唇がピクピクと痙攣する原因は? 治し方や症状を解説

唇がピクピクと痙攣する原因は? 治し方や症状を解説

(2023年12月26日公開)
唇がピクピクと痙攣(けいれん)し、日常生活に影響が出ているのなら早めに原因を突き止め、治療することが大切です。なぜなら、唇の痙攣は重大な病気の症状かもしれないからです。本記事では、唇がピクピクと痙攣する主な原因と治療法について解説します。

               

唇がピクピクと痙攣する症状と原因

唇がピクピクと痙攣していると「何か悪い病気なのでは…」と不安な気持ちを抱く方もいるでしょう。実は、唇は重大な病気でなくともピクピクと痙攣することがあります。まずは唇がピクピクと痙攣する主な原因について解説します。

ストレス・疲労

精神的ストレスや肉体的疲労は、体調をコントロールする自律神経の働きを低下させます。そして、慢性的な疲労や強いストレス状態が長く続くと、休んでもなかなか疲れがとれず、体にさまざまな悪影響を及ぼします。強いストレスや極度の疲労によって筋肉の動きが抑制されると血流が低下して痙攣を起こすことがあります。その結果、唇がピクピクと痙攣するといった症状を引き起こすことがあります。

なかには、上唇の痙攣が気になる、唇の痙攣が治らないことに不安を感じる、といったように唇の痙攣自体にさらに強いストレスを感じてしまい、症状が長引くケースもあります。

顔面の神経障害

顔面の神経障害が原因で唇が痙攣するケースもあります。顔には30種類以上の筋肉があり、脳からの指令が神経を通ってそれぞれの筋肉を動かすことで、複雑な表情をつくり出しています。
しかし、筋肉を動かす神経が脳の血管によって圧迫されると神経が刺激され、自分の意志とは関係なく顔面が痙攣を起こします。この痙攣のことを顔面痙攣と呼び、顔面痙攣が原因で唇がピクピクと痙攣することがあります。

顔面痙攣の代表的な症状は、目のあたりから痙攣がはじまって徐々に口元に広がる、顔が無意識に収縮するような感じがする、顔の片側のみがピクピクする、徐々に痙攣している時間が長くなる、などです。顔面痙攣はストレスや疲労、睡眠不足などで強い症状が出ることがあります。
また、顔面痙攣は神経の炎症や脳腫瘍が原因のこともあります。脳腫瘍が原因の場合、生命にかかわることもあるため、顔面痙攣が長く続いているときは早めに病院を受診してください。

また、カフェインやアルコールの過剰摂取、喫煙なども顔面痙攣のきっかけになります。健康面からも控えるのが望ましいです。たとえば、カフェインの場合、過剰摂取すると不眠や頭痛、めまい、震え、心拍数の増加、吐き気といったさまざまな健康被害をもたらすことがあります。

日本では具体的なカフェイン摂取量の目安を示していませんが、農林水産省では海外におけるカフェインの摂取量の目安などを紹介しています。一例を挙げると米国食品医薬品局(FDA)の場合、成人では1日あたり400mg(コーヒー4~5カップ程度)であれば、健康への危険な影響はないとしています。ただし、個人差があるため、痙攣の症状がある場合には、カフェインを控えましょう。

自律神経の失調

前述したように交感神経と副交感神経のバランスが崩れて自律神経が乱れると、唇がピクピクと痙攣することがあります。自律神経が乱れる原因は、ストレスや疲労に限ったものではありません。ほかにも不規則な生活、暴飲暴食、睡眠不足、更年期、甲状腺ホルモンの乱れなどで発症します。

たとえば、不規則な食生活や生活リズムを続けると、神経伝達物質の乱れや自律神経の不活性化を招き、唇がピクピクと痙攣することがあります。

ジストニア・ジスキネジア

ジストニアとは、からだの筋肉が異常に緊張することで引き起こされる、異常な運動や姿勢を指します。一方のジスキネジアは、自分では止められない不思議な動きの総称です。どちらも体のさまざまな部位で発症するのが特徴です。

ジストニアおよびジスキネジアの症状は、唇や舌、顎あたりにも出現します。具体的な症状としては、唇や舌、顎あたりが無意識に動く、ふるえる、筋肉が痛くなるなどです。
なお、ジストニアの場合、発症する部位によって呼び名が異なります。たとえば、唇、舌、顎であれば、「口顎ジストニア」や「局所性ジストニア」などと呼ばれます。

ジストニア、ジスキネジアともに発症の詳しい原因はわかっていませんが、脳機能や神経系の異常と考えられています。他にも薬の副作用でも症状が現れてくることがわかっています。また、口周りに症状の出るジストニアでは、ストレスを受けやすい環境下でよくしゃべる仕事(コールセンターや営業担当者など)に就いている方が発症しやすい傾向があります。

唇が痙攣するときの治し方

唇の痙攣は、水分補給や十分な休息、カフェインやアルコールを制限することで治ることがあります。それでも改善が見られないとき、早めに医療機関を受診しましょう。

水分を補給する

大量の汗をかくなどして脱水状態になると、筋肉が痙攣を引き起こし、それに伴い唇も痙攣することがあります。これは体内の水分とナトリウムやカリウムなどの電解質が体外へ排出されることで生じます。

このケースでは水分と電解質を一緒に補給することが大切です。おすすめは市販の経口補水液やスポーツドリンクです。これらの飲み物を十分に補給することで、筋肉の機能が正常化し、痙攣を緩和できます。なお、このような脱水症状は発汗だけでなく、嘔吐や下痢、利尿薬の使用などでも起こります。特に高齢者や乳幼児は自分で脱水症状に気づかないことが多いため、注意が必要です。

十分に休息をとる

ストレスや疲労が引き金となっているのなら、十分な休息をとりましょう。休息でストレスと疲労を取り除くことで、神経と筋肉が正常化し痙攣の緩和につながります。

十分に休息をとるには、睡眠の質を高めることが欠かせません。適度に運動をする、自分にあった寝具を使う、就寝直前に食事をとらない、入浴してからだをあたためるなどして、睡眠の質を高めましょう。

加えて日ごろからストレスをため込まない工夫も必要です。外で散歩やスポーツ、ショッピングなどをして気分転換する、仕事の愚痴などを誰かに聞いてもらう、リラックスできる趣味を見つけて没頭するなど、無理のない範囲でストレスを発散させましょう。ほかにもネガティブなことを考えすぎない、周りと比べない、オンオフをしっかり分ける、メンタルトレーニングをしてみるなど、ストレスと上手に向き合うことが大切です。

カフェインやアルコールを制限する

カフェインやアルコールを控えることで、神経の過度な興奮を抑制でき、顔面痙攣による唇の痙攣を緩和できます。コーヒーやアルコールをすぐに絶つのが難しい場合には、まずは飲む量を減らすところから始めると良いでしょう。また、ノンカフェインやカフェインレス、ノンアルコールの商品で代用するのもおすすめです。カフェインは、コーヒーやエナジードリンクだけでなく、抹茶やウーロン茶、チョコレートなど身近な食品にも含まれているため、カフェインを制限するときはこれらの飲食にも注意しましょう。

医療機関を受診する

健康的な生活を心がけているのにもかかわらず、唇の痙攣が一向に改善されない場合には医療機関の受診を検討しましょう。前述したように唇が痙攣する原因は様々です。その中には、神経の炎症や脳腫瘍が原因となっていることもあるため、よくなる気配がなければ早めに脳神経外科や神経内科を受診しておくと安心です。

唇の痙攣を病院で治療する方法

重度の唇の痙攣や顔面の神経障害がある場合には、病院での治療が必要です。主な治療法としては、筋肉注射、外科手術、薬の服用の3つがあります。

筋肉注射

顔面痙攣などで唇に痙攣が生じるケースでは、ボツリヌス毒という神経毒を痙攣している筋肉に注射して治療を行います。ボツリヌス毒には、筋肉を麻痺させる働きがあります。筋肉の収縮を抑制することで、顔面の痙攣を抑えます。比較的短時間で済むため、体への負担が少なく高齢者や全身麻酔が難しい方にも使われる治療法です。

ただし、根本治療ではないため、1回の注射で持続するのは3か月~4か月ほどです。時間がたつと症状が再発するおそれがあるため、繰り返し注射を行わなければなりません。また、再発と注射治療を重ねていくうちに、顔の表情をつくるのが難しくなることがあります。

外科手術

顔面の神経障害や重度の痙攣では、外科手術による治療を行うこともあります。

微小血管神経減圧術と呼ばれる手術では、全身麻酔をしたうえで耳の後ろを7~8cm切開し、神経を圧迫している原因を取り除きます。どれくらいの期間で症状の消失もしくは改善をするかは個人差があります。合併症として聴力低下、傷の感染、髄液漏れなどが生じることがあります。

脳腫瘍が原因で顔面神経を圧迫している場合には、放射線治療を行うこともあります。

薬の服用

脳神経外科などでは、カルバマゼピン、クロナゼパムなどの神経の興奮や伝達を抑える薬を用いて治療を行うこともあります。痙攣の緩和に効果が期待できる治療ですが、継続的な服用が求められます。
ふらつきや眠気、機能障害といった副作用を起こす場合もあります。

また、ストレスが原因とされる痙攣の場合には抑肝散という漢方薬を用いるケースもあります。抑肝散は肝臓機能の正常化と神経の興奮を抑え、痙攣の軽減効果が期待できます。漢方薬は自分に起きている症状を可能な限り詳しく説明し、そのうえで症状にあった漢方薬を処方してもらうのが基本です。医療用の漢方薬は健康保険が適用されているものが多いですが、処方によっては保険が適用できない場合があります。そのため、費用面で不安があるときは、事前に医師に相談しましょう。

まとめ 症状が続く場合は早めに医療機関を受診しましょう

唇が痙攣する原因はストレスや疲労、顔面の神経障害、自律神経の失調などです。水分補給や十分な休息、カフェイン・アルコールの制限などによって症状を緩和できることもあります。しかし、脳腫瘍や神経の炎症など、重大な病気が原因となっているおそれもあるため、症状が一向に改善しない場合には、脳神経外科や神経内科などの医療機関を受診しましょう。

近隣のクリニックを検索

関連記事

ピックアップ

医療機関の方へ

シルハは口腔環境6項目を簡単操作で5分でスクリーニングできる唾液検査です。
製品情報・お問い合わせはコチラ