歯は体の中でも硬い組織で、表面を覆っているエナメル質は水晶と同じくらいの硬さを持っています。
しかし、その硬い歯が実は、飲食などの影響で溶けてしまうのです。体には一度溶けた歯を元に戻す機能が備わっていますが、この機能よりも溶解が進行してしまうと、歯が酸に侵された状態である「酸蝕症」という状態になってしまいます。
酸蝕症は、普段の食生活に大きな影響を与えるおそれがあります。そこでこの記事では、歯が溶ける様々な原因やその症状について詳しく解説します。
しかし、その硬い歯が実は、飲食などの影響で溶けてしまうのです。体には一度溶けた歯を元に戻す機能が備わっていますが、この機能よりも溶解が進行してしまうと、歯が酸に侵された状態である「酸蝕症」という状態になってしまいます。
酸蝕症は、普段の食生活に大きな影響を与えるおそれがあります。そこでこの記事では、歯が溶ける様々な原因やその症状について詳しく解説します。
歯が溶けるのは「酸」が原因
歯が溶けると言うと、多くの人が炭酸飲料を連想するのではないでしょうか。
実際に多くの炭酸飲料は強い酸性を示すものが多く、頻繁に摂取すると、口内が酸性になり、歯の表面のエナメル質を溶かしてしまいます。
酸性を示す飲み物の例としては、野菜ジュースやスポーツドリンク、炭酸飲料、ビールなどがあります。ほかにも、お茶類を除く多くの飲み物や果物も酸性に分類されます。
他にも、歯が溶ける原因には「むし歯」があります。むし歯菌が産生する酸によって歯が溶けてしまうのです。
通常、口の中は中性のpH7前後に保たれていますが、飲食などによって酸性に傾きます。
pHが5.5以下になると、エナメル質からミネラルが溶ける「脱灰」が起こります。その後、唾液によって口の中が再び中性に戻ると、ミネラルがエナメル質に戻る「再石灰化」が進みます。
そのため、この再石灰化で修復しきれずに脱灰のままの状態でいると、歯が溶けた状態となってしまうのです。
実際に多くの炭酸飲料は強い酸性を示すものが多く、頻繁に摂取すると、口内が酸性になり、歯の表面のエナメル質を溶かしてしまいます。
酸性を示す飲み物の例としては、野菜ジュースやスポーツドリンク、炭酸飲料、ビールなどがあります。ほかにも、お茶類を除く多くの飲み物や果物も酸性に分類されます。
他にも、歯が溶ける原因には「むし歯」があります。むし歯菌が産生する酸によって歯が溶けてしまうのです。
通常、口の中は中性のpH7前後に保たれていますが、飲食などによって酸性に傾きます。
pHが5.5以下になると、エナメル質からミネラルが溶ける「脱灰」が起こります。その後、唾液によって口の中が再び中性に戻ると、ミネラルがエナメル質に戻る「再石灰化」が進みます。
そのため、この再石灰化で修復しきれずに脱灰のままの状態でいると、歯が溶けた状態となってしまうのです。
歯が溶ける病気「酸蝕症」とは?
歯が溶ける病気を「酸蝕症」(さんしょくしょう)といい、酸蝕症によって溶けた歯は「酸蝕歯」(さんしょくし)と呼ばれます。酸蝕歯は、むし歯のように痛みなどの自覚症状が出にくく、広範囲にわたって症状が非常にゆっくり進むため、重度になるまで気づかないことが多いです。
日本人の4人に1人が酸蝕症に罹患しているとの調査結果もあり、この病気が身近であることがわかります。
日本人の4人に1人が酸蝕症に罹患しているとの調査結果もあり、この病気が身近であることがわかります。
酸蝕症の症状
酸蝕症の初期段階では、以下の症状が見られます。
- 熱いものや冷たいものが歯にしみる
- 歯の表面が丸くなる
- 歯が黄色味を帯びてくる
- 歯のツヤがなくなる
さらに、症状が進むと、以下の自覚症状が見られるようになります。
- 歯の黄色味が増す
- 歯の先端が透けて見える
- 知覚過敏の症状が見られる
- 詰め物が外れる
- 歯の表面にクレーターのようなくぼみができる
上記の症状が見られた場合は、早めの対処が必要です。
酸蝕症とむし歯の違い
酸蝕症とむし歯は、歯を溶かすという点で似ていますが、実際には明確な違いがあります。
むし歯はは細菌が関与しており、細菌の働きが作り出す酸が歯を徐々に溶かしていきます。一方、酸蝕症は細菌とは関係なく、飲食物に含まれる酸が直接歯を溶かす点が大きな違いです。
さらに、むし歯は歯の表面の狭い範囲(1~2 mm程度)に限定して侵食するのに対し、酸蝕症は歯の表面全体が広範囲にわたって溶けてしまいます。また、むし歯は痛みを伴うことが多いのに対し、酸蝕症は痛みが出ることが少なく、症状に気づきにくいことが多いです。
むし歯はは細菌が関与しており、細菌の働きが作り出す酸が歯を徐々に溶かしていきます。一方、酸蝕症は細菌とは関係なく、飲食物に含まれる酸が直接歯を溶かす点が大きな違いです。
さらに、むし歯は歯の表面の狭い範囲(1~2 mm程度)に限定して侵食するのに対し、酸蝕症は歯の表面全体が広範囲にわたって溶けてしまいます。また、むし歯は痛みを伴うことが多いのに対し、酸蝕症は痛みが出ることが少なく、症状に気づきにくいことが多いです。
酸蝕症の原因
酸蝕症の原因は、酸の出所によって内因性と外因性の2つに分類されます。内因性の原因は、胃液の逆流による胃酸や、胃酸により発生する酸性ガスなどです。
胃液が逆流する原因として、加齢、ストレス、肥満などによる逆流性食道炎や、過食症や拒食症による嘔吐などが挙げられます。胃液や酸性ガスが口に入ると酸蝕症を引き起こすおそれがあります。月に数回程度であれば、影響はほとんどありませんが、胃液や酸性ガスが口の中に入る頻度や量、口の中の状態、歯の質によって影響の程度には個人差があります。気になる症状がある場合は、自己判断せずに歯科医師に相談し、適切なアドバイスを受けましょう。
外因性の原因は、酸性の飲食物の過剰摂取です。これにより歯の外側(唇側)が溶けることが特徴です。食べ物に含まれる酸の種類には、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、乳酸などがあり、特にクエン酸は酸性が強く、酸蝕症のリスクも高いです。次いで酢酸とリンゴ酸が高リスクで、乳酸は比較的リスクが低いとされていますが、それぞれ酸蝕症のリスクには違いがあります。健康に良いとされる飲食物にも酸を含むものが多いため、過剰摂取には十分に注意が必要です。
また、酸性のガスやミストなどを要因とする職業性の酸蝕症も存在します。特に勤続年数が長い人に多く見られます。前歯の唇面に生じることが多く、歯科特殊検診を受診していないと見落としたり重症化したりするケースも少なくありません。
胃液が逆流する原因として、加齢、ストレス、肥満などによる逆流性食道炎や、過食症や拒食症による嘔吐などが挙げられます。胃液や酸性ガスが口に入ると酸蝕症を引き起こすおそれがあります。月に数回程度であれば、影響はほとんどありませんが、胃液や酸性ガスが口の中に入る頻度や量、口の中の状態、歯の質によって影響の程度には個人差があります。気になる症状がある場合は、自己判断せずに歯科医師に相談し、適切なアドバイスを受けましょう。
外因性の原因は、酸性の飲食物の過剰摂取です。これにより歯の外側(唇側)が溶けることが特徴です。食べ物に含まれる酸の種類には、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、乳酸などがあり、特にクエン酸は酸性が強く、酸蝕症のリスクも高いです。次いで酢酸とリンゴ酸が高リスクで、乳酸は比較的リスクが低いとされていますが、それぞれ酸蝕症のリスクには違いがあります。健康に良いとされる飲食物にも酸を含むものが多いため、過剰摂取には十分に注意が必要です。
また、酸性のガスやミストなどを要因とする職業性の酸蝕症も存在します。特に勤続年数が長い人に多く見られます。前歯の唇面に生じることが多く、歯科特殊検診を受診していないと見落としたり重症化したりするケースも少なくありません。
酸蝕症を引き起こす食べ物・飲み物
ここからは、酸蝕症を引き起こす食べ物・飲み物に、どのようなものがあるのかをご紹介します。味が酸っぱいものだけが酸性とは限らない点に注意しましょう。
ワイン
アルコールのなかでは、特にワインには注意が必要です。ワインには、酸味が強いものから穏やかなものまで様々な味わいがあります。平均的なpH値は、白ワインで3.0〜3.3、赤ワインで3.3〜3.6程度です。中にはpH値が2.3と、非常に酸性の強いワインも存在します。
ワインの酸味は味わいの重要な要素ですが、酸蝕症のリスクが高いことを覚えておきましょう。
ワインの酸味は味わいの重要な要素ですが、酸蝕症のリスクが高いことを覚えておきましょう。
炭酸飲料
炭酸飲料は、その名の通り炭酸が含まれており、日常的に飲んでいる人は注意が必要です。pHが5.5以下になると歯が溶けやすくなりますが、炭酸水のpHは5.0前後です。無糖の炭酸水は糖質を含みませんが、酸性であるため酸蝕症のリスクがあります。
炭酸飲料のなかでも、コーラ飲料のpHは2.0で、酸性度はレモンと同じくらい強いです。そのため、「コーラ飲料を飲むと歯が溶ける」という話は、pHの低さを考えると、必ずしも迷信とは言えません。
炭酸飲料のなかでも、コーラ飲料のpHは2.0で、酸性度はレモンと同じくらい強いです。そのため、「コーラ飲料を飲むと歯が溶ける」という話は、pHの低さを考えると、必ずしも迷信とは言えません。
スポーツドリンク・栄養ドリンク
スポーツをしているときや熱中症予防のために飲むスポーツドリンクや、仕事や勉強中に飲むことが多い栄養ドリンクは、pHが 2~4と酸性度が高いことが意外と知られていません。
これらのドリンクを飲む際には、少しずつ飲むのではなく、一気に飲むよう心がけたり、飲んだ後にうがいをしたりして、ドリンクが歯に触れる時間をできるだけ短くすることが大切です。ストローをつかって歯に触れないように飲む方法も効果的です。
これらのドリンクを飲む際には、少しずつ飲むのではなく、一気に飲むよう心がけたり、飲んだ後にうがいをしたりして、ドリンクが歯に触れる時間をできるだけ短くすることが大切です。ストローをつかって歯に触れないように飲む方法も効果的です。
サプリメントや薬
サプリメントや薬は、厳密には食べ物とは異なりますが、口に入れるという点では同じです。特に、カプセル型の薬を服用する際に、カプセルを噛み砕いたりカプセルから中身のみを取り出して服用したりすると、酸蝕症を発症・悪化させるおそれがあります。噛まずに飲むことを指示しているサプリメントや薬は、服用方法も含めて設計されているため、指示を守るようにしましょう。
また、水で飲むのではなく、舐めて服用するタブレットタイプは、酸性の成分が口内に直接触れるため、服用時に注意が必要です。
また、水で飲むのではなく、舐めて服用するタブレットタイプは、酸性の成分が口内に直接触れるため、服用時に注意が必要です。
その他の飲食物
上記の飲食物以外にも、pH5.5以下のものは酸性度が高く、酸蝕症のリスクが高まるため要注意です。具体的には、果物や野菜、調味料(ドレッシング、マヨネーズ、ソース)などが該当します、味が酸っぱいものだけが酸性とは限りません。じゃがいもやとうもろこしなどの野菜や穀物も酸性であることは、意外に感じるかもしれません。
反対に、酸味を感じるチーズはpHが6から7と高く、肉や魚も同じようにpHが高いです。必ずしも味だけで酸性度を判断することはできません。酸性の飲食物には身体に良いものも多いため、特定の飲食物の食べ過ぎや飲みすぎを避け、バランスの良い食事を心がけることが適切な予防につながります。
反対に、酸味を感じるチーズはpHが6から7と高く、肉や魚も同じようにpHが高いです。必ずしも味だけで酸性度を判断することはできません。酸性の飲食物には身体に良いものも多いため、特定の飲食物の食べ過ぎや飲みすぎを避け、バランスの良い食事を心がけることが適切な予防につながります。
酸蝕症の予防法
ここまでご紹介したように、酸蝕症はエナメル質が溶けている状態です。エナメル質の下の象牙質が露出していると、むし歯になりやすくなります。むし歯を防ぐためにも、酸蝕症を予防することが大切であり、そのためにどのような点に心がければ良いのかをご紹介します。
飲食後はうがいをする
酸蝕症の重要な予防法のひとつとして、飲食後のうがいがおすすめです。うがいよりも歯磨きの方が良いのではと思われるかもしれませんが、飲食直後は歯のエナメル質が柔らかくなっているため、すぐに歯磨きするのは逆効果になるおそれあります。
飲食後30分ほど時間を置いてから歯磨きするか、もしくはうがいをしてから歯磨きをするのがおすすめです。
飲食後30分ほど時間を置いてから歯磨きするか、もしくはうがいをしてから歯磨きをするのがおすすめです。
ダラダラと食べない
ダラダラと飲食すると、口の中が酸性の状態が長く続き、中和されにくくなります。そこへ新たな酸が加わることで再石灰化が妨げられ、歯が溶ける原因となります。炭酸飲料やスポーツドリンクをちびちび飲むのも、同じように酸性の状態が続くため、酸蝕症の発症リスクが高まります。
口の中の状態をできるだけ中性に保つためには、食事やおやつをとる時間を決めることや、飲食するたびにうがいをするのがおすすめです。
口の中の状態をできるだけ中性に保つためには、食事やおやつをとる時間を決めることや、飲食するたびにうがいをするのがおすすめです。
就寝前は酸性の飲食物をとらない
就寝中は、唾液の分泌が低下し、口の中が中性に戻りにくくなります。特に、いびきをかくと酸性の成分が残りやすく、酸蝕症のリスクが高まります。
就寝中に酸性の状態が続かないよう、寝る前や夜中の水分補給はお茶や水などを選びましょう。
就寝中に酸性の状態が続かないよう、寝る前や夜中の水分補給はお茶や水などを選びましょう。
フッ素が含まれる歯磨き粉を使う
歯の質を強くして酸蝕症のリスク軽減するためには、フッ素入りの歯磨き粉を使うのが有効な方法です。フッ素は、歯から溶け出したカルシウムの再石灰化を促し、歯の表面を強くする働きがあります。子どもだけでなく大人にとってもフッ素は重要です。
歯磨きをする時は、「ふつう」もしくは「やわらかめ」のブラシを選び、力を入れずに優しくブラッシングしましょう。歯磨き粉以外にも、フッ素入りのジェルや洗口剤を使うと、同じように効果が期待できるためおすすめです。
歯磨きをする時は、「ふつう」もしくは「やわらかめ」のブラシを選び、力を入れずに優しくブラッシングしましょう。歯磨き粉以外にも、フッ素入りのジェルや洗口剤を使うと、同じように効果が期待できるためおすすめです。
酸蝕症の治療法
歯は、皮膚や骨のように再生することがなく、一度溶けてしまうと元には戻りません。したがって、酸蝕症にならないよう、日頃の予防が非常に重要です。
逆流性食道炎や嘔吐などの病気がある人は、病院で治療を受け症状の改善を目指しましょう。食生活や生活習慣に酸蝕症となる原因があれば、飲食物に注意し、うがいや歯磨きを心がけることが大切です。
もし歯が薄くなったり短くなったりしているのであれば、歯科医院で修復してもらうことが可能です。歯科医院で相談すれば、歯の状態に合わせた適切な治療を受けられます。軽度の酸蝕症であれば、症状を緩和するためにフッ素を塗布してもらうのも一つの方法です。
逆流性食道炎や嘔吐などの病気がある人は、病院で治療を受け症状の改善を目指しましょう。食生活や生活習慣に酸蝕症となる原因があれば、飲食物に注意し、うがいや歯磨きを心がけることが大切です。
もし歯が薄くなったり短くなったりしているのであれば、歯科医院で修復してもらうことが可能です。歯科医院で相談すれば、歯の状態に合わせた適切な治療を受けられます。軽度の酸蝕症であれば、症状を緩和するためにフッ素を塗布してもらうのも一つの方法です。
歯が溶ける酸蝕症の予防・治療に努めましょう
酸蝕症は、大切な歯が溶けてしまう症状ですが、進行するまで気づかないことも少なくありません。食生活に注意したり、胃酸の逆流を治療したりして、酸蝕症の予防や対策を心がけることが重要です。
万が一酸蝕症の症状が見られた場合は、早期発見・早期治療のために歯科医院で相談することをおすすめします。
万が一酸蝕症の症状が見られた場合は、早期発見・早期治療のために歯科医院で相談することをおすすめします。