歯科診療、どこまでが保険適用になる? 自費診療との違いも解説【歯科医師監修】

歯科診療、どこまでが保険適用になる? 自費診療との違いも解説【歯科医師監修】

歯科に限らず、医療機関で受ける診療には、医療保険が適用される保険診療と、全額自己負担する自費診療の2種類があります。歯科は、矯正治療やインプラントなどの自費診療が多い診療科目であり、むし歯の診療でも、詰め物の素材によっては自費診療になる場合があります。
本記事では、歯科診療の保険適用範囲や自費診療のメリットなどをご紹介します。

               

なぜすべて保険適用されないの?歯科診療の仕組み

歯科治療で保険が適用できるのは、保険で認められた手順・方法・材料を用いた場合と定められています。それ以外の治療を受ける場合には、差額もしくは全額を自己負担することとなります。
<歯科診療3つのパターン>
  1. 保険診療:健康保険で認められた材料を、健康保険で認められた技術で行う治療
  2. 自費診療:全額自己負担となる治療
  3. 保険診療と自費診療の併用が認められる特別なケース:健康保険で認められたものと、その材料との差額を自己負担する

保険診療と自費診療の違い

保険診療と自費診療では、治療にかかる費用や治療に用いる材料、治療にかけられる時間が異なります。ここでは、保険診療と自費診療の違いを解説します。

治療にかかる費用

自治体にもよりますが、6歳以上70歳未満の保険診療の治療費は、基本的には3割負担となっています。保険診療で使われる材料は、比較的安価なため、その分費用を抑えることができます。
自費診療は全額自己負担になるケースが多く、治療に使われる素材も高価なため、保険診療よりも費用が高くなります。

治療に用いる材料

保険診療の場合、使用する材料が決められています。自費診療の場合は、材料に制限がありません。保険診療でも一定の水準は満たしていますが、自費診療の方が、より高い強度や審美性を持つ材料が使用できます。

治療にかける時間

保険診療の場合、どの歯科医院でも同じ治療内容を行うことができますが、同時に治療にかける時間も定められています。また、1度に実施できる診療行為・一連の治療ステップも決められているため、来院回数が多くなる傾向にあります。一方、自費診療では時間の制限がありません。    

保険診療と自費診療のメリット・デメリット比較

保険診療と自費診療のどちらにも、メリットとデメリットがあり、一概にどちらを選ぶべきとは言えません。治療内容や予算などを考慮して、歯科医師と相談しながらベストな診療を選択しましょう。

保険診療のメリット・デメリット

まずは、保険診療のメリットとデメリットをご紹介します。
<メリット>
自費診療よりも費用を抑えられ、全国どの歯科医院でも同様の治療を受けられます。
<デメリット>
保険診療の目的は痛みをとる、噛めるようにするなどの必要最低限度の治療に限定され、材料や治療方法などに制限があります。そのため、場合によってはベストな治療を受けられないこともあります。また、すでに発生している症状に対処する内容が多く、保険が適応される予防的措置は多くありません。

自費診療のメリット・デメリット

続いて、自費診療のメリットとデメリットを解説します。
<メリット>
自費診療では、最新の素材や技術による治療を受けられます。自由診療では精密性、気密性、見た目が優れ、長期にわたり使用可能な被せ物になります。精密なので被せたものの下に菌が入りにくく、むし歯ができにくいなどのメリットがあります。
<デメリット>
自費診療は治療費が高く、歯科医院によって金額が変わります。むし歯治療や矯正治療、インプラント治療などの自費診療は、医療費控除の対象になるケースもありますが、美容を目的とした歯科治療は対象外です。
また、前歯もしくは総入れ歯の床部分に自費診療の素材を使用した場合、保険診療の材料との差額のみ自己負担となるケースもあります。
自分と家族(同一世帯)の治療費が年間で10万円を超えた場合には、医療費控除を受けられるため、確定申告をしましょう。

歯科診療の保険適用範囲

検査や処置、手術は、歯科でも保険診療で行われます。また、歯周病に関する治療も、基本的に保険診療です。むし歯の場合、治療は保険診療となりますが、詰め物や被せ物には保険診療の場合と自費診療の場合があります。
次に、むし歯と歯周病の治療における保険適用の範囲について解説します。

むし歯治療の保険適用範囲

むし歯治療による銀歯やプラスチックの白い詰め物(レジン)、入れ歯、ブリッジなどは保険診療になります。また、上下左右の7番目の歯が4本とも残っている、食いしばりがないなどの条件を満たしていると、上下5番目の歯は保険適用内で白い素材でできたブリッジを入れられるケースもあります。
これらは、特定の基準に達した歯科医院で、条件に合った場合に行えます。また、金属アレルギーの方は、診断書を提出すると6番目の歯も保険が適用されます。
2020年4月より、上下左右の7番目の歯が4本とも残っていることや、噛み合わせが強すぎないことなどを条件に、上顎の6番目の歯も保険適用で白い素材の被せ物も使えるようになりました。条件を満たしていないと、保険適用内で白い被せ物をすることはできず、銀歯になります。
ただし金属アレルギーの方は、診断書を提出すると、7番目の歯も保険適用内で白い被せ物が可能です。

歯周病治療の保険適用範囲

歯周病に関する治療は、基本的に保険診療です。初期の歯周病に対する歯石除去や、歯周病の治療の経過観察を目的とするクリーニングも、保険診療になります。歯周病に関する手術や、治療後の基本的なメンテナンスも、保険診療で行われます。しかし、歯周組織再生療法で特殊な材料を使用した場合は、自由診療となります。

保険が適用されない歯科診療の種類

初期兆候のないむし歯や、歯周病の予防、矯正治療、インプラント、一部の詰め物や被せ物は、保険が適用されません。次に、保険が適用されない歯科診療の種類について解説します。

予防歯科

予防歯科とは、歯に付いた歯垢や歯石の除去をして、むし歯や歯周病の予防をすることを指します。むし歯などの症状がない方へのフッ素塗布や、むし歯菌の検査などは、自費診療です。
ただし、2020年4月の診療報酬改定から、初期徴候がある場合には予防的措置も保険が適用されることとなりました。

矯正治療

矯正治療は、歯やあごの位置を動かして、その方にとって最適な歯並びや、噛み合わせを実現する治療方法です。正常な咀嚼機能を取り戻すことを一番の目的としています。矯正治療の多くは自費診療ですが、顎変形症の手術前後など、治療を伴うものには保険が適用されるケースもあります。

インプラント

インプラントは、失われた歯の代わりに人工の歯根を埋め込んで、その上に人工の歯を取り付ける治療法です。チタンという人体との親和性が高い金属で造られています。ぐらつきが少なく、自分の歯と同じように噛むことができます。

一部の詰め物や被せ物

先ほども軽く触れましたが、むし歯治療でも前歯または総入れ歯以外に、保険適用外の材料を使用した場合、材料費と技術料を自己負担します。大きなむし歯や、目立つ場所にあるむし歯の場合、ジルコニアや、オールセラミックなどの自費診療を選択する方が増えています。

医療費の負担を抑えるには

むし歯の大きさや、歯周病の進行度合いにより、治療方法も変わります。大きなむし歯になるほど、見た目や耐久性の良い、自費診療を選択するメリットが大きくなります。医療費の負担を抑えるには、発症・重症化の予防が大切です。
次に、早期発見につながる定期検診や、自分の口内環境をチェックできる唾液検査について解説します。

定期検診を受ける

初期のむし歯や歯周病であれば、保険適用内でも十分な治療を行うことができます。しかし、症状が進行するほど機能性や耐久性のある自費診療の方が良いケースが多くなります。つまり、初期の段階で気づくと、その分治療の負担も少なくなります。予防歯科として、定期検診を受けることが大切です。
歯医者の定期検診については、詳しくはこちらの記事を読んでみてください。

唾液検査をして自分の口内環境を把握する

むし歯や歯周病の予防には、歯科での定期検診だけでなく、日頃のオーラルケアも重要です。自分に最適なオーラルケアを知るために、定期検診の際に、あわせて唾液検査シルハで口内環境を把握しましょう。
シルハは10秒ほど水で口をすすぐだけで行える唾液検査です。むし歯菌の活性度や、歯を溶かす酸の強さがわかる酸性度や酸に対する防御力の緩衝能、口内の炎症がわかる白血球、タンパク質の量、口内清潔度の指標であるアンモニアの6項目を検査・測定でき、むし歯のなりやすさなど自分の口内環境を把握できます。
シルハを導入しているクリニックはこちらから検索してみてください。

日頃のケアや定期検診が医療費を抑えるポイント

むし歯や歯周病の進行が進むほど、治療する範囲が大きくなり、長期間におよびます。保険診療の場合は白い詰め物のレジンではなく、銀歯の詰め物が検討されます。しかしここ数年、見た目などの問題から、銀歯の代わりにジルコニアやオールセラミックを選択する方が多くなりました。ジルコニアやオールセラミックは自費診療となるため、費用が高くなりやすいです。
治療の費用を抑えるためにも、定期的に歯科医院を受診して、予防や早期発見につなげることが大切です。重症化してしまう前に治療ができるように、あるいは治療になる前の段階で済むように、予防歯科を実践しましょう。

監修歯科医師:押村 侑希 先生

愛知県名古屋市中川区「おしむら歯科こども矯正歯科クリニック」の2代目院長。
愛知学院大学歯学部歯学科卒。日本顎咬合学会認定医、日本成人矯正学会会員、摂食・嚥下学会会員。
医院では主に小児歯科と矯正を担当。「話しかけやすい、気軽に相談しやすい」をモットーにしながら、専門的な最先端の歯科医療を提供することを心がけている。
歯科医師、歯科衛生士、歯科助手、歯科技工士、保育士、管理栄養士によって構成された、総合的に診療できるチーム医療体制が医院のポイント。

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