10代で3割が歯周病って本当? ライフステージごとに考える若い方の歯周病リスク

10代で3割が歯周病って本当? ライフステージごとに考える若い方の歯周病リスク

この記事では若い世代の歯周病の割合や、世代別の歯周病の原因・対策について解説します。

               
10代や20代の特に若い方は歯周病について意識しない方も多いでしょう。実は中学生や高校生の歯周病も少なくありません。歯周病は歯ぐきに炎症を起こし、ひどくなると歯が抜けてしまう怖い病気です。歯周病の予防は早く始めるほど良いです。この記事で紹介する情報などを参考に歯周病の予防をはじめましょう。

10代の3割以上が歯周病!?

現在、中高大生や20代の社会人のうち、どの程度の割合の方が歯周病に罹患しているのでしょうか。2022年の厚生労働省による「歯科疾患実態調査結果の概要」を見てみましょう。

年齢階級別「歯肉出血を有する者の割合」を見ると、10~14歳の40.2%、15~19歳の 34.7%、20~24歳で42.3%と、いずれの年代でも半数近くが歯ぐきからの出血があることがわかりました。10~24歳の若い世代全体で見ると、歯周病予備軍は対象者183人のうち72人、約4割にものぼります。

さらに年齢階級別「4 ㎜以上の歯周ポケットを有する者の割合」も見てみましょう。結果は15~19歳で14.3%、20~24歳で21.2%に歯周ポケットが確認できました。15歳~24歳の若年層全体で見ると、対象者101人のうち18人、つまり18%もの方がすでに歯周病に罹患していることがわかります。

歯周ポケットとは、歯と歯ぐきの間にできた溝のことを指します。ここに汚れが溜まると歯周病が進行し、どんどん溝は深くなっていきます。歯周ポケット4 ㎜以上というと、顎の骨が半分ほど溶けた中等度の歯周病です。放置しておくとさらに骨が溶けて、歯が抜けてしまうおそれがあります。

データで見ると、若い世代でも歯周病に罹患している方の割合は非常に多いことがわかりました。歯周病というと高齢者のイメージがありますが、「自分は大丈夫」と高を括らずに、早めにライフステージに合わせた対策を講じることが大切です。

年代別の原因と対策:中学生(13~15歳)

ここからは中学生・高校生・大学生および社会人と、年代別のライフステージに沿った歯周病の原因や対策をご紹介します。

ではまず、中学生(13~15歳)の歯周病について、原因と対策を解説します。

中学生が歯周病になる原因

中学生にもなると身の回りのことは自立し、小学生の頃に比べて保護者が歯磨きについて細かく指導することは少なくなります。小学校によっては給食後に歯磨きの時間を設けるところもありますが、そうした学校に通っていた子どもでも、中学生になって歯磨きの習慣を維持できるとは限りません。友人の目を気にして、休み時間に歯磨きをするのも難しいかもしれません。授業や部活、友達との時間などで忙しく過ごしているうちに歯磨きを忘れたり、時間をかけなくなったりします。こうした要因により歯磨きがおろそかになり、しっかりと汚れを落としきれずに歯の隙間に汚れやゴミが溜まることが、歯周病の原因になります。

また思春期であるこの年代は、ホルモンバランスの変化により歯周病が生じやすくなることもあります。歯周病の原因となる菌は数百種類にもおよび、その中に女性ホルモンが豊富な環境を好む菌があるため、女性は歯周病になりやすい時期と言えます。これを思春期性歯肉炎といいます。

思春期性歯肉炎はちゃんと歯を磨いていてもかかることがありますが、放置していると急速に進行する「侵襲性歯周炎」を引き起こすおそれもあるため、早い段階からしっかり予防しましょう。

中学生ができる歯周病対策

歯周病の多くはプラークが原因で起こります。プラークとは歯と歯ぐきの際などに付く、白いペースト状の汚れのことです。プラークが固まれば歯石となり落ちにくくなるので、まずは毎日の歯磨きをしっかり行ってプラークを除去することが大切です。3~6か月おきに歯科医院へ定期検診に通い、ふだんの歯磨きでは取りにくい汚れもキレイに落としてもらいましょう。

生活習慣の見直しも重要です。お菓子やジュースの頻繁な摂取はむし歯や歯周病を引き起こします。ジュースの代わりに牛乳やお茶を飲ませる、ガムや飴はキシリトールを使ったものにする、お菓子を家に常備しないなど対策を行うことで、歯だけでなく身体全体の健康にもつながるでしょう。

歯並びが悪い方は食べ物のカスが詰まりやすく、歯ブラシが届きにくいので磨き残しを出やすいです。歯列矯正をすることも検討しましょう。ただ、中学生になると反抗期が始まる時期でもあるので、頭ごなしに「歯をちゃんと磨きなさい」と言っても、素直に聞くことができないかもしれません。指導する際は歯周病のリスクを丁寧に説明するなど、納得しやすい伝え方を心がけましょう。

年代別の原因と対策:高校性(15~18歳)

次に高校生(15~18歳)の歯周病について、原因と対策をご紹介します。

高校生が歯周病になる原因

高校生にもなると行動範囲が広くなり、友人との外出で食事や間食を取る機会が増え、部活動や塾で帰りが遅くなることも多くなります。外出先では歯磨きをしにくいため、朝と夜以外には歯磨きの機会が得られない子どももいるでしょう。そうした食生活や生活習慣の変化が、歯周病を招いてしまいます。

高校時代はその先の進学を見据え、多くの学生たちが受験勉強に取り組む時期でもあります。受験勉強によるストレスは免疫力を低下させる上、交感神経の働きで唾液の分泌も減少させます。よく緊張すると口の中がカラカラになるのは、この交感神経の働きによるものです。唾液の中には多くの免疫物質が含まれているため、唾液が減少すると歯周病の進行を促す可能性があります。

またストレスや睡眠の質の低下により、食いしばりや歯ぎしりの癖が出る方もいるかもしれません。食いしばりや歯ぎしりを行うと歯周組織に不自然な強い力がかかり、咬合性外傷により歯周病を重症化させてしまう場合もあります。

高校生ができる歯周病対策

歯周病の一番の予防は、歯をしっかり磨くことです。一般的には、毎食後3分間程度の歯磨きが推奨されていますが、毎食後に歯を磨くことが難しい場合は、少なくとも起床後と就寝前は時間をかけて歯を磨くようにしましょう。
また、高校生でも昼休みに歯磨きの時間を取るのは難しいでしょう。携帯用のマウスウォッシュなどをカバンに入れておいて、
30秒程度ブクブクうがいをするだけでも、口内の食べかすなどが取れて清潔な環境を保てます。また、身だしなみを気にする年代でもありますので、食後の口臭対策としても効果的です。

勉強などで忙しいとつい歯磨きもおろそかになってしまいますが、「10時になったら歯磨きをする」「寝る前や登校前に必ず歯磨きをする」など意識して習慣化することが大切です。この年代になると子ども扱いされることを嫌がりますので、保護者の方も自尊心に配慮した声かけを心がけましょう。

また受験勉強の際は、適度に休憩を入れてストレスを溜めすぎないようにすることも重要です。加えて適度な睡眠や三度の食事など、できるだけ規則正しい生活を送れるように意識してあげると良いでしょう。

年代別の原因と対策:大学生や社会人(19~24歳)

最後に大学生や社会人(19~24歳)の歯周病について、原因と対策をご紹介します。

大学生や社会人が歯周病になる原因

19歳以降は大学に通ったり、社会に出て仕事を始めたりと、自身を取り巻く環境に大きな変化が訪れる時期です。大学に通っている人は勉強や就職活動、働いている人は仕事や人間関係によりストレスがかかり、免疫力が下がってしまうかもしれません。そうすると歯周病にもかかりやすくなります。

また、大学進学や就職を機に一人暮らしを始める人も多いでしょう。これまで生活習慣を律してくれていた保護者がいなくなり、生活のすべてを自分しなくてはなりません。その結果、生活が乱れて歯磨きの回数が減り、口内環境が悪化することも少なくありません。定期検診もおろそかになり、口内環境の異変に気付かないこともよくあります。歯周病が重症化してからでは、元に戻すのは困難です。進行する前にセルフケアと定期検診で口内を良好な環境に保ちましょう。

大学生や社会人ができる歯周病対策

大学生や社会人になると通勤や通学で外出することが多くなるでしょう。昼食後や外泊時など、どこでも歯磨きができるように、歯ブラシを携帯するのがおすすめです。

携帯用歯ブラシにはコンパクトに折りたためるものやコップが付いたものなど、さまざまな種類があります。
もし歯磨きをする時間が取れない場合や歯ブラシを携帯するのが面倒という方は、水でブクブクうがいをし、その後にキシリトールガムを噛むのもひとつの方法です。甘味料にキシリトールを100%使用しているものや砂糖を使用していないものが良いでしょう。歯科専売品のガムだと、むし歯予防に効果のあるフッ素が配合されているものもあります。ガムを噛むと唾液の分泌が促され、菌の繁殖を抑えるだけでなく、口臭の予防にも効果的です。ただしスーパーなどで買えるキシリトールガムには、砂糖などむし歯になりやすい甘味料が含まれている場合があるため注意しましょう。
さらにマウスウォッシュには歯周病やむし歯、口臭を予防できるものもあるので、マウスウォッシュで20~30秒程度ブクブクうがいを行うのも手です。次亜塩素酸水のような除菌効果のあるものであれば、感染症予防にも役立ちます。ただ、マウスウォッシュは歯磨きの補助的なアイテムなので、歯磨きと併用したほうが効果的です。

いくら忙しくても、歯の健康のために起床後と就寝前は丁寧に歯を磨く時間を設けましょう。

同時に生活面では、歯周病の原因となるストレスや不規則な生活などを改善する努力も必要です。きちんと食事や睡眠を取る、気分転換の方法を見付けるなど、心身ともに健康な生活を送ることが、歯周病予防につながります。

若くても歯周病のリスクあり! 今日から対策を始めよう

データからもわかるように、10代や20代の若い世代でも歯周病とは無縁ではありません。歯周病はしっかりオーラルケアを行うことで予防できます。また、ストレスや生活習慣の影響も大きいので、適度に気分転換し、心身ともに健康な生活を心がけましょう。定期的な歯科検診を受けることも健康を維持するために大切ですので、取り入れてみたください。

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