むし歯だらけ...治療費はいくらかかる?目安とすぐに払えない時の対処法

むし歯だらけ...治療費はいくらかかる?目安とすぐに払えない時の対処法

(2024年3月23日更新)
むし歯の治療費用には幅があり、歯の状態によって必要な治療方法が変わります。予想よりも費用がかからずに終わればよいですが、予想以上の金額になってしまう場合もあります。むし歯の治療費用の目安はどのくらいなのか、もし費用をすぐに用意できない時にはどうすればよいのかなどについて詳しくご紹介します。

               

むし歯治療費用の目安について

むし歯の治療費用は自費診療と保険診療で異なります。全ての歯科医院で初診時には「初診料」が発生します。初診時やむし歯の治療にかかる費用は、健康保険に加入しているか、それが適用される治療内容かで変わります。ここでは、初診時にかかる費用とむし歯治療の全体的な費用について解説します。

初診時にかかる費用

初診時にかかる費用の相場は、保険診療で3割負担の場合、約4,000円が一般的な金額です。ただし、歯科医院や治療内容によって異なる場合もあるため、あくまで目安としての金額になります。不安な場合は少し多めに用意するか、来院前に歯科医院へ確認すると安心です。
<保険診療と点数計算>
保険診療では、診療行為ごとに所定の点数が割り振られています。この点数に基づいて医療費が計算されています。点数は1点=10円になっています。1,000点であれば10,000円に相当します。このうち、70歳以上の高齢者や6歳未満の未就学児を除く一般の方は3割が自己負担になるため、3,000円が医療機関に支払う金額になります。
初診時の費用内訳は以下の通りです。
まず、初診料は保険点数にすると267点です。この他にも、治療について説明する「歯科疾患管理料」が100点、歯ぐきの検査費用にあたる「歯周基本検査」が50~200点、むし歯や歯周病予防に関する「歯科衛生実地指導」が80点、歯石除去にあたる「スケーリング」が最大262点です。その他に「レントゲン撮影」402点を実施することもあります。
歯周基本検査とスケーリングの点数を最大、レントゲン撮影も行ったとして合計すると「1,311点」です。点数は1点=10円に換算されるため、金額に直すと1万3,080円になります。ここから負担割合を3割で算出すると3,933円になります。
一方で保険証を持っていない、保険に未加入であるという場合は10割負担です。つまり1万3,080円をすべて支払うことになります。
<初診時にかかる項目>
  • 初診料…267点
  • 歯周基本検査…50~200点
  • 歯科疾患管理料…100点
  • 歯科衛生実施始動…80点
  • スケーリング…最大262点
  • レントゲン撮影(パノラマ)…402点
※令和6年度診療報酬改定にて、初診料が264点→267点に改訂されます。

むし歯1本あたりの治療費

むし歯1本の治療費も、自費診療と保険診療では異なります。保険診療では、保険適用の対象となる医療行為の範囲や方法が定められているため、その範囲内で治療を行います。自費診療になると、保険適用範囲の制限がなく治療法や素材を用いることができるため、治療選択の幅が広がります。より適した治療を選択できるというメリットがある反面で、全額自己負担になるため、保険診療よりも高額になることが多いです。むし歯の治療では、特に使用する素材によって費用が大きく変化します。

詰め物(インレー)の他、3割負担での保険診療でむし歯治療を行えば、費用は約1,000~10,000円になるのが一般的です。かなり幅がある金額ですが、むし歯の進行状況によってかかる費用が変わるため、大まかな目安としてご参考ください。
また、むし歯の治療に使う詰め物はさまざまな素材があります。保険適用内で治療を受ければ、選択できる素材は限定されますが、費用を抑えることができます。一方で、自費診療では、保険診療に比べて高額になります。比較的安価なメタル製で約4,000円、高価なセラミック製は約55,000円、ゴールド製なら約60,000~80,000円というケースが多いです。自費診療は、価格だけ見ると高額ですが、機能や見た目、耐久性など優れているため、自身の状況に適切なものを選ぶと良いでしょう。

2024年度最新情報:診療報酬改定について

診療報酬は2年ごとに見直しが行われており、2024年6月1日から歯科医療の診療報酬も改訂されます。改訂される一つとして、歯科に通院する全ての方が当てはまる初診料と再診料の点数が上がります。
初診料は264点が267点に改訂され、これまでの初診料に+30円上乗せとなる計算です。また、再診料は56点から58点に改訂され、+20円上乗せとなります。

今回の歯科における診療報酬改訂では、標準的な感染防止対策を日常的に実施する必要があることや医療機関の職員など賃金引き上げを実施する必要があることを理由に初再診料の見直しが行われました。

参考:令和6年度歯科診療報酬改定の主なポイント(厚生労働省)

【段階別】むし歯の治療費と通院回数の目安

むし歯の状態は5段階で分類されています。進行状態をチェックし、むし歯の一歩手前の状態を「C0」、初期を「C1」~重度の「C4」に分類して治療を進めていきます。むし歯が進行するほど治療も複雑になり、通院回数も増えるので、その分治療費も高くなります。

1. むし歯の一歩手前(CO)

「C0」は、むし歯の一歩手前の状態です。ほとんどの場合、歯を削る治療はせずにフッ素塗布やクリーニングを行い、定期観察になります。
保険診療(3割負担)では、フッ素塗布で約500円~約1,000円、クリーニングやブラッシング指導で約1,000円~約3,000円です。自費診療ではフッ素塗布が約1,600円~約3,000円、クリーニング・ブラッシング指導が約3,000円~約10,000円程度かかります。むし歯治療に関わる通院回数は1回で終わることが多いです。

2. エナメル質にとどまっているむし歯(C1)

「C1」はエナメル質に穴が空いている状態です。痛みを感じることはほとんどありません。この状態では、むし歯の部分を削り、白い樹脂(レジン)を詰める治療を行います。レジンは金属製の詰め物と違い、柔らかい状態で歯に詰めてから光で硬化させます。そのため、歯の削る部分を減らせることが多いです。
治療は1回で完了することが多いです。費用は保険診療(3割負担)で約1,500~約3,000円、自費診療で約5,000~約10,000円です。

3. 象牙質まで浸食しているむし歯(C2)

「C2」は象牙質まで侵食し、歯に穴が空いている状態です。冷たい飲食物、甘い飲食物を摂取すると痛みを感じるようになるため、ほとんどの方がこの時点でむし歯に気付きます。C1と比較するとかなり進行した状態です。治療ではむし歯になった部分を削り、削った部分にコンポジットレジン充填や銀歯などの詰め物を行います。
<詰め物の種類とそれぞれの性能や費用についてはこちらの記事で詳しく解説しています。>
歯の詰め物の種類は? 料金相場や選び方、取れたときの対処法やいつまでもつのかを解説
C2の治療回数は1~2回、費用は3割負担の保険診療で1本約1,500円~約3,000円(レジン)、あるいは約2,000~約4,000円(銀歯)です。自費診療では、セラミックなど保険適用外の素材を選択できるため、1本約30,000円~約50,000円です。使う素材よって価格も幅広くなります。

4. 神経まで到達しているむし歯(C3)

「C3」は歯の神経までむし歯が侵食している状態です。我慢できないほど強い痛みを感じます。できるだけ早めに治療する必要があります。行なわれる治療は、むし歯部分を削り歯根から神経を除去する「根管治療」(こんかんちりょう)です。その後に防腐剤を充填し、詰め物をします。
詰め物の種類は歯に空いた穴の大きさで変わりますが、保険適用のレジンや銀歯、自費診療のセラミックなどがあります。また、穴の大きさによっては土台が必要になり、その分の時間や費用も必要です。
治療回数は1本につき3~5回ほどかかります。費用は3割負担の保険診療で1本約7,000~20,000円です。自費診療の場合は、使う素材や歯科医院によって異なりますが、約50,000円~約150,000円と比較的高額なことが多いです。
<根管治療については、こちらの記事を参考にしてください>
歯の神経を抜く理由は? 歯痛の原因となる歯髄炎や治療の手順を解説【歯科医師監修】

5. 歯冠(しかん)が完全に蝕まれているむし歯(C4)

「C4」はむし歯の中で最も進行した段階です。歯が完全に崩壊した状態になっており、痛みも感じられない状態です。しかし、身体の免疫が落ちると腫れ上がり、激痛を伴うため早急な治療が必要です。
治療は2種類あり、歯の根を残せない場合は抜歯が選択されます。残せる場合は土台を作り、被せ物をします。
治療回数は1本につき5~6回です。費用は3割負担の保険診療で1本約7,000円~20,000円になります。自費診療は治療内容によりますが、約300,000円~約700,000円かかることが多いです。

むし歯の治療費用を保険適用にするメリット・デメリット

むし歯の治療は、状態によって自費診療と保険診療を選択することができます。保険適用内で治療を受ける
メリットやデメリットを把握し、自費診療と使い分けましょう。

メリット:費用負担が少ない

歯の治療は、予想以上に費用がかかることがあります。保険診療は治療費の3割以内の負担で済むため、自費診療と比べて金銭的な負担が少ないメリットがあります。
また、保険診療が適用される治療内容は決められているため、全国どこの歯科へ行っても同じ内容で治療を受けることができることもメリットです。

デメリット:最低限度の治療しか行えない

デメリットは、むし歯に対して最低限の治療しか受けられないことです。最低限の治療とは、「痛みを取る」「噛める状態にする」に重点が置かれ、国が決めた内容で治療が行われます。そのため、自費診療ほど幅広い選択肢がありません。
例えば、むし歯の治療では、噛める状態にするためにはレジンや銀歯の治療で十分です。しかし、見た目や耐久性に優れたセラミックなどを使用したい場合、これは最低限の治療ではなくなるため、自費診療となります。大きくは、医師の判断で行う治療なのか、患者が希望して行う治療なのかで判断することができます。
その視点から見ると、自費診療は確かに高額になりますが、患者本人の希望にあったより良い治療をかなえるという点は保険診療にないメリットです。症状や予後を考えて自身の希望に合った治療法であれば、医師とよく相談し自費診療で治療を受けるのも良いでしょう。

むし歯の治療費用がすぐに払えない場合の対処法

保険診療では、費用負担が3割となります。しかし、その時の状況ですぐに費用を用意できないことがあるかもしれません。そんな時には歯科医院への相談や公的制度を使うと良いです。

あらかじめ歯科医院へデンタルローンやクレジットカード決済を相談しておく

すぐに支払えない事情がある時には、先に歯科医院で相談してみましょう。デンタルローンやクレジットカード決済などの支払い方法が用意されている歯科医院も増えています。
デンタルローンの注意点として、医療費の全てが借り入れの対象となるわけではないため、気を付けてください。一般的には、矯正やインプラント治療などの自費診療が対象となります。また、ローンを提供する金融機関や信販会社の審査が必要になるため、個人の状況によっては使えない可能性もあります。
<デンタルローンについては、こちらの記事を参考にしてください>
歯科治療にローンが組める? デンタルローンの種類や金利、審査の流れを解説

医療費控除の申請をする

むし歯の治療費用は医療費控除の対象です。自分自身だけではなく、家族の医療費が年間で100,000円を超えれば、確定申告で医療費控除が受けられます。
控除額の計算方法は以下になります。
「医療費の支払い合計額」-(あれば)医療保険受け取り額-100,000円=控除額
なお、所得が2,000,000円未満であれば、100,000円ではなく総所得金額の5%を差し引きます。

むし歯治療の費用を抑えるには、予防と早期治療が効果的!

むし歯の治療は腫れや痛みなど健康上の問題もありますが、進行するほどむし歯治療の費用が高額になります。健康を維持できるように予防につとめ、定期的に歯科医院で健診を受けましょう。むし歯ができても早期に治療することができるため、治療費用を抑えるのにも有効です。もし費用が心配なら、事前に歯科に相談してみたり、公的制度を使ったりすることをおすすめします。

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