熱中症予防・対策法|熱中症にならないための予備知識を解説【医師監修】

熱中症予防・対策法|熱中症にならないための予備知識を解説【医師監修】

(2023年8月14日更新)
【医師監修】
夏場の外出には熱中症対策が欠かせませんが、室内にいる場合でも熱中症になるリスクはあります。気温や湿度などの環境だけでなく、自身のコンディションなどのさまざまな状況も関係して、熱中症は引き起こされます。そのため、いくつもの視点に立って熱中症対策をすることが大切です。
この記事では、熱中症にならないための空調の使い方、水分の摂り方やおすすめの服装、熱中症になりにくい体づくりについてご紹介いたします。

               

熱中症とは

熱中症とは、気温と湿度が高く蒸し暑い環境にいることで、体温が上昇して体内の水分や塩分のバランスが崩れてしまい、体にさまざまな不調が起きる状態のことです。

どのような症状が起こる?

熱中症の症状は、軽症・中等症・重症の3段階に分けられます。
重症度 主な症状 対処法
軽症 めまい・失神・筋肉の硬直・大量の汗 応急処置が可能
中等症 頭痛・吐き気・嘔吐・ぐったりしている 病院へ搬送して治療が必要
重症 意識障害・けいれん・歩けないなどの運動障害・高体温 入院して集中治療が必要
軽症の場合、クーラーの効いた部屋に移動する、氷嚢で首や脇を冷やす、体に水をかけてうちわなどで仰ぐなどの方法で体温を下げます。冷たい水やスポーツ飲料などで水分と塩分を補給するといった応急処置も大切です。応急処置をしても症状が改善しない場合や、中等症以上の症状が見られる場合には、救急車の要請が必要です。

熱中症が起こりやすい環境

熱中症は、真夏の炎天下での運動や長時間暑い場所にいるなどのケースで発症することが多いです。しかし、梅雨時期などの湿度が高く蒸し暑い環境や、季節の変わり目で暑さに体が慣れていないときでも熱中症を発症するおそれがあります。
【熱中症が発生しやすい環境】
  • 気温が高い
  • 湿度が高い
  • 日差しが強い
  • 風がない・風通しが悪い
  • 急に気温が高くなった
このため、これらの環境に該当すれば自宅にいても熱中症にかかるケースはあります。
また、マスクを着用している場合にも注意が必要です。マスクを着用することで、マスク内に熱がこもり空気が温められるため、冷えた空気を体内に取り込めなくなり、体を冷やすことが難しくなります。顔にマスクが密着しているほど熱がこもりやすく、直接体温を上昇させる元にもなります。さらに口周りの湿度が高くなるため、喉の乾きを感じにくくなり、脱水状態に気付けないおそれがあります。そのため、熱中症の危険が高まります。
<編集部より>
環境省では、気温や湿度、周辺の熱環境などを総合的に判定し、熱中症が発生しやすい地域に熱中症警戒アラートを出しており、個人向けの通知サービスも行っています。
詳しくは下記サイトをご覧ください。
環境省:熱中症予防情報サイト

熱中症予防に良い空調の使い方

炎天下にいなくても高温多湿の室内にいれば熱中症になるおそれがあります。室内に入ったときや室内に滞在しているときは、空調の使い方を工夫することで熱中症を予防できます。

エアコンや扇風機を稼働させる

室内の気温は28℃が目安です。少しくらい大丈夫と我慢せずに室温が28℃を超えている場合には、エアコンで室温を調整しましょう。また扇風機やサーキュレーターなどを併用すると効率よく、室内を冷やしてくれます。

おすすめのエアコン設定

エアコンの設定温度を28℃にすれば良いわけではありません。28℃になるまでは、エアコンの設定温度を下げて稼働させます。運動後や帰宅後など体温が高い状態で、室内が無風状態かつ多湿な環境であれば、熱中症になるおそれがあります。空調の設定を強めにしてすぐに室内を冷やしましょう。
目安の28℃になれば、エアコンの設定を弱運転や自動運転に切り替えます。あまりに室内の温度を下げ過ぎると外気温との差が大きくなり、反対に体に負担をかけることになります。
また、直接エアコンの風が当たらないよう風向きにも注意しましょう。風向きは水平で運転すると冷風が室内に循環しやすくなります。

エアコン利用時の加湿・換気の仕方

快適に過ごせる湿度は50%といわれており、湿度が60%以上になることの多い夏場は、除湿機能を合わせて使うと快適に過ごせるようになります。
反対に湿度が40%を下回ると乾燥し、喉を傷めるなど熱中症以外のリスクが高まります。気温と一緒に湿度の調整も行ないましょう。

エアコンには換気機能がついている機種が少ないため、換気にも注意が必要です。機密性の高い住宅の場合には、二酸化炭素の濃度が上がったり感染症のリスクが高まったりするおそれがあります。1時間に2回、数分程度2か所の窓を開け、換気扇や扇風機などを併用して換気を行います。
なお、エアコンの電源はこまめにON・OFFをしていると電気代が上昇する原因となります。換気で窓を開ける場合も、つけたままの状態がおすすめです。

熱中症にならないための過ごし方

熱中症を予防するためには、水分摂取や適度な休息など、日頃の過ごし方にもポイントがあります。熱中症にならないための過ごし方についてご紹介します。

こまめな水分補給

熱中症予防には、「喉が渇いた」と感じる前に、こまめな水分補給が大切です。
室内にいて汗をかいていないつもりでも、体内の水分は失われています。1日に1,200 mlを目安に、コップ1杯ずつこまめに水分を摂取しましょう。

水分を上手に摂る方法についてはこちらをご覧ください。

スポーツ時には経口補水液を飲む

屋外での作業や運動をした場合の水分補給は、水だけでは不十分です。汗によって塩分も失われているため、スポーツドリンクや経口補水液を飲むのがおすすめです。
また、汗を大量にかいた時に水やお茶で水分を摂取すると、より体内の塩分濃度が薄まります。すると、体には塩分濃度を保とうする作用が働き、尿として水分を排出してしまい、自発的脱水の症状を起こすおそれがあります。

適宜マスクを外す

マスクは適宜外すようにすることで、熱中症対策につながります。上述したとおり、マスク着用中は、温められた空気しか体内に取り込めず、体を冷やせません。また、マスクが密着している部分は体温が放熱されず、体温の上昇につながります。マスク内が多湿な状況のため、喉の渇きに気づけず脱水状態となるおそれもあります。そのためマスクの着用は、熱中症のリスクが高まります。
新型コロナウイルス対策でも、人との距離が2 m以上空いているか、会話をしない場合には、熱中症予防のためにマスクを外すことが推奨されています。とくに暑い屋外や運動時にはマスクを適宜外すようにしましょう。

無理をせずにこまめな休息をとる

部活動や仕事など無理をしやすい環境でも、こまめに休息を入れて熱中症を予防することが大切です。とくに部活動などで集団行動をしている場合には、個人では休憩をはさみにくいケースもあります。周囲にも声をかけながら、水分をとる、体を冷やすなどをして休息をとるようにし、我慢をしないことが大切です。

日差しの弱い場所にいる

日中はなるべく日陰を選ぶことも大切です。暑さや多湿な環境に加えて、強い日差しは熱中症のリスクが高まります。
日向は直射日光が当たるだけでなく、暖められた地面からの放射熱もあり、空気以外のさまざまなところから熱を受けます。
外を歩く時は日陰を選ぶ、運動中など屋外で休憩するときは日陰に入るなどをして、強い日差しを避けるようにしましょう。

熱中症にならないための服装・グッズ

熱中症にならないために、服装を意識して熱中症対策グッズをうまく活用しましょう。

風通しの良い服装を着用する

熱中症対策には、風通しがよく、ゆったりとした服装がおすすめです。
まくり上げて調節ができるくらいのゆったりとした服装を着用しましょう。ぴったりと張り付く服では、熱がこもり空気が循環できません。素材は、吸汗や速乾機能のあるタイプ、通気性の良い綿や麻がおすすめです。
暑いからと半袖やノースリーブの服装を選ぶ方も多いかもしれませんが、屋外の場合には日差しを遮断することが大切です。

帽子や日傘で日差し対策をする

帽子や日傘での日差し対策も大切です。
日傘は遮光や遮熱、紫外線を遮断できるUVカット効果のあるものがおすすめです。直射日光を遮断することで、傘の内部の温度が低くなります。
帽子も熱中症対策に効果的です。つばが広くて後ろが覆われていると、首まで日差しから守れます。麦わら帽子などの通気性がよく、軽い素材がおすすめです。帽子は黒色だと日光を吸収し温度が高くなるので、カラーは白や淡い色が良いでしょう。

冷却グッズを利用する

熱中症対策には冷却グッズを活用するのもおすすめです。さまざまな冷却グッズがありますが、冷感を感じるだけでなく、実際に冷却効果があるものを利用するのがポイントです。
首筋や脇の下、足の付け根などは体の表面近くを血管が通っており、冷やすと効率良く体温を下げることができます。

冷感タオル

通常のタオルと異なり、冷感機能のあるタオルです。特殊繊維により触れるだけでひんやりと感じるタイプもありますが、水で濡らして軽く絞ると冷感を感じるタイプ、保冷剤を包んで使用するタイプなど、さまざまあります。首に巻いたり肩にかけたり、スポーツの時にも活躍します。

瞬間冷却パック

叩くだけで冷たくなるため、使いたいときにすぐに体を冷やせます。肌に直接触れていると肌にダメージを与える場合もあります。タオルやハンカチに包んだ上で体にあてるようにしましょう。

冷却スプレー

冷却成分が含まれているスプレーです。体に吹きかけるタイプや服に吹きかけるタイプがあります。制汗・防臭作用があったり清涼感のある成分が配合されていたりして、暑さ対策以外のメリットもあります。ただし、体を冷やす効果は弱いものが多いため、熱中症対策には他の対策を合わせて取り入れるのがおすすめです。

熱中症にならない体づくり

熱中症予防には、日頃からの体づくりが大切です。

日常的に運動をする

日常的に運動をしておくことも予防法のひとつです。体が暑さに慣れることを「暑熱順化」といいます。スポーツをしている方や適度に汗を流す習慣のある方は暑熱順化ができているため、自然と熱中症に強い体づくりができています。
ウォーキングなど、軽く汗をかく程度の運動を毎日30分ほど取り入れると暑さに強い体作りができます。日頃から汗をかく習慣を身につけておきましょう。

バランスの良い食事を摂る

栄養バランスの良い食事を摂ることも、丈夫な体をつくり熱中症の予防につながります。
発汗で失われやすいミネラルや、エネルギー作りに必要なビタミンをはじめ、発汗や体温調節を行うための機能にはさまざまな栄養素が必要です。また、栄養のバランスが乱れると、疲れがとれなかったり、風邪を引いてしまったり、体の不調として現れます。体調が悪いときには熱中症になりやすいため、食事を抜くなどをせず、栄養バランスの整った食事を心がけましょう。

質の良い十分な睡眠をする

良質な睡眠も熱中症予防には欠かせません。二日酔いや睡眠不足などの体調不良は、熱中症リスクを高める原因となります。
とくに寝苦しい季節となるため、通気性や吸水性のよい寝具を使い、空調管理をしっかりと行ってぐっすりと眠れる環境も大切です。

まとめ

熱中症は暑さだけではなく、さまざまな環境や状況によって発症するおそれがあります。屋内にいると気づかないうちに熱中症の症状を引き起こすケースもあります。
熱中症にならないための予備知識をつけて、環境づくりや服装にも注意しましょう。運動や食事、睡眠など日頃からの体づくりも大切です。

監修医師:藤堂 沙織 先生

Alohaさおり自由が丘クリニック 院長。
2003年に日本歯科大学を卒業後、同大学付属武蔵小杉病院の内科に勤務。2009年から善仁会丸子クリニックにて院長を務めた後、2019年に現在のAlohaさおり自由が丘クリニックを開業。
日本内科学会の認定内科医であり、日本透析医学会や日本腎臓学会、日本美容皮膚科学会、点滴療法研究会などの多くの学会に所属。

Alohaさおり自由が丘クリニック ホームページ
https://aloha-saori-jiyugaoka-cl.jp/

近隣のクリニックを検索

関連記事

ピックアップ

医療機関の方へ

シルハは口腔環境6項目を簡単操作で5分でスクリーニングできる唾液検査です。
製品情報・お問い合わせはコチラ