皆さんは歯科医院に通院した際、診療明細書を確認しているでしょうか。診療明細書を確認し、どのような治療にいくらかかっているか把握している人は少ないかもしれません。今回は、歯科診療報酬の基本情報や診療明細書を確認することのメリットを紹介します。
診療報酬とは?
日本では、全国民が加入を義務付けられている公的医療保険制度があります。この制度により、医療費の一部を国などの機関が負担する仕組みになっています。そのため、私たちは保険証やマイナンバーカードを提示し、残りの一部を負担するだけで必要な医療を受けられます。この医療行為を行う医療機関に対して支払われる対価が「診療報酬」です。 患者が負担する医療費の割合は、年齢や所得に応じて変わりますが、かかった医療費の3割が原則となります。
診療報酬は大まかに、医師の診察や手術などの技術料と、診療に伴い必要となる薬剤や治療材料などの料金に分けられています。さらに技術料は「医科」「歯科」「調剤」の3つに分類されています。これらのうち、厚生労働省が定めた医療行為や薬剤が保険診療の対象になり、それぞれに定められた点数の合計値に「1点=10円」として計算された金額が、保険診療の対象金額になります。
ただし、厚生労働省が認めていない治療や薬を使用した場合は自由診療(保険適用外)となります。この場合医療保険制度の適用外となり、実施される医療行為への報酬は患者が全額負担しなくてはなりません。時折「医療保険制度を使用せずに治療」という言葉を聞くかもしれませんが、これは医療保険制度の適用外であり全額自己負担という意味になります。
診療明細書とは?
診療明細書とは、患者が受けた診療について、医療機関が保険者に請求する医療費の明細書のことです。診療明細書には診療報酬制度で決められた治療や検査の内容とそれにかかった医療費の点数で記載されます。診療報酬1点=10円で、10円未満は四捨五入で計算されています。それぞれの治療費は、診療明細書の各項目に記載されている診療報酬点数を10倍にすれば算出できます。
診療明細書で注意すること
診療明細書には、自由診療や歯科医院で販売している物品など、保険適用外の治療内容は記載されません。確認したいときには、領収書の「保険適用外」や「保険外診療」の項目を確認しましょう。
算定する条件に、期間が設定されている項目もあります。例えば、状況により異なりますが、基本的に通院期間が4か月以上空くと継続した治療とみなされないことがあります。再診ではなく初診扱いとなり、初めから診察のやり直しになるため診察料が上がってしまいます。例えば、むし歯の治療中に仕事が理由で数か月来院できなかった場合など、患者が任意で来院期間をあけた場合は初診扱いとなることがあります。逆に期間があいても再診となる例は、慢性疾患の治療とみなされる場合や医師の指示によって期間が空いた場合などです。
算定する条件に、期間が設定されている項目もあります。例えば、状況により異なりますが、基本的に通院期間が4か月以上空くと継続した治療とみなされないことがあります。再診ではなく初診扱いとなり、初めから診察のやり直しになるため診察料が上がってしまいます。例えば、むし歯の治療中に仕事が理由で数か月来院できなかった場合など、患者が任意で来院期間をあけた場合は初診扱いとなることがあります。逆に期間があいても再診となる例は、慢性疾患の治療とみなされる場合や医師の指示によって期間が空いた場合などです。
診療明細書の見方
診療明細書を見ると、詳しい治療内容や投薬の種類、各医療行為にいくらかかっているのかを確認できます。以下、診療明細書の項目について解説します。
治療内容の詳細を知りたい時
ここでは、自分の受けた治療内容を知りたいときに確認すべき診療明細書の項目を解説します。
区分
初診・再診、検査、投薬など保険適用の区分が明記されます。医療機関での診察が初めてか再来か、処方箋が出されたかなどが確認できます。初診と再診で診察料が変わりますので、久しぶりに通院した際に金額が変わったと感じるときに確認してみましょう。
名称
各区分の具体的な検査名や薬の名称などが記載されます。別の医療機関などで診察を受ける場合には、診療明細書を持参することで過去の検査や処方箋などの治療内容の記録として伝えることができます。
回数/日数
診療行為の回数と、入院した際の日数が記載されます。例えば、1回の治療で3本のむし歯治療を行った場合は「3」となります。
治療ごとにいくらかかっているか知りたい時
・点数/金額
厚生労働省が定めた診療行為の点数が記載されます。それぞれの診療や薬にいくらかかったのかを確認できます。前述したとおり、1点=10円で計算されます。
厚生労働省が定めた診療行為の点数が記載されます。それぞれの診療や薬にいくらかかったのかを確認できます。前述したとおり、1点=10円で計算されます。
患者が診療明細書を確認する重要性とメリット
病院で治療を受けた時、領収書に記載された治療費の合計金額しか気にしていないという人も多いのではないでしょうか。診療明細書を確認することの重要性とメリットについて解説します。
治療内容の詳細を知る
診療明細書には診療内容が細かく記載されているため、自分自身や家族の治療内容を把握できます。治療内容がどのようなものなのかを知っておくことで、普段の生活で注意したり、仮に別の歯科医師の診療を受ける時でも適切なコミュニケーションができるようになるでしょう。
また、それぞれの治療にいくら費用がかかっているのかを知ることができます。意外と初診・再診料が医療費の大きな割合を占めていることにも気づくでしょう。医療機関を不必要に何度も変えたり、必要以上に通院したり、通院期間を自身の都合で長期間空けたりすることは、費用面でも治療面でも良くない場合があります。
また、それぞれの治療にいくら費用がかかっているのかを知ることができます。意外と初診・再診料が医療費の大きな割合を占めていることにも気づくでしょう。医療機関を不必要に何度も変えたり、必要以上に通院したり、通院期間を自身の都合で長期間空けたりすることは、費用面でも治療面でも良くない場合があります。
患者自身が医療内容に納得して治療に臨むことができる
医療を受ける患者自身でも関心をもつことが大切です。診療明細書から診療や投薬の内容がわかります。あとから見て、処方箋がなぜこの量になるのか、何のために必要な検査だったのかなどの疑問があれば医師に確認しましょう。診療明細書を確認し、治療内容に納得することで安心して治療を受けられるようにしましょう。
万一の時、明細書で過去の治療を確認できる
診療明細書があれば、外来や入院時に投与された医薬品の記録、過去に受けた治療や投薬を確認できます。例えば、医薬品の新たな副作用情報が発表された場合に、自分が該当するのかを振り返ることができます。
最新の歯科診療報酬改定情報
診療報酬の点数は、2年ごとに改定されます。2024年に歯科診療報酬が改定されました。改定されたポイントの多くは医療機関側が把握しておくべきことですが、患者の立場からも知っておくべきことがあります。医療事情の変化や治療費がアップする背景を知っておくことも大切です。
今回の歯科診療報酬改定において、治療費に影響がある事例の一部を紹介します。
今回の歯科診療報酬改定において、治療費に影響がある事例の一部を紹介します。
基本診療料のアップ
歯科医院で診療を受ける時に必ず治療費に加算される、歯科初診料・再診料の点数が次の通り引き上げられています。
・歯科初診料
(旧)264点 →(新)267点
・歯科再診料
(旧)56点 →(新)58点
(旧)264点 →(新)267点
・歯科再診料
(旧)56点 →(新)58点
感染症対策関連の加算
近年の新型コロナウイルス情勢やその他感染症拡大を考慮し、国は新興感染症がいつ発生・蔓延しても対応可能な医療機関づくりを推奨して、点数が加算されます。条件として、感染症拡大防止に係る施設基準を満たしている必要があります。
・歯科外来診療医療安全対策加算1、2(2は地域歯科診療支援病院歯科初診料)
(新設) 1:+12点、2:+13点
(新設) 1:+12点、2:+13点
DX(デジタルトランスフォーメーション)関連加算
医療DXとは、最新のテクノロジーを活用することで業務プロセスや医療サービスを変革し、患者さんに新たな価値を提供したり、医療従事者の働く環境を改善したりすることです。今回の改定において、歯科業界のDXも注目されており、新たな加算項目となりました。
・医療DX推進体制整備加算 (歯科初診料・地域歯科診療支援病院歯科初診料)
(新設) +6点
(新設) +6点
詳しい内容については以下をご参照ください。
参考:令和6年度診療報酬改定の概要 (歯科)
参考:令和6年度診療報酬改定の概要 (歯科)
歯科治療を受けた時の医療費控除
歯科治療には医療控除の対象になるものと、対象外のものがあることを押さえておきましょう。
医療控除とは?
1年間で支払った医療費が10万円を超えた場合、確定申告の際に医療費控除申請をすることで支払った金額の一部が戻ってきます。医療費控除の対象・期間は以下の通りです。対象者は本人と扶養に入っている家族です。
歯科治療で医療費控除ができるもの
保険適用で受ける歯科治療だけでなく、自由診療で受けた治療費や通院時の交通費も請求できます。ただし、自費で負担した費用のすべてが医療費控除の対象になるわけではありません。
医療費控除の対象となるのは、具体的には以下の費用になります。
- インプラントの治療費
- 自費の詰め物や被せ物の費用(セラミックなど)
- 歯列矯正(美容目的以外)
- 自費による入れ歯
- 抜歯・歯周外科・根管治療を自費で行った時の費用
- 歯科医院に通うための交通費(※自家用車のガソリン代・駐車費用は対象外)
上記の治療が医療費控除の対象となる理由は、「治療」を目的とした医療行為だからです。例えば、子どもの歯列矯正は対象ですが、大人の歯列矯正は美容目的とみなされ対象外となります。ただし、噛み合わせが原因で咀嚼がうまくできない、発音に支障がある、などの生活上に支障がある場合は対象となります。
医療費控除を受けるためにやるべきこと
医療費控除を受けるには医療費控除申請を行う必要があります。治療の領収書を保管しておくことはもちろん、公共交通機関などを利用して交通費がかかった場合は、日時・病院名・金額・理由を控えておきましょう。医療費の領収書は確定申告期限等から5年間保管しておかなければなりません。また、医療費控除申請は翌年の1月1日から5年以内であれば、あとからでも還付申告できます。
医療費控除申請はe-Taxとマイナンバーカードを使うのがおすすめです。郵送での申告の場合に必要な書類が省略でき、ネットのみで簡潔することができます。書類の不備がなければ還付金の振込が3週間程度とスピーディに行われるなどのメリットがあります。マイナンバーに記録された情報は、保険適用のみであるため、自由診療や交通費は自身で入力する必要があることに注意しましょう。
医療費控除申請はe-Taxとマイナンバーカードを使うのがおすすめです。郵送での申告の場合に必要な書類が省略でき、ネットのみで簡潔することができます。書類の不備がなければ還付金の振込が3週間程度とスピーディに行われるなどのメリットがあります。マイナンバーに記録された情報は、保険適用のみであるため、自由診療や交通費は自身で入力する必要があることに注意しましょう。
まとめ:自身が受ける治療に関心をもつことが大切です!
診療報酬の基本情報と診療明細書を確認するメリットについて解説してきました。診療報酬について理解しておくことで、自分自身や家族の診療内容についても把握し、どんな治療を受けているのか、何にどれだけ費用がかかっているのかの疑問や不安解消にもつながります。また、将来何かあった時に、診療明細書の存在が役に立つことがあるかもしれません。ただ診療を受けるだけでなく、自分が受ける診療内容に関心をもち理解することは、将来の自分自身や家族が治療を受ける時にも役に立つでしょう。