犬や猫も歯周病になる?!人以外の動物が歯周病になる理由とは

犬や猫も歯周病になる?!人以外の動物が歯周病になる理由とは

この記事では、人以外の動物も歯周病になること、犬や猫などの動物が歯周病にかかる原因や症状、動物の歯周病対策で必要なことなどについて解説します。

               
実は人以外の犬や猫などの動物も歯周病になることがあります。ペットを飼っていない人は意外に思うかもしれませんが、ペットショップでは犬・猫用の歯磨きグッズが数多く販売されています。人間と同一の歯周病菌が犬の口内から検出されたという報告もあり、人間と同様に、犬や猫などの動物も歯周病にかかるリスクがあります。

犬や猫も歯周病になる

歯周病は人間だけの病気ではなく、実は犬や猫などのペットもかかることをご存知ですか?特に3歳以上の犬や猫の場合には、歯周病を患っていることが非常に高いと言われています。

厚生労働省が運営する、生活習慣病予防のための健康情報サイト「e-ヘルスネット」によれば、歯周病とは、次のように定義されています。
「歯と歯ぐき(歯肉)の隙間(歯周ポケット)から侵入した細菌が、歯ぐきに炎症を引き起こした状態(歯肉炎)、それに加えて歯を支える骨(歯槽骨)を溶かしてグラグラにさせてしまう状態(歯周炎)を合わせて歯周病といいます。」
歯周病を引き起こすと疑われている細菌は数十種類にも及びます。これは、人間だけでなく犬や猫でも同様です。
他の感染症の多くは単一の細菌やウイルスの感染によって引き起こされますが、歯周病は複数の細菌が関わる感染症です。

歯周病の初期である歯肉炎の段階では歯ぐきが腫れる程度ですが、中期の歯周炎を経て、後期の歯槽膿漏まで進行すると、歯を支える骨や靭帯にも炎症が及び、最終的には歯が抜けてしまいます。歯槽膿漏になってしまうと、炎症は口内だけでなく鼻や顎、さらには腎臓や心臓、肝臓などの臓器にまで悪影響を与えることがあります。
このような歯周病の進行過程や影響も、人間と犬や猫で同じです。

動物が歯周病にかかる原因は人間との接触によるものと考えられています。特に犬や猫などのペットは、例えば飼い主の口周辺などを舐めた拍子に、飼い主が保有する細菌が移って、罹患してしまうおそれがあります。
歯周病からペットを守るためにも、飼い主自身が日頃から歯磨きなどのオーラルケアを行うことが重要です。

歯周病になるのはサルや馬、アシカも!

歯周病は、犬や猫だけでなく、サルや馬、レッサーパンダ、サイ、オオカミ、アシカなど、多くの動物にも発症します。ただし条件があり、これらの動物が歯周病を発症するには、人間との直接・間接の接触がある場合です。

NHKテレビ「おはよう日本」内のコーナー「サイカル研究室|サイカルジャーナル」では、2023年2月25日に「人から感染?動物むしばむ歯周病」というテーマで放送がありました。
本コーナー内で、麻布大学の島津 德人 准教授は、さまざまな動物の歯に関して研究した結果、飼育されている多くの動物に歯周病の痕跡が見られることを発見したと伝えています。

例えば、動物園で飼育されていたサイの頭骨を確認したところ、歯周病によって上顎の骨がボロボロになり、下顎は歯の付け根部分が陥没するようにえぐれていました。水族館でショーを行うアシカには、飼育員と近似した歯周病菌が見つかっています。

他方で、歯周病の症状は野生の動物にはほとんど見られないという研究結果も示されています。こうした結果から島津 准教授は、歯周病は人間と距離が近い動物ほど発症しやすいのではないかと推測しています。

動物が歯周病になる原因は?

先述の通り、動物は人間から感染することによって歯周病にかかると考えられています。人間との直接的な接触によって歯周病菌に感染してしまうことに加え、人間が動物のために用意した食べ物=餌にも関連している可能性があります。

人間が動物のために用意する餌には、食べやすいようにという思いからか、柔らかく調理されているものが多くあります。しかし、硬い餌に比べると、柔らかい餌の場合は歯垢が蓄積しやすく、歯周病に罹患してしまうリスクが高まります。

実際、柔らかい餌を与えられたサルは、口内に歯垢が蓄積しやすく、歯ぐきに腫れや赤みが生じるようになったとの観察結果もあります。一方、硬い餌を与えられたサルでは、歯と歯ぐきに付着した歯垢が自然に除去され、健康な口内環境が維持されました。

このように、動物の歯周病リスクには、主に人間からの細菌感染と、人間が与える餌という2つの原因が考えられます。

犬や猫などの動物が歯周病にかかった際の症状

歯周病の症状は人間も犬や猫も変わるところはありません。
ただし、動物(ペット)は自分で症状を訴えたり、病院を受診したりすることはできません。飼い主が気にかけてあげなければ深刻化してしまう一方なので、症状をよく理解しておくことが大切です。

歯ぐきが腫れる、出血する

歯周病にかかった際の初期症状は、歯ぐきが腫れてしまったり、出血してしまったりといったことであり、人間とほとんど同じです。この段階での症状は、外からはなかなか気づきにくいものです。

人間ならばこの段階で症状を自覚して対策ができますが、動物の場合、飼い主が注意深く口の中を見てあげなければ、なかなか気づくことはできません。

口臭がきつくなる

口臭がきつくなることも、歯周病の症状です。発生源は、歯垢がたまってしまったことによって増殖した細菌です。症状が進行すると、歯周ポケットに膿がたまってしまい、口臭はさらにひどくなります。

猫の場合は一般的に、大型犬のようによだれが垂れるというようなことはありませんが、歯周病が進行して骨にまで炎症が広がると、よだれが多く出るようになることがあり、口臭はきつくなります。

くしゃみや鼻水が出る

歯周病菌が歯根を冒すまでに広がってしまうと、炎症は鼻腔に達し、この炎症が原因で鼻水やくしゃみが出ることがあります。人間でも歯周病から副鼻腔炎になり、鼻水が出ることがあるのと同じです。

犬や猫などのペットの場合、鼻から出血することもあります。くしゃみや鼻水は、症状から見ると風邪が疑われますが、実際には歯周病が相当進行している場合があります。

皮膚に穴があく

重度の歯周病になると、眼の下あたりにも膿がたまってしまい、穴があいてしまうことがあります。根尖膿瘍または根尖周囲膿瘍と呼ばれる病気で、特に上顎の第4前臼歯(大きな奥歯)付近の歯周病が深刻化していることを示しています。

人間の場合には自力で歯科医院などを受診できるので、ここまで症状が悪化することはそう多くありませんが、動物の場合には知らず知らずのうちに病状が深刻化してしまうおそれがあります。

ここでは4つの症状について解説しましたが、たとえ細かなことでも、ペットの様子や体調に異常を感じることがあったら、速やかに動物病院で診てもらいましょう。

歯周病とむし歯の違い 犬や猫はむし歯にならない?

歯ぐきで細菌が増殖することによって起こる歯周病に対して、むし歯はむし歯菌(ミュータンス菌など)が歯の組織を侵食してしまう病気です。

ペットとして飼われている犬や猫は、歯周病にかかることはあっても、むし歯になることはほとんどありません。犬や猫の口内環境や歯の形状が人間とは大きく異なっているためです。

人間の歯はすりこぎ状になっており、食べ物をすりつぶすのに適した形をしていますが、犬や猫の歯は先が尖っており、肉などをかみちぎるために最適な構造になっています。先端が尖っているため、犬や猫の歯は人間の歯のように歯と歯がかみ合うことはほとんどなく、食べ物のカスや細菌がたまりにくくなっています。

さらに、むし歯の主な原因として考えられるミュータンス菌は、酸性の環境を好む性質があります。人間の口内が弱酸性であるのに対し、犬や猫の口内はアルカリ性であり、ミュータンス菌が増殖しにくい環境です。これらの理由から、犬や猫はむし歯にはかかりにくいと考えられています。

日本人の歯周病罹患率は約4割

動物が人間からうつされた菌によって歯周病にかかるのであれば、人間の歯周病罹患率はペットの罹患率に大きな影響を与えるはずです。

厚生労働省が公表した「令和4年 歯科疾患実態調査結果の概要」によれば、国内の15歳以上で「4 mm以上の歯周ポケットを持つ者の割合」は47.9%でした。
4 mm以上の歯周ポケットは歯周病の診断にも使われる指標であることから、日本人の歯周病の罹患率は4割以上に及ぶと考えられます。

本調査は過去から一定期間ごとに行われており、令和4年の報告でも2005年(平成17年)、2011年(平成23年)、2016年(平成28年)の各年との比較も行なわれています。検査方法や記録方法は実施回によって異なる部分がありますが、各年代で歯周病の疑われる方が増加している傾向が見られています。

歯周病罹患率の増加原因の一つに、高齢になっても歯が多く残っている人の割合が年々増えることで、高齢者の歯周病罹患率が増加していることが考えられます。

本調査によれば、80歳で20本以上の歯を有する方の割合は、1993年(平成5年)時点で10.9%であったのに対し、2022年(令和4年)には51.6%に達しています。つまり、歯が抜け落ちることなく維持できている方が増えている反面、歯周ポケットのできる余地のある歯も多く残るようになっていると言えます。
そのため、残っている歯へのケアが十分にできておらず、歯周病の罹患率が増えているのかもしれません。

これらの調査結果からわかるのは、特に高齢者がペットを飼っている場合には、飼い主の歯周病菌がペットに感染しているおそれがあり、注意が必要だということです。
ただし先述の通り、歯周病の罹患率は日本国内で4割以上にも達しており、高齢者だけが問題だというわけではありません。例えば歯周ポケットをもつ若年層(15~24歳)の割合は、2005年には7.2%でしたが、2022年には17.8%と倍以上に増加しています。歯周病は年齢を問わずに広く見られる疾患であり、ペットの健康を守るためにも日頃から予防と対策に取り組むことが重要です。

動物の歯周病対策で必要なことは?

ここまで繰り返し述べてきたように、ペットの歯の健康は飼い主が積極的に守ってあげる必要があります。日頃からペットに歯磨きをしてあげたり、定期的に獣医の検診を受けさせたりといったことが重要です。
動物園や水族館の動物の歯周病の調査を行っている麻布大学では、動物と人間の双方で予防歯科が重要であると訴えています。

飼い主は、自分自身はもちろんのこと、ペットの歯磨きも丁寧に行ったり、動物病院で定期検診を受けさせたりすることをおすすめします。

動物に行うべき口内ケア

第一に重要なのは、日頃からペットの歯磨きをしてあげることです。動物病院で定期的に歯石を除去してもらっている場合でも、歯垢は毎日、徐々にたまり、歯の健康を害しています。
一日一回を目安に、定期的に歯磨きをしてあげてください。

ただし人間と同様、なかには歯磨きを嫌がるペットもいます。嫌がってなかなかさせてくれない場合には、口周りを撫でてあげたり、唇を持ち上げたりすることからはじめて、飼い主が口の中に触れることを慣れさせることが重要です。
上手に歯磨きをさせてくれることができたら、必ずご褒美をあげて、歯磨き=よいことという印象付けをしてください。ご褒美には、デンタルガムなど歯磨き効果のあるおやつがおすすめです。

すでに重度の歯周病になってしまっている場合には、飼い主が下手に触ると痛みを感じることもあります。口内が健康なうちに歯磨き練習をはじめることがポイントです。

歯磨きには、犬・猫専用の歯ブラシや歯磨き用の指パッドなどを使います。
歯を磨く際は、痛みを与えてしまうと、嫌がるようになってしまうかもしれません。やさしく丁寧に、しかし隅々まで磨くことを心がけてください。
ペットが好む香りがする歯磨きペーストを使用するのも効果的です。ペット用の歯磨きペーストは飲み込んでも無害な素材で作られているため、安心して使えます。

ペットが歯磨きに慣れてくれるまでには時間がかかるかもしれませんが、嫌がっても諦めずに根気強く付き合ってあげてください。
さらに重要なことは、繰り返し述べている通り、飼い主自身が日々の口内ケアを怠らないことです。

動物も人も歯周病対策のケアが重要

犬や猫などの動物も人間と同じく歯周病にかかりますが、感染経路のほとんどは人間との接触にあると考えられています。ペットの歯周病対策をするには、歯磨きをしてあげたり、動物病院で定期検診を受診させたりといったことはもちろん欠かせません。ですが、飼い主自身の日頃の口内ケアも重要です。自分が歯周病にならないことは、ペットを歯周病から守ることと心がけ、毎日、丁寧に歯磨きをしましょう。

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