歯周病の治し方 自分で治せる? 歯周病の治療法をわかりやすく解説

歯周病の治し方 自分で治せる? 歯周病の治療法をわかりやすく解説

(2024年1月30日公開)
歯周病は重度になると、歯が失われてしまう病気です。歯科医院に行かずに自分で治したいと思う方もいるかもしれませんが、歯周病は自分では治せません。本記事では、歯周病を自分で治せない理由、進行度合い別による歯科医院での治療法などについて詳しく解説します。

               

歯周病を自分で治せないのはなぜ?その理由を解説

歯周病について

歯周病とは、歯の周囲の歯ぐき(歯肉)に腫れや出血などの炎症が起こり、さらに症状が進行すると、歯を支える骨(歯槽骨)などが溶けてしまう病気です。歯と歯ぐきの間の歯周ポケットがうまく清掃されていないと、ポケット内に歯周病多くの細菌が溜まり、炎症が起きてしまいます。

健康な歯ぐきは引き締まって弾力があり、薄いピンク色をしていますが、炎症が起きると歯ぐきが赤くなったり、ブヨブヨと腫れたりしてきます。これが歯周病の初期段階である歯肉炎です。初期段階の歯周病には、むし歯のように痛んだり、冷たいものがしみたりといった症状はほとんどなく、(見た目以外には)自分では気づきにくいかもしれません。歯周病が進行して重度になると、歯がグラグラしたり、膿が出たりして、最終的には歯を抜かなければならなくなります。

日本歯周病学会が2022年に発表した「歯周治療のガイドライン」によれば、中程度以上の歯周病である歯周炎は進行の度合いによって4段階に分けられます。ステージが進むにつれて、歯と歯ぐきの間の溝である歯周ポケットはどんどんと大きく広がっていきます。最重度のステージは、歯が5本以上失われた状態を指します。

歯周病を自分で治せない理由

進行すると恐ろしい歯周病ですが、歯周病を自分で治す方法はありません。歯周病の原因である歯垢(プラーク)や歯石、細菌の作り出すヌルヌルとした塊(ねばつき)は、セルフケアでは完全に取り除けないからです。歯周病を治すためには、歯科医院に行き、専門的な治療を受ける必要があります。

一般的に、歯石はスケーリング(歯石除去)という治療法で除去し、歯垢や歯石が無くなれば歯周病の症状は改善します。ただし、歯周病が原因で下がってしまった歯ぐきや溶けてしまった歯槽骨は、歯科医院で治療を受けたとしても完全に元の状態に戻すことはできません。
下記の記事では歯周病の進行度と歯周ポケットについて解説しています。覚えておくと歯科医院での説明がわかりやすいかもしれません。ぜひ参考にしてみてください。

歯周病が自分で治せると勘違いされがちなもの

「歯周病に効く」と謳う歯磨き粉やマウスウォッシュ、その他の製品が数多く発売されています。もちろん歯周病に対して全く効果が無いというわけではありません。しかし、上述したの理由からマウスウォッシュや歯磨き粉などのセルフケア商品を利用しても、歯周病を自分で治すことはできません。勘違いされやすい製品について、以下で詳しく解説します。

1.薬用歯磨き粉を使用しても根本的な解決にならない

市販の薬用歯磨き粉のなかには「歯周病に効く」と謳う製品があります。歯周病は自分で治せるものと思ってしまいますが、こうした歯磨き粉を使って丁寧に歯を磨いても、歯周病の原因となる歯垢や歯石を完全に除去することはできません。

歯周病に効くことを謳う製品には、歯ぐきの炎症を抑える薬用成分が配合されており、軽度(歯肉炎)であれば、一定の効果が期待できます。そのため正しく使うことにより、歯肉炎が歯周炎にまで進行してしまうことを防ぐのに役立ちます。しかし、すでに進行して歯周炎の症状がある方には、薬用歯磨き粉を使っても、根本的な解決にはなりません。

2.マウスウォッシュ・うがいは歯周病菌には効果がない

マウスウォッシュにも歯周病の予防効果を謳う製品はありますが、同様に歯周病の原因となる細菌を除去することはできません。マウスウォッシュには、歯周病の原因となる細菌の増殖を一時的に抑える効果があるものの、口内のねばつきを取り除くことはできません。したがって歯周病を治す効果は期待できません。ですが、歯周病などの口内細菌を繁殖させないために、予防としての使用はおすすめです。
効果のあるマウスウォッシュを探してる方はぜひ下記の記事も参考にしてみてください。歯科衛生士さんがおすすめするマウスウォッシュを紹介しています。

3.市販薬は一時的な対策にしかならない

ドラックストアなどで、歯周病に効くと謳う塗り薬が販売されていることがあります。こうした市販薬には、歯ぐきの痛みや腫れを緩和する成分は配合されていますが、あくまで対症療法であり、歯周病を根本的に治すことはできません。

歯周病は細菌が原因のため、抗生物質を使えば治せるのではないかと思う方もいるかもしれません。たしかに、歯科医院ではジスロマック(アジスロマイシン)という抗生物質が用いられることはあります。しかし、市販されている塗り薬などでジスロマックが配合されている薬、またはジスロマックに類する成分が配合された製品は販売されていません。また、歯科医院で処方される抗生物質も効果はあるものの、根本的な治療のためには歯垢や歯石の除去が欠かせません。

歯周病の治療法を紹介

歯周病は歯科医院に行って治療してもらう必要があります。病状の進行度合いによって、スケーリング、ルートプレーニングという治療が行われ、重度になれば手術も検討する必要があるでしょう。ここでは、進行度に合わせて治療法を解説します。

軽度の場合はスケーリング

軽度の歯肉炎の場合は、スケーリングと呼ばれる治療法で歯石を取り除きます。そのうえで、自宅でもきちんと歯磨きができるように、歯科衛生士が正しいブラッシング方法を指導します。歯周病の原因となる歯垢や歯石を取り除き、プラークコントロールをしっかりと行えば、軽度歯周病(歯肉炎)は治癒します。さらに、歯並びや噛み合わせが悪い、不適合な被せ物がある、歯ぎしりの癖があるといった場合には、歯周病のリスクが高まるので、必要に応じて治療します。

歯科医院でのプロフェッショナルケアと、患者自らによるセルフケアとをあわせた一連の治療を「歯周基本治療」と呼びます。歯周基本治療終了後に検査を行い、改善が見られれば、定期的なメインテナンスに移行します。

中等度はルートプレーニング

炎症によって歯槽骨が溶け、歯根部が露出しはじめている場合は、中等度の歯周病と診断されます。ステージ2または3が該当します。このころになると、歯ぐきから出血したり、痛みや膿が出たり、知覚過敏になったりします。

歯槽骨が溶けはじめているために、歯がぐらつきやすくなり、歯が浮いたような感じがしたり、食べ物が噛みにくくなったりと、日常生活に支障が出てきます。歯ぐきが下がって歯が長くなったように見えるため、顔の印象も変わってきます。

中等度の歯周病も、まずスケーリングやブラッシング指導などの歯周基本治療を行い、その後、ルートプレーニングを実施します。ルートプレーニングとは、専用の器具を使って、歯根部にある歯垢・歯石を除去する治療法です。細菌に汚染されてしまった歯根の表面を削って、歯石が付かないように滑らかにします。治療後に検査をして改善していれば、定期的なメインテナンスに移行します。

重度なら手術が必要

歯槽骨が歯根の3分の2以上溶けて、歯が大きくぐらつくようになった場合は、重度の歯周病と診断されます。ステージ4です。歯ぐきの痛みや腫れ、出血がひどく、日常生活に大きな支障を来します。放置してしまうと、歯が抜け落ちてしまうこともあります。

重度歯周病の場合も、最初に行うのはスケーリングやルートプレーニングといった基本治療で、その後、患者の状態にあわせて追加の治療法が選択されます。治療法には例えば、歯ぐきを外科的に切開して歯根を露出させ、付着している歯垢や歯石を除去する「歯周外科治療(フラップ手術)」や、失った歯槽骨を再生させる「歯周組織再生療法」などがあります。歯周病によってぐらついている歯には被せ物をして、歯を安定させます。どのような処置を行っても安定しない場合には抜歯をすることもあります。

歯周病は、歯を失う原因の第1位です。手遅れになる前に、歯科医院で治療を受けることをおすすめします。

歯周病の予防は自分でできる。セルフケア方法を紹介

歯周病は自分では治すことはできなくても、予防をすることはできます。ここでは、歯周病にならないためのセルフケアの方法を紹介します。

丁寧に歯磨きする

歯周病を予防するためには、しっかりと歯磨きすることが基本です。歯垢の蓄積を防ぐには、毎食後歯磨きをするのが理想です。大変な場合でも起床後と就寝前の最低2回は歯磨きをしましょう。

特に、歯と歯ぐきの境目は歯垢が溜まりやすく、注意して磨くことが重要です。口の中をすっきりさせるためではなく、歯垢を除去するために1本1本丁寧に磨く意識を持つと良いです。歯周ポケットの清掃を目的に、歯と歯ぐきの境界部分に、歯ブラシを45度の角度で当て、小刻みに動かして磨くのがポイントです。

歯磨きの際には、力を入れ過ぎないことも大切です。力を入れて磨くと、かえって歯や歯ぐきを痛めてしまいます。歯ブラシの毛先が大きく広がらない程度の軽い力で磨くことをおすすめします。さらに、寝ている間は唾液の分泌が減り、細菌が口内に増えやすくなります。どんなに疲れていたとしても、寝る前には必ず歯磨きすることが重要です。

定期的に歯ブラシを交換する

歯ブラシは使い続けると、毛先が広がったり柔らかくなったりして、清掃力が落ちるため、定期的に新しいものに交換する必要があります。

同じ歯ブラシを使い続けることは衛生的にもよくありません。例えば1日3回歯磨きする場合には、歯ブラシの交換目安は少なくとも1か月に1回だと考えてください。毛先が広がってしまっている場合は、使用期間にかかわらず、交換することをおすすめします。

毎月8日は歯ブラシ交換デー

歯ブラシ交換デーとは、歯と口の健康を守るために毎月8日、歯ブラシを交換する習慣を推奨している記念日です。歯ブラシの「8(歯)」が毎月8日の由来です。毎月1回の交換の目安にしてみてください。

デンタルフロスや歯間ブラシを使用する

歯と歯の間や、歯肉と歯の隙間は歯ブラシの毛先が入りにくい部分です。こうした場所はデンタルフロスや歯間ブラシを使って清潔に保つことが重要です。特に、歯の間に隙間がある方や、歯並びが悪くて食べかすが詰まりやすい方は使用をおすすめします。

デンタルフロスには、次の2種類があります。
  • 必要な長さに切り取り指に巻いて使用する「糸巻きタイプ」
  • スティック型のホルダーに取り付けられた「ホルダータイプ」
デンタルフロスを使い慣れてない場合には、使いやすいホルダータイプをおすすめします。
歯間ブラシは、自分の歯と歯の間より大きいと歯ぐきを傷つけてしまうことがあるので、少し小さめのサイズを選びます。

デンタルフロスや歯間ブラシは毎食後に使用することが理想的です。毎食後が難しい場合でも、1日1回夜寝る前の歯磨きの際には使用することをおすすめします。

生活習慣を見直す

歯周病の予防には、生活習慣を見直すことも大切です。生活リズムが乱れると、免疫力が低下し、口内の細菌バランスが乱れて、歯周病の発症・進行のリスクが高まります。全身の健康を促進し、免疫機能を高めるためには、栄養バランスの取れた食事が重要です。また、睡眠不足は自律神経の乱れにつながるため、質のよい睡眠を確保することも大切です。

歯周病の予防には禁煙も効果的です。タバコに含まれるタールは、ヤニとして歯に付着すると、その上に歯垢がつきやすくなります。

さらに、長期間のストレスは免疫機能を低下させ、歯周病の発生を促進する可能性があります。上手くストレスを管理する技術を取り入れて、心身の健康を保ちましょう。

歯科医院の定期検診を受診しよう

歯周病の予防には、歯科医院での定期的な歯の検診とクリーニングが大切です。歯の定期検診を受けていれば、歯周病の初期症状を早期に発見でき、治療を開始できます。歯周病の原因となる歯垢や歯石もすぐに除去できます。2~3か月に1回は定期検診を受診して、口の中の健康を保ちましょう。

まとめ:定期検診とセルフケアで歯周病を予防しよう

歯科医院の苦手な方や通院が面倒な方は、歯周病を自分で治したいと思うかもしれませんが、一度歯周病になってしまうと自分で治せません。毎日の丁寧な歯ブラシで予防をしつつ、定期的な歯科検診を受けることで、歯周病の早期発見と早期治療を心がけましょう。

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