インプラントは医療費控除を受けられる!
医療費控除は、申請を行うと病気やケガなどで1年間にかかった医療費の一部が戻ってくる所得控除制度のひとつです。インプラントは医療費控除が適用されるため、確定申告時に申請をすることで治療にかかった医療費を控除することができます。
インプラントとは
歯を失った場合の治療方法には、以下の3種類の方法があります。
- 入れ歯
- ブリッジ
- インプラント
インプラントは、ほかの治療方法よりも人工歯を安定して固定できるなどのメリットから近年注目を集めている治療方法です。
インプラント治療では、まず歯が無くなった箇所の顎の骨にインプラント体(人工歯根)を埋め込んで土台にします。その上にアバットメント(支台部)を取り付け、さらに上から人工歯(上部構造)をかぶせます。人工歯にセラミックを用いると、見た目も自然の歯とほとんど変わりません。
インプラントの治療にかかる期間は約4~6か月です。インプラントの治療には、原則として保険が適用されないため費用は高額になり、インプラント1本の取り付けに対して30~50万円ほどかかります。しかし、インプラント治療は医療費控除の対象になります。医療費控除を申請すればインプラントの治療に支払った治療費が一部戻ってくる可能性があります。
インプラントに関しては以下の記事で詳しく解説しています。
医療費控除とは?
医療費控除とは、所得税の計算をする際に所得額から差し引く所得控除のひとつです。医療費控除が適用されると、個人の所得にかかる所得税額が軽減されます。1年間のうちに実際に支払った医療費が10万円を超えた場合、もしくは総所得金額の5%を超えた場合に控除が受けられます。
給与を受け取っている会社員や公務員などの場合、勤務先の年末調整で扶養家族などに関する所得控除を適用して税額が計算されます。ところが、医療費控除は年末調整では控除されないため、自分で確定申告を行わなければなりません。確定申告で医療費控除の申請をすると、支払った所得税の一部が戻ります。
医療費控除の対象となる医療費には、下記の費用が含まれます。
『医師・歯科医師による診療や治療にかかった費用』
- 診療代
- 医療費
- 入院費
- 子どもの歯列矯正必要
- 医薬品代
『医師等の診療を受けるために必要な費用』
- 通院時に使用した公共交通機関の交通費
- 義歯の購入費
そして、インプラントの治療費も医療費控除の対象になります。また、入れ歯やクラウン(被せもの)の材料が金やセラミックなどを使用する場合にも、医療費控除が受けられます。
ただし、下記に記載した費用控除の対象に含まれません。
- 容姿の美化・容ぼうを変える目的で行った整形手術費用
- 美容目的の歯列矯正
- 人間ドックや健康診断の費用
- 予防接種代
- 通院に使用したタクシー代(公共交通機関が使えない場合を除く)
- 自家用車で通院する際のガソリン代・駐車料
所得税の納税者に、生計を同じくする配偶者や子などの扶養家族がいる場合には、扶養家族の医療費も含めて医療費控除の申請をすることが可能です。一緒に暮らしていなくても、仕送りしている両親の医療費などは含まれます。
医療費控除の申請を行うための条件は【年間医療費10万円以上】
医療費控除を受けるためには、一定の条件を満たしている必要があります。医療費控除が適用になるのは、1月から12月までの1年間で支払われた医療費合計が10万円(年間の所得額が200万円未満の場合には、総所得額の5%)を超えたときです。
医療費控除に含める医療費は、支払った日を基準に考えます。たとえば翌年の1月に入ってから支払った医療費は、当年の医療費控除額に含めることができません。
クレジットカードでの支払いも控除額に含まれます。その場合は、クレジットカードの利用料金が口座から引き落とされる日ではなく、病院でクレジット支払いをした日を支払日として申請します。
医療費控除の申請は、1年分の医療費を翌年の確定申告で行います。直近の確定申告に間に合わなかったときでも、5年以内なら申請が可能です。たとえば2022年の医療費控除を2023年の3月15日までに確定申告で申請できなかった場合、翌年の2024年に「2022年分」の医療費控除として改めて申請すると還付が受けられます。
ただし、医療費控除額は、医療費の合計から高額療養費制度による払い戻しや保険会社からの保険金受け取り額を差し引いて計算します。そのため、保険金の受け取り額などを差し引いたあとの金額が10万円以下の場合には医療費控除は受けられないため注意してください。
インプラントの治療費を申請すると返ってくる額は?
医療費控除額は、最高で200万円の還付を受けられます。インプラントで医療費控除を適用する場合も同様です。還付される金額の計算方法を以下に紹介します。
医療費控除の計算方法
医療費控除額は、以下の計算式で算出できます。
- 「1年間に支払った医療費の合計額」
前述の医療費、薬代など、控除対象となる費用の合計額です。保存していた領収書などから計算します。 - 「保険金などで補てんされる金額」
加入している生命保険から受け取った給付金の金額や、健康保険の高額療養費・家族療養費などが払い戻された金額です。給付金は、給付理由となった医療費の金額まで差し引きます。給付対象の医療費以上の金額を受け取っていた場合、そのプラス分の差額を医療費から差し引く必要はありません。 - 「10万円(所得金額の5%)」
この金額は、年間の総所得金額が200万円未満の場合に所得金額の5%、総所得金額が200万円以上の場合には10万円になります。
医療費控除を申請するといくら返ってくる?
確定申告で医療費控除を申請しても、医療費控除の金額がそのまま戻ってくるわけではありません。医療費控除額は、所得税の計算時に所得額から差し引かれる金額です。所得税額は所得額から控除額を差し引いた「課税所得金額」に税率を掛けて計算します。医療費控除額を申請した場合、「医療費控除額に所得税率を掛けた金額」が戻ります。
医療費控除で返ってくる金額の計算例を以下に紹介します
【計算例】
所得額400万円、インプラントの治療費用40万円、保険金は受給していないケース
・医療費控除額=40万円-0円-10万円=30万円
医療費控除額に、所得額400万円の場合の所得税率20%を掛けて、所得税の還付金額を計算します。
・還付金額=30万円×20%=6万円
上記の条件で医療費控除額30万円を計上すると、所得税が6万円返ってきます。
所得額400万円、インプラントの治療費用40万円、保険金は受給していないケース
・医療費控除額=40万円-0円-10万円=30万円
医療費控除額に、所得額400万円の場合の所得税率20%を掛けて、所得税の還付金額を計算します。
・還付金額=30万円×20%=6万円
上記の条件で医療費控除額30万円を計上すると、所得税が6万円返ってきます。
医療費控除の申請方法
高額の医療費が発生した場合には、医療費控除の対象となるかどうかを確認して、控除額や還付金額を計算します。医療費控除を受けられることが確認できたら、確定申告の時期に確定申告書と医療費控除の明細書を作成して税務署に提出すると申請できます。
確定申告後、控除の適用を受けたら1~1.5か月後に税金が還付されます。還付金は、銀行への振り込みもしくはゆうちょ銀行・郵便局の窓口受け取りを指定することが可能です。
確定申告で必要な書類
確定申告で医療費控除を申請する際には、下記を準備して書類を作成し税務署に提出します。
- 「確定申告書」
- 「医療費控除の明細書」
- 「源泉徴収票(提出は不要)」
- 「医療費通知」
1.確定申告書
2021年分の確定申告までは「確定申告書A」「確定申告書B」を作成して提出します。2022年分からは、「令和 年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告書A」に必要事項を記載して作成し、確定申告の期間内に税務署へ提出します。
2.医療費控除の明細書
医療費控除の明細書は、税務署や国税庁の公式サイトからダウンロードして作成可能です。1年分の医療費の領収書を基に、医療費控除の明細書を作成します。2017年分の確定申告からは、医療費控除の申請時に医療費の領収書を添付する必要がなくなりましたが、あとで確認が必要になるケースもあるため、領収書は自宅で5年間保存しなければなりません。
3.源泉徴収票(提出は不要)
勤務先で年末調整を行った会社員の場合、源泉徴収票の準備も必要です。勤務先からもらえる源泉徴収票の内容を基に、確定申告書を作成します。
4.医療費通知
加入している健康保険組合などの保険者から受け取る書類が「医療通知書(医療費のお知らせ)」です。保険の加入者や扶養家族が医療機関にかかった際の請求を基に、窓口負担の金額を計算したものが送付されます。
医療費通知は、定められた以下の6項目の記載がある場合には医療費控除の添付書類として使えます。医療費通知を添付すると、明細書の記載を簡略化することが可能です。
【添付書類に必要な6項目】
- 被保険者の氏名
- 療養を受けた年月
- 療養を受けた者
- 療養を受けた病院・診療所・薬局の名称
- 被保険者等が支払った医消費の額
- 保険者等の名称
確定申告を行う3つの方法
確定申告の方法には、下記の3つの方法があります。
- e-TAX
- 窓口での提出
- 郵送での提出
それぞれ特長やメリット・デメリットがあり、自分に適した方法を選べます。
e-TAX
e-TAXは、PCやスマートフォンから行う方法です。自宅からでもインターネット環境があれば申告可能で、書類の印刷や郵送などの手間もなく、確定申告期間中は24時間提出ができるメリットがあります。ほかの方法と比べて還付金を早く受け取れるのもメリットです。申告方法には「マイナンバー方式」と「ID・パスワード方式」があります。
「マイナンバーカード方式」では、カードの読み取りに対応したスマートフォンやICカードリーダライタを使います。
「ID・パスワード方式」では、事前に税務署にe-TAX開始届出書を提出してID・パスワードを受領しておくなどの準備が必要です。
e-TAXは、2023年2~3月に一時的にエラーが発生して連携ができなかった地域もあるため、トラブルも考慮し余裕をもって行うのが安心です。
窓口での提出
確定申告書は、手書きや、国税庁のサイト「確定申告書作成コーナー」を利用する方法で作成が可能です。税務署の窓口では、原則2月16日~3月15日の平日に確定申告書の提出を受け付けています。窓口提出では、相談コーナーや申告相談会場が設けられているため、不明点をその場で確認でき、確実に提出できるメリットがあります。ただし、税務署が混雑しやすい点には注意が必要です。
郵送での提出
確定申告書を作成後、郵便で提出する方法もあります。郵送での提出は3月15日の消印有効で、混雑する税務署に行く必要がなく、書類をポストや郵便局に出すだけで提出が可能です。ただし、書類に不備があった場合には、還付金の受け取りが遅れるおそれがあります。また確定申告書は宅配便ではなく郵便または信書便で送らなければなりません。
インプラントの高額な治療費は医療費控除で利用がおすすめ
インプラントは、安定して固定できる人工の義歯ですが、自由診療のため負担も気になります。インプラントにかかった費用は、申請すると医療費の一部が戻る医療費控除を受けられます。年末調整ではなく確定申告で医療費控除の申請を行うと所得税が還付されるため、その年にかかった医療費の一部が戻ってきます。条件を満たせば申請できるため、忘れずに利用することをおすすめします。