寝ているときになぜよだれが垂れてしまうのか、考えたことはあるでしょうか。単に横向きやうつ伏せで寝てしまったからと思っている方も多いかもしれません。実は、寝ているときのよだれにはさまざまな原因があり、そのことによって健康や美容にも影響があります。今回は普段あまり意識されていないよだれの原因について解説します。
寝ているときによだれが垂れる理由
当然ではありますが、睡眠時によだれが出るのは、口が開いているからです。口が開いた状態だと分泌された唾液がそのまま流れてしまいます。しかしそもそも、なぜ人は口を開いたまま寝てしまうのでしょうか。その主な原因は口呼吸だといわれていますが、ほかにもさまざまな理由があります。
口呼吸
口呼吸は、睡眠時に口が開いてしまう代表的な原因です。
通常、人は鼻で呼吸するのが正常な状態といわれています。鼻呼吸をすることで、鼻毛や線毛、鼻粘膜によってホコリや細菌、ウイルスなどの侵入も防いでいるのです。しかし、口呼吸になってしまうと、よだれが垂れやすくなるだけでなく、口の中が乾いたり、唇が乾燥したり、感染症にかかるおそれが高くなります。
通常、人は鼻で呼吸するのが正常な状態といわれています。鼻呼吸をすることで、鼻毛や線毛、鼻粘膜によってホコリや細菌、ウイルスなどの侵入も防いでいるのです。しかし、口呼吸になってしまうと、よだれが垂れやすくなるだけでなく、口の中が乾いたり、唇が乾燥したり、感染症にかかるおそれが高くなります。
口呼吸になる原因
花粉症や風邪の症状により、鼻がつまって口呼吸になるケースは多く見られます。普段は正常に鼻呼吸ができていても、鼻炎や鼻づまりの状態では口呼吸になりやすく、口呼吸によって、喉の乾燥や頭痛を引き起こすおそれがあります。
口や顎の筋力低下
一昔前に比べてやわらかい食事が増えたことにより、口周りの筋肉を鍛えにくくなりました。強く噛む機会が減って、よく噛まずに食べたり、食べ物を丸飲みしたりすることが増えると、さらに筋力が低下する悪循環に陥る可能性が高くなります。結果的に口を閉じる力が弱く、頻繁に口が開いた状態になってしまいます。
噛む力の強弱に影響する「咀嚼筋」は、年齢とともに低下します。咀嚼筋を鍛えるためには、普段の食事に歯ごたえのあるものを加えたり、顎や頬のトレーニングをしたりする習慣が効果的です。
噛む力の強弱に影響する「咀嚼筋」は、年齢とともに低下します。咀嚼筋を鍛えるためには、普段の食事に歯ごたえのあるものを加えたり、顎や頬のトレーニングをしたりする習慣が効果的です。
寝ているときの姿勢
低すぎる枕で仰向きの姿勢で寝ていると、自然と顎が上がるような状態になり、口が開いてしまいます。睡眠中になるべく口を開けずに鼻呼吸をするには、横向きの姿勢が効果的です。横向きで寝ると、口の端からよだれがこぼれ落ちてしまう場合もあります。横向きに適した高さの枕を使うことで、さらによだれが垂れにくくなります。
デジタル機器の普及
スマートフォンやタブレット、携帯ゲーム機に集中しているときに起きる症状として、肩こりや眼精疲労はよく知られていますが、口呼吸にもなりやすくなります。デジタル機器を凝視していると段々と顔が下向きになり、長くうつむいた姿勢をキープすることになります。すると鼻呼吸の気道が圧迫され、口呼吸をしてしまうのです。デジタル機器を使用しているときなど、うつむきやすいので、「顎を上げて目線を高くする」姿勢を意識しましょう。
お酒を飲む
お酒を飲むとよく眠れるという理由で、寝る前にアルコールを摂取する方もいるかもしれません。アルコールが体内から抜けきる前に寝てしまうと、筋肉が緩んで口が開いてしまいます。飲酒により脱水が起きると、口内はさらに乾燥することになります。
口を開けて寝ることによる健康への悪影響
唾液には洗浄作用や抗菌作用があり、口内の健康を守る役割があります。口が開いていることによってよだれが垂れてしまうと、唾液の役割を果たせず口内環境の悪化につながります。ここでは口を開けて寝ることによるさまざまなデメリットをご紹介します。
睡眠の質が下がる
口を開いたまま寝ると口内や喉が乾燥するほか、鼻呼吸による空気の温度・湿度を調整する機能が働きません。すると、乾燥した空気や冷たい空気が気管に直接入り込み、気管や肺に負担がかかることで呼吸がスムーズにできなくなります。「呼吸が正常ではない」という信号を脳が出すことで覚醒状態となり、眠りにくくなることで睡眠の質が低下する可能性があります。
また、口が開いていることによって舌が喉をふさいだり気道が狭くなったりした状態では、身体に十分に酸素を送れなくなることも睡眠に影響します。
また、口が開いていることによって舌が喉をふさいだり気道が狭くなったりした状態では、身体に十分に酸素を送れなくなることも睡眠に影響します。
細菌やウイルスの感染リスク上昇
口を開いたまま寝ると、口で呼吸をしやすい状態になります。そうなると、鼻のようなフィルター機能や加温・加湿機能がないため、ウイルスや細菌などを含んだ乾燥して冷たい空気がそのまま肺に送られます。口内が乾燥し、唾液の役割である殺菌・抗菌・消毒・洗浄作用が口内で十分働かなくなってしまいます。
また、乾燥した冷たい空気が気管や肺に直接送られるため、喉や肺を痛めやすいことも風邪を引きやすくなる原因です。口呼吸は花粉やちりなどを取り込むことになるため、アレルギー疾患にもなりやすくなってしまいます。
また、乾燥した冷たい空気が気管や肺に直接送られるため、喉や肺を痛めやすいことも風邪を引きやすくなる原因です。口呼吸は花粉やちりなどを取り込むことになるため、アレルギー疾患にもなりやすくなってしまいます。
口臭が発生しやすくなる
口臭の原因のほとんどは、剥がれおちた粘膜のカスや唾液、食物のカスなどに含まれるタンパク質が、口の中にいる細菌により分解・発酵される過程で出るガスです。唾液が減って口の中が乾燥すると、洗浄作用や抗菌作用が低下し、タンパク質を分解する細菌が増えるため口臭が発生しやすくなります。
睡眠中は、唾液腺が刺激されず唾液の分泌が減ってしまいます。加えて、口を開いたまま寝ると水分不足などで口の中が乾燥しやすいため、寝起きがもっとも口臭が強くなりやすいのです。
睡眠中は、唾液腺が刺激されず唾液の分泌が減ってしまいます。加えて、口を開いたまま寝ると水分不足などで口の中が乾燥しやすいため、寝起きがもっとも口臭が強くなりやすいのです。
むし歯や歯周病になりやすくなる
唾液の中には、歯の主成分であるミネラルが含まれています。この成分によって、もろくなった脱灰の状態の歯が再石灰化されることで、初期のむし歯は修復されます。しかし、口呼吸によって唾液が少なくなると、この働きが弱くなるため、むし歯が進行しやすくなってしまうのです。
また、唾液は自浄作用によって、歯周病の原因である歯周病菌を洗い流し、歯ぐきを歯周病から守っています。むし歯と同様に、唾液の免疫作用がうまく働かなくなることで口内の細菌も増加しやすくなり、歯周病のリスクも高くなる可能性があります。
また、唾液は自浄作用によって、歯周病の原因である歯周病菌を洗い流し、歯ぐきを歯周病から守っています。むし歯と同様に、唾液の免疫作用がうまく働かなくなることで口内の細菌も増加しやすくなり、歯周病のリスクも高くなる可能性があります。
いびき、呼吸障害、睡眠時無呼吸症候群の原因になる
睡眠中は全身の筋肉が緩むため、起きているときよりも気道が狭くなります。正常な方でも、寝ているときは起きているときより鼻呼吸がしにくくなります。舌にふさがれた気道はさらに狭くなり、空気が通りにくくなると、酸素を得るため、無意識に思い切り息を吸ってしまいます。その際、狭い気道を空気が加速して通り抜け、気道の粘膜が振動することがいびきの原因です。睡眠時無呼吸症候群も原因はいびきと同様で、物理的に上気道が狭くなったりふさがれたりして呼吸が止まってしまう症状です。
睡眠時の唾液過多による健康への悪影響
唾液には口内環境や全身の健康にとって重要な役割がありますが、睡眠中に唾液が多すぎることはデメリットもあります。ここでは、睡眠時の唾液過多の影響について解説します。
寝ているあいだに誤嚥しやすい
誤嚥とは、食道から胃へ向かうはずの食べ物や唾液などが誤って気道内に入ってしまうことです。誤嚥によって引き起こされる誤嚥性肺炎は、食事中よりも就寝中に多いとされています。就寝中に唾液を誤嚥しているかどうか判断するのはなかなか難しいですが、以下の症状がある場合、就寝中に唾液誤嚥の量や頻度が多い可能性があります。
- 就寝中に咳で目が覚める
- 朝起きたときに痰がらみが増える
また、唾液を飲み込む回数が多すぎると、唇や顎に負担がかかり、起床時の疲れを感じることもあります。
呼吸や水分補給を妨げることがある
睡眠中に唾液が口の中にいっぱいの状態になると、呼吸がしにくくなります。これによって深い睡眠が妨げられる要因にもなり、睡眠の質が下がるおそれがあります。また、口の中が常に唾液でいっぱいの状態は、唾液過多症かもしれません。喉の渇きを感じにくいため、水分を取る量が少なくなり、水分不足になるおそれがあるため、こまめに水分を取りましょう。
睡眠中に口が開いていないか意識しましょう
寝ているときによだれが垂れてしまう原因と、それによるデメリットを解説しました。普段あまり気にしていなかった方が多いかもしれませんが、実は健康にも影響があるのです。睡眠中の唾液は口内環境の健康に深くかかわっているため、口が開いてしまうことへの対策を行い、口内の健康を保つようにしましょう。