梅干しやレモンなど酸っぱい食べ物を口にしたわけではないのに、ふとした時に「口の中が酸っぱい」と感じることはありませんか? そのような違和感が続いている場合、胃の不調やストレス、口内環境の乱れなどが原因かもしれません。この記事では、口の中が酸っぱくなる原因や考えられる病気、セルフケアの方法、受診の目安についてわかりやすくご紹介します。
口の中が酸っぱいと感じる原因
逆流性食道炎や胃炎
口の中が酸っぱく感じる原因の1つが、胃食道逆流症(GERD)です。これは、胃酸を含む胃の内容物が食道に逆流することで、酸っぱい液体が上がってくる(呑酸)感覚や胸やけ、喉の違和感などが生じる病態全般を指します。その中で食道粘膜に炎症が起きたものが「逆流性食道炎」です。とくに食後や就寝中、前かがみになった時などに症状が出やすいといわれています。かつては欧米に多い病気とされていましたが、近年では食生活の欧米化や肥満の増加により、日本人にも一般的に見られるようになりました。実際、日本人の約5人に1人がGERDを抱えていると推計されています。また、胃炎によって消化機能が低下すると、食べ物が胃の中に停滞して発酵し、不快なニオイや酸味が口の中に広がることもあります。
むし歯や歯周病
むし歯菌や歯周病菌は食べかすを分解する過程で酸を作り出します。こうした酸が口の中にたまると、酸っぱい味を感じることがあります。とくにむし歯が進行すると、穴に食べかすが詰まり腐敗して細菌が繁殖し、甘酸っぱい味や嫌なニオイを伴うこともあります。また、詰め物や被せ物の隙間に細菌が入り込み、酸味の原因になるケースもあります。
自律神経失調症による味覚障害
自律神経失調症によって味覚に異常が起こり、口の中が酸っぱく感じられることがあります。自律神経失調症とは、精神的・身体的ストレスをきっかけに、自律神経のバランスが崩れて心身にさまざまな不調が現れる状態です。自律神経の乱れは消化酵素の分泌不全や胃の運動低下を招き、味覚が鈍くなることもあれば、逆に過敏になって通常は気にならない味に強く反応することもあります。その結果、「口の中が酸っぱい」といった違和感として現れる場合があります。
唾液分泌の減少
強いストレスや加齢、服薬の副作用などによって唾液の分泌が減ると、口の中が乾燥して細菌が増えやすくなります。その結果、細菌の活動によって酸が産生され、口内が酸性に傾きやすくなり、酸っぱい味や不快感を引き起こす要因となります。この乾燥状態は「ドライマウス(口腔乾燥症)」と呼ばれ、むし歯や歯周病のリスクにもつながります。
胃酸の分泌過多
胃酸が過剰に分泌されると、食道に逆流して口の中が酸っぱくなったり、苦い味を感じたりすることがあります。主な要因の1つはストレスで、強い緊張状態では交感神経が優位となり、胃酸の分泌が増えやすくなります。その結果、逆流性食道炎や胃の不調を引き起こすきっかけにもなります。
ホルモンバランスの変化
妊娠や更年期といったホルモンの変化が大きい時期には、食べ物の好みや味覚が変わりやすくなります。とくにつわりの時期は、酸味の強い食品を好んで取るようになり、その影響で口の中が酸っぱく感じられることがあります。
味覚障害
味覚障害になると、口の中に何もないのに酸っぱいと感じたり、甘いものを苦いと感じたりすることがあります。このように本来の味とは異なる味を感じることを「異味症」といい、原因としては偏食による亜鉛不足、加齢による機能低下、精神的なストレス、薬の副作用などが挙げられます。
口の中が酸っぱい時の対処法・予防策
口の中が酸っぱいと感じた時は、日常生活の中でできるケアや生活習慣の見直しが、症状の軽減や再発予防につながります。原因はさまざまなため、それぞれに合ったセルフケアを意識することが大切です。ここでは具体的な方法と予防のポイントをご紹介します。
水分をこまめに取る
口の中が乾燥していると唾液の自浄作用が低下して、不快な味やニオイを感じやすくなります。水分をこまめに取ることで唾液の分泌が促され、口内にたまった酸や細菌を洗い流す効果が期待できます。とくにドライマウスの傾向がある方は、意識的に水分補給を心がけましょう。
オーラルケアを徹底する
口の中が酸っぱく感じる背景には、食べ物に含まれる酸や、むし歯菌などが作り出す酸が関係していることがあります。これらを減らすためには、オーラルケアを徹底することが重要です。毎食後の歯磨きに加え、デンタルフロスや歯間ブラシで歯と歯の間の汚れを取り除き、舌専用クリーナーで舌苔を減らすことで、口の中のすみずみまで汚れを落としましょう。さらに、殺菌成分入りのマウスウォッシュやキシリトール配合ガムを取り入れると、酸を作り出す細菌の働きを抑え、唾液の分泌も促されるため、酸っぱさの緩和・改善に役立ちます。
胃酸の分泌を促す食べ物・飲み物を控える
香辛料、柑橘類、炭酸飲料、コーヒー、アルコールなどは、胃粘膜を刺激して胃酸の分泌を増やし、口の中が酸っぱい・酸っぱいものが込み上がってくる原因となるので控えるようにしましょう。
亜鉛を多く含む食品を意識的に取り入れる
口の中が酸っぱく感じる要因の1つに、味覚をつかさどる味蕾(みらい)細胞の機能低下があります。味蕾の新陳代謝を支える栄養素が亜鉛です。牡蠣や赤身肉、大豆製品、ナッツ類など、亜鉛を多く含む食品を日常的に取り入れることで、味覚の働きをサポートできます。食事だけで不足しやすい場合には、サプリメントを活用するのも1つの手です。
睡眠・ストレス管理も大切
ストレスや睡眠不足が自律神経のバランスを乱すと、胃酸の分泌や唾液の分泌量に影響を与え、口の中が酸っぱく感じる原因になることもあります。質の良い睡眠を心がけ、リラックスできる時間をもつことで、自律神経を整え、口内の違和感の予防につながります。ウォーキングやサイクリングなどの軽い運動もストレス解消に効果的です。
症状が長引く場合や他の症状も見られる場合は、受診を検討しよう
生活習慣を見直しても酸っぱい味の違和感が続く、むしろ悪化している、あるいは他の不調も伴う場合は、何らかの病気が隠れているおそれがあります。自己判断せず、早めに医療機関を受診しましょう。
放置するとどうなる? 病気のサインを見逃さないために
「口の中が酸っぱい」と感じる症状は、体調や口内の一時的な変化によるものもありますが、背景に病気が隠れていることもあります。放置すると悪化や慢性化を招くおそれがあるため、注意が必要です。ここでは、原因ごとに受診の目安と診療科をご紹介します。
胃や食道の病気が進行するリスク
逆流性食道炎や胃炎が原因である場合、胃酸の逆流によって食道粘膜が傷つき、放置すると潰瘍や食道がんのリスクが高まります。食後に胸やけやげっぷ、酸っぱい液体が上がるような感覚が続く時は、消化器内科の受診を検討しましょう。
むし歯・歯周病の悪化
口の中のトラブルが原因である場合、むし歯や歯周病が進行し、強い口臭や歯の喪失につながることがあります。甘酸っぱい味や腐敗臭を感じる、歯ぐきの腫れや出血が見られる時は、早めに歯科医院を受診して適切な処置を受けることが大切です。
味覚障害や栄養障害の悪化
栄養不足や薬の副作用による味覚障害が続くと、食欲不振や体調不良を引き起こす場合があります。味がわからない、金属っぽい・酸っぱい味が続くなどの違和感がある時は、内科や耳鼻咽喉科を受診して、適切な検査・治療を受けることが望ましいでしょう。
自律神経の乱れやホルモン変化による心身の不調の慢性化
自律神経の乱れやホルモンの変化が関与しているケースでは、放置すると心身の不調が慢性化し、日常生活に支障をきたすおそれがあります。口の中の違和感に加えて、不眠や倦怠感、めまいなどの症状が見られる場合は、心療内科や婦人科への相談を検討しましょう。
まとめ|早期対策と普段からのケアで健康な毎日を
口の中が酸っぱいと感じる症状には、胃の不調や口内トラブル、ストレス、ホルモン変化など、さまざまな原因が関係しています。日頃から食生活や睡眠、ストレス管理などの生活習慣を整えることが、予防と改善につながります。気になる症状が続く場合には思わぬ病気が隠れていることもあるため、「そのうち治まるだろう」と放置せず、早めに医療機関を受診することが大切です。