(2022年9月30日公開)
【歯科医師監修】
子どもにも、大人と同様に口内炎ができます。また、口内炎が繰り返し起こる場合は、子ども特有の感染症が原因である可能性も考えられるため、口内環境のケアに加えて感染症の予防も必要です。この記事では、子どもの口内炎が繰り返し起こる原因と、その対処法を解説します。口内炎は外から見えないのに加えて、子どもは痛みをうまく伝えることができないため、歯磨きをする際にチェックするなどしてみましょう。
子どもの口内炎が繰り返し起こる原因と対処法
ここでは、子どもが口内炎を繰り返す主な原因3つと、その対処法をご紹介します。
口内環境がよくない・不衛生
口内が不衛生だと、細菌が増えやすい状態になり、口内炎の原因になります。ごはんやお菓子を食べた後に歯磨きをしていなかったり、きちんと歯を磨けていなかったりすると、口内炎ができやすくなります。特に子どもの場合は、歯磨きに慣れていないと自分でくまなく口内を磨くことが難しいです。また、歯磨きが苦手で、おろそかになっているお子さんもいらっしゃるかもしれません。
<対処法・予防法>
歯磨きを嫌がる子どもや、まだ自分で磨くことに慣れていない時期は、大人が手伝ってあげたり、仕上げ磨きをしてあげたりする必要があります。また、こまめに水分を摂り、口を洗い流すようにしてあげることも有効です。歯磨きの仕方などを改善して口内環境が良くなれば、口内炎は2週間ほどで自然に治り、再発しにくくなります。ケアの仕方を変えても口内炎の症状が2週間以上続いたり、再発を繰り返したりする場合は、歯科医院を受診しましょう。
栄養が偏っている・栄養不足
栄養バランスの偏りや栄養不足も、口内炎ができやすくなる原因の一つです。特に、粘膜を保護するはたらきがある栄養素のビタミンB2が不足していると、口内炎ができやすくなります。食べ物の好き嫌いが多かったり、甘いものばかり食べていたりすると、口内炎ができやすくなると考えられます。
<対処法・予防法>
口内炎の原因が栄養の偏りや栄養不足の場合、栄養バランスを整えてから2週間程度で口内炎は治ります。また、偏食が改善して甘いものを食べる機会が減れば口内環境もより良くなり、口内炎が再発しにくくなります。こちらを参考に、口内炎に良い食材を取り入れた献立を意識してみてください。
栄養バランスのとれた食事を心がけていても症状が続く場合は、早めに歯科医院を受診しましょう。
ストレス・生活リズムの乱れ
子ども・大人問わず最もよく見られるタイプであるアフタ性口内炎は、明確な原因が分からないことが多く、繰り返し起こりやすい傾向にあります。口内のケガ、ストレスなどが原因で発症することがあります。
※アフタとは、直径数ミリの円形をした潰瘍のことです。
<対処法・予防法>
生活リズムが崩れていたり、自律神経が低下していたりすると、口内炎ができやすいです。規則正しい生活を意識しましょう。
【感染症編】子どもの口内炎が繰り返し起こる原因と対処法
子どもの口内炎は、感染症が原因となって起こる場合もあります。ここでは、口内炎を引き起こす感染症について解説します。
手足口病
手足口病は、口内だけでなく、手のひらや足、肘・膝にも痛みのある水ぶくれができるのが特徴です。手足口病になると、唇や頬っぺたの内側、舌、喉などのいたる所に口内炎ができます。
生後半年ほどの乳児から、未就学児くらいまでの子どもが特にかかりやすいとされており、夏に流行する傾向があります。また、発熱しやすいのも手足口病の特徴です。
手足口病の主な感染経路は、飛沫感染と接触感染です。原因となるウイルスが複数あるので、繰り返しかかりやすいです。
<対処法・予防法>
口内環境や栄養バランスを改善しても2週間以上口内炎を繰り返していたら、何かが口内を傷付けているか、感染症が原因のおそれがあります。まずは歯科医院を受診しましょう。もし口内以外にも水ぶくれができている場合は、小児科を受診しましょう。その際、口内炎には鎮痛剤や粘膜を保護する軟膏が処方されることがあります。
症状が出ている間は、頬の内側や喉などの粘膜を刺激しない飲み物や、柔らかい食べ物を食べるようにしましょう。おかゆやゼリーなど、噛まずに飲み込めるものがおすすめです。
手足口病には、今のところ予防接種がありません。そのため、しっかりと手洗い・消毒をして予防しましょう。
ヘルパンギーナ
ヘルパンギーナは、喉の奥に小さい水ぶくれや潰瘍、赤い炎症が出るのが特徴です。喉の痛みや下痢、嘔吐、発熱といった症状が現れる傾向にあります。6月から夏休みにかけて流行すると言われており、5歳以下の子どもを中心に発症する場合が多いです。もしも食べ物を飲み込むのが辛そうな様子があれば、ヘルパンギーナの恐れがあります。
<対処法・予防法>
喉に水ぶくれや潰瘍ができていたら、歯科か小児科を受診しましょう。手足口病と同様に、鎮痛剤や粘膜を保護する軟膏が処方されることがあります。喉の奥に水ぶくれができて食事の際に痛みを伴うため、食欲不振につながる場合もあります。おかゆやゼリーといった、喉に負担がかかりにくい柔らかい食事を選んだり、酸味や炭酸を含まない飲み物で栄養を摂ったりすることもおすすめです。
また、下痢や嘔吐、発熱を伴う場合は、脱水症状にならないよう、水分補給をしっかりとしましょう。
ヘルパンギーナにも今のところ予防接種はないため、きちんと手洗い・消毒をして予防しましょう。
子どもの繰り返す口内炎 予防におすすめの食材
子どもの口内炎を予防するには、感染症予防に加えて、毎日の食事で必要な栄養素を摂ることがポイントです。特におすすめなのは、ビタミンBとビタミンCです。ビタミンBには、粘膜を保護・強化するはたらきがあります。一方で、ビタミンCは抗酸化物質で、粘膜を傷つけやすい物質である活性酸素を取り除くはたらきがあります。これらを意識して摂取することで、口内の健康をより保ちやすくなるでしょう。
ビタミンB、ビタミンCはともに加熱によってその成分が損失してしまいやすく、水に溶けやすい性質です。野菜類は、加熱時間を極力抑えたり、煮汁ごとスープにして摂取するといいでしょう。
ビタミンB2を含む食材
ビタミンB2を多く含む食材としてレバーが挙げられますが、嫌がるお子さんも多いと思います。子どもでも食べやすい食材には次のようなものがあります。
・牛乳・ヨーグルトなどの乳製品
・卵
・きのこ類
・豆類
・バナナ
きのこ類や豆類は、お子さんが食べやすいように煮込んだり、そうめんの具材にしたりするといいでしょう。
ビタミンCを多く含む食材
ビタミンCを豊富に含む食材としては、主に下記です。
・赤ピーマン
・ブロッコリー
・アセロラ
・キウイ
・レモン
・みかん
手足口病やヘルパンギーナに感染している場合は、口内の粘膜を刺激することは避けた方がいいため、酸味を強く感じる食材は控えましょう。
1歳未満の乳児にはちみつはNG
はちみつには殺菌効果があるため、口内炎に直接塗ることで治りやすくなるということがしばしば紹介されますが、1歳未満の乳児には決して行わないでください。乳児ボツリヌス症を発症するおそれがあります。
乳児ボツリヌス症について、
詳しくはこちらでご確認ください。
子どもが口内炎を繰り返す原因と対処法を知って口内環境を守ろう
子どもが口内炎を繰り返していないかどうかは、歯磨きをサポートするなど、こまめに口内をチェックする必要があります。バランスのとれた食生活のほか、食後には必ず歯磨きをする習慣をつけるといったことが大切です。口内炎を2週間以上繰り返している場合は、感染症の疑いがあるため、小児科を受診しましょう。口内環境の改善をサポートするビタミンB2を積極的に摂り、子どもが口内炎を繰り返さないようにケアしましょう。
口内環境のチェックには子どもでも簡単にできるシルハ
シルハは、口内環境をチェックできる唾液検査です。水で口の中を10秒すすぐだけなので、お子さんでも簡単に検査が可能です。シルハでは、むし歯菌の活性度や、歯を溶かす酸の強さがわかる酸性度、酸に対する防御力の緩衝能、口内の炎症がわかる白血球、タンパク質の量、口内清潔度の指標となるアンモニアの6項目を検査・測定できます。
測定項目 |
わかること |
むし歯菌 |
むし歯の元となるむし歯原因菌の活性度 |
酸性度 |
歯を溶かしてしまう酸の強さ |
緩衝能 |
酸性になった口の中を中性に戻す力の強さ |
白血球 |
菌の繁殖などにより生じた炎症の度合い |
タンパク質の量 |
出血などの口のトラブルや細菌の繁殖 |
アンモニア |
口内の清潔度 |
かかりつけの歯科医院でシルハが導入されているかどうかは、下記サイトをご覧ください。サイトに記載がない医療機関でも、シルハを導入している場合があるので、「シルハは利用できますか? 」と聞いてみてくださいね。
ひぐち歯科クリニック 樋口 均也先生
ひぐち歯科クリニック院長。大阪大学歯学部を卒業。インターネット医科大学口腔内科教授。歯科治療に対する患者様の不安や恐怖心を緩和するため「痛みのコントロール」を徹底し、安全性を最重視した無痛治療を行っている。
ひぐち歯科クリニックさんのホームページはこちら
https://higuchidc.com/