「自然にむし歯が痛くなくなった」治ったと油断してはいけません

「自然にむし歯が痛くなくなった」治ったと油断してはいけません

この記事では、「自然にむし歯が痛くなくなった」ことについて、油断できない理由と痛みが無くなる原因について解説しています。

               
歯が痛み、むし歯かと憂鬱になっていたら、何もしていないのに痛みが消えていた。そんな経験をしたことのある方もいるのではないでしょうか。一見、むし歯が治ったと喜びたい状況ですが、実は進行していることもあるので、油断は禁物です。本記事では、むし歯の痛みがなくなる原因と、痛みが消えても歯科医院に行かなければいけない理由について解説します。

「自然にむし歯が痛くなくなった」治ったから?

まず前提として、「むし歯の痛みが消えた=むし歯が治った」ではないことです。
そもそも、痛みが出ているむし歯が自然治癒することはありません。

歯の痛みが消えた理由はむし歯が治ったからではなく、その他の理由によります。詳しくは後述しますが、その主な理由として「むし歯が進行して、神経を死滅させた」ということが考えられます。

むし歯の痛みが消えたからといって安心して放置していると、その陰でどんどんむし歯が進行してしまい、さらに深刻な状態になるため早めに治療する必要があります。

むし歯の痛みが急になくなった理由

むし歯が治ったのではないのだとしたら、なぜ痛みが急に消えてしまったのでしょうか。それは、痛みが一時的に治まっている、もしくは、むし歯の症状が深刻な状態になっていることが考えられます。痛みが消えた理由について解説します。

神経の死滅

むし歯の痛みが消えたときにまず警戒すべきなのが、神経が死滅してしまったケースです。むし歯が歯の深い部分、特に歯髄(歯の神経や血管が含まれる部分)まで進行すると、はじめに歯髄の炎症が起こります。むし歯に際して激しい痛みが発生するのはまさにこの炎症です。

しかし、むし歯がさらに進行し続けて神経が完全に死滅すると、痛みさえ感じられなくなってしまいます。つまり、「むし歯の痛みがなくなる」裏側には、むし歯が治ったどころか、非常に深刻な事態が隠れています。神経が死滅した後も、むし歯菌はさらに骨へと広がっていき、最終的には根管治療(神経を取る治療)や抜歯が必要になる場合も多いです。そのため、少しでも痛みを感じるのであれば、治療を受けましょう。

痛みを感じにくくなった

むし歯による痛みは初期段階だと軽く感じられることが多いですが、放置することで徐々に悪化し、非常に強い痛みへと変わっていきます。しかし、長期間痛みを感じ続けていると、人体がその痛みに慣れてしまうことがあります。ただし、これは単に「痛みに鈍くなった」だけのことで、むし歯自体が治ったわけではありません。

体調が回復した

歯の痛みは、体調やストレスによっても左右されます。日常生活においてストレスを多く感じていると、体の免疫力が低下し、ちょっとしたことで炎症を起こしやすくなります。その影響で、本来は気づきにくい歯ぐきの腫れや歯の痛みが強く表層に出てくることがあります。つまり、体調不良やストレスが原因で免疫機能が低下している間は、むし歯の痛みも強く感じられることが多くなります。

そのため、体調不良が解消されると、それに伴って、これまで強く出ていた痛みも軽減されることがあります。しかし、この場合も、体調の回復によって炎症が落ち着き痛みが和らいだだけのことであって、むし歯自体が治ったわけではありません。

むし歯を放置することで起こる6つの症状

上記のように、痛みが消えたことはむし歯の回復を意味していません。したがって、痛みが一時的に消えたからといって放置していると、後になってさらに深刻化し、次のような症状が出るおそれがあります。

1.痛みが強くなる

むし歯が初期から中等度に移行したばかりの段階であれば、痛みがそれほど気にならないことも多いため、一時的に痛みが消える場合もあります。とはいえ、この状態が永遠に続くわけではありません。痛みを生じたむし歯が自然に治ることはなく、放置すればするほど症状が悪化していくからです。むし歯が進行するにつれて、歯の表面は溶けていき、最終的には神経が露出してしまうこともあります。この段階に達すると、これまで以上に強い痛みが常に生じるので、むし歯は軽い痛みのうちに早期治療するのが重要です。

2.歯を失うおそれがある

むし歯が神経にまで達したことによる強い痛みも、次第に感じなくなることがあります。しかし、先述のように、これはむし歯が神経まで死滅させてしまったからかもしれません。神経を死滅させるほどむし歯が進行した段階では、すでに歯はボロボロです。歯の表面を削るだけでは治療できず、根管治療や、最悪の場合は抜歯が必要になることもあります。抜いた歯の再生はできないので、抜歯後は入れ歯やブリッジ、インプラントなどの処置が必要です。

歯を失うことは、かみ合わせや歯並びの悪化、噛めないために生じる消化不良など、数多くの問題を生じさせます。

3.進行するほど治療が困難になる

上記からもわかるように、むし歯を放置していると、症状がどんどん重篤化し、治療が困難になっていきます。中等度のむし歯は、歯の表面を少し削るだけの処置で済むことが多く、1日の通院で終わることもあります。しかし、むし歯が進行し重篤な状態になると、神経や歯根への治療も必要になります。さらにむし歯が進行すると、治療ができず抜歯することにもなります。

4.周辺の歯にも悪い影響を与える

むし歯を放置すると、その周辺の歯もむし歯になってしまいます。なぜなら、むし歯菌が生みだす酸は、周辺の歯にもダメージを与えるからです。また、一本であろうとむし歯が存在するということは、口内の自然治癒力よりむし歯菌が強いことを意味しているので、口内全体が危険な状態であると捉えられます。

さらに、歯ぎしりのせいで歯間に傷ができて細菌が侵入しやすいなど、むし歯ができた原因はほかの歯にも共通して働いているおそれがあります。そのため、歯が痛いと感じたら、早めに歯科医院を受診しましょう。

5.副鼻腔炎・骨髄炎になる

進行したむし歯が、口内だけでなく、顎や鼻などの周辺組織に悪影響を与えるリスクにも注意が必要です。たとえば、上の奥歯の根本は、副鼻腔の一部である上顎洞(じょうがくどう)につながっています。奥歯で進行したむし歯は、この上顎洞にまで細菌を広げてしまうことがあり、これが副鼻腔炎や骨髄炎を引き起こすことがあります。

副鼻腔炎の主症状は、鼻詰まりや顔の痛み、頭痛などです。また、骨髄炎にかかると、顎や頬に激しい痛みと腫れが発生します。骨髄炎の治療には、外科手術を行う場合もあり、長期の治療が必要です。

6.心筋梗塞や脳梗塞になる

むし歯による影響はさらに広く、全身に及ぶというおそれもあります。たとえば、むし歯菌が血液に侵入すると、それが血管から全身を巡って心筋梗塞や脳梗塞、肺炎など、一見むし歯とは関係がなさそうな病気を引き起こすことがあります。

国立循環器病研究センターが調査によると、歯垢中からむし歯菌が検出される患者は、そうでない患者に比べて微小脳出血の発生率が4.7倍も高かったそうです。微小脳出血になると、将来脳梗塞を発症するリスクが高くなると言われており、むし歯と全身の健康が密接に関連していることを示しています。

むし歯の痛みがなくなっても歯科医院での治療が必要

ここまで解説してきたように、むし歯の痛みがなくなったとしても、そのむし歯が治ったわけではありません。痛みがあるむし歯が自然に治ることはないため、放置すればするほど症状は深刻化し、後になってさらに酷い痛みが生じたり、治療が難航したりします。

したがって、痛みがなくなったからといってそのまま放置せず、早めに歯科医院で診療してもらいましょう。歯科医院に苦手意識がある方もいるかもしれませんが、早いほどむし歯の治療期間は短く、楽になります。

歯の痛みの原因はむし歯ではなかった

そもそも、歯の痛みがむし歯によるものではなかったというケースもあります。そこで以下では、むし歯以外で歯の痛みを起こす主な原因を解説します。

なお、痛みが体の異常を示すサインであることは、むし歯であろうとなかろうと変わりません。そのため、「むし歯ではないかも」と問題を先送りせず原因の特定や治療のために歯科医院やその他の病院を受診することを怠らないようにしてください。

非歯原性歯痛

非歯原性歯痛とは、歯や歯周組織に明らかな問題がないにもかかわらず、歯に痛みを感じる状態です。この種の痛みの原因は多岐にわたり、筋肉の痛み、神経障害性疼痛、神経血管性頭痛、上顎洞疾患などが挙げられます。非歯原性歯痛の診断と治療のためには、耳鼻咽喉科や神経科など、複数の医療機関での受診が必要になることがあります。

歯周病

歯周病とは、歯ぐきに発生した炎症を指します。歯周病は放置すると、歯を支える骨にまで炎症が広がってしまう病気です。歯周病になると、歯ぐきが下がって歯の根元が露出してしまうため、刺激によって歯が痛むことがあります。歯周病によって歯ぐきが下がると完全に元の状態に戻すことはできません。

知覚過敏

知覚過敏は、象牙質が露出してしまい、ちょっとした刺激にも痛みを感じてしまう症状です。冷たい飲食物を摂取したときに特に痛みやすいですが、風に当たっただけで痛んでしまうこともあります。

知覚過敏は再石灰化によって症状が緩和することがあります。再石灰化とは、唾液中のカルシウムやリン酸が歯の表面に再び結合し、脱灰によって失われたミネラルを補填する現象です。脱灰とは簡単に言うと、歯のエナメル質が溶けてしまう現象を指します。口内では、この脱灰と再石灰化のサイクルが繰り返されていますが、再石灰化の効果が脱灰を上回ると、知覚過敏が改善されることがあります。逆に脱灰が早く進むようになると、知覚過敏も再発してしまうこともあります。

まとめ:歯の痛みがなくなってもむし歯は治っていない

歯の痛みが消えても、むし歯が治ったわけではありません。そのため、痛みがなくなったからといって歯科医院へ行かずに放置していると、さらにむし歯が進行してしまいます。むし歯の痛みが消えたとしても、早めに歯科医院で診てもらい、早期治療に努めましょう。

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