睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治し方を解説! SASの症状や影響も紹介

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治し方を解説! SASの症状や影響も紹介

(2023年11月27日公開)
睡眠時無呼吸症候群は、寝ている間に呼吸が止まる病気です。睡眠時にいびきをかくことが主な症状であるため気がつきにくいですが、放っておくと高血圧や心臓病など命にかかわる病気を引き起こしたり、強い眠気で生活に悪影響を与えたりすることが知られています。この記事では睡眠時無呼吸症候群の治し方や、症状などについて詳しく解説します。

               

睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは?

睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome)では、睡眠中に無呼吸状態が繰り返されます。眠っているあいだに何度も呼吸が止まったり、呼吸が浅くなったりした結果、体が低酸素状態になる病気です。Sleep Apnea Syndromeの頭文字からSAS(サス)ともいわれます。

睡眠時無呼吸症候群のセルフチェック

以下の項目では、睡眠時無呼吸症候群の場合に表れる症状や、睡眠時無呼吸症候群の原因となることをまとめています。
このなかで当てはまるものが多いと、睡眠時無呼吸症候群のおそれが高くなります。

チェック項目

  1. 大きないびきをかく、もしくはかいていると指摘されたことがある
  2. 睡眠中に呼吸が止まっていたと指摘されたことがある
  3. 昼間、会議中や運転中でも強い眠気を感じることがある
  4. しっかり寝たはずなのに朝起きたときから、だるい、やる気が出ない、頭痛などがある
  5. 若いときよりも体重が増えて顔が変わった、二重あごになった
  6. メタボリックシンドロームの傾向がある
  7. 現在高血圧である、もしくは薬を飲んでいるが下がりにくい
  8. 夜中にトイレに行くために目が覚めることが多い

チェック結果

1か2のどちらかに該当する

睡眠時無呼吸症候群の可能性が高いです。

3~8のうち、2つ以上に該当する

睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。

3~8のうち、ひとつだけ該当する

睡眠時無呼吸症候群の可能性は今のところ低いです。
※お断り
本セルフチェックは、睡眠時無呼吸症候群に関連する項目をまとめたものであり、診断に類する判定をするものではありません。
気になる症状がある場合は、医療機関にご相談をいただくようお願いします。

睡眠時無呼吸症候群の主な症状

睡眠時無呼吸症候群の症状には、睡眠中のいびきや呼吸停止、寝汗、起床時の不調感、日中の強い眠気や倦怠感など、さまざまな症状があります。睡眠時無呼吸症候群で表れる症状について詳しくご説明します。

夜中に目覚める・熟睡できない

睡眠時無呼吸症候群では、睡眠中に呼吸の停止と再開を繰り返すため、脳が覚醒します。これにより、体をリラックスさせる副交感神経ではなく、活発にさせる交感神経が優位に働きます。この結果、眠りが浅くなり夜中に目覚めてしまったり熟睡できなかったりしてしまいます。

口や喉の渇き

人は睡眠時、正常な状態では鼻呼吸をしています。しかし、何かが原因で口での呼吸となると口や喉が渇いてしまいます。睡眠時無呼吸症候群の方の多くはいびきをかきますが、このとき口を開けて口呼吸をしているために、睡眠中に口や喉が乾燥しやすくなります。

寝汗をかく

睡眠中に交換神経が優位に働くようになると体温調節が難しくなり、大量に寝汗をかくことがあります。呼吸の停止で軽い窒息状態になって苦しくなることも、寝汗をかく原因です。

起床時の頭痛・疲労感

睡眠は、脳や体を休ませるためのものです。
睡眠中に無呼吸状態に陥ると、体は低酸素状態になります。すると、体の酸素不足を補うために、脳は起きて心拍数を上げようとします。よって、脳にも体にも負担がかかり、寝ているのに休息ができていない状態になります。
この結果、起床時に頭痛や疲労感を感じます。

昼間の激しい眠気・居眠り

睡眠中に無呼吸になることで、脳も体も休まりません。このため、昼間に激しい眠気を感じ、居眠りしてしまうことがあります。

睡眠時無呼吸症候群の原因は?

睡眠時無呼吸症候群の原因はふたつあります。一つ目は、上気道と呼ばれる空気の通り道が狭くなることで呼吸が止まるケースです。これを、閉塞性睡眠時無呼吸症候群といいます。ほとんどの方がこの原因で睡眠時に無呼吸になっているとされています。
もう一つは、脳から呼吸をする指令が出てこなくなるために起こるケースです。これを中枢性睡眠時無呼吸症候群といいます。それぞれの原因を詳しくみていきましょう。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群の場合

上気道が狭くなることで起こる閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、以下のようなことが原因となります。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群の原因

  • 肥満
  • 顎が小さいなどの骨格の問題
  • 飲酒・睡眠薬の服用
  • 睡眠時の姿勢

中枢性無呼吸症候群の場合

睡眠時無呼吸症候群の中でも割合が非常に少なく、全体の数%ともいわれているのが中枢性無呼吸症候群です。
その原因ですが、完全には解明されていません。脳卒中を起こした方や心機能が低下した方においてよくみられます。

睡眠時無呼吸症候群が招くさまざまな影響

睡眠中に呼吸の停止と再開を繰り返すため、脳が覚醒して体も休められず、低酸素状態を補うために心臓が活発に動きます。この結果、次のようなさまざまな影響が起こります。

集中力の低下によりさまざまなミスが起こる

睡眠時無呼吸症候群になると深く眠れないため、質のよい睡眠がとれません。睡眠不足や脳の休息不足による疲労感・倦怠感で集中力が低下し、パソコンの入力ミスや手作業のミスをしてしまったり、ぼんやりして考えがまとめられなかったり、仕事中に寝てしまったりと、さまざまなミスを起こしてしまいます。

高血圧・心臓病など生活習慣病のリスクが上昇

睡眠時に呼吸が止まることで起こる低酸素状態を補おうとして、心臓の働きは強まり、その結果、高血圧を発症することがあります。また、低酸素状態では動脈硬化が悪化するともいわれ、これによって心臓病が引き起される危険性もあるといわれています。

激しい眠気により重大な事故が起こる確率が高まる

日中に強い眠気を感じることで、居眠り運転をしてしまうなど、重大な事故を引き起こすことがあります。睡眠時無呼吸症候群によって引き起こされたとされる事故は後を絶たず、国も注意喚起を促しています。国土交通省では、重大な事故を防止するための対策として、睡眠時無呼吸症候群の早期発見と治療促進のための方法をマニュアルにまとめています。
参考:国土交通省自動車交通局「睡眠時無呼吸症候群に注意しましょう!

睡眠時無呼吸症候群は治療するべき?

睡眠時無呼吸症候群の主な症状がいびきということで、治療をする必要はあまりないと考えている方も多いです。しかし、睡眠時無呼吸症候群に罹っているなら治療をすることをおすすめします。高血圧や心臓病など生活習慣病のリスクが上昇し、日中の強い眠気で重大な事故を引き起こしてしまう可能性があるからです。

睡眠時無呼吸症候群の治療法

睡眠時無呼吸症候群の治療法には症状を緩和させる対処療法と、根本的に原因を取り除く根治療法があります。状態や重症度、原因に応じた治療が行われます。

CPAP(シーパップ)療法

Continuous Positive Airway Pressureの頭文字からなるCPAP療法は、経鼻的持続陽圧呼吸療法とも呼ばれ、睡眠中の無呼吸を防ぐため気道に空気を送り続ける治療法です。現在欧米や日本国内でもっとも普及している治療法であり、日本では1998年に保険適用となった治療法です。月一回の外来受診と機器のレンタル費用で月4~5千円程度の費用がかかります。治療期間は人によってさまざまであり、睡眠時に無呼吸の症状がある限り使用を継続する必要があります。肥満が解消されて症状が改善したり、治療法をマウスピースに移行したりすることで、CPAPによる治療が終了となります。  

マウスピース(口腔内装置)療法

症状が比較的軽めの方への治療法として、マウスピース療法があります。これはマウスピースを装着し、下顎を前に突き出した状態を維持することで気道を広く保ち、いびきや無呼吸を防ぐ治療法です。マウスピース療法も2004年から症状によっては保険適用となっており、マウスピースの作成費用の目安は1~2万円程度です。 マウスピースによる治療期間もCPAP療法と同様に個人差がありますが、2年程度です。
睡眠時無呼吸対策のマウスピースについてはこちらの記事でも紹介しています。

手術による治療

睡眠時無呼吸症候群の原因がアデノイドや扁桃の肥大による気道閉塞の場合、口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(こうがいすいなんこうがいいんとうけいせいじゅつ)という手術による治療が行われることがあります。この手術は、英語名(UvuloPalatoPharyngoPlasty)の略称として「UPPP」とも呼ばれます。口内でも上の奥の方の柔らかい部分である軟口蓋や、扁桃腺の一部を切除することで、気道を広げます。術後の痛みがあり、数年後に再発するケースもあるため、専門の耳鼻咽喉科によく相談することが大切です。手術のために1週間ほど入院が必要で、症状が落ち着くまで10日~2週間ほどかかります。

生活習慣の改善

上記の治療に加えて、生活習慣を改善することも大切です。肥満気味の方は、減量により首や喉の周りの脂肪を減らすことで、狭まっていた気道を広げることができます。口呼吸をしている方は、鼻呼吸ができるように、日中は口呼吸をしないよう意識したり、口周りの筋肉を鍛えたりしていきましょう。
口呼吸の改善についてはこちらの記事でも紹介しています。

睡眠時無呼吸症候群にならないための予防法

普段の生活習慣を変えていくことで、睡眠時無呼吸症候群を予防していくことができます。今すぐに始められる予防法をまとめました。

アルコールを控える

アルコールを摂取すると、上気道の筋肉が弛緩して気道を塞いでしまうことで、睡眠時に無呼吸になるリスクが高まります。就寝前のアルコールは控えましょう。
アルコールを摂取する場合は、一緒に水を飲むこと、禁酒日を設けること、就寝前に酔いを醒ますことも大切です。

ダイエットをして減量をする

睡眠時無呼吸症候群の大きな原因のひとつが肥満であるため、太りぎみの方はダイエットに取り組むのが大切ですです。
ダイエットのはじめの一歩として、一品を野菜系にする、肉をメインにした食事にする、毎日10分歩くなど、自分が取り組みやすいことから始めてみましょう。

禁煙をする

喫煙は喉の炎症を引き起こして腫れさせてしまい、気道を狭めてしまうため、睡眠時無呼吸症候群のリスクを高めます。また、血中酸素濃度を低下させたり、肺がんなどほかの病気のリスクも高めたりするため、禁煙をおすすめします。
吸いたいと思ったら、ゆっくり深呼吸をしたり、お茶を飲んだり、なにかの用事に取り組んだりして、タバコから別のことに意識を向けていくのが禁煙のコツです。どうしても自力での禁煙が難しい場合は、禁煙外来を利用する方法もひとつです。

睡眠薬の服用を控える

市販の睡眠薬を多用すると、副作用によって上気道の筋肉が弛緩し狭くなることがあります。そのため、睡眠時無呼吸症候群の症状を悪化させるケースがあります。
満足な睡眠ができない原因が睡眠時無呼吸症候群の場合もあります。睡眠のトラブルは市販の睡眠薬で解消しようとせず、医療機関にご相談することをおすすめします。
なお、医療機関の処方により睡眠薬を服用している場合は、服薬を急に控えるのはやめましょう。処方理由によっては服用をやめると離脱症状が生じるおそれがあります。一度、医療機関に相談をしてみましょう。

寝る姿勢を正す

仰向けで寝ると、体に下向きの重力がかかります。その際に舌根が気道に沈みこんでしまい、無呼吸になりやすい状態になります。睡眠時無呼吸症候群の場合は、うつ伏せや横向きで寝ることで気道の閉塞を避けられます。横向きで寝るときは、横向き寝用の枕や抱き枕を使うのもおすすめです。

まとめ

睡眠時無呼吸症候群は睡眠の質を悪くするだけでなく、高血圧などの別の疾患にもつながります。また、日常生活にも支障をきたす場合もあります。セルフチェックで可能性があった場合や、周囲の人から可能性を指摘された場合は、早めに専門医に相談して、自分に合った治療を行なってもらうようにしましょう。

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