歯周病は検査が重要!
歯周病の初期は痛みや腫れなど「明らかにいつもと違う」といったわかりやすい症状がなく、徐々に進行するため気づきにくい疾患です。そのため、ご自身では早期発見が難しく、自覚症状が現れたときには歯周病が進行した状態です。最悪の場合、歯が抜け落ちてしまうケースもあります。そのため、歯科医院で定期的に検査をしてもらい、早い段階で歯周病を発見することが大切です。
歯周病の症状
歯周病とは、細菌の感染によって歯の周りの歯ぐき(歯肉)が炎症を起こしたり、歯を支える骨が溶けたりする病気です。炎症によって産生される毒性物質が歯ぐきの血管から全身に入り、糖尿病や動脈硬化などを悪化させる原因になることもあります。そのため、定期的な歯科健診による早期発見が推奨されています。
歯周病の一般的な症状は下記のとおりです。
- 歯磨きのときに歯ぐきから出血がある
- 歯ぐきが腫れている
- 力を加えると歯がグラグラする
- 力を加えると歯ぐきから膿が出る
もしこのような症状がある場合は、すでに歯周病が進行しているおそれがあるため、歯科医院で検査することをおすすめします。
歯周病の進行段階
歯周病の進行を4段階で表すと、下記のようになります。
歯肉炎
歯ぐきに炎症が起きている状態を歯肉炎と言います。歯ぐきが赤く腫れ、歯磨きなどで出血をすることがあります。
歯周炎(軽度)
歯肉炎がさらに進行し、歯槽骨(歯を支えている骨)が徐々に破壊され始めます。歯と歯ぐきの境目にある溝が深くなり、歯周ポケットと呼ばれる状態になります。軽度の歯肉炎では、痛みを感じることはほとんどありません。
歯周炎(中等度)
この段階まで進行すると、炎症が歯の根に向かって拡大します。歯槽骨の半分ほど破壊され、歯がグラグラし始めます。さらに、進行に伴い、歯周病菌による口臭も発生します。
歯周炎(重度)
歯周炎が重度になると、歯槽骨のほとんどが破壊された状態になります。歯ぐきも下がっているため、歯根も露出しています。この状態が続くと、歯が抜けてしまうこともあります。この段階のことを、歯槽膿漏と呼ぶこともあります。
上記のとおり、自覚症状がはっきり現れるのは4段階のうち3段階目、4段階目のあたりとなります。早期発見のためには歯科医院での検査がとても重要です。
<歯周病についてこちらの記事でまとめています。>
歯周病を調べる5つの検査方法と検査項目
歯科医院での診療には保険診療と自費診療の2種類があり、保険診療であれば比較的安価に受けられます。保険診療で受けられる一般的な歯周病検査は、プロービング検査・歯の動揺度検査・レントゲン検査・プラーク付着率検査の4つです。他にも痛みがなく手軽に行える検査もあるのであわせてご紹介します。
1. プロービング検査
プロービング検査とは、歯と歯ぐきの境目にある溝(歯肉溝)にプローブと呼ばれる器具を差し込み、深さを測る検査です。溝の深さを測ることで、歯周病の進行状況や口の中の状態を検査することができます。
歯と歯ぐきの境目にある溝が、歯周病により深くなった状態を「歯周ポケット」と呼びます。
歯周病の治療により、歯周ポケットの深さが改善されれば問題ありません。しかし、重度の歯周炎まで進んでいた場合、基本的な治療では改善できず、外科手術をして歯周ポケットを浅くすることもあります。
プロービング検査でわかることは、下記の3点です。
歯周病の進行度がわかる
歯周病がどれほど進んでいるかは、歯周ポケットの深さによってわかります。進行段階ごとの歯周ポケットの深さは下記のとおりです。
- 健康なときは、歯周ポケットの深さは0.5~2 mm程度です。
- 歯周炎(軽度)の段階では、歯周ポケットの深さは3~5 mm程度です。歯の周りの歯ぐきだけでなく、歯槽骨まで炎症が及んでいます。
- 歯周炎(中等度)では、歯周ポケットの深さは4~7 mm程度です。歯槽骨が破壊され始め、歯のぐらつきがある状態で、歯周ポケットの深さが4 mm以下の場合でも、歯槽骨の破壊具合によっては中等度と診断されることもあります。
- 歯周炎(重度)では、歯周ポケットの深さは6 mm以上です。歯槽骨の破壊がさらに進み、抜歯となることもあります。
歯周ポケット内の歯石の状態がわかる
プロービング検査では、歯の根が病気になっていないかどうかを確認したり、歯周ポケット内の歯石の有無を確認したりします。
歯石とは、プラーク(歯垢と呼ばれ、歯や歯周ポケットに付着した細菌の塊)が石のように硬くなったもので、歯磨きで取り除くことはできません。歯石の周り、にはプラークが集まりやすく、プラークにより細菌が繁殖し、歯周病を引き起こします。そのため、プロ―ピング検査で歯石の状態を確認することが歯周病治療につながります。
炎症の度合いがわかる
進行が進むにつれ、歯ぐきの炎症の度合いも変化していきます。プローブで刺激をした際、チクチクと痛みがある場合や出血がある場合は、炎症があります。炎症がなければ、プローブ検査の圧(25 g程度)では痛みを感じません。
2. 歯の動揺度検査
プロービング検査とあわせて、歯の動揺度(どの程度グラグラするか)も検査します。検査方法は、ピンセットで歯を1本1本つかみ動かして確認します。歯周病が進行していると、歯槽骨が破壊され歯が揺れるようになるため重要な検査です。
【歯の動揺度】
- 動揺度0度(=M0):正常。生理的動揺(0.2 mm以内)
- 動揺度1度(=M1):前後の一方向に動く
- 動揺度2度(=M2):前後左右に動く
- 動揺度3度(=M3):前後左右上下に動く
3. レントゲン検査
必要に応じてレントゲン検査も行い歯槽骨などの状態を確認します。
歯周病は、骨が吸収され溶けていく病気のため、歯槽骨の量や密度が少ないほど、病状が進行しています。歯槽骨は通常、歯ぐきに隠れているため、目視での確認ができません。詳細な歯槽骨の状態を知るためにはレントゲン検査が必要です。
歯周病は、骨が吸収され溶けていく病気のため、歯槽骨の量や密度が少ないほど、病状が進行しています。歯槽骨は通常、歯ぐきに隠れているため、目視での確認ができません。詳細な歯槽骨の状態を知るためにはレントゲン検査が必要です。
レントゲン検査には、デンタルX線写真とパノラマX線写真の2種類があります。
デンタルX線
デンタルX線は1枚の写真で3~4本の歯の撮影をして、歯や歯槽骨の状態が詳しくわかる撮影方法です。よって、すべての歯を調べるには10枚または14枚の写真撮影が必要になります。
パノラマX線
パノラマX線は1枚の写真で上下すべての歯、顎の骨、上顎洞、顎関節など、ピンポイントな歯の周辺だけでなく、口の周囲を全体的に調べることできます。
4. プラーク付着率検査
歯周病の原因となる細菌は、口内の食べかすなどを餌として増殖しプラークを形成します。そのため、口の中にどれくらいのプラークが付着しているか検査を行います。
検査する方法は、プラークがある部位を記録し、口内全体に対するプラークが付着している割合(%)を測定します。染色液を使って染め出してから、軽くうがいをすると、プラークがある部位が赤く染まります。1本の歯を4面とし、赤く染まった部位を肉眼で確認し記録をつけ、口全体で何%にプラークが付着しているか測定します。プラーク付着率検査は、炎症の改善のしやすさや治療後の歯周病再発リスクの指標となります。また、この染め出しの結果をもとに歯磨き指導も行われます。
5.唾液検査
唾液中に含まれる様々な成分を分析する検査です。唾液を採取するだけで検査ができるので、痛みなどがなく、受診者の負担が少ないことが特長です。
唾液による歯周病検査では、血液成分を測定して出血の有無を調べる検査や、歯周病菌を測定する検査、歯ぐきの炎症に伴う成分を調べる検査など、さまざまな検査があります。
これらの検査では歯周病の有無や病状は判定できませんが、現在の口内状態や歯周病のリスクを見る上で参考になります。
唾液による歯周病検査では、血液成分を測定して出血の有無を調べる検査や、歯周病菌を測定する検査、歯ぐきの炎症に伴う成分を調べる検査など、さまざまな検査があります。
これらの検査では歯周病の有無や病状は判定できませんが、現在の口内状態や歯周病のリスクを見る上で参考になります。
歯周病やむし歯、口内の清潔度に関わる指標をまとめて簡単に分析できる唾液検査「シルハ」についてはこちらでご紹介しています。
歯周病の検査は痛い?
歯周病の検査で痛みを感じることがあるのはプロービング検査です。プロービング検査では、プローブでチクチクと刺激を与えて検査をするため、炎症がある場合は痛みを感じる方もいます。健康な歯ぐきの方は、痛みはほとんど感じません。
歯周病検査の料金は約4,000円
歯周病検査は、基本的には保険診療内で受けられます。
残っている歯の本数により変動がありますが、初めて検査を受ける際は、約4,000円前後の費用がかかります。
残っている歯の本数により変動がありますが、初めて検査を受ける際は、約4,000円前後の費用がかかります。
また、検査の結果で歯周病と判断された場合は進行状態により通う回数や期間が変わるため、それにより別途費用がかかります。
【歯周病検査にかかる費用の目安】
・初診料
・基本検査=500円~2,000円 ※保険適用により3割負担
・精密検査=1,000円~4,000円 ※保険適用により3割負担
・レントゲン撮影代
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合計 おおよそ4,000円程度
・初診料
・基本検査=500円~2,000円 ※保険適用により3割負担
・精密検査=1,000円~4,000円 ※保険適用により3割負担
・レントゲン撮影代
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合計 おおよそ4,000円程度
歯周病と診断され治療が必要になった場合、基本治療であるプラーク除去が検査と同日に受けられない場合があります。同日に受けられないのは歯周病が重症の場合です。これは、歯周組織検査を口腔内消炎手術と同日に行った場合、診療報酬を算定できないというルールが厚生労働省によって定められているためです。
歯周病検査の頻度は?
歯科医院では「定期検診」があり、歯周病検査を受けられます。歯のクリーニングや歯磨き指導、フッ素塗布などに加え、歯ぐきのチェックや歯周ポケットの深さのチェックなども含まれます。
定期検診は3か月に1度ほどの頻度で通うとよいでしょう。定期検診を受けることで、検査による早期発見だけでなく、プロによる歯のクリーニングや歯石除去も受けられるため、歯周病予防にとても効果があります。
定期的な歯周病検査で状態をチェックしましょう
歯周病は初期では自覚症状がないため、そのまま重度になると、歯を失うおそれがあります。また、歯や歯ぐきだけでなく他の疾患を悪化させる原因にもなります。そのため、歯科医院で定期的に検査を受けることで、予防と早期発見につなげることができます。