舌は体調を示すバロメーターと言われることもあるほどに、健康状態が現れるものです。また、感染症や自己免疫疾患など病気が原因で舌の色に異変が起きる場合もあります。正常な舌との違いを知っておくと、日々の歯磨きの際に舌の色で自身の健康状態を確認しやすくなるでしょう。この記事では、正常な舌の条件や、舌の色からわかる健康状態・病気について詳しく解説します。
正常な舌の色・形とは
正常な舌は、色や形に以下の特徴があります。
- 血液循環が良くて淡い紅色をしている
- 歯に触れていないため歯型がない
- 唾液の分泌が十分なため舌に潤いがある
- 腫れていない
正常な舌は良好な血液循環によって淡い紅色(薄い赤色)をしています。形状も歯に触れていないためギザギザとした歯型がなくキレイな形をしています。さらに、十分な唾液の分泌があるため舌の表面がうるおっています。
舌が白いときによくある原因は【舌苔】
次のような健康状態の場合、舌が白くなることがあります。
- 疲労やストレスが溜まっている
- 栄養不足が続いている
- 感染症にかかっている
舌が白い場合に考えられる健康状態について、詳しく見ていきましょう。
疲労やストレスが溜まっている
疲労やストレスが溜まると免疫力が低下し、口の中に生息する細菌が増殖して舌苔がつきやすくなります。舌苔は、粘膜の表層がはがれ落ちたものや細菌が舌に付着して白い苔のような見た目になった状態のことです。ただし、舌苔は体調に問題が無くても少量は付着しているため、過去の自分の舌と比べて白くなっていたり、白い部分が広くなっていたりなどがなければ心配はありません。
また、次のような病気が原因で舌が白くなる場合があります。
また、次のような病気が原因で舌が白くなる場合があります。
- 地図状舌…舌の表面が赤くなり、それを囲むように白い境界線ができる
- 扁平苔癬…舌にレース状の白い線が現れて、周りが赤くなる
栄養不足が続いている
栄養不足が続いていると、免疫力が低下して舌苔ができやすくなる以外にも地図状舌や舌白板症になることもあります。舌白板症は、舌の粘膜が白くなる病気です。
特に、ビタミンAやビタミンB、ミネラルの不足が関係していると言われているため、肉類や野菜、果物、海藻などをバランス良く食事に取り入れましょう。好き嫌いやアレルギーのある方は、食品に含まれている栄養を調べて、食べることができる食品を見つけて摂取しましょう。サプリメントを活用するのも良いでしょう。ビタミンAやビタミンB、ミネラルを多く含む食品の例は以下のとおりです。
特に、ビタミンAやビタミンB、ミネラルの不足が関係していると言われているため、肉類や野菜、果物、海藻などをバランス良く食事に取り入れましょう。好き嫌いやアレルギーのある方は、食品に含まれている栄養を調べて、食べることができる食品を見つけて摂取しましょう。サプリメントを活用するのも良いでしょう。ビタミンAやビタミンB、ミネラルを多く含む食品の例は以下のとおりです。
ビタミンA
- 牛レバー
- さつまいも
- ほうれんそう
- かぼちゃ
- にんじん
- チーズ
ビタミンB群
- 豚ヒレ
- 玄米
- 豆腐
- そらまめ
- さつまいも
- アーモンド
- グリーンアスパラガス
- エリンギ
- バナナ
- さんま
- さば
- しじみ
- 牡蠣
- いくら
ミネラル
- ナッツ類
- ヨーグルト
- 牛乳
- チーズ
- 白菜
- ブロッコリー
- 牛レバー
- まぐろ
- バナナ
- りんご
- みかん
- じゃがいも
- さつまいも
感染症のおそれもある
舌が白い原因の1つとして、感染症にかかっている場合があります。感染症は放置すると悪化することがあります。原因となっている細菌やウイルスの特定も必要なため、まずは耳鼻咽喉科か口腔外科に相談することが大切です。
舌が白くなる感染症は次のとおりです。
舌が白くなる感染症は次のとおりです。
- 毛様白板症…エプスタイン・バーウイルスの感染によって、舌の側面に白い毛のような斑点が見られる病気
- 口腔カンジダ症…偽膜性のものは白い膜が舌に付着する
- HIV感染症…免疫不全になることで口腔カンジダ症や毛様白板症になりやすくなる
舌が赤い原因は【イチゴ舌】
次のような健康状態の場合、舌が赤くなることがあります。
- 熱がこもっている
- 舌を歯で傷つけた
- 感染症
- 生まれつきの色
それぞれ、症状や原因について詳しく見ていきましょう。
熱がこもっている
舌の色が普段よりも赤い場合は、身体に熱がこもっている場合があります。水分不足によって体温が上がっているため、すぐに水分を補給しましょう。また、頭痛やめまい、吐き気、立ちくらみや脱力感、倦怠感、まっすぐ歩けないなどの症状が見られる場合は、熱中症のおそれがあります。熱がこもっていると感じたら、水分補給をしつつ涼しい環境に移動して、薄着になり熱を逃がすことが大切です。
舌を歯で傷つけた
歯が欠けたところに舌が触れたり、うっかり噛んでしまったりして舌が傷つくと、炎症が起きて赤くなる場合があります。なかでも舌を噛んでしまうという経験は多いのではないでしょうか。舌を頻繁に噛む場合は、歯並びが悪かったり、歯の噛み合わせがズレていたりすることがあります。また、新しい被せ物や入れ歯が口の形に合っていないことも、舌を噛む原因です。慢性的なストレスで自律神経の乱れがあると、舌や頬の内側を噛む原因となることがあります。
感染症
舌が赤く腫れて、表面にブツブツができている状態をイチゴ舌と言います。イチゴ舌は、溶連菌感染症や川崎病の症状の1つです。溶連菌感染症は、溶連菌が喉に付着して発熱や喉の痛みなどを引き起こす感染症です。2~5日程度の潜伏期間を経て、突然の発熱や喉の強い痛み、倦怠感などが現れます。
川崎病は、全身の血管に炎症が起きることで、5日以上続く39度以上の高熱、赤い発疹や両目の充血、リンパ節の腫れなどの症状を伴う病気です。原因は解明されていません。
イチゴ舌の原因やそれぞれの感染症の詳細については、こちらの記事をご覧ください。
川崎病は、全身の血管に炎症が起きることで、5日以上続く39度以上の高熱、赤い発疹や両目の充血、リンパ節の腫れなどの症状を伴う病気です。原因は解明されていません。
イチゴ舌の原因やそれぞれの感染症の詳細については、こちらの記事をご覧ください。
生まれつきの色
舌の中心よりも少し奥の部分にひし形(菱形)から楕円形の赤い部分が見られる場合、正中菱形舌炎(せいちゅうりょうけいぜつえん)のおそれがあります。先天的なもので炎症性の疾患ではありません。ほとんどの場合、自覚症状がなく治療をしなくても悪化することはありません。ですが、原因は正確に解明されていないものの、2次的な原因によって痛みやかゆみなどの炎症を起こすことがあります。例えば、歯ブラシなどの刺激やカンジタ菌などの感染です。痛みやかゆみなどがある場合は、口腔外科などで診察を受けましょう。
舌が黒い場合に考えられるのは「黒毛舌」
舌が黒い場合には、黒毛舌が原因と考えられます。これは、舌の表面にある「糸状乳頭」が長くなり、黒く変色する病気です。原因は、抗菌薬や副腎皮質ステロイドの長期間使用によって、黒の色素を作る細菌だけが口内に残ることです。食べ物の味を感じにくくなったり、舌の感覚に違和感を覚えたりすることがあります。
舌の色だけではなく形や痛みの有無にも注意
舌の健康状態を判断する際には、色だけでなく以下のように形や痛みの有無にも注意が必要です。
潤いがない
舌が乾燥している場合は水分不足の場合があります。
しわやしぼみがある
舌に大きなしわがあったり、しぼんでいたりする場合も水分不足のサインです。
痛みや違和感がある
痛みや違和感がある場合、感染症のおそれがあります。
しこり・ただれ
硬いしこりやただれがある場合、頬の粘膜を噛んだことによる口内炎、歯が欠けてぎざぎざしている部分が粘膜に触れた、喫煙による炎症、骨が出っ張っている、腫瘍(良性・悪性)などの可能性があります。
舌は、歯磨きの際に毎日チェックして、色や形、しこり、痛みなどを確認しましょう。
舌は、歯磨きの際に毎日チェックして、色や形、しこり、痛みなどを確認しましょう。
舌の色が体調や病気とは関係なく変わるケース
舌の色が変わったからといって、必ずしも体調や病気が原因とは限りません。飲食物の色素や成分が舌の色を一時的に変えることがあります。例えば、紅茶やコーラ、赤ワインなどの色の濃いものをとると、舌の表面にその色が付着して色が変わります。また、ストレスや疲労などで免疫力が低下していなくとも、口内ケアが不足していれば舌苔が多量に付着します。
舌の色は体調や病気とは関係なく変わるケースもあるため、色が変わったときは食事の内容や口内ケアができているか振り返りましょう。
舌の色は体調や病気とは関係なく変わるケースもあるため、色が変わったときは食事の内容や口内ケアができているか振り返りましょう。
舌の色に問題が起きたときの対処法
舌の着色に気付いたら、舌を着色するような飲食物を取っていないかを振り返ってみましょう。口をすすいだり、舌磨きをしたりして汚れが落ちるようであれば、飲食物の影響が考えられます。
それでも舌の色に問題が起きたときは、自己判断せずに医療機関を受診しましょう。耳鼻咽喉科医や口腔外科医などによる診断を受けることが重要です。舌の色や形、その他の症状から原因を特定し、必要に応じて治療の提案を受けることができます。
例えば、イチゴ舌の原因である溶連菌感染症や川崎病は、早期の治療によって改善できます。
また、栄養不足やストレスなどが原因の場合は、症状に合わせた薬やビタミン剤の処方や、食事やストレス解消法についての具体的なアドバイスを得られます。舌の着色以外に、関連する症状の改善も期待できるでしょう。
それでも舌の色に問題が起きたときは、自己判断せずに医療機関を受診しましょう。耳鼻咽喉科医や口腔外科医などによる診断を受けることが重要です。舌の色や形、その他の症状から原因を特定し、必要に応じて治療の提案を受けることができます。
例えば、イチゴ舌の原因である溶連菌感染症や川崎病は、早期の治療によって改善できます。
また、栄養不足やストレスなどが原因の場合は、症状に合わせた薬やビタミン剤の処方や、食事やストレス解消法についての具体的なアドバイスを得られます。舌の着色以外に、関連する症状の改善も期待できるでしょう。
舌に着色があるときや着色を防ぐためのセルフケア
舌の着色が病的な原因ではない場合、普段の生活習慣や口内ケアで着色の改善や予防が行なえます。
最後に、舌の着色を防いだり、改善したりするおすすめの方法をご紹介します。
最後に、舌の着色を防いだり、改善したりするおすすめの方法をご紹介します。
生活習慣や食生活を整える
疲労やストレス、栄養不足などが原因の舌の変色は、生活習慣や食生活を整えることで改善が期待できます。十分な睡眠や適度な運動、趣味を楽しむなどをして健康的な生活の基盤を整えましょう。また、1日3食規則正しく食事をとるとともに、糖質やビタミン類、ミネラル、食物繊維など、さまざまな栄養や成分のバランスが良い食事を心がけることが大切です。
特に、ビタミンB2やB6、B12などは舌の粘膜を整えるために欠かせません。舌の刺激によってトラブルが起きている場合は、次のような食品を意識的にとりましょう。
特に、ビタミンB2やB6、B12などは舌の粘膜を整えるために欠かせません。舌の刺激によってトラブルが起きている場合は、次のような食品を意識的にとりましょう。
- ビタミンB2…うなぎ・海藻・青魚・卵・納豆
- ビタミンB6…赤身肉・マグロ・バナナ
- ビタミンB12…牡蠣・あさり・レバー
適切な口腔ケアで舌苔を増やさない
歯磨きだけでは舌苔を減らすことは難しいため、舌磨きも行いましょう。歯ブラシでは舌を傷つけるおそれがあるため、舌ブラシを利用することをおすすめします。
舌ブラシには、ブラシタイプ、ヘラタイプ、スクレーパータイプなどがあります。ブラシタイプは舌の表面の舌苔に届きやすく、柔らかい素材でできているため初心者に適しています。ヘラタイプは舌を優しくケアしたい方向けで、ゴム素材やプラスチック素材でできています。スクレーパータイプはU字型の形状で、1回の動作で広範囲を磨けるため、短時間でケアできます。
1日1回を目安に、舌を傷つけないように優しく磨きましょう。睡眠中に舌苔が付着するため、起床後に行うのがベストです。
舌磨きの方法について詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
舌ブラシには、ブラシタイプ、ヘラタイプ、スクレーパータイプなどがあります。ブラシタイプは舌の表面の舌苔に届きやすく、柔らかい素材でできているため初心者に適しています。ヘラタイプは舌を優しくケアしたい方向けで、ゴム素材やプラスチック素材でできています。スクレーパータイプはU字型の形状で、1回の動作で広範囲を磨けるため、短時間でケアできます。
1日1回を目安に、舌を傷つけないように優しく磨きましょう。睡眠中に舌苔が付着するため、起床後に行うのがベストです。
舌磨きの方法について詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
まとめ 舌の色が変化したときは原因を突き止めることが先決
舌の色が変化した場合、原因を突き止めることが先決です。色の変化だけでなく、舌の形や痛みの有無も確認しましょう。なお、舌の色が変わったからといって必ずしも体調や病気に影響があるわけではありません。飲食物の摂取や口内ケア不足など、さまざまな要因が考えられます。しかし、舌がんなどの深刻な疾患も考えられるため、自己判断せずに医療機関を受診しましょう。