最近、食べづらい...若くても飲み込みにくさを感じる理由とは

最近、食べづらい...若くても飲み込みにくさを感じる理由とは

この記事では、若い人が飲み込みにくくなる原因や改善方法などについて詳しく解説します。

               
飲み込みにくい症状は高齢者特有の問題と思われがちですが、実は若い世代でも悩む方が少なくありません。食べ物や飲み物がスムーズに飲み込めない場合、消化不良になるだけではなく、食事を楽しめないことによって精神的なストレスを受けるおそれがあります。

要因となるストレスや不規則な生活、水分不足などを解消することで飲み込みにくい状態の改善が期待できます。

そもそも飲み込むって何?

飲み込む行為は、下記5つの段階に分かれています。この5段階がスムーズに行われることで、食べ物や飲み物は問題なく胃へと運ばれます。しかし、各段階のいずれか1つでも不具合が生じると、飲み込みにくい状態となります。

「飲み込みにくい」とはどんな症状?

「飲み込みにくい」とは、食べ物や飲み物が口の中から喉を通り、食道にスムーズに移行しない状態のことです。医学的には「嚥下障害」といいます。

下記の症状がみられる場合は、飲み込みにくい状態にあります。
  • 食事中にむせる
  • 食事に時間がかかる
  • うまく飲み込めないことで飲食物が口の中に残る
  • 食後に声が嗄れる
  • 固い物が食べにくいと感じる
飲み込みにくさを自覚していなくても、下記のような症状がある方は嚥下障害のおそれがあります。
  • よだれが増えた
  • 口が乾きやすい
  • 口臭が気になる
  • 薄味がわかりにくい
  • 奥歯をしっかり噛みしめられない
  • 食べこぼす
飲み込み動作の一連の流れは「嚥下反射」と呼ばれ、脳(延髄)が司令を出しています。年齢を重ねると、飲み込みに必要な筋肉が衰えるため嚥下障害が起こりやすくなります。そのため、高齢者に嚥下障害が多く見られますが、若い人でも飲み込みにくくなることがあるため注意が必要です。

若いのに飲み込みにくいと感じる原因

若い人が飲み込みにくい状態になる原因としては、下記が挙げられます。

睡眠不足やストレス

睡眠不足や過労などで強いストレスを感じると、咽頭筋や食道の筋肉が緊張し、食べ物や飲み物をスムーズに飲み込むことが難しくなります。

株式会社ロイヤリティマーケティングの調査では、Z世代(18歳~26歳)の18.8%が非常に強いストレスを感じていることがわかりました。これは、高年層の8.4%の2倍以上にあたります。

また、ストレスの原因で最も多いものが「職場や学校での人間関係(35.1%)」で、「就職・転職(23.8%)」、「出社・対面授業(17.8%)」「家族との関係(17.8%)」が続きます。
出典:日本マーケティング協会「世代別のストレスに関する調査」

特にZ世代と呼ばれる若い世代が、高年層に比べてストレスを感じやすいという傾向もあるようです。ストレスを感じている割合でみると、若い方はストレスによる飲み込みにくさを感じやすいかもしれません。

肩こり・首のこり

肩や首周りの筋肉が硬くなると、食べ物を飲み込むための筋肉が十分に働かなくなります。さらに、肩甲骨の位置がずれることで、嚥下動作が阻害されることもあります。

オムロンヘルスケア株式会社の調査では、働き世代の約31%がテレワークによる「肩こり」や「精神的ストレス」といった不調を感じていることがわかりました。特に、女性は4人に3人が肩こりに悩んでいます。

テレワークの普及によりデスクワークが増えたことにより、姿勢不良や長時間のパソコン作業の影響が大きくなり、肩こりに悩む人が増加したと考えられます。

出典:オムロン ヘルスケア「【テレワークとなった働き世代1,000人へ緊急アンケート】 新型コロナウイルスによる、働き方・暮らしの変化により 「肩こり」「精神的ストレス」などの身体的不調を実感」

水分不足

若い人が飲み込みにくさを感じる原因の1つに、水分不足があります。水分が不足すると、唾液の分泌量が減少し、口や喉が乾燥して食べ物や飲み物をスムーズに飲み込むことが難しくなります。

高齢者は口渇中枢の感受性が低下することで、口の渇きを感じ取りにくくなるため、水分不足に陥りがちです。若い人でも、仕事などが忙しいために水分を摂る機会が減り、水分不足による嚥下障害が起きる場合があります。

喫煙

喫煙者は、非喫煙者に比べて嚥下反応の開始が遅れる可能性が研究で示されています。研究によると、喫煙者は喉に刺激が加わった際に、飲み込みが開始されるまでの時間(LAT)が有意に延長したとのことです。

厚生労働省の資料によると、習慣的に喫煙している人の割合は14.8%で、直近10年間においては男女ともに減少傾向にあります。喫煙は、心筋梗塞や脳卒中、肺がん、歯周病など、さまざまな病気のリスクを高めることが判明しているため、飲み込みにくい症状がある方は、この機会に禁煙も検討してみましょう。

出典:平成2年度喫煙科学研究財団研究年報:327-331「福地義之助、石田喜義、須藤英一ほか 肺の老化と喫煙に関する研究-嚥下性肺疾患を中心にして」
出典:公益財団法人 喫煙化学研究財団「喫煙と呼吸器疾患」
出典:厚生労働省「令和4年「国民健康・栄養調査」」

病気

嚥下障害は、病気によっても引き起こされることがあります。原因となる病気と飲み込みにくい状態になる理由は下記のとおりです。

薬の副作用

抗不安薬や睡眠薬、抗精神病薬などの副作用により、飲み込みにくくなる場合があります。

抗不安薬や睡眠薬は筋弛緩作用を持ち、これが嚥下筋にも影響を与えることで、飲み込みにくさを感じる原因となります。特に、ベンゾジアゼピン系の薬剤はこの作用が顕著であり、誤嚥のリスクも高まります。

一方、抗精神病薬はドーパミンをブロックし、嚥下反射や咳嗽反射を低下させるため、飲み込みにくさが生じることがあります。若い人でも、これらの薬剤を使用している場合、嚥下機能に対する影響を考慮しなければなりません。

薬剤性の嚥下障害は投薬の調整によって改善が見込まれるため、症状がみられた際は医師や薬剤師に相談しましょう。

飲み込みにくさを改善する方法

若い人でも、生活習慣や体の状態によって飲み込みにくさを感じることがあります。これを改善するためには、日常生活の中でいくつかの対策を取り入れることが効果的です。下記に、改善方法を具体的に紹介します。

ストレスを解消させる

強いストレスは、喉や食道の筋肉を緊張させ、飲み込みにくさを引き起こすことがあります。ストレスを軽減するためには、リラックスできる時間を作り、適切なストレス管理を心がけることが重要です。

たとえば、深呼吸や瞑想、軽い運動などが有効です。また、趣味に没頭したり、友人や家族と話したりすることでもリフレッシュできます。

仕事や学校で忙しく、ストレス対策の時間の確保が難しい場合は、1日10分の瞑想や、通勤・通学時に音楽を聴いてリラックスする時間を設けるなどの方法が有効です。

正しい姿勢で肩こり・首のこりを改善させる

肩や首のこりは、嚥下に関わる筋肉の働きを阻害し、飲み込みにくさを引き起こすことがあります。特にデスクワークを長時間行う若い人は、姿勢の悪化が原因で首や肩に負担がかかりやすくなります。正しい姿勢を保つことで、肩や首の筋肉がリラックスし、嚥下機能が改善される可能性があります。

パソコン作業をする際は、下記のポイントを押さえて正しい姿勢を保ちましょう。
  • 目線より少し下にディスプレイを配置することで視線が自然に落ちるようにする
  • 目からディスプレイまでの距離は40cm以上を保ち、目の疲れを軽減する
  • 肘を90度以上に曲げ、上腕は自然に垂直に保つ
  • 体重を腕で支えず、机や椅子にしっかりと腕を預ける
  • キーボードが自然な角度になるように調整し、手首の無理な角度を避ける
  • 手首が不安定にならないようにパームレストやアームレストを活用する
  • 足の裏が床にしっかりつくように椅子の高さを調節する、足が届かない場合は足台を使う
  • かかとから椅子の脚までの距離は、手指が入る程度のゆとりを保つ
  • 椅子の高さを調整できるタイプを選び、37〜43cmに調整する
  • 足を床に置いたときに膝が90度以上になるように調整する
  • 机は高さ調整が可能なものを選び、60〜72cmに調整する

こまめに水分補給をする

水分不足による嚥下障害を防ぐために、喉が渇いたと感じなくても、こまめに水分を摂取することが重要です。

人間の体は約60%が水分で構成されています。1日あたり2.5リットルの水分が必要とされており、そのうち1.2リットルを飲み水から補給する必要があります。のどの渇きを感じたときにはすでに脱水状態が始まっているため、定期的に少量の水を飲むことが大切です。

また、特にお風呂や運動後、汗を多くかいた後は、失われた水分をすぐに補充する必要があります。アルコールやカフェインなど利尿作用がある飲み物を摂取すると、体内の水分がさらに失われやすくなるため、水分補給がより重要になります。

水だけでなく、スープや果物など水分を多く含む食べ物を積極的に摂ることも効果的です。仕事や勉強中には、デスクに水の入ったボトルを置き、1時間に一度は少量の水を飲む習慣をつけるとよいでしょう。

飲みにくさを改善して食事を楽しもう

飲み込みにくさは、年齢や生活環境に関わらず、誰にでも起こり得る問題です。適切な対策を取ることで飲み込みにくい状態を改善し、食事を再び楽しめるようになります。こまめに水分補給を行う、ストレスを軽減する、正しい姿勢を心がけるなどの対策により、改善と予防を心がけましょう。

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