歯がグラグラするのはなぜ? 原因や治療法、歯周病が疑われるケース

歯がグラグラするのはなぜ? 原因や治療法、歯周病が疑われるケース

(2024年1月30日公開)
大人の歯がグラグラする場合、歯周病の進行や歯の根の異常、被せ物の劣化などが原因の可能性が高いです。本記事では歯がグラグラする主な原因と治療法について解説します。さらに歯周病で歯がグラグラして痛い場合の対処法についてもご紹介します。

               

歯がグラグラする原因

食事をすると歯がぐらつく、舌で触ると歯が動いている感じがするなど、大人の歯(永久歯)がぐらつくのには、いくつかの原因が考えられます。

歯周病が進行しているケース

歯周病が進行していると、歯がグラグラすることがあります。歯周病とは、歯周病菌によって歯の周りの組織が炎症を起こし、歯ぐきや歯を支える骨が壊されていく病気です。

不十分な歯磨きや生活習慣の乱れなどにより、歯周病の原因となる細菌が増えて歯垢(プラーク)や歯石となって歯にこびりつくと、細菌が出す毒素が元で歯ぐきがダメージを受けます。これにより歯ぐきに炎症が起こり、歯ぐきの腫れや出血口臭などの症状が起こります。

さらに歯周病が進行すると、歯を支えている歯ぐきが下がり、歯槽骨が溶けていきます。歯槽骨は歯を支えている骨のため、この骨が溶けていくことで、歯がグラグラするようになります。

歯の根が損傷している

歯ぎしりや食いしばり(噛みしめ癖)によって、歯の根が損傷することでも歯がグラグラする原因になることがあります。
歯ぎしりや食いしばりは無意識に行っていることが多く、その原因は正確にはわかっていませんが、ストレスやかみ合わせが関係していると言われています。

人間が食べ物を噛む時の力は、自分の体重程度とされています。一方、歯ぎしりや食いしばりをしている時に1本の歯にかかる力は、自分の体重の5~10倍と言われており、人によっては1トン以上かかることもあります。

このような過度の負担が長期的に歯にかかり続けることで、歯の根が折れたり、割れたりして歯がぐらつく原因となります。特に歯ぎしりや食いしばりは癖になっている方が多く、癖が治るまで歯に負担がかかり続けるため、早めに専門の治療が必要です。

歯の根に膿が溜まっている

むし歯や外傷が原因で、歯の内部にある根管や歯の中の神経(歯髄)に細菌が感染し、歯の根の先端(根尖)や歯の根の周りまで感染が広がることを根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)と言います。根尖性歯周炎は慢性と急性に分けられ、慢性の場合、痛みはほとんどないですが、疲れた時などに歯がぐらつくような感じがしたり、噛んだ時に違和感を覚えたりします。また、できものができて腫れたり、膿が出たりすることもありますが、強い痛みはほとんどありません。

一方、急性根尖性歯周炎の場合、激しい痛みを生じるのが特徴で、歯ぐき  が大きく腫れたり、膿が出たりします。

そして、根尖性歯周炎を長く放置していると、歯の根の先端に袋のようなものができます。これを歯根嚢胞(しこんのうほう)と言います。歯根嚢胞は歯髄を除去した歯や歯髄が壊死した歯に起こりやすく、慢性状態では自覚症状はないものの、細菌感染が起こって症状が悪化すると嚢胞が大きくなり、痛みや歯の動揺などさまざまな症状が現れます。

さらに、重篤な歯周病(歯槽膿漏とも呼ばれる状態)の時も、歯の根に膿が溜まることがあります。親知らずが正常に生えてこない時に起こる智歯周囲炎(ちしししゅういえん)でも、歯ぐきから膿が出て、歯がグラグラすることがあります。

被せ物や土台が劣化・脱落している

もし治療済みの歯に対して、歯の根の部分ではなく、歯の上の部分がグラグラすると感じる場合は、被せ物・土台の接着部分が原因かもしれません。一般的に歯の被せ物は、歯を削った土台に接着剤をつけて固定します。そのため、接着剤が劣化して被せ物が取れかかると、歯がグラグラしていると感じることがあります。

また、歯の被せ物や土台自体の劣化や破損が原因のケースもあります。特に被せ物と土台となる歯の間にすき間ができると歯がぐらつくだけでなく、むし歯もできやすくなります。そのままにしておくとむし歯が進行するとともに、歯が割れて抜歯することもあるため、早急に治療を受けましょう。

妊娠により歯ぐきが腫れている

妊娠中は歯肉炎や歯周病を起こしやすく、歯ぐきが腫れることで歯がぐらつくことがあります。これは妊娠に伴い、一部の歯周病菌の栄養源となる女性ホルモンの分泌が活発になるからです。また、妊娠中はつわりで食生活が乱れたり、口内ケアが不十分になったりすることでも歯周病のリスクが高まります。

通常、妊娠による歯肉炎(妊娠性歯肉炎)は、口の中を清潔にしていれば、産後は自然と治ることが多いです。しかし、ケアをすることなくそのまま放置してしまうと、歯周病に進行することがあります。

妊娠中の歯周病は早産や低出生体重児のリスク因子にもなるので、おなかの赤ちゃんのためにも歯の定期検診を受け、早めの治療や適切な口内ケアをすることが重要です。

歯がグラグラする際の治療法

歯がぐらつく原因が違えば、治療法も異なります。ここでは歯がぐらつく原因ごとの治療法について解説します。

歯周病の場合

歯ぐきから血が出る中等度の歯周病や、膿も出る重度の歯周病(歯槽膿漏)が原因で歯がグラグラする場合は、歯周病の治療が必要です。治療は基本的に歯周基本治療、歯周外科治療の順で行われます。

歯周基本治療とは、歯科医院で行う歯のクリーニングと自宅でのセルフケアを中心とした治療のことです。歯垢、歯石の除去やブラッシング指導により、歯周病の原因となる細菌を減らします。軽度の歯周病の場合、歯周基本治療だけで症状が改善します。

しかし、中等度から重度の歯周病 の場合、歯周基本治療だけでは十分な効果が得られない方が多いです。その場合には、歯周外科治療へと移行します。歯周外科治療には、歯ぐきを切開して歯の根の歯垢や歯石まで徹底的に除去するフラップ手術や、溶けてしまった歯ぐきや歯を支える骨を再生する歯周組織再生療法などがあり、病態に合った方法で行います。そして治療後は良好な状態を維持し、歯周病を再発させないために定期的なメインテナンスをして歯周病を予防します。

いずれにしても、歯周病は進行してしまうと非常に治りにくく、最悪の場合歯が抜けてしまうこともあるため、早めに歯科医院を受診して治療することが大切です。

歯が根の部分しか残っていない場合

外傷や歯ぎしり、食いしばり(噛みしめ癖)によって歯の根元が割れたり、むし歯によって歯の根の部分しか残っていなかったりする場合には、歯の根の部分を引っ張り上げるエクストリュージョン法という矯正治療を行います。エクストリュージョン法は通常抜歯となるところを、歯を抜かずに済み、さらに被せ物の土台として自分の歯が使える治療法です。また、歯磨きなどもしやすくなるため、良好な口内環境を維持できるメリットもあります。

ただし、エクストリュージョンは歯の根が一定以上あり、歯や歯ぐきが健康的な方のみに限定されます。そのため、歯の先まで割れるなど損傷が大きい場合や、細菌感染している歯、歯周病が進行している場合には、抜歯になることもあります。

歯の根に膿が溜まっている場合

歯の根に膿が溜まってグラグラしている場合には、根管治療が必要です。根管治療では、歯の頭の部分を削って根管を露出させ、細菌感染した部分を除去します。ただし、根管内は複雑な形状をしているので機械が届かない部分は薬剤を使って繰り返し洗浄を行い、可能な限り細菌を減らします。そして、詰め物をしてその上に土台をつくったら被せ物を接着します。

根管治療をしても改善されない場合には、歯の根の先を切断する歯根端切除術を実施することもあります。感染した歯の根を切り取ることで、根管治療ができなかった歯でも抜歯せずに残せます。

被せ物や土台が劣化・脱落している場合

被せ物や接着剤が劣化して、すき間ができたり、脱落したりしている場合には、材料を外して被せ直しや詰め直しを行います。もし、土台となる歯にむし歯がある時にはむし歯を削り取り、被せ物や詰め物もつくり直します。きちんと歯に密着していない被せ物は、すき間からむし歯になりやすく、かみ合わせにも悪影響が出るため、歯科医院で早めに治療することが重要です。

歯周病で歯がグラグラして痛い場合の対処法

歯がグラグラする、食べ物を噛むと痛いといった症状があっても、すぐに歯科医院に行けないこともあるでしょう。そこでここでは歯科医院に行くまでの応急処置についてご紹介します。

硬い食べ物を避ける

歯がグラグラしている時に硬い物を食べると症状が悪化することがあります。そのため、すぐに歯科医院に行けない時は、歯に負担のかかる硬い食べ物は避けましょう。また、粘着性のある食べ物もぐらついている歯が取れてしまうことがあるので、避けましょう。

指や舌で触らないようにする

すでにぐらついている歯に触れて動かすと、患部が刺激されて痛みの元となったり、雑菌が入り込みやすくなったりするおそれがあります。歯が根元から折れてしまい、治療が難しくなってしまう場合もあります。気になっても指や舌で触れないようにして、早めに歯科医院を受診しましょう。

市販の痛み止めを服用する

歯や歯ぐきに痛みや炎症がある時は、歯痛に有効なロキソニンやバファリン、カロナールなどの市販薬を服用して様子を見ましょう。飲み慣れているものがあれば、それを選ぶのがおすすめです。ただし、痛み止めはあくまで対症療法にすぎません。繰り返し痛みや炎症が出る場合には、症状が悪化しないうちに歯科医院を受診することが大切です。

なお、市販の痛み止めの中には妊娠・授乳中だと服用できないものがあります。妊娠・授乳中の方はかかりつけの医師や薬局などの薬剤師に確認してから服用しましょう。

保冷剤などで患部を冷やす

歯ぐきに炎症がある時には患部を冷やすのも効果的です。冷やす時は、布でくるんだ保冷剤や氷嚢、市販の冷却シートなどを使って頬の上から患部を冷やします。氷や冷たい水を口に含むなどして直接患部を冷やすと、刺激が強すぎてかえって痛みや炎症がひどくなるおそれがあるので注意しましょう。

歯がグラグラする場合は歯科医院を受診する

歯がグラグラする症状を放置していると歯が抜け落ちたり、抜歯が必要になったりする恐れがあります。歯がぐらついたり、歯や歯ぐきに痛みや炎症があったりする場合には、できるだけ早く歯科医院を受診することが重要です。

歯周外科治療などより専門性の高い治療が行える歯周病の認定医・専門医に相談しましょう。1つの例として、日本歯周病学会の認定医や歯周病専門医があります。日本歯周病学会に所属する各都道府県の認定医や歯周病専門医は、日本歯周病学会のホームページから探せます。

まとめ:歯がグラグラする時は早めに歯科医院の受診を

歯がグラグラすると感じる時は、歯に何らかの異常がある場合が多いです。悪化するおそれがるため、指や舌で触らないようにしましょう。また、すぐに歯科医院に行けない時は、市販の痛み止めを飲んだり、患部を冷やしたりして痛みや炎症を和らげることも大切ですが、歯の異常は自分では治せないため、できるだけ早く歯科医院を受診しましょう。

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