この記事では、不飽和脂肪酸の働きや期待される機能について解説します。あわせて、不飽和脂肪酸(EPA・DHA)たっぷりの「さば缶&レンジで作る韓国風さばじゃが」のレシピもご紹介します。
不飽和脂肪酸は脂質を構成する脂肪酸の一種で「一価不飽和脂肪酸」と「多価不飽和脂肪酸」があります。飽和脂肪酸に比べると、質の良い油とされるグループの脂肪酸です。
この記事では、不飽和脂肪酸の1日の目安量や過不足の影響や、不飽和脂肪酸であるEPAやDHAを摂れるレシピを紹介します。
不飽和脂肪酸(EPA・DHA)たっぷりの「さば缶&レンジで作る韓国風さばじゃが」のレシピ
EPAやDHAなどの多価不飽和脂肪酸をたっぷり摂れる「さば缶&レンジで作る韓国風さばじゃが」のレシピを紹介します。
さばみそ煮缶を使った「さばじゃが」を韓国風にアレンジした一品です。缶詰を使い、電子レンジで作れるので、忙しいときでも手軽に魚を取り入れられます。
さば缶には、不飽和脂肪酸であるEPAやDHAなどのオメガ3脂肪酸が豊富に含まれています。さらに、じゃがいもに含まれるビタミンCには抗酸化作用があり、動脈硬化予防に役立ってくれるでしょう。
血管の健康を支えるオメガ3脂肪酸と、歯ぐきの土台づくりに関わるビタミンCを一緒に摂れるため、全身の健康だけでなく口と歯の健康づくりにも役立ちます。
<材料>(2人分)調理時間:15分
- さば缶(みそ煮):1缶(190 g)
- じゃがいも:2個(約300 g)
- (A)コチュジャン:大さじ1
- (A)ごま油:小さじ1
- (A)おろしにんにく:小さじ1/2
- 小ねぎ:適量
<作り方>
- じゃがいもは2 cmの厚さのいちょう切りにします。
- 耐熱ボウルにじゃがいもを入れ、さば缶の身を軽くほぐしながら加えます。
- さば缶の残り汁に(A)を加えてよく混ぜ、2に回しかけます。
- ラップをして電子レンジ(600 W)で約7分、じゃがいもがやわらかくなるまで加熱します。一度底からかき混ぜ、再びラップをして約3分蒸らします。
- 器に盛り、小口切りにした小ねぎを散らします。
<ポイント>
加熱後の蒸らしは、時間があれば15分ほど置いておくと、さらに味がなじみます。
お子さんが食べる場合はコチュジャンを入れずに加熱し、取り分けてから混ぜ込みましょう。
不飽和脂肪酸とは?
不飽和脂肪酸は脂質を構成する脂肪酸の一種で、分子内に二重結合を持つ脂肪酸の総称です。不飽和脂肪酸は、二重結合の数によって大きく2種類に分類されます。
- 一価不飽和脂肪酸:二重結合が1つ(例:オレイン酸)
- 多価不飽和脂肪酸:二重結合が2つ以上(例:オメガ3・オメガ6脂肪酸)
脂肪酸はエネルギー源として利用されるだけでなく、細胞膜やホルモンの材料となり、体の働きを支える重要な役割を担っています。
一価不飽和脂肪酸は体内でも合成される脂肪酸です。一方、オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸は体内で合成できないため必須脂肪酸と呼ばれ、食べ物から摂取する必要があります。
これに対して、飽和脂肪酸は二重結合を持たない脂肪酸で、肉類や乳製品などの動物性食品に多く含まれています。過剰に摂取するとLDL(悪玉)コレステロールが増えやすくなるため、摂取量には注意が必要です。
不飽和脂肪酸は飽和脂肪酸に比べて、血中脂質の改善や炎症に与える影響が異なり、「質の良い油」として注目されている脂肪酸のグループです。
不飽和脂肪酸に期待される効果・効能
不飽和脂肪酸は、一価不飽和脂肪酸や多価不飽和脂肪酸など、種類によってさまざまな機能が期待されています。どのような機能か、見ていきましょう。
血中脂質の改善・動脈硬化予防
一価不飽和脂肪酸や多価不飽和脂肪酸の摂取により、血中脂質の改善や、動脈硬化の予防、心血管疾患(心筋梗塞・脳卒中など)の発症リスク低下につながることがわかってきています。
特にオメガ3脂肪酸については、抗血小板作用や抗炎症作用もあるとされ、血管の健康を支える脂肪酸として注目されています。
ただし、これらの働きは脂肪酸の種類だけで決まるものではありません。飽和脂肪酸や炭水化物の摂取量を見直し、適正エネルギー摂取を保つことが前提となります。健康づくりのためには、脂質の「量」と「質」の両方を整える視点が大切です。
慢性炎症のコントロール
オメガ3脂肪酸であるEPA・DHAは、炎症を抑える「抗炎症性脂質メディエーター」の材料となり、炎症を抑える働きに関わると考えられています。
慢性的な炎症は、メタボリックシンドローム、関節リウマチ、皮膚トラブルなど、さまざまな不調との関連が指摘されています。EPAやDHAの摂取は、このような慢性炎症の改善に役立つ可能性があるとして、研究が進められているところです。
なお、抗炎症作用の強さについては、EPAのほうがDHAよりも強い傾向があると考えられています。
EPAの働きやレシピについては、下記の記事で詳しく解説しています。
認知機能や脳の発育への影響
オメガ3脂肪酸であるDHAは、脳の構成成分のひとつであり、神経組織の発育に関わる脂肪酸です。また、EPAは脳内でDHAに代謝されるほか、脳の循環改善に関わると考えられています。
このように、DHAやEPAは脳の働きと深く関わっており、最近ではDHAやEPAの摂取が認知機能の維持や気分の安定に関わるのではないかとして、研究が進められています。
さらに、妊娠期から乳幼児期・成長期にかけては、脳の発育が活発な時期です。特に妊娠中は胎児の発育に必要とされるため、DHAは大切な栄養素として位置づけられています。
こうした点から、日々の食事で脂質の「質」を見直すことが、脳の健康を支える上でも大切といえるでしょう。
脳の働きを支えるDHAについては、下記の記事で詳しく解説しています。
歯・歯ぐきとの関係
飽和脂肪酸中心の食生活は、血中脂質の悪化や動脈硬化、慢性炎症のリスクと関わることが知られています。これらの影響により、歯ぐきの血流悪化や歯周病リスクの上昇につながる可能性も否定できません。
一方、不飽和脂肪酸のなかでもオメガ3脂肪酸には、抗炎症作用や血流改善作用が期待されています。そのため、歯ぐきの慢性炎症である歯周病のリスク低減に関わるのではないかとして、研究が進められています。
さらに、オレイン酸などの一価不飽和脂肪酸なども取り入れて脂質のバランスを整えると、血管の健康維持につながります。結果として、歯ぐきへの栄養供給を支えることにもつながると考えられるでしょう。
不飽和脂肪酸の1日の摂取量の目安はある?
不飽和脂肪酸の全体の摂取量の目安はありません。多価不飽和脂肪酸であるオメガ6脂肪酸とオメガ3脂肪酸は必須脂肪酸であるため、それぞれ1日あたりの目安量が示されています。
▼オメガ6脂肪酸(n-6系脂肪酸)の食事摂取基準(1日あたりの目安量)
| 年齢 |
男性 |
女性 |
| 1~2歳 |
4 g |
4 g |
| 3~5歳 |
6 g |
6 g |
| 6~7歳 |
8 g |
7 g |
| 8~9歳 |
8 g |
8 g |
| 10~11歳 |
9 g |
9 g |
| 12~14歳 |
11 g |
11 g |
| 15~17歳 |
13 g |
11 g |
| 18~29歳 |
12 g |
9 g |
| 30~49歳 |
11 g |
9 g |
| 50~64歳 |
11 g |
9 g |
| 65~74歳 |
10 g |
9 g |
| 75歳以上 |
9 g |
8 g |
| 妊婦 |
ー |
9 g |
| 授乳婦 |
ー |
9 g |
出典:厚生労働省「
日本人の食事摂取基準(2025年版)」
▼オメガ3脂肪酸(n-3系脂肪酸)の食事摂取基準(1日あたりの目安量)
| 年齢 |
男性 |
女性 |
| 1~2歳 |
0.7 g |
0.7 g |
| 3~5歳 |
1.2 g |
1.0 g |
| 6~7歳 |
1.4 g |
1.2 g |
| 8~9歳 |
1.5 g |
1.4 g |
| 10~11歳 |
1.7 g |
1.7 g |
| 12~14歳 |
2.2 g |
1.7 g |
| 15~17歳 |
2.2 g |
1.7 g |
| 18~29歳 |
2.2 g |
1.7 g |
| 30~49歳 |
2.2 g |
1.7 g |
| 50~64歳 |
2.3 g |
1.9 g |
| 65~74歳 |
2.3 g |
2.0 g |
| 75歳以上 |
2.3 g |
2.0 g |
| 妊婦 |
ー |
1.7 g |
| 授乳婦 |
ー |
1.7 g |
出典:厚生労働省「
日本人の食事摂取基準(2025年版)」
この目安量は、皮膚炎などの欠乏症を防ぐ観点から設定されています。
どちらの脂肪酸も、通常の食生活で欠乏症がみられるケースはほとんどありません。そのため、現状の摂取状況をもとに目安量が算出されています。
最新の国民健康・栄養調査の結果で直近の平均的な1日の摂取量を見てみても、大きく不足していないことがわかります。
1日あたりの平均的な摂取量(20歳以上)
|
オメガ6脂肪酸 |
オメガ3脂肪酸 |
| 男性 |
11.80 g |
2.61 g |
| 女性 |
9.96 g |
2.26 g |
不飽和脂肪酸が不足するとどうなる?
不飽和脂肪酸のなかでも、必須脂肪酸であるオメガ3脂肪酸・オメガ6脂肪酸が欠乏すると、鱗状皮膚炎・出血性皮膚炎・結節性皮膚炎などの皮膚炎の発症リスクとなります。ほかにも、脱毛や成長障害、免疫機能の低下などとの関連も知られています。
ただし、健康な人が通常の食生活を送っている場合には、脂質の不足による皮膚炎の報告はありません。そのため、一般的には不飽和脂肪酸が不足・欠乏するリスクは低いと考えられます。
欠乏症がみられるのは、病気などの理由で食事がとれず、完全静脈栄養(点滴だけで栄養を補給する方法)などを行っている場合などです。また、極端に脂質を控えた食事を長期間続けることも、欠乏につながる可能性があります。
不飽和脂肪酸を過剰摂取するとどうなる?
植物油に広く含まれるリノール酸は、必須脂肪酸であり体に欠かせない脂肪酸です。一方で、過剰摂取により炎症を引き起こす可能性があることが知られています。
日本人が摂取するオメガ6脂肪酸は98%がリノール酸であり、植物油から摂るほかにも、外食や惣菜、加工食品にも含まれているため、知らないうちに摂取量が多くなりやすい点には注意が必要です。
ほかにも、不飽和脂肪酸などの脂質は1 gあたり9 kcalとカロリーが高く、摂りすぎると肥満を招くおそれがあります。体に良いからといって摂りすぎると、かえって生活習慣病のリスクになりかねません。
そのため、適正エネルギー摂取を基本としながら、飽和脂肪酸を控え、オメガ3脂肪酸などの不飽和脂肪酸を意識して取り入れることが大切です。
不飽和脂肪酸の「トランス脂肪酸」は注意が必要
不飽和脂肪酸のなかでも、加工油脂に含まれる「トランス脂肪酸」は、健康への影響が指摘されているため摂りすぎに注意が必要です。
トランス脂肪酸は牛肉や乳製品などに自然に含まれるものもありますが、液状油を固形油に加工する過程でも生成されます。特に後者は、飽和脂肪酸以上にLDLコレステロール値を上昇させやすいことが知られています。
トランス脂肪酸は、マーガリンやショートニングといった加工油脂だけに含まれるのではありません。これらを原料に使用した菓子パンやドーナツ、ケーキ、スナック菓子、冷凍食品、揚げ物などの加工食品にも多く含まれています。
このような加工食品を日常的に多くとると、トランス脂肪酸の摂取量が増えやすくなるため、食べすぎには注意しましょう。
ただし、日本人の多くはトランス脂肪酸の摂取量がWHO(世界保健機関)の目標を下回っており、一般的な食生活では健康への影響は大きくないと考えられています。加工食品に頼りすぎず、バランスの良い食事を心掛けましょう。
不飽和脂肪酸が豊富な食べ物
不飽和脂肪酸が豊富な食べ物について、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸であるオメガ6脂肪酸とオメガ3脂肪酸に分けて、詳しく紹介します。
一価不飽和脂肪酸が豊富な食べ物
一価不飽和脂肪酸の代表的なものは、オリーブ油に多く含まれるオレイン酸です。ほかにも、アボカドやマカダミアナッツに含まれるパルミトレイン酸や、肉の脂に含まれるミリストレイン酸など、さまざまな種類があります。
健康づくりの観点では、植物油やナッツ類などの食品から取り入れるのが良いでしょう。
▼100 gあたりの一価不飽和脂肪酸含有量
| 食品名 |
含有量 |
| オリーブ油 |
74.04 g |
| マカダミアナッツ |
59.23 g |
| 米油 |
39.8 g |
| ごま油 |
37.59 g |
| アーモンド |
35.09 g |
| ピスタチオ |
30.92 g |
| ピーナッツ |
24.54 g |
| ねりごま |
21.36 g |
多価不飽和脂肪酸(オメガ6脂肪酸)が豊富な食べ物
多価不飽和脂肪酸のうち、オメガ6脂肪酸の代表的なものはリノール酸とアラキドン酸です。
リノール酸は紅花油やコーン油などの植物油、アラキドン酸は卵黄やレバーなどの動物性食品に含まれています。
リノール酸は摂りすぎに注意したい脂肪酸のため、植物油の摂取が多くならないよう注意しましょう。
▼100 gあたりのオメガ6(n-6系)脂肪酸含有量
| 食品名 |
含有量 |
| 紅花油(ハイリノール) |
69.97 g |
| コーン油 |
50.82 g |
| 大豆油 |
49.67 g |
| くるみ |
41.32 g |
| ごま油 |
40.88 g |
| サラダ油 |
34.13 g |
| 米油 |
32.11 g |
| なたね油 |
18.59 g |
多価不飽和脂肪酸(オメガ3脂肪酸)が豊富な食べ物
多価不飽和脂肪酸であるオメガ3脂肪酸は、DHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)、α-リノレン酸などがあります。
DHAやEPAは、さばやさんまなどの青魚に豊富に含まれています。
α-リノレン酸は、一部が体内でEPAやDHAに変換される脂肪酸です。えごま油、あまに油などの植物油に広く含まれており、青魚をあまり食べない場合でもオメガ3脂肪酸を補いやすいでしょう。
ただし、えごま油やあまに油は酸化しやすく加熱調理には向きません。ドレッシングや料理の仕上げにかけるなどの方法で取り入れると良いでしょう。
▼100 gあたりのオメガ3(n-3系)脂肪酸含有量
| 食品名 |
含有量 |
| えごま油 |
58.31 g |
| あまに油 |
56.63 g |
| くるみ |
8.96 g |
| なたね油 |
7.52 g |
| ノルウェーさば |
6.56 g |
| さんま |
5.59 g |
| ぶり |
3.35 g |
| さば缶(みそ煮) |
3.33 g |
不飽和脂肪酸は脂質のバランスを整える大切な脂肪酸
不飽和脂肪酸は、血中脂質の改善や慢性炎症との関係、脳の機能との関連など、さまざまな働きが注目されている脂肪酸です。
ただし、体に良い脂肪酸であっても、摂りすぎるとかえって健康に影響する可能性があります。脂質の摂取量そのものを増やすのではなく、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸を控え、不飽和脂肪酸に置き換えていくことが大切です。
さば缶や青魚、ナッツ類、植物油などを上手に活用し、日々の食事のなかで無理なく不飽和脂肪酸を取り入れていきましょう。