歯周病は治る?治療法とケア、チェックの方法を紹介

歯周病は治る?治療法とケア、チェックの方法を紹介

(2023年9月22日公開)
歯や歯ぐきがかゆい、歯ぐきから出血する、歯がグラグラしている、などの症状はありませんか?これらの症状が当てはまる場合は、歯周病が進行しているかもしれません。歯周病は重度にまで進行すると元の健康な状態に戻すことが難しいとされる疾患です。
この記事では歯周病の治療はできるのかや歯周病の治療法について詳しく解説します。

               

歯周病とは?原因や進行過程

歯周病は、歯や歯ぐき、歯を支える骨などの歯周組織が炎症を起こす疾患です。口内に存在する細菌が歯と歯ぐきの間にある溝に入り込み、毒素を放出します。これが直接的な原因で炎症が起き、歯ぐきがダメージを受けて広がり、歯周ポケットを形成します。炎症が起きると、歯ぐきが腫れて赤くなったり、歯槽骨(しそうこつ)と呼ばれる歯を支える骨が溶けたりしながら、徐々に症状が進行します。      

歯周病に関わる症状のセルフチェック

【セルフチェック項目】
  • 口臭が気になる
  • 歯を磨くと出血する
  • 硬い物が噛みにくい
  • 朝起きると口の中がネバネバしている
  • 歯ぐきが赤く腫れている
  • 歯と歯の間によくものがつまる
  • 歯と歯の間に隙間ができている
  • 歯がグラグラする
歯ぐきが腫れるなどの自覚症状が出る頃には、歯周病が進んでしまっているおそれがあります。歯周病の初期段階では、症状に気付かないことが多いです。日ごろからのセルフチェックに加え、歯科医院での定期検診が大切です。特に喫煙者や糖尿病の方、妊娠中の方などは、歯周病に感染するリスクが高くなるため、定期的に歯科医院で検査を受けると良いでしょう。
<歯周病の進行度チェックについてはこちらの記事を参考にしてみてください>

歯周病は治療できる

歯周病は治療することで改善できます。ただし、歯周病が進行することで失ってしまった歯や歯ぐきは、完全に元通りにすることはできません。そうした意味では、現在でも歯周病は完治させることは難しい疾患です。
歯科医院で歯石を除去し、歯周病の原因となる細菌の増殖を防ぐなどの治療を行うことで炎症を抑えられ、症状の改善が期待できます。
ここでは歯周病治療の方法を解説します。

歯周病の治療方法

歯周病の症状が進行すると、炎症により歯ぐきが腫れたり痩せて下がったりします。さらに進行すると、最終的には歯が抜け落ちてしまうこともあります。
しかし、適切な治療を行うことで、歯周病の進行を抑え、歯や歯ぐきの状態を改善することができます。具体的な歯周病治療の方法や再発防止に効果的なケア方法を5つ解説します。

1.歯垢・歯石を除去する

歯周病の治療では、初めに進行度を確認するために、歯周ポケットの深さなどを検査します。その後、歯に付着した歯石や歯垢の除去を行います。歯垢や歯石は、細菌が増殖し塊になることで形成されます。これらを除去することで、歯周病の原因である細菌を減らし歯周病の症状を改善させます。
治療後は定期的にメインテナンスを行い、口内を清潔な状態に保つことで再発を防止します。
毎日正しい歯磨きを行うことも歯周病の改善に効果があります。正しい歯磨きのやり方は、歯科医師や歯科衛生士から歯磨き指導を受けることで身に付けることができます。正しい歯磨き方法でしっかりと歯垢を除去することで炎症が抑えられるため、歯ぐきの腫れや出血などの症状も改善します。

2.詰め物や被せ物に隙間や劣化がないかチェックする

クリーニングで歯石を除去したり、歯磨き指導を受けたりすることで歯周病の改善が期待できますが、再発することもあります。そのため、歯垢がつきにくく、取りやすい状態に口内を保つことが大切です。
歯垢がつきやすくなる状態として、銀歯やプラスチックなどの詰め物が劣化していたり歯と詰め物の間に隙間があったりすると、汚れがつきやすくなります。そのため、劣化した詰め物を修復する必要があります。
また、詰め物の高さが合わないと、歯を支えている歯槽骨がダメージを受けやすくなるため、噛み合わせの調整が必要になります。
口内の状態や症状によって違いますが、正しい歯磨きや歯科でのクリーニング、詰め物や被せ物の修復などの基本治療で症状が改善するケースも多いです。

3.歯周外科手術を行う

歯ぐきが下がっていたり、歯槽骨(歯を支える骨)が溶けてしまっていたりして、歯周病が重度にまで進行している状態の場合には、手術が必要となることもあります。手術の方法には大きく分けて4種類あります。

組織付着療法

比較的症状が軽い場合には、組織付着療法が用いられます。歯周病菌や汚れを徹底的に除去し、歯周組織を安定させる手法です。手術の種類として、麻酔をしたあと歯根に付着した歯石や問題がある歯肉組織を除去する歯周ポケット掻把術や歯周ポケットの内壁をメスで切除し、歯周組織を縫合する新付着手術があります。

切除療法

切除療法とは、歯周組織から問題のある部分を除去し、歯周ポケットを減らす施術です。レーザーなどで歯ぐきをトリミングする歯肉切除術をはじめ、歯周ポケットが深いケースで採用される歯肉弁根尖側移動術、骨整形や骨切除術などがあります。また、歯ぐきを切開し、普段は歯ぐきで隠れている部分を目で確認しながらクリーニングをするフラップ手術という治療もあります。

歯周形成手術

歯周形成手術は、著しく歯ぐきが下がっている場合に、歯ぐきの形を整えるための手術です。歯冠側(歯が口の中に露出している部分)へ粘膜弁を引き上げて縫合する歯肉弁歯冠側移動術、口蓋部(鼻腔と口腔との境界となる蓋の部分)からとった皮膚を問題のある歯ぐきへと移植する遊離歯肉移植術などがあります。

歯周組織再生療法

先述のとおり、歯石除去などの細菌を取り除く治療法では、歯ぐきの状態を改善できても、減ってしまった歯周組織をもとに戻すことはできません。歯周病が重症化して歯を支える骨が減ってしまった場合には、歯周組織再生療法という治療法が有効です。
再生療法では、破壊された組織をもとの状態に近づけることができます。ただし、あまりにも破壊が進んでいると手遅れなこともあります。そのため、手遅れになる前にできるだけ早く歯周病治療を開始することが重要です。
再生療法には主に2つあります。
【エムドゲイン法】
エムドゲインとは、歯のもととなる組織からつくられた薬のことです。エムドゲイン法とは、歯周外科治療後にこの薬を歯に塗り、歯のセメント質などを再生させる方法です。手術は保険適用外で、再生までに数か月から1年ほどかかります。
【GTR法】
GTR法では、歯ぐきを切開して歯石を根元から除去したあと、「メンブレン」という膜を置いて組織の再生を促します。骨が回復してほしい歯の周りのスペースにこの膜を置くことで、回復スピードの速い歯ぐきが組織に入ってしまうのを防ぎます。そうすることで、歯を支える骨が適切に再生されます。メンブレンの種類によっては保険が適用されます。治療期間は数か月です。

4.歯周病菌の殺菌治療(PDT)を行う

歯周病の治療方法として、PDTというものがあります。PDTは光線力学的療法とも呼ばれる、光の殺菌作用を利用した治療法です。光線力学療法はがんや皮膚科の治療でも利用されています。光によって活性化する光活性剤を使って歯周病の歯ぐきや感染部位を染色し、そこに特殊な光を1分間あてることで殺菌を行います。
メリットは安全で痛みがなく、効果が大きいことです。中等度の歯周病の場合、通常の治療では数か月かかりますが、この殺菌治療だと1か月程度で終了します。デメリットとしては他の治療法よりも費用が高額になることです。
費用は重症度で差が出ますが、目安としてはおおよそ以下のとおりです。
  • 軽 度:55,000円~85,000円
  • 中等度:75,000円~125,000円
  • 重 度:90,000円~160,000円

5.治療後も定期的にメインテナンスをおこなう

病院でどれほど効果のある治療を受けたとしても、歯周病菌は完全に除去できるわけではありません。そのため、再発を防ぐためには、治療が終わったあとも毎日のケアを徹底しましょう。また、日々の歯磨きを正しく行うことも重要ですが、それだけではまだ再発リスクがあります。一度歯周病になって歯ぐきが下がった歯は、歯磨きが難しくなります。定期的に歯科医院で検査やクリーニングなどを受けましょう。
歯科医院での定期的なメインテナンスの頻度は、おおよそ3ヵ月に1度が目安です。口内が清潔に保てている場合は4ヵ月~半年、歯磨きが苦手な人は3ヵ月より短くなることもあります。まずは歯科医院で相談してみましょう。

歯周病を予防する有効なセルフケア方法

歯周病の治療法について説明してきました。ですが、歯周病にかかっていない方や軽度の方は予防が肝心です。
歯周病は毎日のセルフケアに気をつけることで予防できます。ここでは、具体的な予防方法について解説していきます。

丁寧に歯磨きをする

歯周病ならないために、まず丁寧な歯磨きが大切です。ブラッシングの際は歯垢を取り除くことを意識して、歯だけでなく歯と歯ぐきの間から汚れをかき出すように1本ずつ丁寧に磨きましょう。力を入れすぎると毛先がつぶれて歯垢を取りにくくなったり、歯と歯ぐきを傷つけてしまいます。歯磨きをするときは、軽い力で1 cmくらいずつ細かく動かして磨きあげてください。
歯を磨くタイミングは、毎食後と就寝前です。食べかすをブラッシングで除去することで、菌の繁殖を抑えられます。特に就寝中は口内が乾燥して唾液による抗菌作用が働きづらくなり、細菌が増殖するので、就寝前には必ず歯を磨くようにしましょう。

歯の間もきれいにする

丁寧にブラッシングをしても歯と歯の間にある食べかすや歯垢は除去しきれません。特に歯垢は歯と歯の隙間に溜まりやすいので、フロスや歯間ブラシを毎日の口内ケアに取り入れてみてください。歯の隙間が空いている人は歯間ブラシが使いやすく、隙間があまりない人はフロスがおすすめです。
毎日のケアを習慣化することで細菌が繁殖しにくい口内環境になり、効果的な歯周病予防となります。

生活習慣を改める

口内環境は歯磨きなどの口内ケアだけでなく、生活習慣にも左右されます。歯周病予防には生活習慣の改善も効果的です。
ストレスや食生活の乱れで免疫力が落ちると、細菌に感染しやすくなります。栄養バランスを意識して食事を取ることが大切です。特にビタミンCは免疫を高める作用があるため、積極的に摂取することをおすすめします。また、喫煙はビタミンCを破壊するため、歯周病予防のためには禁煙が望ましいです。
他にも、疲れを溜めないよう睡眠をしっかりと取る、ストレスを溜めないように発散する、禁煙するなど、生活習慣を改善することで、歯周病予防につながります。

歯周病の治療で改善を

歯周病の治療はセルフケアから歯科医でのメインテナンス、手術まであらゆる方法があります。手遅れなほど重症化していなければ、治療で改善できることが多いです。歯周病が気になる方は、歯科医院への早めの相談をおすすめします。また、すでに症状が進んでしまっている方もかかりつけの歯科医院や口腔外科で相談してみましょう。

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