SNSなどでバズったオーラルケアに潜む罠|自己流ケアの落とし穴【歯科医師に聞く!オーラルケアの誤解Vol.3】

SNSなどでバズったオーラルケアに潜む罠|自己流ケアの落とし穴【歯科医師に聞く!オーラルケアの誤解Vol.3】

この記事では、食後の歯磨き、重曹や塩を使ったケア、自己流ホワイトニングなどの注意点を歯科医師の照山裕子先生に解説していただきました。

               
SNSや動画サイトでは、「歯が白くなる」「歯科医院に行かなくてもケアできる」といったオーラルケア情報が数多く紹介されています。手軽に試せそうに見える一方で、なかには歯や歯ぐきを傷つけてしまうおそれがあるものもあります。

オーラルケアのあれこれについて、歯科医師の照山裕子先生に伺う集中連載。

第3回は「SNSでバズったオーラルケアに潜む罠」をテーマに、食後の歯磨き、重曹や塩を使ったケア、自己流ホワイトニングなどの注意点を解説していただきます。

お話を伺った先生

照山 裕子 先生

略歴
・歯科医・歯学博士
・BLOOM ORAL CARE Tokyo院長
・東京科学大学(旧・東京医科歯科大学)
 非常勤講師 顎顔面補綴外来

幼少期に通っていた歯科医院での楽しい思い出から「痛くない治療ができる先生になりたい」と歯科医師を志す。歯学部卒業後は博士課程に進み、口腔と全身のさまざまな相関について学んだ臨床経験から、病気の早期発見につながるオーラルケアの重要性を啓発している。
最新の医学データに基づいたわかりやすい解説が反響を呼び、テレビ・ラジオ他多数出演。
2017年に出版した『歯科医が考案・毒出しうがい』が13万部を超えるベストセラーとなる。

【BLOOM ORAL CARE Tokyo】
https://bloom-oralcare-tokyo.jp/

今回、取材をさせていただいた照山先生には、実は意味がない・逆効果なオーラルケアや意味がない・過信されがちなオーラルケアグッズについても解説いただきました。詳細は、Vol.1、Vol.2も読んでみてください

「食後30分は歯を磨くな」という情報について

「食後30分は歯を磨かない方がいい」という情報は、オーラルケアの常識のように語られることがあります。しかし、この考え方には大きな誤解があります。

SNSやメディアで広がったオーラルケア情報の中で、誤解されて伝わっているものはありますか。

誤解されているのは「食後30分は歯を磨くな」という情報です。これは以前から広がっていて、メディアでも繰り返し紹介されることがあります。しかし、さまざまな学会が公式見解を出しているように「誰でも食後30分は歯を磨いてはいけない」という話ではありません。

この情報の背景には、酸蝕症の話があります。酸蝕症とは、むし歯ではなく酸性の飲食物によって歯が溶けやすくなる状態です。健康や美容のためにお酢を飲む、柑橘類をよく取る、ビタミンCの粉末を飲むなど、酸性の飲食物を頻繁に取る方は、口内が酸性に傾きやすくなります。その状態で強くゴシゴシ磨くと、歯に負担がかかるおそれがあります。

ただし、それが「食後は誰でも30分磨いてはいけない」という話に変わってしまったことが問題です。むし歯予防の観点では、食後は早めに歯を磨くことが基本です。

酸蝕症とむし歯は、分けて考えた方がよいのでしょうか。

分けて考える必要があります。むし歯は、むし歯菌が糖をもとに酸を出し、歯を溶かしていく病気です。一方、酸蝕症は、飲食物などに含まれる酸によって歯が溶けやすくなる状態を指します。

たとえば、酸性の飲み物を少しずつ長時間飲む習慣がある方は、歯磨きのタイミングだけでなく、食生活そのものを見直す必要があります。ワインなどを少しずつ飲む場合は、水を交互に飲んで口の中を中和することも一つの工夫です。

つまり、「酸性の飲食物をよく取る方は注意する」という話と、「食後は30分磨かない方がいい」という話は別です。むし歯の話と酸蝕症の話を混同しないことが大切です。

重曹や塩を使った自己流ケアについて

重曹や塩は、歯磨き粉に配合されることもある成分です。しかし、成分として使われているものと、粉末をそのまま使う自己流ケアは分けて考える必要があります。

重曹や塩を使った歯磨き、重曹を歯に塗ってパックする方法などは、歯科の観点ではどう考えればよいでしょうか。

塩には、歯ぐきを一時的に引き締めるように感じる収斂作用があります。昔は、歯ぐきの引き締めを目的に塩入りの歯磨き粉が使われることもありました。

ただし、一時的に引き締まったように感じても、歯ぐきの病気そのものが改善するわけではありません。粒子の粗い塩を歯ぐきにすり込むことで、歯ぐきを傷つけてしまうおそれもあります。そのため、自己流で塩を使うのは避けた方がよいです。特に歯ぐきが腫れている、出血しているといった症状があるなら、早めに歯科医院で原因を確認してもらう方が安心です。

重曹についても、歯磨き粉の成分として適切に配合されている場合と、粉末をそのまま使う場合は分けて考える必要があります。重曹には歯垢(プラーク)を浮かせる働きがあるとされ、関連する論文もあります。しかし、それは歯磨き粉の中に適切な濃度で配合されている場合の話です。

重曹を粉のままこすりつける、水に溶かす、練って塗る、アルミホイルでパックする、といった自己流の使い方はおすすめできません。効果より負担の方が心配です。もし本当に安全で効果的な使い方なら、すでに歯磨き粉やケア用品として適切に製品化されているはずですから。

SNSで話題のホワイトニング歯磨き粉について

黒や紫など、見た目にインパクトのある歯磨き粉はSNSでも注目されやすいものです。ただし、色の印象だけで効果を判断するのは避けましょう。

炭入り歯磨き粉や紫色のペーストなど、SNSで目を引くホワイトニング系グッズはどう考えればよいでしょうか。

炭入り歯磨き粉のなかには、汚れの吸着効果などをうたっているものがあります。メーカー独自の試験で効果が確認されている場合もあると思います。
ただ、歯科医院専売品として疾病の改善を目的に使われるものはなく、歯科医療の観点ではエビデンスに乏しいものもあります。

紫色のペーストは、歯の黄ばみを補色で打ち消し、白く見せるという考え方に基づく商品のようですが、歯そのものが白くなるわけではありません。
実際に着色汚れに作用するとすれば、配合されている清掃成分や、着色汚れを浮かせる成分といった、一般的な歯磨き粉と同様の成分によるものです。

また、成分の種類や濃度が分かりにくいものは、効果もリスクも判断しづらくなります。SNSで見た目の変化が分かりやすく紹介されていても、歯そのものが安全に白くなっているとは限りません。歯を白くしたい時ほど、まずは自分の歯の色や着色の原因を歯科医院で確認することが大切です。

ネットや個人輸入で購入した高濃度ホワイトニング剤やグッズについて

歯を白くしたい気持ちから、ネットで購入できるホワイトニング剤や海外製品に手を伸ばす方もいます。しかし、歯や歯ぐきの状態を確認しないまま使うと、思わぬトラブルにつながるおそれがあります。

ネットで購入できる高濃度ホワイトニング剤や、海外製のホワイトニンググッズを使うことには、どのような注意点がありますか。

歯科医師の立場からは、自己判断で使うことはおすすめしません。ホワイトニング剤は歯の白い部分に適切に作用させる必要がありますが、歯ぐきに付着すると、ピリピリしたりただれたりするおそれがあります。

むし歯や歯肉炎がある状態で使うと、痛みやトラブルにつながる場合もあります。歯が黒く見える原因がむし歯なのに、ホワイトニングで白くしようとすると、症状が進行してしまうかもしれません。

また、海外製品や高濃度の薬剤は、自分の歯に合わない場合があります。特に、自己判断で購入した市販のマウスピースを使う場合、歯列に合っていないために薬剤が歯ぐきへ漏れ、痛みやただれを生じることもあります。

実際に、神経を抜いた歯がある方で、自分で取り寄せたホワイトニング剤を使ったら歯が半分に割れてしまったという方や、セルフホワイトニング系のサービスやグッズを試したら、歯の表面が荒れてしまったという相談に来られる患者さんもいます。歯を安全に白くしたいなら、まず歯科医院で「なぜ黄ばんで見えるのか」「どこまで白くできるのか」「自分に合う方法は何か」を確認しましょう。

SNSでは、歯の表面にシートを貼る「ホワイトニングストリップ」も話題です。実際に効果があるのでしょうか。

シート状のホワイトニンググッズが、すべて悪いわけではありません。医療機関で対面のうえ処方されるものであれば、効果を期待できる場合があります。

ただし、歯の表面に汚れがついたまま使っても、薬剤の効能が届きにくくなります。歯や歯ぐきの状態を見ないまま使うのも危険です。ネットで購入できるものや、歯科医院を介さないものは、正しい使い方ができているか判断しにくいでしょう。

大切なのは、商品自体の良し悪しだけではありません。歯科医院で状態を確認したうえで処方されているか、正しい使い方ができているかが重要です。

オイルプリングについて

オイルプリングは、自然派ケアとして紹介されることがあります。しかし、歯磨きやフロスの代わりになるものではありません。

植物オイルで歯をすすぐ「オイルプリング」は、歯科の観点ではどのように考えればよいでしょうか。

オイルプリングは、アーユルヴェーダ由来のケアとして広がったものです。油で口をすすぐことで口内がしっとり感じられることはあるかもしれません。油の膜によって、乾燥しにくく感じる可能性はあります。

また、長い時間、口を動かし続けるなら、口周りの筋肉を鍛えられるという面はあるでしょう。ただし、油ですすぐことで歯垢が取れるわけではありません。むし歯や歯周病が治る、歯科医院の通院が不要になる、といった効果は期待しない方がよいと思います。

実際に、何年も続けている患者さんを診たこともありますが、口内の汚れが落とせていません。

十分なエビデンスがないため、オイルプリングが歯に悪影響であるとは断定できませんが、むし歯が治ると考えるのは誤りですので、歯磨きやフロスの代わりとして取り入れるのは避けましょう。

SNSのオーラルケア情報を信じる前に確認したいこと

SNSには役立つ投稿もある一方で、誰がどのような根拠で発信しているのか分かりにくいものもあります。見た目の分かりやすさだけで判断しないことが大切です。

SNSのオーラルケア情報を信じる前に確認すべきポイントはありますか。

まず、見た目がキレイ、動画が分かりやすい、流行しているという理由だけで判断しないことです。医療は科学であるべきなので、学術的な裏付けがあるかどうかが重要です。

SNSでは、発信者がどのような勉強をしているのか、どのような根拠で話しているのかが見えにくい場合があります。例えば、歯ブラシの持ち方も、情報を見極める一つの目安になります。教科書的な話をすると、力が入りすぎないように歯ブラシを鉛筆のように持つ方法が基本とされています。発信者がグー握りをして磨いている場合は、お手本になるやり方とは言えません。力のコントロールが難しくなるのでとても危険です。正しい知識を得るには、通っている歯科医院が発信している情報を、診療時に受けた説明の復習として見るのも一つの方法です。

歯は、一度削れてしまうと元には戻りません。SNSで見かけたケアを試す前に、その情報が「自分の口に合っているのか」を考えてみてください。気になる方法がある時には、まずは歯科医院で相談し、自分のコンディションに合った方法であると確認してから取り入れましょう。

取材医院:BLOOM ORAL CARE Tokyo

・住所:東京都港区港南2丁目13-37 アニコムビル 1階

・電話:03-6803-7570
https://bloom-oralcare-tokyo.jp/

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