舌を噛む原因とは?対策・対処法・注意が必要な時について説明

舌を噛む原因とは?対策・対処法・注意が必要な時について説明

(2024年3月29日公開)
「食事中に『ガリッ』と舌を噛んでしまった…。」
「前と同じところを噛んでしまって激痛…。」
このようなつらい経験をされたことがある方は少なくないかと思います。
一度噛んでしまった部分は腫れてしまって、また噛んでしまうという負のループに陥った方もいらっしゃるでしょう。ここでは舌を噛むことでお悩みの方に向けて、原因やその対策・対処法、注意が必要な時について説明します。

               

舌を噛む原因

舌を噛むことにはいくつかの原因や理由があります。ここでは舌の筋力低下やストレス・疲労の蓄積、顎や噛み合わせ、歯科治療、歯ぎしり、ドライマウスなどに着目してご説明します。

舌の筋力低下

舌の筋力が不足すると「低位舌(ていいぜつ)」といって、舌が本来の位置よりも低い場所にある状態となる場合があります。舌の位置は、上の前歯の後ろに舌の先端がある状態が正常とされています。舌が正常な位置にあれば、舌を噛むことはないでしょう。低位舌になると、口を開けた時に舌が上の歯と下の歯の間に入ってしまうおそれがあるため、舌を噛む原因になると考えられます。

疲労やストレスの蓄積

過度なストレスがかかると舌が緊張して動きにくくなるため、舌を噛んでしまう原因になります。舌は顎や頬など口周辺の部位と連動して動くものであるため、疲労やストレスによって上手く連動しない場合に舌を噛んでしまうこともあります。

ストレスが蓄積している時の1つの目安は、舌の先端や側面についたデコボコとした歯形です。ストレスが溜まると、歯の食いしばりが増えることがあります。食いしばりが増えると、舌が歯に押し付けられるため、舌に歯形がついてしまうことがあるため、目安の1つとなります。

肥満・むくみ(浮腫)

肥満により舌も太るため、舌を噛んでしまう原因となります。また、体に脂肪が多くなると頬の内側が口の中を圧迫するため、舌と歯が接触しやすくなることも考えられるでしょう。これらの原因から、口を開けた時に舌を噛みやすくなります。

また、似た理由でむくみ(浮腫)が舌を噛む原因となる場合もあります。むくみは体内の水分が多くなった状態であり、その水分が舌に溜まると、舌が大きくなることから噛みやすい状態になるでしょう。

顎のズレ・噛み合わせ・歯並びの問題

顎のズレや噛み合わせ、歯並びに問題があると、口や舌を思うように動かせなかったり、歯と舌が接しやすくなったりして、舌を噛んでしまうことがあるでしょう。

顎の場合、顎関節症の症状が原因となる場合があります。顎関節症の主な症状は、口を開けにくくなる開口障害、口の開閉時に「パリッ」「ジャリジャリ」と鳴る関節雑音、噛み合わせに異常が現れる咬合異常などです。

このうち、咬合異常(=噛み合わせの異常)があると舌を噛みやすくなるのです。歯並びが悪い場合では、決まったところで食べ物を噛む癖がつくことがあります。噛み癖が出ると頬や咀嚼筋などの筋肉の発達にも偏りが出て、舌を噛むおそれがあるでしょう。顎周辺の筋肉に偏りが生じると、顎と肩が繋ぐ広脛筋に負担がかかることから体全体に歪みが及ぶ原因にもなります。

また、頻繁に使う歯はすり減るため、噛み合わせや歯並びが原因で歯がすり減り、その付近の頬の肉が余って口の中を噛みやすくなることもあります。

歯の治療の影響

入れ歯や被せもの(補綴物:ほてつぶつ)を付けてすぐは、今までの噛み心地と異なることから、舌を噛みやすくなることがあります。新しい入れ歯に慣れるまで、一般的には約2週間〜1か月近くかかるといわれています。

また、補綴物を入れた際も微妙な違いが原因で、舌を噛むこともあるでしょう。1週間〜2週間が経っても違和感が残る場合は、歯科で補綴物の再調整を相談することをおすすめします。

歯ぎしり

歯ぎしりによって歯がすり減ったり、顎がズレたりすることがあります。これによって噛み合わせが変化し、舌を噛みやすくなる場合があるでしょう。歯ぎしりの主な原因は、ストレスや噛み合わせ、食いしばりなどです。起きた時に顎が疲れたように感じる方は、寝ている時に歯ぎしりをしているおそれがあります。

ドライマウス(口腔乾燥症)

ドライマウスは、唾液の分泌量低下によって口の中が乾燥する病気のことです。ドライマウスによって口内が乾燥すると舌や歯がスムーズに動かしにくくなるため、舌を噛んでしまうことにも繋がるでしょう。唾液による自浄作用も弱くなるため、むし歯や歯周病のリスクにもなります。

舌を噛む時の対策

続いて舌を噛まないようにするための対策を紹介します。ここでは口周辺のトレーニング、歯科治療や矯正、生活習慣の改善や休息、マウスピースの着用などに焦点を当てて説明します。ご自身の原因に合うものから取り組んでみましょう。

口周辺のトレーニングをする

低位舌など、舌の筋肉の低下によって舌を噛む方には、舌のトレーニングがおすすめです。

代表的なのは「あいうべ体操」です。
「あ・い・う」と大きく口を動かして、最後の「べ」で舌をできるだけ下に出します。
「あ・い・う」の時は発声も一緒にしてみてもよいでしょう。

「あいうべ」を1回として、食後に10回、1日に合計30回が目安の回数です。

続けると少しずつ舌や口周りに筋力がついてきて、正常な位置である上の歯の後ろに舌を持ち上げやすくなります。舌が低い位置になければ上の歯と下の歯に挟まることも少なくなり、頬を噛むことも少なくなるでしょう。

歯科治療・矯正をする

顎のズレや噛み合わせ、歯並びが原因で舌を噛んでしまう場合は、歯科治療や歯列矯正をすることをおすすめします。顎のズレは、顎関節症が原因であればスプリントや開口訓練による治療を、生まれつきの顎のズレは外科的手術による治療を行います。

新しく詰めものや被せもの、入れ歯を装着し始めた時期だと、同じ場所を繰り返し噛んでしまうことがあります。噛んだときに高さが違うなど、治療を受けたあとに違和感がある部分は歯科医院で早めに調整をしてもらいましょう。
また、被せものは古くなると継ぎ目がささくれのようになることもあります。ささくれた部分に舌が触れて舌に傷がつくこともあるため、新しいものだけでなく古いものにも注意しましょう。

歯並びが理由で舌を噛んでしまう方には、歯列矯正がおすすめです。歯列矯正によって顎関節症の改善や、噛み癖の改善や見た目がキレイになるなどのメリットも期待できます。

生活習慣を見直す・休む

疲労やストレスの蓄積、肥満、ドライマウスなどの対策には生活習慣の見直しや休息が必要となります。
睡眠時間が短い方や、食事から十分な栄養をとれていない方は疲労が溜まりやすいです。また、働く時間が長かったり、休む時間がなかったりするとストレスも蓄積しやすいでしょう。忙しくても趣味に触れる時間を少し持つ、湯船に浸かってゆっくりする、野菜・フルーツ・肉・魚などから栄養バランスのよい食事をとるなど、心身を休めるようにしましょう。

肥満の方はこれらに加えて、運動習慣や食事量の見直しがおすすめです。ドライマウスにも生活習慣が関係しています。水分不足や口周りを動かさないこと、過度な飲酒などで口内の乾燥が起こるためです。

また、糖尿病もドライマウスの原因となります。糖尿病によって血糖値体内のブドウ糖濃度が高くなることで、血中の糖濃度を薄くするために血液へ水分が集まります。また、糖を排出するために頻尿傾向になるため、糖と一緒に水分も体外に出るので脱水状態になりやすくなります。これらもドライマウスの原因となります。

睡眠中にマウスピースを着用する

睡眠時に歯ぎしりや食いしばってしてしまう方は、就寝時にマウスピース(ナイトガード)を着用することも対策になります。マウスピースの着用で歯に加わる力を分散させることができるため、歯ぎしりによって歯が削れるのを防ぐことができます。

マウスピースにはハードタイプやソフトタイプがあります。また、購入についても歯科で自分に合うものを作ってもらう方法や市販品を購入する方法などがあります。つけ心地が気になる方は、自分の歯にフィットするマウスピースを歯科医院で作ってもらいましょう。

マウスピースは、使用を続けることですり減って穴が空いたり変形したりします。一般的なマウスピースの寿命は1年と言われています。不具合があると期待する効果が得られなくなるため、新しいものを用意しましょう。

噛んだ直後の対処法

舌には毛細血管が多く通っており、強く噛むと出血することもあります。ここでは、舌を噛んでしまった直後にする対処法を解説します。

【最優先】舌から出血しているときの止血方法

舌を噛んでしまったら、出血の確認が重要です。出血がある場合は、最優先に止血を行いましょう。口内には細菌が多く存在するため、そのままにすると細菌感染のリスクもあります。

止血の方法は、まずは手を綺麗に洗いましょう。そして、清潔なガーゼもしくは、ティッシュペーパーで舌の出血している箇所を押さえてください。

血の味が気になっても、止血できるまでは口をゆすぐのは控えましょう。止血が終わって口をゆすぐ際は、激しくすると再度出血するおそれがあるので、ゆっくりと口をゆすぎましょう。出血が止まらない場合や2~3日たっても傷が治らない場合は歯科医院を受診しましょう。

内出血があるときの対処法

内出血がある時は、気になっても指で触ったり無理に潰したりしないようにしましょう。そのままでも問題ありません。処置をしなくても1週間ほどで自然に治ります。無理に内出血を潰してしまうと、そこから細菌が侵入し感染の原因となります。

こんな場合は注意が必要

最後に、舌を噛んでしまう場合に注意が必要なことを紹介します。わざと舌を噛んでしまう癖がある時や、細菌感染を起こしている時、繰り返し同じ場所を噛んでしまう時には注意が必要です。

舌をわざと噛む癖がある時

無意識に舌を噛む癖があると、舌を傷めるだけでなく、歯並びや噛み合わせにも影響するおそれがあります。舌を噛む癖があることで、口周りの筋肉のバランスがおかしくなってしまうこともあります。

舌癖の種類によっては上顎前突と呼ばれる出っ歯のリスクや下顎前突と呼ばれる受け口になるリスク、奥歯を噛み合わせても前歯が閉じない開咬になるリスクがあるため、注意が必要です。上下顎前突や開咬の治療は容易ではなく、放置しておくことで歯周病の原因になることなども考えられるため、舌癖に心当たりがある方は歯科医院を受診しておいた方が安心でしょう。

舌癖によって舌が正常な位置にないと、口呼吸が促されて細菌やウイルスが体内に入りやすくなるおそれもあります。

細菌感染を起こしているかもしれない時

舌や口内に傷口ができると、細菌感染が起こるおそれがあります。2日〜3日など出血が長く続く場合は細菌感染をしているかどうか、歯科医院で診てもらうことをおすすめします。

細菌感染から口内炎になってしまった時も、1週間ほどで自然治癒することが多いです。しかし、口内炎や血豆が1週間以上治らない時は予期せぬ病気などが隠れている場合があるため、口腔外科などを受診しましょう。

口内炎はレーザー治療で治癒を早めることができる。

保険適用のレーザー治療によって、口内炎など舌の傷の治癒を少し速める施術を行っている歯科医院もあります。大きな副作用はないと考えられていますが、施術直後に口内炎が治るものではないため、歯ブラシが施術部位にあたると痛みが生じます。血豆と似た良性腫瘍である血管腫もレーザー治療の対象となることがあります。

同じところを繰り返し噛んでしまう時

一度噛んだ場所は腫れるため、繰り返し噛んでしまう傾向にあります。傷口から細菌感染が起こってさらに腫れ、腫れた部位が歯に触れるようになり、より痛い思いをすることもあるでしょう。

確率が高いことではありませんが、数年にわたって繰り返し舌に刺激が加わると舌がんになるリスクがあると考えられています。腫瘍になると切開による手術が必要になることも予想されます。一度噛んでしまったところは、いつもより慎重に、傷つけないように過ごしましょう。

舌を噛んでしまう時は原因を考えましょう

舌を噛む原因には、舌の筋力低下や疲労やストレス、噛み合わせや歯並び、歯科治療の影響、ドライマウスと様々なものが挙げられます。対策法も複数ありますが、原因に合ったものを選ばないと効果が期待できないため、まずは原因を理解することが大切です。あまりにも繰り返し噛んでしまう場合や噛んだ場所の治りが遅い時、また、原因がよくわからない場合は予期せぬ病気が隠れているおそれがあります。早めに歯科医院を受診して、適切に対処してくださいね。

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