(2022年4月4日更新)
【歯科医師監修】
ドライソケットとは、抜歯後にできた穴の奥にある骨が露出している状態です。痛みが続き、完治するのに時間がかかるため、抜歯後はドライソケットにならないように予防する必要があります。本記事では、ドライソケットの症状や原因、予防法についてご紹介します。すぐに歯科医院を受診できない場合に自分でできる応急処置、歯科医院での治療法についても解説しているので、気になる方はチェックしてみてくださいね。
抜歯後はドライソケットに注意が必要
抜歯後に痛みがなかなか引かなかったり、口の中から変なニオイを感じたりしたことはないでしょうか。時間が経っても抜歯後の傷がふさがらず、痛みが続く場合は、ドライソケットになっているかもしれません。まずは、ドライソケットとはどのような状態なのかを解説します。
ドライソケットとは
ドライソケットとは、抜歯後の穴の奥にある骨が露出してしまっている状態のことを指します。また、骨が露出していることにより、細菌に感染しやすい状態とも言えます。
抜歯窩治癒不全(ばっしかちゆふぜん)とも呼ばれ、抜歯後に起こる恐れのある口内トラブルです。特にドライソケットが起こりやすいのは、下顎の親知らずを抜歯した場合で、発生率は約20%とも言われています。
ドライソケットの症状
- 抜歯して2~3日後から痛みを強く感じる
- 抜歯後1~2周間経過しても痛みがなくならない
- 抜歯した部分から不快なニオイがする
- いつもと異なる味(苦い味、膿の味など)がする
抜歯後の痛みは通常であれば1~2日程度経てば治まるものです。しかし、ドライソケットになってしまった場合、強い痛みが10日~2週間ほどと長く続きます。その後1~2週間ほどかけて、徐々に痛みが引いていきます。
ドライソケットが起こる原因
ドライソケットが起こる理由は、口の中のカサブタの材料とも言える血餅(けっぺい)が作られなかったり、血餅が剥がれ落ちたりして、抜歯部位の骨が露出するためです。ここでは、ドライソケットを引き起こす主な原因を詳しく解説していきます。
抜歯後の穴の治癒は血餅がカギ
抜歯後の穴には血液が溜まり、モチ状に固まる血餅によって蓋がされます。その上に歯肉が被さって治癒していくのが通常です。しかし、ドライソケットは何らかの理由で上手く血餅ができなかったか、形成された血餅が剥がれ落ちて起こることがほとんどです。
原因①血餅が上手く作られなかった
血餅が上手く生成されない理由として、血流が悪くなっており抜歯窩に十分な量の血が溜まらないというケースが考えられます。
抜歯の際に麻酔を多く使用した場合には、麻酔薬に含まれている血管収縮成分が影響して血流が悪くなる恐れがあります。また、喫煙も血流を悪くしやすいため、血餅が作られるのを阻害してしまうかもしれません。
原因②血餅が剥がれ落ちてしまった
一度血餅ができても、剥がれ落ちてしまうケースもあります。抜歯後に口の中が不快だからといって過度なうがいをしたり、舌や指で触れたりすると、血餅が剥がれやすくなります。また、舌や指だけではなく、歯磨きの際に抜歯窩を擦ってしまい剥がれることもあるため、注意しなければなりません。
ドライソケットの予防方法
ドライソケットを予防するためにも、抜歯後の行動にはくれぐれも注意しましょう。また、抜歯後だけではなく抜歯前にできる予防方法もあります。
頻繁にうがいをしない
抜歯した直後は血が滲んだり血の味を感じたりするため、うがいをしたくなるものです。しかし、抜歯直後のうがいのしすぎはドライソケットを招く恐れがあるため、うがいは頻繁に行わないようにしましょう。もしもうがいをする場合は、強くすすがないように注意しましょう。
大抵の場合、抜歯後はうがいを控えるようにと医師からの指示があります。血餅を上手く作り、傷を早く治すためにも、医師からの指示を忘れずに守りましょう。
抜歯窩に触れない
抜歯窩は穴が開いた状態になっているため気になりがちですが、舌や指で触れないようにすることが鉄則です。不必要な接触は、血餅が剥がれ落ちるだけではなく、傷口が開いて細菌感染を引き起こす恐れもあります。歯磨きや飲食の際にも、触れないように気をつけましょう。
患部を傷付けないためにも、抜歯後は硬い食べ物を避け、歯磨きの時にも抜歯窩には触れないことが大切です。
禁煙をする
喫煙は血流を悪くするだけではなく、酸素の運搬も阻害するため傷の治りを遅くしてしまいます。早く傷を治し血餅を作るためにも、抜歯後はしばらく喫煙を控え、口内に負担をかけないようにしましょう。
血流が良くなる行動をしない
血流が悪いと血餅ができにくくなると先述しましたが、反対に、血流が良くなっても血餅はできにくくなります。血流が良すぎると血が止まりにくくなり、固まらないためです。また血が止まらないと口内が不快に感じやすくなるため、つばを飲み込んだり、うがいをしたりする回数が増え、血餅が剝がれやすくなります。
血が止まらなくなるのを避けるためにも、抜歯後は飲酒や激しい運動、熱いお湯や長時間の入浴は控えるようにしましょう。
口内を清潔に保つ
抜歯前から、口内を清潔に保っておくことも大切です。口内を清潔にしておくと、細菌感染のリスクを減らすことができます。歯磨きの際には、歯ブラシとフロスも使って、細部まで丁寧に行うようにしましょう。
ドライソケットになった時の対処と治療方法
ドライソケットにならないように気を付けていても、なってしまうこともあるかもしれません。ドライソケットの疑いがある場合は、早めの対処を心がけましょう。ここからは自宅でできる対処方法と、歯科医院での治療方法をご紹介します。
自宅でできる対処方法
ドライソケットになってしまい、痛みが強い時には、痛み止めや化膿止めを飲んでも問題ありません。痛み止めは、歯科医院で処方されたものでも市販のものでも構いませんが、市販薬を購入する場合は、購入する前に薬剤師やドラッグストアなどで一般用医薬品を販売する登録販売者に相談しておくと良いでしょう。
薬を飲んだ後は予防方法と同様に抜歯窩に触れないようにして、なるべく早く抜歯した歯科医院を受診するようにしてくださいね。
歯科医院での治療方法
歯科医院で行うドライソケットの治療方法として代表的なものは、以下の2つです。
<軟膏による治療>
抜歯窩を洗浄し、抗生物質の軟膏を塗布する治療方法です。軟膏を塗布したガーゼを抜歯窩に詰める場合は、ガーゼ交換のために週に数回受診が必要になります。軟膏の塗布と同時に、抗生剤や痛み止めも処方してもらえることも多いです。
<再掻爬(さいそうは)による血餅作成>
ドライソケットが長期間改善しない場合は、再掻爬を行います。再掻爬とは、抜歯窩に再び傷を作り出血させ、血餅を作る処置のことです。この処置の際には、麻酔が用いられます。
ドライソケットを予防するためにも口内は常に清潔に
ドライソケットによる細菌感染を防ぐためにも、口内はできるだけ清潔に保つことが大切です。また、抜歯が必要になる治療をしなくても済むように、日ごろから自分の口内の状態はできるだけ把握しておくようにしましょう。
定期的に歯科医院で口内の状態をチェックしてもらうことで、むし歯や歯周病など口内トラブルの早期発見や、予防につなげることができます。
歯科医院で受けられる唾液検査のシルハは、口をすすぐだけで口内の状態を詳しくチェックできます。むし歯や歯周病などの歯や歯ぐきの健康の他に、口腔清潔度のリスクも確認できるので、ぜひセルフケアの参考にしてみてください。シルハを導入している歯科医院は、こちらから検索できます。
ドライソケットの疑いがある場合は早めに歯科の受診を
ドライソケットは、痛みや不快な状態が長引いてしまうトラブルです。ドライソケットを予防するためにも、抜歯後は歯科医師の指示をしっかりと守りましょう。また、ドライソケットになっているかもしれないと感じた場合は、なるべく早く歯科医院を受診するようにしてくださいね。
監修歯科医師:吉田亜矢 先生
明海大学 歯学部歯学科を卒業後、同大学病院病態診断治療学講座口腔顎顔面外科学分野1講座、群馬県内総合病院歯科口腔外科部長、埼玉県内歯科クリニック勤務を歴て、2015年「あやクリニック歯科・皮ふ科」を開業。「歯の健康は全身の健康」という思いから、トラブルを起こしている部分だけでなく全身の状態も把握した上で、患者と一緒に相談しながら治療計画を立てて治療を行っている。
YouTube 「あやクリニックTV」、FMラジオ川越「あや先生の歯ッピークリニック❤︎」などでもお口の健康についての情報発信を積極的におこなっている。