自制できなくなる恐れもあるので、ほろ酔いの手前くらいの状態に抑えることが重要です。

6.定期的に歯医者に行く

むし歯や歯周病は、初期段階では自覚症状が少ないため、自分でも知らないうちに進行してしまうことがあります。これを防ぐためにも、定期的に歯科医院を受診し、口内のチェックやケアを受けることが重要です。

特に、飲酒習慣のある人は、アルコールが口内環境にもたらす影響を意識し、注意深くケアを行うことが大切です。

飲酒時は口内ケアを忘れずに行いましょう

アルコールの摂取は口内環境に影響を及ぼす原因になります。そのリスクを最小限に抑えるためには、酸性度や糖分の高いお酒を避けたり、こまめな水分補給をしたりすることが重要です。もちろん、飲酒後の歯磨きも欠かさず行いましょう。本記事で紹介した対策を実践し、健康な口内環境を保ちつつ飲酒を楽しみましょう。

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