むし歯で顔が腫れたときの原因や応急処置、治し方【歯科医師監修】

むし歯で顔が腫れたときの原因や応急処置、治し方【歯科医師監修】

(2024年2月16日更新)
むし歯で頬が腫れる原因の多くが歯の根元に溜まった膿です。本記事では、むし歯で顔が腫れてしまった方に向けて、その原因と自宅でできる応急処置、具体的な治療法について詳しく解説します。

               

むし歯で顔が腫れるのは膿瘍が原因

むし歯で頬が腫れる原因の多くは膿瘍(のうよう)の発生によるものです。膿瘍とは、組織に膿が溜まった状態を指します。膿は、白血球が細菌やウイルスと戦ったことによりつくられる、細菌の死骸や組織の壊れたものの集まりです。歯の内部には、多数の細菌が生息しています。むし歯が進行すると、これらの細菌が歯の神経を通じて歯根の先端にまで達します。

この細菌が感染を引き起こすと、歯根の先端に膿瘍が形成されます。さらに進行した場合、その圧迫により周囲の頬や顎が腫れます。膿瘍の自然治癒は難しいため、歯科医院で治療を受ける必要があります。膿瘍による腫れを放置してしまうと、副鼻腔炎など別の症状を引き起こすリスクもあります。むし歯で頬や顎が腫れてきたら、早急に適切な医療機関で治療を受けなければなりません。

むし歯で顔が腫れたとき、すぐに歯医者に行けないときの応急処置

むし歯で急に顔が腫れたとき、すぐに歯医者に行けない状況もあると思います。そんなときに役立つ方法をご紹介します。自宅や外出先で応急処置を行うことで一時的な症状の緩和が期待できます。ただし、応急処置によって症状が改善された場合でも、歯科医院で根本的な治療を行わなければ完治しません。あくまで歯科医院に行くまでの応急処置であることを理解しておきましょう。

腫れた患部を冷やす

むし歯で顔が腫れているときは、患部が炎症を起こしています。炎症で熱を持った部位を冷やすことで血流が抑えられるため、むし歯の痛みや腫れの一時的な緩和が期待できます。直接冷やすと刺激が強いため、氷や保冷剤などをタオルに包んで患部を冷やしましょう。この場合の患部とは、むし歯がある口内ではなく顔の腫れた部位を指します。むし歯を直接冷やしてしまうと神経を刺激してしまうため、痛みが増幅するおそれがあります。

数分間冷やしても腫れが引かないときは、10分ほど間隔を空けて、再度冷やすようにしましょう。冷やしすぎてしまうと、血行が悪くなってしまい、かえって逆効果となるため注意しましょう。また、凍傷(低温障害)になるリスクもあるため、直接あてたり、長い時間冷やし続けないようにしましょう。冷却シートの使用も効果的です。

患部を刺激しないよう気をつける

たとえ患部が気になっても、歯や腫れた部分を触ったり強く圧迫したりしないようにしましょう。患部への刺激は、症状の悪化につながります。口内をキレイに保つには歯磨きを行う必要がありますが、患部の歯や歯ぐきを強く刺激しないようにやさしく磨くようにしましょう。マウスウォッシュを使う際は、殺菌効果のあるマウスウォッシュやうがい薬を使わずに、刺激の少ないノンアルコールタイプのものを選ぶようにしましょう。

神経を刺激しやすい甘い物・辛い物・酸味のある食べ物なども腫れている間はできるだけ避けるようにしましょう。

マウスウォッシュで洗浄する

口内をマウスウォッシュでうがいすることにより、口腔内を殺菌することができます。 マウスウォッシュは製品によって刺激が強いものもあります。ノンアルコールタイプなど、あまり刺激が強くないものを選びましょう。マウスウォッシュがない場合は、塩や重曹を使ってうがいする方法もあります。傷や口内炎などがあるとしみて痛むことがありますので、注意しましょう。
<歯科衛生士さんにおすすめするマウスウォッシュの成分について伺いました。ぜひマウスウォッシュを選ぶ際に下記の記事を参考にしてみてください。>

痛み止めを使用する

市販の解熱鎮痛剤を使用すると痛みを一時的に抑えることができます。ですが、むし歯の原因を根本的に取り除かないかぎり、痛みが再発するおそれがあります。鎮痛剤を服用したことで一時的に痛みや腫れが落ち着きますが、歯科医院で適切な治療を受けることが大切です。

歯科医院へ訪れる前に鎮痛剤を服用した場合、どの薬をいつ服用したのか伝えるようにしましょう。炎症がひどかったり神経が壊死していたりすると、痛み止めが効きづらいことがありますが、規定量以上の量を服用しないようにしてください。できるだけ早く歯科医院へ相談し、治療を受けるようにしましょう。

放置せずに歯科医院を受診する

前述したように、応急処置をすれば一時的な痛みや腫れの緩和が期待できます。しかし、これらの方法はあくまで痛みや腫れを一時的に緩和しているだけで、根本的な解決にはつながりません。痛みがなくなったり腫れが引いたりした場合でもそのまま放置せず、できるだけ早く歯科医院で診てもらいましょう。

むし歯が原因となる腫れをそのまま放置したことで感染が広がれば、隣の歯や歯茎、あごのリンパ節にまで痛みが広がることもある「歯槽骨炎(しそうこつえん)」や、口腔外科でなければ治療できない「顎骨骨髄炎(がっこつこつずいえん)」全身症状を伴う「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」などに発展するおそれもあります。短期で治療を終わらせるためにも、早めの受診をおすすめします。

むし歯による歯ぐき・顔の腫れは何日で治る?

むし歯による歯ぐきや頬の腫れは、放置していても、いったん1〜2週間でおさまるとされています。ですが、腫れや痛みが治まっても、むし歯は完治していません。
歯科医院では、むし歯の進行を4段階で分類しています。
  • CO(むし歯の前兆):歯の表面からカルシウムなどが少し溶け始めた状態。
  • C1(初期のむし歯):エナメル質が溶け始めた状態。痛みなどの自覚症状なし。
  • C2(本格的に進行し始めたむし歯):エナメル質よりも内側の象牙質にむし歯が進行した状態。冷たいものがしみるなどの症状が現れる。
  • C3(神経まで進行したむし歯):むし歯が神経(歯髄)まで進んだ状態。激しい痛みを感じるようになる。
  • C4(ほとんど歯がないむし歯):歯冠部が崩壊し歯根だけ残った状態。神経の壊死により痛みを感じないケースもある。さらに放置して根に膿を持つと強烈な痛みが生じる。
顔が腫れるような重い症状が出た場合には、C3もしくはC4の段階まで進んでいると想定されます。早めの受診は治療の痛みや通院の回数を減らすだけでなく、歯の寿命を延ばすことにつながります。

むし歯で顔が腫れたときの治し方

むし歯による腫れを放置してしまうと、広範囲に炎症が及び、痛みや腫れだけでなく倦怠感や発熱、頭痛などの症状が出るケースもあります。重症化する前に歯科医院へ相談し、適切に処置してもらいましょう。

抗生物質を服用する

歯科医院を受診し感染が確認できた場合、感染原因の菌やウイルスを殺菌するために抗生物質が処方されます。感染を制御することにより、腫れや炎症を緩和することが目的です。抗生物質は、医師・薬剤師の指示に従って服用してください。自己判断で服薬を中止しないようにしましょう。

神経の治療や抜歯を行う

むし歯が進行して神経まで達した場合、原因を除去するために神経の治療(根管治療)や抜歯を行います。根管治療の目的は、歯の温存です。歯根に膿が溜まっているとき、歯の中の神経や血管を除去することで感染部位の完治を目指します。重度のむし歯になると抜歯が必要になるため、定期的に歯科検診を受けてむし歯の早期発見と早期治療につなげましょう。

根管治療に関して下記の記事で詳しく解説していますので、参考にしてみてください。

歯ぐきを切開して膿を取り出す

根管治療を行っても改善しない場合は、外科的な切開を行うケースもあります。歯ぐきを切開してむし歯菌に感染した歯の根部分を除去し、同時に膿を排出させます。除去した歯の根の部分は特殊なセメントを詰めます。膿と共に感染部分を完全に除去する治療法です。

むし歯以外で顔が腫れる原因

頬が腫れてしまう原因はむし歯だけではありません。むし歯以外で顔が腫れてしまう原因について解説します。どのような病気を警戒すればよいのかも知っておきましょう。

歯周病

歯周病は、歯ぐきに炎症が起こる感染性の病気です。歯周病が進行すると、歯と歯ぐきのすきまである歯周ポケットが深くなり、歯周病菌が歯槽骨(歯を支える骨)や歯根膜(しこんまく)にまで侵入します。歯周病の主な原因は歯垢の付着によるものです。歯周病を発症してても、初期の段階は自覚症状がほとんどありません。歯周病の進行は、歯ぐきと歯槽骨に悪影響を及ぼすため、より深刻な状況に陥ると歯を喪失する可能性があります。

歯周病の進行によって歯ぐきに膿がたまることが原因で、歯ぐきや頬が腫れることがあります。歯周病のその他の代表的な症状として、きつい口臭や歯ぐきからの出血、歯ぐきの後退などが挙げられます。

歯周病の予防に有効なケアは、自分自身による歯磨きや歯間ケアと、歯科クリニックで行うプラークコントロールです。歯科医院で一般的に行われている歯周病の治療法は、歯科医師や歯科衛生士によるプラークと歯石の除去です。歯周病が進行して歯周ポケットが深くなると、歯石の除去だけでは治せなくなります。その場合、外科的な手術を用いて歯周ポケットを除去する方法が用いられます。
<歯周病については下記の記事にまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。>

智歯周囲炎

智歯周囲炎は、親知らず(智歯)が歯ぐきに影響を与え、炎症が生じる症状です。親知らずは口内のいちばん奥にあるため手入れが難しく、細菌感染による炎症が起きやすいとされています。さらに、親知らずが斜めに生えていれば、隣の歯との間に深いポケットができ、歯の汚れをきれいに落とすことがより困難な状態となります。親知らずの周りのポケットなどが細菌に感染することが原因で、患部や顔、リンパ節が腫れることがあります。ほかにも、発熱や激しい歯の痛み、嚥下時の不快感などの症状が見られます。

治療法は、歯科医師による歯の洗浄、塩水によるうがい、鎮痛剤、抗生物質、クロルヘキシジンうがい薬のほか、親知らずおよび智歯周囲炎の除去手術があります。親知らずが生えてきたら、症状が出る前の段階で早めに受診し、どのようなリスクがあるかを知っておくと安心です。

口腔がん

口腔がんとは、口内の細胞が異常に増殖することで発生するがんの一種です。顔の腫れ以外に口の中に硬いしこりがあるときは口腔がんのおそれがあるため、早急に医療機関を受診するようにしましょう。口腔がんは進行が早いため、発見が遅れてしまえば命に関わることもあります。一方で、早期の切除によって病気が完全に治る可能性は高く、術後の機能障害も少ないとされています。

口腔がんが疑われる症状を発見したら、すぐに医療機関へ相談し、適切な治療を受けるようにしてください。なお、口腔がんの予防には、喫煙や過度のアルコール摂取を避け、歯科医師による定期的な口内の健康チェックを受けることが推奨されます。健康な生活習慣を心掛けるとともに、病気の早期発見と早期治療を目指しましょう。

まとめ むし歯での顔の腫れには適切な処置をしよう

顔が腫れる原因の多くはむし歯による膿瘍です。しかし、歯周病や智歯周囲炎、口腔がんなど、他の病気が潜んでいるおそれもあります。冷却することや痛み止めなどの応急処置はあくまで一時的な対処法であり、根本的な解決につながるわけではありません。むし歯で頬や顎が腫れてしまったら、すぐ歯科医院に相談し、治療を開始しましょう。

監修歯科医師:横山 知芳 先生

神奈川県横浜市にある横山歯科医院 院長。
鶴見大学歯学部卒業。
学生時代はラグビー部に所属しチームプレーを学んだことから、チーム医療での患者様のサポートをモットーとしている。
歯科の最新の技術にアンテナを張り、勉強やトレーニングにも積極的に力を注いでいる。
第87期JIADSペリオコース修了。皆川アカデミーインプラントコース修了。国際インプラント学会認定医(DGZI)。

横山歯科医院のホームページはこちら
http://www.yokoyamashikaiin.jp/

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